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建設現場における発泡プラスチック系断熱材による火災災害の防止の徹底について

改正履歴
                                                                           基発第42号の4
                                                                          平成8年1月29日
																																					
  平素より建設業における労働災害の防止については、御理解と御協力をいただき厚くお礼申し上げます。
  さて、標記については、昨年12月7日に、栃木県の多目的ホール建設工事現場において、躯体工事に
係る二次請負人がアセチレン溶接装置を用いてボルトを溶接中、火花が発泡プラスチック系断熱材に引火
して火災が発生し、躯体工事及び設備工事を施行していた関係請負人の労働者4名が死亡するという重大
災害が発生したところであります。(別添1参照)
  貴協会におかれては、「ウレタン火災事故防止について」とした対策を策定し、その内容に基づき再発
防止を進められてきたところと承知しております。
  今回の災害原因については、難燃性が高いと表示されているフェノールを主たる成分とする断熱材を使
用していたにもかかわらず、これに引火し、当該断熱材が急速に燃焼、火災が発生したものと推定されて
おります。過去10年間において、建設現場におけるウレタンフォーム等発泡プラスチック系断熱材の燃
焼による急速な燃焼による災害が、別添2のとおり発生しております。このため、類似災害の再発
防止対策に一層の徹底を期する必要があります。
  ついては、下記事項について会員事業場へ周知徹底を図られるようお願いします。
  なお、別記の各団体に対しても同様の要請を行っているので申し添えます。

記
1  工事実施計画における災害防止対策について
    建設工事の実施計画を策定するに当たっては、断熱材の施行にあっては発泡プラスチック系断熱材を
  使用する作業の有、また、既存建物の改修工事等にあっては作業箇所における断熱材の使用の有無につ
  いて確認し、当該作業等がある場合には、使用する、又は使用されている断熱材の種類について確認す
  るとともに、当該断熱材の種類及び燃焼性に留意した適切な火気管理計画を策定すること。
    なお、別紙の通り、発泡プラスチック系断熱材は難燃性等の表示にかかわらず急速に燃焼が拡がる危
  険が考えられることに特に留意すること。
    特に新築工事において発泡プラスチック系断熱材を使用する場合は、当該作業実施後は当該場所での
  溶接・溶断等火気を使用する作業を行わない作業計画を策定すること。
2  施工における火災防止対策について
    火気管理の徹底のため、次の対策をはじめとする必要な対策を講じること。
  (1)  元方事業者等統括管理義務者の実施すべき事項について
      ア  使用する断熱材の種類及び燃焼性について確認を行うこと。
          また改修工事等にあっては、使用されている断熱材の種類及び燃焼性について確認を行うこと。
      イ  発泡プラスチック系断熱材を使用する、又は使用されていることを確認した場合には、当該場
        所に、その旨と火気厳禁についての表示を行うこと。
      ウ  当該作業場所に立ち入ることとなる関係請負人のすべての労働者に対し、新規入場時教育等に
        おいて、発泡プラスチック系断熱材を使用する作業及び使用されている場所並びにその危険性に
        ついて周知するための教育の実施状況の確認を行うこと。また、必要に応じて自ら教育を実施す
        ること。
      エ  発泡プラスチック系断熱材を使用する作業又は使用されている場所における作業を実施させる
        に当たっては、火気管理を含む内容の作業計画を策定するとともに、関係請負人にその内容を周
        知すること。
      オ  発泡プラスチック系断熱材を使用する場合は、当該作業中及び作業実施後において、当該場所
        において火気を使用することとならない作業計画を策定し、その徹底を図ること。
      カ  発泡プラスチック系断熱材を使用している場所でやむを得ず火気を使用する作業を行う場合に
        は、発泡プラスチック系断熱材を使用している場所を不燃性のボード、シート等で遮蔽するとと
        もに、あらかじめ適切な消火器を配置する等消火のための対策を講じさせること。
  (2)  発泡プラスチック系断熱材を使用する作業又は使用している場所において火気を取り扱う作業を
      行う関係請負人の実施すべき事項について
      ア  作業に従事する労働者に発泡プラスチック系断熱材の危険性、火気管理対策等について十分な
        教育を実施すること。また、その結果について元方事業者等に報告すること。
      イ  作業を行うに当たっては、火気管理等を含む作業計画を策定すること。当該作業計画の策定に
        当たっては、元方事業場等に報告し、必要な調整を行うこと。
      ウ  発泡プラスチック系断熱材を使用する作業及び使用されている場所で火気を使用する作業を行
        う場合には、当該作業を指揮する者を定めるとともに、その者に直接作業を指揮させること。
      エ  発泡プラスチック系断熱材を保管している場所には、仮置場所を含め、その旨と火気の使用を
        厳禁する旨の表示を行うこと。
      オ  現場の整理整頓を行い、原材料等を放置しないこと。

別紙
発泡プラスチック系断熱材の性質について
  建設工事現場で使用される発泡プラスチック系断熱材については、ウレタンフォーム等種々の材料が使
用されているが、日本ウレタン工業協会によれば、一般的には下表の通り大きく5種類に分類されている。
  ただし、硬質ウレタンフォームとフェノールフォームは混合した原料で使用されることが多く、配合率
により連続的につながっているものである。
  また、これらについては、それぞれの製品ごとに、易燃性のもの、昭和51年建設省告示第1231号第1第
2号に規定する難燃材料(以下「建設省告示に規定する難燃材料」という。)に該当するもの及び日本工
業規格A1321に基づく難燃性2級、3級に区分されているもの等がある。
  今回火災を発生させた現場において使用されていた材料は、フェノールフォームを主成分とする発泡プ
ラスチック系断熱材であり、建設省告示に規定する難燃材料に相当する性能を持ち、日本工業規格SA1321
に基づく難燃性3級に区分されていたものである。
  しかし、このように難燃性の表示がされているものであっても、条件によっては溶接火花などにより着
火する可能性があり、また、着火した後は他の発泡プラスチック系断熱材と同様に急速に燃焼が拡がる危
険性を有していることから、火気管理の徹底等火災防止対策が不可欠である。






 別添1(PDF:37KB)
 別添2(PDF:56KB)
 別記(PDF:42KB)