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ずい道等の建設工事におけるガス爆発等による労働災害防止対策の徹底について

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                                                                          基発第618号の2
                                                                         平成5年10月28日
																																				 
  標記については、従来からその徹底を図ってきたところであるが、平成3年9月19日、千葉県松戸市の
国分川水路トンネル建設工事においてトンネルが水没し、7名が死亡する重大災害が、また、平成5年2
月1日、東京都江東区の上水道送水管建設工事において発生したメタンガスが爆発し、4名が死亡し、1
名が負傷する重大災害が発生したことは、誠に遺憾に堪えないところである。
  これらの災害については、9月10日、柏労働基準監督署が、9月29日、亀戸労働基準監督署が、それぞ
れ当該工事を施工していた事業者等を労働安全衛生法違反の疑いで送致したところであるが、これらの災
害の重大性にかんがみ、また、これらの災害における災害防止上の問題点を踏まえ、別紙のとおり、関係
業界団体等に対し要請したところである。
  ついては、各局においても関係事業者に対し本要請の趣旨及び内容を周知するとともに、監督指導、計
画の届出に係る審査等に当たっては、これら徹底を図り、同種災害の防止に万全を期されたい。

(別紙)

基発第618号
平成5年10月28日

建設業労働災害防止協会  会長  殿
(社)日本建設業団体連合会
(社)日本土木工業協会
(社)全国建設業協会

労働省労働基準局長  

ずい道等の建設工事におけるガス爆発等による労働災害防止対策の徹底について

  建設業における労働災害の防止については、労働基準行政の最重点課題として種々の対策を推進してい
るところでありますが、平成3年9月19日、千葉県松戸市の国分川水路トンネル建設工事においてトンネ
ルが水没し、7名が死亡する重大災害が、また、平成5年2月1日、東京都江東区の上水道送水管建設工
事において発生したメタンガスが爆発し、4名が死亡し、1名が負傷する重大災害が発生したことは、誠
に遺憾に堪えないところであります。
  労働省では、これらの災害の重大性にかんがみ、発生原因の究明等を行ってきたところ、別添のとおり、
労働災害防止上の問題点がみられたところであります。
  このようなことから、貴協会におかれては、同種の災害が発生することのないように、特に下記事項に
留意の上、ずい道等の建設工事における労働災害防止対策のより一層の充実を図るよう、会員事業者に対
して周知徹底されたく要請いたします。

記
1  工事を行う場所の地質が可燃性ガスの発生のおそれのあるものである場合、工事場所の周辺における
  過去の工事において可燃性ガスの存在が認められている場合等には、事前に可燃性ガスについてボーリ
  ングコア、泥水等の分析調査等を含めた綿密な調査を実施すること。
2  切羽の全面が機械設備で覆われ、切羽の状況を把握しにくい泥土圧シールド工法等によりずい道を掘
  削するときは、事前の地質調査において、地中に可燃性ガスの存在が認められない場合であっても、測
  定者を指名し、毎日、作業を開始する前に、切羽の上部等可燃性ガスの停滞しやすい場所について、可
  燃性ガスの濃度を測定させること。
3  予想以上の可燃性ガスの発生が認められ、従前の作業方法では、可燃性ガスによる爆発等の生ずるお
  それのある場合には、換気量の増加、防爆構造電気機械器具の採用等適切かつ迅速に施工計画を変更す
  ること。
4  可燃性ガスの濃度の異常な上昇を早期に把握するため、坑内に取り付けられた自動警報装置の検知部
  は、切羽の周辺の上部にも必ず設置すること。
5  4の自動警報装置は、作動したときに、ブザー、点滅灯等により坑内の労働者が直ちに知ることがで
  きる構造とすること。
6  可燃性ガス濃度の測定の結果、可燃性ガスが認められるときは、マッチ、ライターその他発火のおそ
  れのある物を坑内に持ち込むことを厳禁するとともに、作業の性質上やむを得ず火気を使用する場合に
  は、爆発、火災が生ずるおそれのないことを確認した上で、一時的に限りその使用を認めること。
7  出水、ガス爆発、火災等非常の場合に、関係労働者にこれを速やかに知らせるために設置するサイレ
  ン、非常ベル等の警報設備については、坑内の労働者に確実に伝わる性能等を有するものとすること。
8  出水、ガス爆発、火災等が生じたときに備えて実施する避難訓練については、出稼労働者の就労時期
  に配慮し、半年以内ごとに1回実施すること。
9  現場への新規入場者については、入場時に、異常事態が発生した際の避難の方法についての教育を実
  施すること。

別添

I  国分川水路トンネル建設工事におけるトンネル水没事故について
1  災害発生状況
    災害発生当日、坑口から約1,600m(立坑から900m)の切羽での掘削作業、ずい道覆工作業等が行わ
  れていたが、午後5時頃、当日の大雨による増水のため、国分川が氾濫し、これが上流端の坑口に接し
  ている調整池に流入した。調整池の水位の上昇に伴う水圧の上昇により、坑口と調整池との間の仮締切
  が決壊したため、濁水がトンネル内に流れ込み、坑内にいた掘削作業員と避難連絡のため坑内に入った
  作業員の計8名が、これに巻き込まれ、うち1名は坑外に脱出したが、残る7名が坑内に閉じ込められ
  死亡した。
2  災害防止上の主な問題点
  (1)  ずい道等の建設の作業を行う場合において、出水等の場合に、労働者に速やかにこれを知らせる
      ことのできる警報設備を適切に設けていなかったこと。
  (2)  ずい道等の建設の作業を行う場合において、出水等が生じた場合に備えるための避難訓練を適切
      に行っていなかったこと。
II  上水道送水管建設工事における爆発事故について
1  災害発生状況
    工事はシールド工法により立坑(深さ27m)から直径3.0m(内径2.7m)のずい道を約1.45km掘削す
  るものである。
    災害発生当日、立坑から約1,300mの切羽での掘削作業中、切羽付近でメタンガスによる爆発が発生
  し、作業中の5名の作業員のうち、4名が死亡し、1名が重傷を負った。
2  災害防止上の主な問題点
  (1)  ずい道等の建設の作業を行う場合において、可燃性ガス(メタンガス)が発生するおそれのある
      にもかかわらず、適切な可燃性ガスの濃度の測定を行っていなかったこと。
  (2)  可燃性ガスにより爆発又は火災が生ずるおそれのあるにもかかわらず、自動警報装置を適切に設
      けていなかったこと。