鉛、その合金又は化合物(四アルキル鉛を除く。)による疾病の認定基準について

基発第550号
昭和46年7月28日
各都道府県労働基準局長 殿
労働省労働基準局長

鉛、その合金又は化合物(四アルキル鉛を除く。)による疾病の認定基準について

 標記の認定基準について、自今、下記のとおり改めることとしたので、その取扱いに遺憾のないようせ
られたい。
 なお、本通達の施行に伴い、従来の標記認定基準に関する通達はこれを廃止する。
 おつて、個々の事案について、本通達の基準により難いか、もしくは判断が著しく困難な場合には、具
体的資料を添えて本省にりん伺されたい。
 鉛、その合金または化合物(四アルキル鉛を除く。)を取り扱い、あるいはそれらのガス、蒸気もしくは
粉じんにさらされる業務に従事しているかまたはその業務に従事していた労働者が、次の各項の何れかに
該当する場合には、労働基準法施行規則別表第1の2第4号の規定に基づく労働省告示第36号表中に掲げる
鉛及びその化合物による疾病として取り扱うこと。
1.次の各号に該当するものであること。ただし、(2)または(3)の何れかが基準値に満たない場合には、
 当分の間本省にりん伺すること。
 (1) 鉛中毒を疑わしめる末梢神経障害、関節痛、筋肉痛、腹部の疝痛、便秘、腹部不快感、食欲不振、
  易労感、倦怠感、睡眠障害、焦燥感、蒼白等の症状が2種以上認められること。
 (2) 尿1リットル中に、コプロポルフィリンが150マイクログラム以上検出されるかまたは尿1リットル
  中にデルタアミノレブリン酸が6ミリグラム以上検出されるものであること。
 (3) 血液1デシリットル中に、鉛が60マイクログラム以上検出されるかまたは尿1リットル中に、鉛が
  150マイクログラム以上検出されるものであること。
2. 次の各号に該当するものであること。
 (1) 血色素量が、血液1デシリットルについて常時男子12.5グラム、女子11.0グラム未満であるかもし
  くは全血比重が男子1.053、女子1.050未満であるか、または赤血球数が血液1立方ミリメートル中、
  常時男子420万個、女了370万個未満であって、これらの貧血徴候の原因が、消化管潰瘍、痔核等の事
  由によるものでないこと。
   なお、常時とは、日を改めて数日以内に2回以上測定した値に大きな差を認めないものをいう。た
  だし、赤血球については、同時に貧血に関する他の数項目を測定した場合、それらに一定の傾向があ
  った時はこの限りでない。
   また、採血は空腹時に行なうものとする。
 (2) 1週間の前と後の2回にわたり尿1リットル中にコプロポルフィリンが150マイクログラム以上検出さ
  れるかまたは、尿1リットル中にデルタアミノレブリン酸が6ミリグラム以上検出されるものであるこ
  と。
3. 鉛の作用によることの明らかな伸筋麻ひが認められるものであること。

(解説)
1.本通達(以下「新通達」という。)は、従来の通達(昭和25年6月27日付基発第605号、昭和34年10月8
 日付基発第693号、昭和39年9月8日付基発第1049号)による鉛中毒に関する認定基準を改めたものである。
 すなわち、旧通達を策定した当時においては、いわゆる鉛中毒症等に関する診断方法、検査方法等が未
 だ開発途上にあったために、自他覚症状等当時まで慣用されてきた臨床手法にもとづいて認定基準を定
 めたものであるが、現在はこれらに関する診断並びに検査方法等が著しく進歩してきたので、それらの
 新らしい検査方法等を加え、具体的事案の認定事務を公正、かつ、容易に行なえるよう配慮し、改正し
 たものである。
2.
 イ 新通達では、記の1の(2)及び2の(2)に、尿中のコプロポルフィリンの量を示してあるが、これは、
  判断基準を明確にするため、定量法によることを明らかにしたものである。
 ロ 尿中のコプロポルフィリンの測定法については、原則として別紙(1)の検査方法によることとし、
  これにより検出された数値により判断すること。
3.
 イ 新通達では、記の1の(2)及び2の(2)に、尿中のデルタアミノレブリン酸の量を示してあるが、これ
  は現在鉛中毒の診断上有効な検査方法であると認められることから、新しく採用したものである。
 ロ 尿中のデルタアミノレブリン酸の測定法については、原則として別紙(2)の検査方法によることと
  し、これにより検出された数値により判断すること。
4.新通達の記の1の(3)の血中または尿中の鉛量の測定については、原則として別紙(3)の検査方法によ
 ることとし、これにより検出された数値により判断すること。
5.新通達の記の1及び2に示した検査の結果による数値は、いわゆる誘発法(Provocation testまたは
 Mobillization test)を行った後の、測定値ではない。
  なお、鉛中毒の診断に当り、症例によってはいわゆる誘発法が行なわれる場合があるが、これが取扱
 いについては、当面別紙(4)によること。
6.新通達に示した尿中コプロポルフィリン、尿中デルタアミノレブリン酸、血中鉛、尿中鉛に関する数
 値は、一般的には、これらの数値を超えた場合に、鉛中毒を疑わしめるものとして例示した症状のうち
 の軽微なものが発現することもあると考えられているものであるが、鉛中毒症の早期発見、早期治療を
 期する上から今回、これらの数値を採用したものである。
  しかしながら、貧血、尿中コプロポルフィリン、尿中デルタアミノレブリン酸は、他の原因によって
 も、新通達の数値を超える場合もあるので、とくに、新通達の記の2の適用に当っては、他の疾病との
 鑑別診断の結果を検討の上、認定するよう留意すること。


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