法令 安全衛生情報センター:ホームへ
ホーム > 法令・通達(検索) > 法令・通達

機械の包括的な安全基準に関する指針
第1 趣旨等
1 趣旨
 機械による労働災害の一層の防止を図るには、機械を労働者に使用させる事業者において、その使用さ
せる機械に関して、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号。以下「法」という。)第28条の2第1項の規定
に基づく危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づく労働者の危険又は健康障害を防止するため必要
な措置が適切かつ有効に実施されるようにする必要がある。
  また、法第3条第2項において、機械その他の設備を設計し、製造し、若しくは輸入する者は、機械が使
用されることによる労働災害の発生の防止に資するよう努めなければならないとされているところであり、
機械の設計・製造段階においても危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づく措置(以下「調査等」
という。)が実施されること並びに機械を使用する段階において調査等を適切に実施するため必要な情報
が適切に提供されることが重要である。
 このため、機械の設計・製造段階及び使用段階において、機械の安全化を図るため、すべての機械に適
用できる包括的な安全確保の方策に関する基準として本指針を定め、機械の製造等を行う者が実施に努め
るべき事項を第2に、機械を労働者に使用させる事業者において法第28条の2の調査等が適切かつ有効に実
施されるよう、「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」(平成18年危険性又は有害性等の調査等に
関する指針公示第1号。以下「調査等指針」という。)の1の「機械安全に関して厚生労働省労働基準局長
の定める」詳細な指針を第3に示すものである。
2 適用
 本指針は、機械による危険性又は有害性(機械の危険源をいい、以下単に「危険性又は有害性」という。)
を対象とし、機械の設計、製造、改造等又は輸入(以下「製造等」という。)を行う者及び機械を労働者
に使用させる事業者の実施事項を示す。
3 用語の定義
 本指針において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。 
(1) 機械 連結された構成品又は部品の組合せで、そのうちの少なくとも一つは機械的な作動機構、制御
 部及び動力部を備えて動くものであって、特に材料の加工、処理、移動、梱包等の特定の用途に合うよ
 うに統合されたものをいう。 
(2) 保護方策 機械のリスク(危険性又は有害性によって生ずるおそれのある負傷又は疾病の重篤度及び
 発生する可能性の度合をいう。以下同じ。)の低減(危険性又は有害性の除去を含む。以下同じ。)の
 ための措置をいう。これには、本質的安全設計方策、安全防護、付加保護方策、使用上の情報の提供及
 び作業の実施体制の整備、作業手順の整備、労働者に対する教育訓練の実施等及び保護具の使用を含む。
(3) 本質的安全設計方策 ガード又は保護装置(機械に取り付けることにより、単独で、又はガードと組
 み合わせて使用する光線式安全装置、両手操作制御装置等のリスクの低減のための装置をいう。)を使
 用しないで、機械の設計又は運転特性を変更することによる保護方策をいう。 
(4) 安全防護 ガード又は保護装置の使用による保護方策をいう。 
(5) 付加保護方策 労働災害に至る緊急事態からの回避等のために行う保護方策(本質的安全設計方策、
 安全防護及び使用上の情報以外のものに限る。)をいう。 
(6) 使用上の情報 安全で、かつ正しい機械の使用を確実にするために、製造等を行う者が、標識、警告
 表示の貼付、信号装置又は警報装置の設置、取扱説明書等の交付等により提供する指示事項等の情報を
 いう。 
(7) 残留リスク 保護方策を講じた後に残るリスクをいう。  
(8) 機械の意図する使用 使用上の情報により示される、製造等を行う者が予定している機械の使用をい
 い、設定、教示、工程の切替え、運転、そうじ、保守点検等を含むものであること。 
(9) 合理的に予見可能な誤使用 製造等を行う者が意図していない機械の使用であって、容易に予見でき
 る人間の挙動から行われるものをいう。
 
第2 機械の製造等を行う者の実施事項
1 製造等を行う機械の調査等の実施 
 機械の製造等を行う者は、製造等を行う機械に係る危険性又は有害性等の調査(以下単に「調査」とい
 う。)及びその結果に基づく措置として、次に掲げる事項を実施するものとする。 
 (1) 機械の制限(使用上、空間上及び時間上の限度・範囲をいう。)に関する仕様の指定
 (2) 機械に労働者が関わる作業等における危険性又は有害性の同定(機械による危険性又は有害性として
 例示されている事項の中から同じものを見い出して定めることをいう。) 
 (3) (2)により同定された危険性又は有害性ごとのリスクの見積り及び適切なリスクの低減が達成されてい
 るかどうかの検討 
 (4) 保護方策の検討及び実施によるリスクの低減
 (1)から(4)までの実施に当たっては、同定されたすべての危険性又は有害性に対して、別図に示すよう
 に反復的に実施するものとする。
2 実施時期 
 機械の製造等を行う者は、次の時期に調査等を行うものとする。 
 ア 機械の設計、製造、改造等を行うとき  
 イ 機械を輸入し譲渡又は貸与を行うとき 
 ウ 製造等を行った機械による労働災害が発生したとき 
 エ 新たな安全衛生に係る知見の集積等があったとき
3 機械の制限に関する仕様の指定 
 機械の製造等を行う者は、次に掲げる機械の制限に関する仕様の指定を行うものとする。 
 ア 機械の意図する使用、合理的に予見可能な誤使用、労働者の経験、能力等の使用上の制限
 イ 機械の動作、設置、保守点検等に必要とする範囲等の空間上の制限
 ウ 機械、その構成品及び部品の寿命等の時間上の制限
4 危険性又は有害性の同定 
 機械の製造等を行う者は、次に掲げる機械に労働者が関わる作業等における危険性又は有害性を、別表
第1に例示されている事項を参照する等して同定するものとする。 
 ア 機械の製造の作業(機械の輸入を行う場合を除く。)
 イ 機械の意図する使用が行われる作業
 ウ 運搬、設置、試運転等の機械の使用の開始に関する作業 
 エ 解体、廃棄等の機械の使用の停止に関する作業 
 オ 機械に故障、異常等が発生している状況における作業 
 カ 機械の合理的に予見可能な誤使用が行われる作業 
 キ 機械を使用する労働者以外の者(合理的に予見可能な者に限る。)が機械の危険性又は有害性に接近
   すること
5 リスクの見積り等 
 (1) 機械の製造等を行う者は、4で同定されたそれぞれの危険性又は有害性ごとに、発生するおそれのある
  負傷又は疾病の重篤度及びそれらの発生の可能性の度合いをそれぞれ考慮して、リスクを見積もり、適
  切なリスクの低減が達成されているかどうか検討するものとする。 
 (2) リスクの見積りに当たっては、それぞれの危険性又は有害性により最も発生するおそれのある負傷又
  は疾病の重篤度によってリスクを見積もるものとするが、発生の可能性が低くても予見される最も重篤
  な負傷又は疾病も配慮するよう留意すること。 
 
6 保護方策の検討及び実施 
 (1) 機械の製造等を行う者は、3から5までの結果に基づき、法令に定められた事項がある場合はそれを必
  ず実施するとともに、適切なリスクの低減が達成されていないと判断した危険性又は有害性について、
  次に掲げる優先順位により、機械に係る保護方策を検討し実施するものとする。
 ア 別表第2に定める方法その他適切な方法により本質的安全設計方策を行うこと。 
 イ 別表第3に定める方法その他適切な方法による安全防護及び別表第4に定める方法その他適切な方法に
  よる付加保護方策を行うこと。
 ウ 別表第5に定める方法その他適切な方法により、機械を譲渡又は貸与される者に対し、使用上の情報
  を提供すること。 
 (2) (1)の検討に当たっては、本質的安全設計方策、安全防護又は付加保護方策を適切に適用すべきとこ
  ろを使用上の情報で代替してはならないものとする。 
    また、保護方策を行うときは、新たな危険性又は有害性の発生及びリスクの増加が生じないよう留
  意し、保護方策を行った結果これらが生じたときは、当該リスクの低減を行うものとする。 
 
7 記録 
 機械の製造等を行う者は、実施した機械に係る調査等の結果について次の事項を記録し、保管するもの
とする。
 仕様や構成品の変更等によって実際の機械の条件又は状況と記録の内容との間に相異が生じた場合は、
速やかに記録を更新すること。  
 ア 同定した危険性又は有害性  
 イ 見積もったリスク  
 ウ 実施した保護方策及び残留リスク
  
第3 機械を労働者に使用させる事業者の実施事項 
1 実施内容 
 機械を労働者に使用させる事業者は、調査等指針の3の実施内容により、機械に係る調査等を実施するも
のとする。
 この場合において、調査等指針の3(1)は、「機械に労働者が関わる作業等における危険性又は有害性の
同定」と読み替えて実施するものとする。 
2 実施体制等 
 機械を労働者に使用させる事業者は、調査等指針の4の実施体制等により機械に係る調査等を実施するも
のとする。
 この場合において、調査等指針の4(1)オは「生産・保全部門の技術者、機械の製造等を行う者等機械に
係る専門的な知識を有する者を参画させること。」と読み替えて実施するものとする。
3 実施時期 
 機械を労働者に使用させる事業者は、調査等指針の5の実施時期の(1)のイからオまで及び(2)により機械
に係る調査等を行うものとする。
4 対象の選定 
 機械を労働者に使用させる事業者は、調査等指針の6により機械に係る調査等の実施対象を選定するもの
とする。
5 情報入手 
 機械を労働者に使用させる事業者は、機械に係る調査等の実施に当たり、調査等指針の7により情報を入
手し、活用するものとする。
 この場合において、調査等指針の7(1)イは「機械の製造等を行う者から提供される意図する使用、残留
リスク等別表第5の1に掲げる使用上の情報」と読み替えて実施するものとする。
6 危険性又は有害性の同定 
 機械を労働者に使用させる事業者は、使用上の情報を確認し、次に掲げる機械に労働者が関わる作業等
における危険性又は有害性を、別表第1に例示されている事項を参照する等して同定するものとする。
 ア 機械の意図する使用が行われる作業 
 イ 運搬、設置、試運転等の機械の使用の開始に関する作業  
 ウ 解体、廃棄等の機械の使用の停止に関する作業  
 エ 機械に故障、異常等が発生している状況における作業 
 オ 機械の合理的に予見可能な誤使用が行われる作業  
 カ 機械を使用する労働者以外の者(合理的に予見可能な場合に限る。)が機械の危険性又は有害性に接
 近すること  
7 リスクの見積り等
 (1) 機械を労働者に使用させる事業者は、6で同定されたそれぞれの危険性又は有害性ごとに、調査等指針
  の9の(1)のアからウまでに掲げる方法等により、リスクを見積もり、適切なリスクの低減が達成されて
  いるかどうか及びリスクの低減の優先度を検討するものとする。
 (2) 機械を労働者に使用させる事業者は、(1)のリスクの見積りに当たり、それぞれの危険性又は有害性
  により最も発生するおそれのある負傷又は疾病の重篤度によってリスクを見積もるものとするが、発生
  の可能性が低くても、予見される最も重篤な負傷又は疾病も配慮するよう留意するものとする。 
8 保護方策の検討及び実施
 (1) 機械を労働者に使用させる事業者は、使用上の情報及び7の結果に基づき、法令に定められた事項が
  ある場合はそれを必ず実施するとともに、適切なリスクの低減が達成されていないと判断した危険性又は
  有害性について、次に掲げる優先順位により、機械に係る保護方策を検討し実施するものとする。 
 ア 別表第2に定める方法その他適切な方法による本質的安全設計方策のうち、機械への加工物の搬入・搬
 出又は加工の作業の自動化等可能なものを行うこと。 
 イ 別表第3に定める方法その他適切な方法による安全防護及び別表第4に定める方法その他適切な方法によ
 る付加保護方策を行うこと。   
 ウ ア及びイの保護方策を実施した後の残留リスクを労働者に伝えるための作業手順の整備、労働者教育の
 実施等を行うこと。  
 エ 必要な場合には個人用保護具を使用させること。  
 (2) (1)の検討に当たっては、調査等指針の10の(2)及び(3)に留意するものとする。 また、保護方策を行
  う際は、新たな危険性又は有害性の発生及びリスクの増加が生じないよう留意し、保護方策を行った結
  果これらが生じたときは、当該リスクの低減を行うものとする。 
9 記録
 機械を労働者に使用させる事業者は、機械に係る調査等の結果について、調査等指針の11の(2)から(4)
まで並びに実施した保護方策及び残留リスクについて記録し、使用上の情報とともに保管するものとする。
10 注文時の条件
 機械を労働者に使用させる事業者は、別表第2から別表第5までに掲げる事項に配慮した機械を採用する
ものとし、必要に応じ、注文時の条件にこれら事項を含めるものとする。 
 また、使用開始後に明らかになった当該機械の安全に関する知見等を製造等を行う者に伝達するものと
する。