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労働基準法施行規則の規定に基づき労働大臣が指定する単体たる化学物質
及び化合物に係る労働衛生対策について

改正履歴


                                                                             基発第182号
                                                                          平成8年3月29日
																																					
  「労働基準法施行規則の規定に基づき労働大臣が指定する単体たる化学物質及び化合物(合金を含む。)
並びに労働大臣が定める疾病を定める件」(平成8年労働省告示第33号。以下「告示」という。)が平成
8年3月29日告示され、同日から適用されたところである。告示では、新たに、22の単体たる化学物質
及び化合物(以下「化学物質等」という。)にばく露することによって生じる症状又は障害を主たる症状
又は障害とする疾病を業務上の疾病として、追加したところである。
  ついては、これらの化学物質等に係る当面の労働衛生上の措置を下記のとおり定めるとともに、化学物
質等の物理化学的性質、主な用途、有害作用、化学物質等にばく露することによって生じる症状・障害、
許容濃度等に関して現在把握している情報を、別添の参考資料に取りまとめたので、これらを製造し、又
は取り扱う事業者に対し指導を行うとともに、関係事業者団体等に対して周知されたい。
  なお、化学物質等による健康障害の防止に関して、別紙(略)のとおり、関係事業者団体等に対して要
請したので申し添える。

                        記

第1  化学物質等に係る共通の労働衛生上の措置
  1  作業環境管理
    (1)  化学物質等のガス、蒸気又は粉じんが発散する屋内作業場については、その発散源を密閉する
        設備又は局所排気装置(以下「局所排気装置等」という。)を設置すること。ただし、化学物質
        等を製造し、又は取り扱う作業(以下「関係作業]という。)の性質上、局所排気装置等を設置
        することが著しく困難な場合又は臨時の作業を行う場合は、これらの局所排気装置等に代えて、
        全体換気装置を設け、化学物質等を湿潤な状態にし、又は労働者に有効な呼吸用保護具、保護衣、
        保護手袋若しくは保護眼鏡を使用させる等、労働者の健康障害を防止するための措置を講ずるこ
        と。
          なお、局所排気装置等の性能は、ガス状物質にあっては0.5メートル/秒、粒子状物質にあっ
        ては1.0メートル/秒の制御風速を出し得るものであること。
          また、米国労働衛生専門家会議(以下「ACGIH」という。)、日本産業衛生学会等が勧告して
        いる許容濃度を参考として、作業環境管理を行うこと。
    (2)  上記(1)により設置された局所排気装置等又は全体換気装置については、次に定めるところに
        より適切に管理すること。
        イ  作業中は、有効に稼働させること。
        ロ  定期的に点検し、異常を認めたときは、補修その他の必要な措置を講ずること。
  2  作業管理
    (1)  関係作業については、化学物質等へのばく露ができる限り少ない作業方法、作業位置、作業姿
        勢等を定めた作業規程を作成し、この規程に基づき、労働者に関係作業を行わせること。
    (2)  呼吸用保護具、保護衣、保護手袋又は保護眼鏡については、関係作業に従事する労働者の人数
        と同数以上を備え、常に有効かつ清潔な状態に保つとともに、関係作業に労働者を従事させると
        きは、これらを使用させること。なお、呼吸用保護具として労働者に送気マスクを使用させると
        きは、労働者が化学物質等に汚染された空気を吸入することのないように、清浄な空気の送気を
        確保すること。
  3  労働衛生教育
      関係作業に従事する労働者に対して、別添の化学物質等ごとに記載した情報に基づき、次の事項に
    ついて労働衛生教育を行うこと。
    (1)  化学物質等の名称、物理化学的性質、主な用途
    (2)  化学物質等の有害作用、化学物質等にばく露することによって生じる症状・障害及びACGIH等の
        専門的な機関から許容濃度等の勧告等が出されている場合にはその内容
    (3)  作業規程に基づく作業の方法
    (4)  呼吸用保護具、保護衣、保護手袋又は保護眼鏡の使用方法
    (5)  (1)から(4)に掲げるもののほか、化学物質等による健康障害を防止するために必要な事項
  4  化学物質等を譲渡し、又は提供する者による化学物質等安全データシート(以下「MSDS」という。)
    等の作成・交付等
      化学物質等を譲渡し、又は提供する者は、化学物質等の譲渡提供先に対して、MSDS若しくはこれに
    代わる書面の交付、又は容器若しくは包装への表示により、化学物質等の有害性、取扱い上の留意事
    項等に関する情報提供を行うこと。
  5  定期健康診断時における留意事項
      関係作業に従事する労働者については、定期健康診断実施の際、医師に当該労働者がばく露又はば
    く露するおそれのある化学物質等の名称及びその有害作用、ばく露することによって生じる症状・障
    害等を通知の上、受診させること。
第2  化学物質等で感作性を有するものに係る労働衛生上の措置
    上記第1に加えて、感作性(注参照)物質(アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、イソホロンジイ
  ソシアネート、塩化白金酸及びその化合物、クロルヘキシジン、コバルト及びその化合物、ジアゾメタ
  ン、2−シアノアクリル酸メチル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ジシクロヘキシルメタン−4,4’
  −ジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、パラ−tert−ブチルフェノール、ビスフェ
  ノールA型及びF型エポキシ樹脂、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、フェニルフェノール、ヘキ
  サメチレンジイソシアネート、無水トリメリット酸又はメタクリル酸メチル)の関係作業については、
  次の1及び2の措置を講ずること。
  1  アレルギー性疾患又は皮膚、鼻、咽頭若しくは肺の慢性疾患を有する労働者については、産業医等
    医師の指導を受けて、健康障害防止のための必要な措置を実施すること。
  2  上記1以外の労働者についても、当該物質により感作された場合、その後に当該物質にばく露され
    ることにより、気管支喘息等の重篤な障害を引き起こすことがあるため、必要に応じて、産業医等医
    師の指導を受け、健康障害防止のための必要な措置を講ずること。
注  「感作性」とは、有害性のうち、「人に感作(ある抗原物質に対して過敏な状態にすることをいう。)
  を生じさせるおそれのある性質のこと」をいう。

(別添)

各物質の有害性等に関する情報

  次ページ以降に用いられている主な略語等の意味については、以下のとおりである。
CAS No.………………アメリカ化学会のChemical Abstracts Service(CAS)が、化学文献などに記載され
                  た化学物質に付与した番号で、CAS Registry Numberの略
許容濃度……………数値は、いずれも、ガス状物質はppm及びmg/m3、粒子状物質はmg/m3である。

日本産業衛生学会…日本産業衛生学会・許容濃度等に関する委員会勧告で1995年までに勧告された数値
                を示した。
ACGIH………………ACGIH(1995−1996)(American Conferenceof Governmental Industrial Hygienists)
                  の数値を示した。
                  TLV−TWA  Threshold Limit Value−Time Weighted Average(時間加重平均)
                  TLV−CEILING
                  Threshold Limit Value−Ceiling(上限値)
DFG…………………Deutsche Forschungsgemeinschaft(1994)(ドイツ研究連合)
                  MAK  Maximale Arbeits platz−Konzentration
                (maximum work place concentration)(許容濃度)
                (日本産業衛生学会及びACGIHにより許容濃度等の数値が示されていない場合に、DFGに
                よる数値を示した。)
IARC…………………International Agency for Research on Cancer(国際がん研究機関)
  1  アクリル酸エチル(Etyle acrylate)
    (1)  CAS No.  140−88−5
    (2)  別名  エチルアクリレート(Etyle acrylate)
          化学式  CH2=CHCOOCH2CH3
    (3)  物理化学的性質
        イ  性状
            無色透明の液体、酢酸に似た刺激臭
        ロ  溶解性
            エーテル、アルコールに完全に混合。水に可溶。
        ハ  その他の物理化学的性質
            (表)

    (4)  主な用途
          アクリル繊維、繊維加工、塗料、紙加工、接着剤、皮革加工、アクリルゴム
    (5)  有害作用
          刺激性、感作性、その他中毒作用
    (6)  症状・障害
        イ  頭痛、めまい、嘔吐等の自覚症状:長期吸入により眠気、頭痛、吐き気等を生じる。
        ロ  皮膚障害:反復接触により感作性の皮膚炎を生じる。
        ハ  粘膜刺激:眼、鼻、のどに強い刺激を生じる。
    (7)  許容濃度等
          ACGI HTLV−TWA  5ppm(20mg/m3)
          A2(人に対する発がん性が疑われる物質)
          日本産業衛生学会  なし
          IARC  2B(人に対して発がん性があるかもしれない)
  2  アクリル酸ブチル(n−Butyl acrylate)
    (1)  CAS No.  141−32−2
    (2)  別名:アクリル酸n−ブチルエステル(Acrylic acid n−butyl ester)
          2−プロペン酸ブチルエステル
          (2−Propenoic acid butyl ester)
          化学式:CH2=CHCOO(CH2)3CH3
    (3)  物理化学的性質
        イ  性状
            無色の液体
        ロ  溶解性
            水に微溶。エタノール、ジエチルエーテル、アセトンに可溶。
        ハ  その他の物理化学的性質
            (表)

    (4)  主な用途
          アクリル繊維、繊維加工、塗料、紙加工、接着剤、皮革加工、アクリルゴム
    (5)  有害作用
          刺激性、感作性、その他中毒作用
    (6)  症状・障害
          皮膚障害:反復接触により感作性の皮膚炎を生じる。
    (7)  許容濃度等
          ACGIH TLV−TWA  10ppm(52mg/m3)
          日本産業衛生学会  なし
  3  アニシジン(Anisidine)
    (1)  CAS No.  29191−52−4(オルト体(o−アニシジン)90−04−0、パラ体(p−アニシジン)104
        −94−9)
    (2)  別名  アミノアニソール(Aminoanisole)、メトキシアニリン(Methoxyaniline)
          化学式

(図)

    (3)  物理化学的性質
        イ  性状
            o−アニシジン:薄黄色の液体で空気にさらすと褐色味を帯びる。
            p−アニシジン:無色の結晶
        ロ  溶解性
            o−アニシジン:無機酸に可溶。アルコール、エーテルに混合。水に不溶。
            p−アニシジン:アルコール、エーテルに可溶。水に微溶。
        ハ  その他の物理化学的性質
            (表)

    (4)  主な用途
          各種染料の中間体
    (5)  有害作用
          刺激性、その他中毒作用、メトヘモグロビン形成
    (6)  症状・障害
        イ  頭痛、めまい、嘔吐等の自覚症状:頭痛、めまいのみられることもある。
        ロ  皮膚障害:反復接触により感作性の皮膚炎を生じることもある。
        ハ  溶解性貧血:メトヘモグロビンの形成に伴う赤血球の崩壊亢進によって溶血性貧血を生じる。
        ニ  メトヘモグロビン血:高濃度ばく露によりメトヘモグロビン血を生じる。
    (7)  許容濃度等
        ACGIH TLV−TWA  0.1ppm(0.5mg/m3)(skin)
        ((skin)とは、経皮吸収があり、総ばく露量を有為に増大させる危険を有することをいう。)
        日本産業衛生学会  なし
          IARC  2B(人に対して発がん性があるかもしれない。)
          (オルト体)
  4  イソホロンジイソシアネート(Isophorone diisocyanate)
    (1)  CAS No.  4098−71−9
    (2)  別名  IPDI
          化学式

(図)

    (3)  物理化学的性質
        イ  性状
            無色又は淡黄色の液体
        ロ  その他の物理化学的性質
            (表)

    (4)  主な用途
          耐紫外線、耐薬品性の高安定ポリウレタンの製造
    (5)  有害作用
          刺激性、感作性
    (6)  症状・障害
        イ  皮膚障害:反復接触により感作性の皮膚炎を生じる。
        ロ  気道障害:気管支喘息を生じる。
    (7)  許容濃度等
          ACGIH TLV−TWA  0.005ppm(0.045mg/m3)
          日本産業衛生学会  なし
  5  塩化亜鉛(Zinc chloride)
    (1)  CAS No.  7646−85−7
    (2)  別名  クロロ亜鉛
                亜鉛酪
          化学式  ZnCl2
    (3)  物理化学的性質
        イ  性状
            白色の顆粒状、塊状、棒状又は粉末
        ロ  その他の物理化学的性質
            (表)

    (4)  主な用途
          乾電池、染料・農薬の合成用、塩化亜鉛法活性炭の賦活剤、メッキ、アクリル系合成繊維、フ
        ァイバー(板)紙、布製品の難燃化、軽金属脱酸、はんだ付け前脱酸処理、塩化ビニル触媒、水
        処理薬品、金属石けん、医用薬品(脱臭剤、アストリンゼン、脱水剤等)
    (5)  有害作用
          刺激性、腐食性
    (6)  症状・障害
        イ  皮膚障害:皮膚刺激、潰瘍化、毛嚢炎のほか、一部にアトピー性皮膚炎を起こす。
        ロ  前眼部障害:流涙、角膜障害と瘢痕化、白内障等がある。
        ハ  気道・肺障害:咳、呼吸困難、気管支炎、肺炎、肺水腫、成人呼吸窮迫症候群等のほか一部
          に気管支喘息の誘発がある。
    (7)  許容濃度等
          ACGIH TLV−TWA  1mg/m3
(塩化亜鉛ヒュームとして)
          日本産業衛生学会  なし
  6  塩化白金酸及びその化合物(Chloroplatinic acid and compounds)
    (1)  CAS No.  下表参照(関連物質を含む。)
    (2)  化学式  下表参照(関連物質を含む。)
            (表)

    (3)  物理化学的性質
          性状  固形結晶、粉体
    (4)  主な用途
          白金精錬、貴金属メッキ、白金触媒製造、白金酸素センサー製造
    (5)  有害作用
          感作性
    (6)  症状・障害
        イ  皮膚障害:かゆみ、じん麻疹、接触性皮膚炎を生じる。
        ロ  前眼部障害:眼の刺激、流涙、結膜充血を生じる。
        ハ  気道障害:くしゃみ、鼻汁、咳、胸部圧迫感、喘息を生じる。
    (7)  許容濃度等
          ACGIH TLV−TWA  0.002mg/m3
(水溶性塩類Ptとして)
          日本産業衛生学会  なし
  7  クロルヘキシジン(Chlorhexidine)
    (1)  CAS No.  55−56−1
    (2)  別名  ヒビテン
          化学式

(図)

    (3)  物理化学的性質
        イ  性状
            白色無臭の結晶性の粉末
        ロ  溶解性
            水に微溶。エタノール、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールに可
            溶。
        ハ  その他の物理化学的性質
            (表)

    (4)  主な用途
          医療用消毒剤
    (5)  有害作用
          刺激性、感作性
    (6)  症状・障害
        イ  皮膚障害:皮膚に対して刺激性があるが、その程度は軽い。数%の水溶液を消毒剤として反
          復使用していると、人によっては感作性の皮膚炎(発赤、丘疹、小水疱)、じん麻疹等の皮膚
          障害が現れる。
        ロ  気道障害:呼吸困難、気管支喘息を生じる。
        ハ  アナフィラキシー反応:急激な血圧低下、循環不全等のアナフィラキシーショックを生じる。
    (7)  許容濃度等
          ACGIH TLV−TWA  なし
          日本産業衛生学会  なし
  8  コバルト及びその化合物(Cobalt,element and compounds)
    (1)  CAS No.  下表参照(関連物質を含む。)
    (2)  化学式  下表参照(関連物質を含む。)
         (表)

    (3)  物理化学的性質
          性状
          単体  銀白色の金属
          化合物  種々の形状と色を有す。
    (4)  主な用途
          磁性材料、特殊鋼、超硬工具、触媒
    (5)  有害作用
          刺激性、感作性、その他心筋障害等の中毒作用
    (6)  症状・障害
        イ  皮膚障害:反復接触により感作性の皮膚炎を生じる。
        ロ  気道・肺障害:気管支喘息、間質性肺炎、肺線維症、肺胞炎等を生じる。
        ハ  その他:心筋症を起こすことがある。
    (7)  許容濃度等
          ACGIH TLV−TWA  0.02mg/m3(Coとして)
          日本産業衛生学会  0.05mg/m3(Coとして)
          LARC2B  (人に対して発がん性があるかもしれない)
  9  ジアゾメタン(Diazomethane)
    (1)  CAS No.334−88−3
    (2)  別名  アジメチレン(Azimethylene)
          ジアジリン(Diazirine)
          化学式
          CH2=N=N
    (3)  物理化学的性質
        イ  性状
            黄色の気体
        ロ  溶解性
            エーテル、ベンゼン、ジオキサン、アルコールに可溶。
        ハ  その他の物理化学的性質
            (表)

    (4)  主な用途
          化学合成におけるメチル化剤
          (事業場内で製造し、自家消費するのが通例。)
    (5)  有害作用
          刺激性、感作性
    (6)  症状・障害
        イ  気道・肺障害:咽頭、気管支、肺の刺激症状を呈し、胸痛、咳、肺水腫、肺炎、呼吸困難、
          気管支喘息を生じる。
        ロ  その他:眼や皮膚への刺激がみられることがあり、高濃度ばく露では頭痛、筋肉痛、倦怠感
          がみられることがある。
    (7)  許容濃度等
          ACGIH TLV−TWA  0.2ppm(0.34mg/m3)
          日本産業衛生学会  なし
  10  2−シアノアクリル酸メチル(Methyl2−cyanoacrylate)
    (1)  CAS No.137−05−3
    (2)  別名  メチル−2−シアノアクレート
              (Methyl2−cyanoacrylate)
              メクリレート(Mecrylate)
        化学式
                CH2=C(CN)COOCH3
    (3)  物理化学的性質
        イ  性状
            無色の液体
        ロ  溶解性
            メチルエチルケトン、トルエン、ジメチルホルムアミド、アセトンに可溶。
        ハ  その他の物理化学的性質
            (表)

    (4)  主な用途
          接着剤の原料
    (5)  有害作用
          刺激性、感作性
    (6)  症状・障害
        イ  皮膚障害:反復接触により感作性の皮膚炎を生じる。
        ロ  気道障害:反復ばく露により感作性が亢進し、気管支喘息、鼻炎を生じる。
        ハ  粘膜刺激:眼、鼻への刺激が強く、流涙、咳、鼻漏を生じる。
    (7)  許容濃度等
          ACGIH TLV−TWA  2ppm(9.1mg/m3)
          日本産業衛生学会  なし
  11  4,4’−ジアミノジフェニルメタン(4,4’−Diaminodiphenylmethane)
    (1)  CAS No.101−77−9
    (2)  別名  メチレンジアニリン(Methylenedianiline)
          化学式

(図)

    (3)  物理化学的性質
        イ  性状
            真珠色結晶
        ロ  その他の物理化学的性質
            (表)

    (4)  主な用途
          エポキシ樹脂の硬化剤、合成ゴムの酸化防止剤
    (5)  有害作用
          刺激性、感作性、その他中毒作用
    (6)  症状・障害
        イ  皮膚障害:反復接触により感作性の皮膚炎、皮膚過敏症、多型紅斑等を生じる。
        ロ  肝障害:中毒性肝障害、胆汁うっ滞を生じる。
        ハ  その他:心筋症を起こすことがある。
    (7)  許容濃度等
          ACGIH TLV−TWA  0.1ppm(0.81mg/m3)(skin)
          A2(人に対する発がん性が疑われる物質)
        ((skin)とは、経皮吸収があり、総ばく露量を有為に増大させる危険を有することをいう。)
        日本産業衛生学会  なし
        LARC2B(人に対して発がん性があるかもしれない)
  12  ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート
      (Dicyclohexylmethane−4,4’−diisocyanate)
    (1)  CASNo.5124−30−1
    (2)  別名  HMDI、SMDI
              メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)
            (Methylene bis(4−cyclo−hexylisocyanate))
          化学式

(図)

    (3)  物理化学的性質
        イ  性状
            無色の液体
        ロ  その他の物理化学的性質
            (表)

    (4)  主な用途
          ウレタン用原料、ウレタンコーティング
    (5)  有害作用
          感作性
    (6)  症状・障害
        イ  皮膚障害:反復接触により感作性の皮膚炎を生じる。
    (7)  許容濃度等
          ACGIH TLV−TWA  0.005ppm(0.054mg/m3)
          日本産業衛生学会  なし
  13  ジメチルアセトアミド(N,N−Dimethylacetamide)
    (1)  CAS No.127−19−5
    (2)  別名  酢酸ジメチルアミド(Acetic acid dimethylamide)、DMAC
          化学式  CH3CON(CH3)2
    (3)  物理化学的性質
        イ  性状
            無色の液体
        ロ  溶解性
            水、有機溶剤と混合。
        ハ  その他の物理化学的性質
            (表)

    (4)  主な用途
          反応溶媒(脱離反応)、精製溶剤、樹脂溶剤、塗料はく離剤、医薬品関係(難溶性化合物の溶
        剤)
    (5)  有害作用
          肝障害、その他中毒作用
    (6)  症状・障害
        イ  肝障害:反復ばく露により中毒性肝障害を生じる。
        ロ  消化器障害:食道炎、胃炎等を起こすことがある。
        ハ  その他:急性症状として、初期に食欲不振、吐き気、倦怠感等の自覚症状を生じることもあ
          る。
    (7)  許容濃度等
          ACGIH TLV−TWA  10ppm(36mg/m3)(skin)
          日本産業衛生学会  10ppm(36mg/m3)(skin)
          ((skin)とは、経皮吸収があり、総ばく露量を有為に増大させる危険を有することをいう。)
  14  1,5−ナフチレンジイソシアネート
        (1,5−Naphthylenediisocyanate)
    (1)  CAS No.3173−72−6
    (2)  別名  NDI
          化学式

(図)

    (3)  物理化学的性質
        イ  性状
            淡黄白色の結晶
        ハ  その他の物理化学的性質
            (表)

    (4)  主な用途
          塗料、接着剤、ウレタン用原料
    (5)  有害作用
          刺激性、感作性
    (6)  症状・障害
        イ  前眼部障害:眼粘膜の刺激症状を生じる。
        ロ  気道障害:気管支喘息のほか、咳、咽頭炎、気管支炎等の刺激症状を生じる。
    (7)  許容濃度等
          ACGIH TLV−TWA  なし
          日本産業衛生学会  なし
          DFG(MAK)  0.01ppm(0.09mg/m3)
  15  パラ−tert−ブチルフェノール(p−t−Butylphenol)
    (1)  CAS No.98−54−4
    (2)  別名  PTBP
          化学式

(図)

    (3)  物理化学的性質
        イ  性状
            白色の薄片状結晶
        ロ  溶解性
            水に難溶。エタノール、ジエチルエーテルに可溶。
        ハ  その他の物理化学的性質
            (表)

    (4)  主な用途
          油溶性フェニル樹脂(接着剤、インキ、ワニス等)、各種合成樹脂変性(改質剤)、香料原料、
        安定剤原料(塩化ビニル)、界面活性剤ほか
    (5)  有害作用
          刺激性、感作性、メラニン形成阻害
    (6)  症状・障害
          皮膚障害:発汗した皮膚に付着するとかゆみ、刺激を生じる。
          長期のばく露(皮膚付着又は経皮・経気道吸収)により、特に発汗の多い部位に皮膚白斑症を
        生じる。
    (7)  許容濃度等
          ACGIH TLV−TWA  なし
          日本産業衛生学会  なし
          DFG(MAK)  0.08ppm(0.5mg/m3)
  16  ビスフェノールA型及びF型エポキシ樹脂
      (Diglycidylether of BPA, Diglycidylether of BPF)
    (1)  CAS No.ビスフェノールA型エポキシ樹脂
        25068−38−6
        ビスフェノールF型エポキシ樹脂
        58421−55−9
    (2)  化学式

(図)

    (3)  物理化学的性質
          性状  ビスフェノールA型エポキシ樹脂  淡黄色の粘ちょうな液体又は固体
          ビスフェノールF型エポキシ樹脂  ビスフェノールA型よりも低粘度の液体又は固体
    (4)  主な用途
          電気絶縁材料、塗料、土木建築用ライニング・コーティング材、接着剤
    (5)  有害作用
          刺激性、感作性
    (6)  症状・障害
          皮膚障害:付着部位に化学火傷、反復接触により感作性の皮膚炎を生じる。
    (7)  許容濃度等
          ACGIH TLV−TWA  なし
          日本産業衛生学会  なし
  17  2−ヒドロキシエチルメタクリレート(2−Hydroxyethyl methacrylate)
    (1)  CAS No.868−77−9
    (2)  別名  2−HEMA、
          メタクリル酸2−ヒドロキシエチル
        (2−Hydroxyethyl methacrylate)
        化学式  CH2=C(CH3)COO(CH2)2OH
    (3)  物理化学的性質
        イ  性状
            無色透明な液体
        ロ  溶解性
            水に可溶。
        ハ  その他の物理化学的性質
            (表)

    (4)  主な用途
          熱硬化性塗料、接着剤、不織布バインダー、紙加工材、コポリマーの改質剤
    (5)  有害作用
          刺激性、感作性
    (6)  症状・障害
        イ  皮膚障害:反復接触により、主に手、腕等の接触部位に感作性の皮膚炎を生じる。
        ロ  その他:疲労、頭痛、吐き気、嘔吐等が起こることもある。
    (7)  許容濃度等
          ACGIH TLV−TWA  なし
          日本産業衛生学会  なし
  18  フェニルフェノール(Phenylphenol)
    (1)  CAS No.  オルト体(o−フェニルフェノール(o−PP))90−43−7、
        メタ体(m−フェニルフェノール(m−PP))580−51−8、
        パラ体(p−フェニルフェノール(p−PP))92−69−3、
    (2)  別名  ヒドロキシビフェニル(Hydroxybiphenyl)
          化学式

(図)

    (3)  物理化学的性質
        イ  性状
            o−PP  白色又は淡黄色の結晶
            p−PP  白色の結晶
        ロ  溶解性
            o−PP  水に難溶。アセトン、エタノール、イソプロピルアルコール、メタノール、エチレ
          ングリコール、プロピレングリコールに易溶。
        ハ  その他の物理化学的性質
            o−PP
            (表)

    (4)  主な用途
          o−PP  染色キャリアー、合成樹脂塗料、殺菌剤、防腐剤、各種合成原料
          m−PP、p−PP  染色キャリアー、合成樹脂原料、酸化防止剤、各種合成原料
    (5)  有害作用
          刺激性、感作性、メラニン形成阻害
    (6)  症状・障害
          皮膚障害:反復接触により感作性の皮膚炎、じん麻疹、皮膚白斑症を生じる。
    (7)  許容濃度等
          ACGIH TLV−TWA  なし
          日本産業衛生学会  なし
  19  ヘキサメチレンジイソシアネート
      (Hexamethylene diisocyanate)
    (1)  CASNo.822−06−0
    (2)  別名  HDI、1,6−ジイソシアネートヘキサン
        (1,6−Diisocyanate hexane)
        化学式  OCN(CH2)6NCO
    (3)  物理化学的性質
        イ  性状
            無色透明の液体
        ロ  溶解性
            水には難溶。有機溶剤には可溶。
        ハ  その他の物理化学的性質
            (表)

    (4)  主な用途
          塗料、接着剤、コーティング加工用樹脂の原料
    (5)  有害作用
          刺激性、感作性
    (6)  症状・障害
        イ  皮膚障害:反復接触により感作性の皮膚炎を生じる。
        ロ  前眼部障害:眼粘膜の刺激が生じる。
        ハ  気道・肺障害:刺激による気道炎、気管支炎等のほか、気管支喘息、過敏性肺臓炎が生じる。
    (7)  許容濃度等
          ACGIH TLV−TWA  0.005ppm(0.034mg/m3)
          日本産業衛生学会  0.005ppm(0.034mg/m3)
  20  無水トリメリット酸(Trimellitic anhydride)
    (1)  CAS No.552−30−7
    (2)  別名  TMA
                1,2,4−ベンゼントリカルボン酸無水物
              (1,2,4−benzenetricarboxylic acid anhydride)
          化学式

(図)

    (3)  物理化学的性質
        イ  性状
            白色の粉末、固体
        ロ  溶解性
            四塩化炭素、リグロイン、キシレンには微溶。ジメチルホルムアミド、アセトン、酢酸エチ
          ルには易溶。
        ハ  その他の物理化学的性質
            (表)

    (4)  主な用途
          水溶性塗料、エステル系耐熱性可逆剤、ポリアミドイミド原料、エポキシ樹脂硬化剤、接着剤、
        安定剤、繊維処理剤、界面活性剤、染料、顔料
    (5)  有害作用
          刺激性、感作性
    (6)  症状・障害
        イ  気道・肺障害:くしゃみ、鼻水、鼻出血、咳、喘息様呼吸困難、喀血等があり、鼻炎、喘息、
          肺水腫を生じる。刺激作用による症状はばく露の直後に、感作による症状はばく露開始から数
          週間〜年の潜伏期間を経て現れる。
        ロ  溶血性貧血:高濃度ばく露により、感作作用による障害として溶血性貧血を生じる。
        ハ  その他:発熱、倦怠感、筋・関節痛等のインフルエンザ様の症状を呈するTMA−flu(感冒)
          を生じることがある。
    (7)  許容濃度等
          ACGIH TLV−CEILING  0.04mg/m3
          日本産業衛生学会  なし
  21  メタクリル酸メチル(Methyl methacrylate)
    (1)  CAS No.80−62−6
    (2)  別名  MMA、メチルメタクリレート(Methyl methacrylate)
          化学式  CH2=C(CH3)COOCH3
    (3)  物理化学的性質
        イ  性状
            無色透明な液体
        ロ  溶解性
            水に微溶。エタノール、ジエチルエーテル、アセトンに可溶。
        ハ  その他の物理化学的性質
            (表)

    (4)  主な用途
          建築材料、成形用パレット、照明器具、広告看板、日用品、塗料、接着剤
    (5)  有害作用
          刺激性、感作性、その他中毒作用
    (6)  症状・障害
        イ  皮膚障害:反復接触により、主に手、腕等の接触部位に感作性接触皮膚炎を生じる。
        ロ  気道障害:反復ばく露により、呼吸器系の感作性が亢進し、ばく露後に気管支喘息を生じる。
        ハ  末梢神経障害:慢性障害として末梢神経障害を生じる。
    (7)  許容濃度等
          ACGIH TLV−TWA  100ppm(410mg/m3)
          日本産業衛生学会  なし
  22  4−メトキシフェノール(4−Methoxyphenol)
    (1)  CAS No.150−76−5
    (2)  別名  p−メトキシフェノール(p−Methoxyphenol)
          化学式

(図)

    (3)  物理化学的性質
        イ  性状
            白色薄片状結晶性の固体
        ロ  その他の物理化学的性質
            (表)

    (4)  主な用途
          中間体、エチルセルロース等の安定剤
    (5)  有害作用
          メラニン形成阻害
    (6)  症状・障害
          皮膚障害:皮膚白斑症を生じる。
    (7)  許容濃度等
          ACGIH TLV−TWA  5mg/m3
          日本産業衛生学会  なし