ボイラーの遠隔制御について
(平成15年3月31日基発第0331001号により廃止) |
改正履歴
近年、自動制御方式のボイラーの増加に伴い、遠隔監視室で監視及び制御が行われるボイラーがみられ
ている。
このような現状にかんがみ、別紙のとおり、「ボイラーの遠隔制御についての基準」を定めたので、下
記に留意のうえ、これに基づく適切な指導を図られたい。
なお、遠隔制御方式のボイラーについてのボイラー及び圧力容器安全規則第25条の適用については、当
該ボイラーの遠隔制御がこの基準に適合し、かつ、ボイラー取扱作業主任者が当該ボイラーの設置場所又
は遠隔監視室において同条各号の事項を行う場合には、同条に適合するものとして取り扱って差し支えな
い。
おって、昭和41年2月10日付け基発第95号の第1の10(第25条関係)は削除するが、同通達に基づき、
すでに個々について認められたボイラーについては、なお従前どおり取り扱って差し支えない。
記
1 別紙基準の1の(2)のイのボイラーには、ボイラー室内の区画された場所において監視及び制御が行
われるボイラーは含まれないこと。
2 別紙基準の3の(2)のホに掲げる事項については、1月に1回以上点検を行わせるよう指導すること。
別紙
ボイラーの遠隔制御についての基準
1 総 則
(1) 目 的
この基準は、ボイラー設置場所以外の監視室で監視及び制御が行われるボイラーについて、その
安全を確保することを目的とする。
(2) 適 用
イ この基準は、ボイラー設置場所以外の監視室において間接的に監視及び制御が行われるボイラ
ー(以下「ボイラー」という。)について適用する。
ロ ボイラーの遠隔監視及び遠隔制御を行う場合には、法令により定められたところによるほか、
この基準によるものとする。
2 構 造 等
(1) ボイラー
イ ボイラーの初起動装置は、ボイラー設置場所以外に設けないこと。
ロ ボイラーには、手動で行うことができる構造のボイラー停止装置をボイラー設置場所に設ける
こと。
ハ ボイラーには、ボイラーの常用圧力を維持する機能をもつ自動圧力制御装置を設けること。
ニ ボイラーには、ボイラー設置場所において圧力を監視できるようにするほか、遠隔監視室にお
いても圧力を監視することができる機能をもつ伝達装置を設けること。
ホ ボイラーには、ボイラーの常用水位を維持する機能をもつ自動水位制御装置を設けること。
ヘ ボイラーは、ボイラー設置場所において、水位を監視できるようにするほか、遠隔監視室にお
いても水位を監視することができる機能をもつ伝達装置を設けること。
ト ボイラーには、低水位を検出することができる水位検出装置をそれぞれ独立して2個以上設け
ること。
この場合において、そのうちの1個については、当該装置の水位検出部分を水位制御装置の水
位検出部分と兼ねることができること。
チ ボイラーには、ボイラー設置場所において、炉内における火炎の有無を監視することができる
のぞき窓を設けるほか、遠隔監視室においても火炎の有無を監視することができる機能をもつ伝
達装置をそれぞれ独立して2個以上設けること。この場合において、そのうちの1個は、燃焼安
全装置の火炎検出装置とすることができること。
リ ボイラーには、ボイラーの水位が安全低水面以下となった場合等ボイラーに異常が発生した場
合に、ボイラー設置場所に表示灯が点灯し、かつ、明確に聞きとることができる音響を発する機
能をもつ装置を設けるとともに、遠隔監視室にそれを知らせる機能をもつ伝達装置を設けること。
この場合において、表示灯は異常が回復するまでは点灯の状態を維持するものでなければなら
ないが、音響を発する機能をもつ装置は確認した後手動で停止させることができるものであって
も差し支えないこと。
ヌ ボイラーには、ボイラーの圧力が最高設定圧力を超えた場合、ボイラーの水位が設定低水位以
下となった場合等ボイラーに異常が発生した場合に、直ちにバーナへの燃料の供給を確実に、か
つ、自動的に阻止することができる機能をもつ安全しゃ断弁を燃料供給管路に直列に2個以上設
けること。この場合、軽質油を使用するボイラーで、燃料ポンプを使用するものについては、で
きる限り、燃料ポンプを自動的に停止させる構造のものとすること。
ル パイロットバーナには、安全しゃ断弁を燃料供給管路に直列に2個以上設けること。
ヲ ボイラーには、遠隔監視室においてばい煙の排出状態を監視することができる機能をもつ伝達
装置を設けること。
ワ ボイラーには、必要に応じ、遠隔監視室においてボイラーの排ガスの成分、温度等を監視する
ことができる機能をもつ伝達装置を設けること。
カ ボイラーには、必要に応じ、遠隔監視室において押込み通風機出口のドラフト圧等を監視する
ことができる機能をもつ伝達装置を設けること。
ヨ ボイラーには、遠隔監視室において炉内ドラフトの状態を監視することができる機能をもつ伝
達装置を設けること。
タ ボイラーには、遠隔監視室において、給水装置の状態給水タンクの水位、給水ポンプの吸込み
口の水温度又は給水流量が正常であるかどうかを監視することができる機能をもつ伝達装置を設
けること。
レ 油だきボイラーにあっては、遠隔監視室において、燃料加熱源、油流量、油温度、油圧力又は
噴霧媒体圧力が正常であるかどうかを監視することができる機能をもつ伝達装置を設けること。
ソ ガスだきボイラーにあっては、遠隔監視室において、ガス配管系統のガス圧力、ガス温度又は
ガス流量が正常であるかどうかを監視することができる機能をもつ伝達装置を設けること。
ツ ガスだきボイラーにあっては、必要に応じ、ボイラー設置場所にガス漏れが生じた場合に表示
灯が点灯し、かつ、明確に聞きとることができる音響を発する機能をもつ装置を設けるとともに、
遠隔監視室にそれを知らせる機能をもつ伝達装置を設けること。
この場合において、表示灯はガス漏れが補修されるまでは点灯の状態を維持するものでなけれ
ばならないが、音響を発生する機能をもつ装置は確認した後手動で停止させることができるもの
であっても差し支えないこと。
(2) 燃焼安全装置
ボイラーには、あらかじめ定められた順序によって、起動し、その後正常な運転ができるよう次
に掲げる機能をもつ燃焼安全装置を設けること。
イ ボイラー水位が正常でなければボイラーを起動することができないようにするインタロックを
行うことができること。
ロ 点火前にボイラーの燃焼室内燃焼ガス側空間の容積の4倍以上の空気量でプレパージを行うこ
とができること。
ハ バーナへの点火失敗、ボイラー圧力の異常上昇、ボイラー水位の異常低下、断火、操作用動力
源の消失等によって、ボイラーの運転に異常が発生した場合に、直ちに自動的に燃料の安全しゃ
断を行うことができること。
ニ 燃料の安全しゃ断が行われた場合の燃料安全装置のインタロックのリセットは、ボイラー設置
場所で手動により行う場合に限り行うことができること。
ホ 燃焼安全装置のインタロックは、その効力を封じることができるものでないこと。ただし、保
守のためやむを得ない部位については、一時的にその効力を封じることができるものであっても
差し支えないこと。
ヘ 燃焼安全装置の安全しゃ断弁は、バイパス装置を設けたものでないこと。
ト 必要ある場合は、燃料温度、燃料圧力、通風圧力、低燃焼位置、煙道ダンパの開度等が正常で
なければボイラーを起動することができないようにするインタロックを行うことができること。
チ 必要のある場合は、通風機の異常停止、通風圧力の異常低下、煙道ダンパの異常閉そく、燃料
圧力の異常上昇、燃料圧力の異常低下等によって、ボイラーの運転に異常が発生した場合に、直
ちに自動的に燃料の安全しゃ断を行うことができること。
(3) ボイラー設置場所
イ ボイラー設置場所には、見やすい箇所に遠隔監視ボイラーである旨を掲示すること。
ロ ボイラー室には、ボイラー室に火炎が発生した場合に、明確に聞きとることができる火炎専用
の音響を発する機能をもつ装置を設けるほか、遠隔監視室にそれを知らせる機能をもつ伝達装置
を設けること。ただし、集中火炎警報装置が設けられている場合には、この限りではないこと。
(4) 遠隔監視室
イ 遠隔監視室には、ボイラーの初起動を遠隔操作することができる機能をもつ装置を設けてはな
らないこと。
ロ 遠隔監視室には、ボイラーの停止を遠隔操作することのできる機能をもつ装置を設けること。
ハ 遠隔監視室には、燃焼安全装置のインタロックの効力を封じることができる機能をもつ装置を
設けてはならないこと。
ニ 遠隔監視室には、ボイラーの圧力を指示することのできる機能をもつ装置を設けること。
ホ ニの装置には、ボイラーの最高設定圧力及び最高使用圧力を表示すること。
ヘ 遠隔監視室には、ボイラーの水位を監視することができる機能をもつ装置を設けること。
ト ヘの装置には、ボイラーの設定低水位及び常用水位を表示すること。
チ 遠隔監視室には、ボイラーの火炎の有無を監視することができる機能をもつ装置を設けること。
リ 遠隔監視室には、ボイラーの圧力、水位、火炎等について異常が発生した場合に表示灯を点灯
し、かつ、明確に聞きとることができる音響を発する機能をもつ装置を設けること。
この場合において、表示灯は、異常が回復するまでは点灯の状態を維持するものでなければな
らないが、音響を発する機能をもつ装置については、確認した後手動で停止することができるも
のであっても差し支えないこと。
ヌ 遠隔監視室には、ばい煙の排出状態を監視することができる機能をもつ装置を設けること。
ル 遠隔監視室には、必要に応じ、ボイラーの排ガスの成分、温度等を監視することができる機能
をもつ装置を設けること。
ヲ 遠隔監視室には、必要に応じ、押込み通風機出口のドラフト圧等を監視することができる機能
をもつ装置を設けること。
ワ 遠隔監視室には、炉内ドラフトの状態を監視することができる機能をもつ装置を設けること。
カ 遠隔監視室には、給水装置の状態、給水タンクの水位、給水ポンプ吸込口の水温度又は給水流
量が正常であるかどうかを監視することができる機能をもつ装置を設けること。
ヨ 油だきボイラーの遠隔監視室には、燃料加熱熱源、油流量、油温度、油圧力又は噴霧媒体圧力
が正常であるかどうかを監視することができる機能をもつ装置を設けること。
タ ガスだきボイラーの遠隔監視室には、ガス配管系統のガス圧力、ガス温度又はガス流量が正常
であるかどうかを監視することができる機能をもつ装置を設けること。
レ ガスだきボイラーの遠隔監視室には、必要に応じ、ボイラー設置場所に、ガス漏れが生じた場
合に、表示灯が点灯し、かつ、明確に聞きとることができる音響を発する機能をもつ装置を設け
ること。
この場合において表示灯は、ガス漏れが補修されるまでは点灯の状態が維持されているもので
なければならないが、音響を発する機能をもつ装置については、確認した後手動で停止させるこ
とができるものであっても差し支えないこと。
ソ 遠隔監視室には、ボイラー室に火炎が発生した場合に、明確に聞きとることができる火炎専用
の音響を発する機能をもつ装置を設けること。ただし、集中火炎警報装置が設けられている場合
には、この限りでないこと。
3 取 扱 い
(1) 取扱い一般
イ ボイラーの取扱いは、作業基準に基づいて行う。
ロ ボイラーを起動する前には、次に掲げる装置が正常であるかどうかを確認すること。
a 燃焼安全装置
b 自動圧力制御装置
c 自動水位制御装置
d 警報装置
ハ ボイラーを起動する前には、次に掲げる系統等が正常であるかどうかを確認すること。
a ボイラー付属品
b 燃料系統
c 通風系統
d 給水系統
e 操作用動力源
ニ ボイラーの初起動は、ボイラー設置場所で行うこと。
ホ ボイラーの圧力、水位及び燃焼状態が安定するまではボイラー設置場所で圧力、水位及び燃焼
状態を監視すること。
ヘ 遠隔監視室では、ボイラーの圧力、水位及び燃焼状態並びに炉内ドラフトが正常であることを
確認するとともに、次に掲げる系統が安全に作動していることを監視すること。
a 燃料系統
b 給水系統
c 排気系統
ト 遠隔監視室では、必要に応じ、次に掲げる事項を監視し、ボイラーの状態を判断すること。
a 給水の流量及び温度並びに給水タンクの水位
b 燃料の流量及び温度
c 燃料ガスの温度及び圧力
d 押込通風機出口、ボイラー出口等のドラフト圧
e 排ガス中のCO2、O2等の温度
チ ボイラーの下部から間歇的にボイラー水を吹き出す操作は、ボイラー設置場所で行うこと。
リ ボイラーの定常停止は、ボイラー設置場所で行うこと。
ヌ 遠隔監視室でボイラーの異常を認めた場合は、直ちに燃料をしゃ断すること。
ル 燃料の緊急しゃ断が行われたときは、速やかに、ボイラー設置場所に赴き、バーナの元弁を閉
じ、その後主蒸気弁を閉じる等の適切な措置を行うこと。
ヲ 燃料の緊急しゃ断が行われたときは、その原因を除去し、かつ、ボイラー設置場所で安全を確
認した後でなければ安全装置を復帰させないこと。
(2) 点 検
イ ボイラー、遠隔監視装置及び遠隔制御装置については、設備の種類に応じ、項目と周期を定め
て点検し、その結果を記録すること。
ロ ボイラーの運転中は、常時遠隔監視を行うとともに、ボイラー設備場所でボイラーの状態(特
に圧力、水位及び燃焼状態)が正常であるかどうかを4時間に1回以上点検すること。
ハ 遠隔監視装置については、ボイラー設備場所における監視装置等(特に圧力計、水面計、火炎
の状態等)と比較し、その機能が正常であるかどうかを1日に1回以上点検すること。
ニ 次に掲げる装置は、その機能が確実であるかどうかを、原則として1週間に1回以上点検する
こと。
a 燃料しゃ断装置
b 圧力スイッチ
c 低水位しゃ断装置
d 火炎検出装置
e 点火装置
f タイマー
g 自動圧力制御装置
h 自動水位制御装置
i 警報装置
ホ 次に掲げる事項については、1年に1回以上点検整備を行うこと。
a 検出部及び検出配管の漏れ、汚損、閉そく、異物の混入等
b 調節計、指示計のゼロ点及びスパン等
c 空気式計装機器については、制御空気の漏れ、油、ドレンによる内部の汚損、閉そく等
d 電気式計装機器について、空気回路の短絡、端子の緩み、接点の接触不良、絶縁の低下等
e 油圧式計装機器については、作動油の漏れ、劣化、異物の混入、閉そく等
f リンク等の機械部分について、各点の緩み、がた等
g 調節弁、しゃ断弁、電磁弁の弁座の漏れ、作動の円滑さ、機械部分の緩み、がた等
h 火炎警報装置及びガス漏れ警報装置の作動
(3) 遠隔監視室の管理
イ 遠隔監視室には見やすい箇所に、関係者以外の者がみだりに立ち入ること禁止する旨を掲示す
ること。
ロ 遠隔監視室には、見やすい箇所にボイラー検査証の写し並びにボイラー取扱作業主任者の資格
及び氏名を掲示すること。
ハ 遠隔監視室には、必要がある場合のほか、引火しやすい物を持ち込まないこと。
ニ 遠隔監視室には、必要な予備品及び修繕用工具類を備えておくこと。