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代替フロンによる健康障害予防のための当面の対策の推進について

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                                                                          基安発第15号の1
                                                                          平成10年6月1日

  オゾン層破壊防止のため、平成4年(1992年)にモントリオール議定書(以下「議定書」という。)が
改定され、特定フロン(クロロフルオロカーボン−11(CFC−11)等5物質)が平成8年(1996年)には全
廃された。また、これに伴い、特定フロンの代替となるフロン(以下「代替フロン」という。)の一種と
して、1,1−ジクロロ−2,2,2−トリフルオロエタン(以下「HCFC−123」という。)の使用が進んでいる
が、この物質についても議定書により平成22年(2020年)を期限に全廃することにされており、通商産業
省及び環境庁において「特定物質の規制等によるオゾン層保護に関する法律(昭和63年法律第53号)」
(通称「オゾン層保護法」)により製造、排出規制等が行われているところである。
  HCFC−123の有害性については、従来眼に対する刺激作用等が知られるに留まっていたが、昨年8月、
英国医学誌「THE LANCET」に掲載された論文において、肝障害の発生事例が報告された。
  この報告の後、同年10月、神奈川労働基準局管内の大手電気機械器具メーカーの研究所において、光通
信システムの部品開発に従事する労働者に同種健康障害が、発生した。当該災害の概要は別添1<略>の
とおりであるが、神奈川局及び本省が労働省産業医学総合研究所とともに、原因究明に当たった結果、
HCFC−123が原因とみられるところとなった。
  このたびの災害は、代替フロンに起因し、かつ、先端技術製品の開発を進める研究所において発生した
という、行政上注目すべきものであることにかんがみ、今般、労働者の健康障害を予防するため、当面の
対策を下記のとおり定めたところである。
  なお、HCFC−123については、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第58条(事業者の行うべき有害
性の調査等)の規定に基づき労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第576条及び第593条等の適用
があるものである。
  ついては、HCFC−123を製造し、又は取り扱う事業場の把握に努めるとともに、関係事業場に対する指導
の徹底を期されたい。
  併せて、関係事業者団体に対しては別添2のとおり要請したところであるので了知されたい。

記
1  HCFC−123を製造し、又は取り扱う作業場に係る作業環境管理
  (1) HCFC−123を製造し、又は取り扱う設備に係る措置
      事業者は、当該作業に従事する労働者が、HCFC−123の蒸気にできるだけばく露されないように、
    次により発散源対策を講ずること。
    イ  HCFC−123を製造し、又は取り扱う設備については、HCFC−123の蒸気の発散源を密閉する設備を
      設けるか又は遠隔操作により作業を行うこと。
    ロ  上記イによることができない場合には、HCFC−123の蒸気発散源に局所排気装置又はプッシュプ
      ル型換気装置を設け、作業中はこれを有効に稼働させること。
    ハ  作業の性質等から、上記イ及びロのいずれによることも困難な場合には、全体換気装置を設置す
      ること。
  (2) HCFC−123に係る換気装置の性能要件
      上記1の(1)のロ及びハの換気装置は、次の性能要件を満たすものとする。
    イ  局所排気装置の制御風速については、有機溶剤中毒予防規則(昭和47年労働省令第36号)(以下
      「有機則」という。)第16条の規定に準ずること。
    ロ  プッシュプル型換気装置の構造及び性能については、平成9年労働省告示第21号(有機溶剤中毒
      予防規則第16条の2の規定に基づき労働大臣が定める構造及び性能を定める件)の規定によること。
    ハ  全体換気装置の換気量については、有機則第17条第1項に規定する、消費する有機溶剤区分が第
      1種有機溶剤に係る全体換気装置の換気量に準ずること。
2  HCFC−123の製造又は取扱いに係る作業管理
    事業者は、次により必要な作業管理を行うこと。
  (1) 1の(1)のハにより全体換気構造を設置した作業に労働者を従事させるときは、当該労働者に空気
    呼吸器又は防毒マスク等の有効な呼吸用保護具を使用させること。
  (2) 健康障害防止にかなった作業標準を作成し、労働者に作業標準を遵守させること。
  (3) 労働者には直接手で取り扱う作業をさせないように、不浸透性の保護衣等を使用させること。
      特に、混合や充填の作業は、できるだけ自動化し、これが困難なときは、上記1の(1)のロ又はハ
    によること。
  (4) 労働者が使用する保護具は、労働者の数以上備付け、定期的に保護具の点検を行うこと。
  (5) 職長等作業の責任者に、作業標準が遵守されているか作業現場の巡視等を行わせること。
3  労働衛生教育の実施
    事業者は、労働者に対しHCFC−123の製造又は取扱い作業に就かせるときは、次のことについて教育
    すること。
  (1) HCFC−123の有害性等
  (2) 呼吸用保護具及び不浸透性の保護衣等の使用方法等
  (3) 作業標準に基づく作業手順、作業方法
  (4) その他必要な事項
4  有害性の事前調査
    事業者は、使用しようとする化学物質について労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第58条の規定
  に基づき、あらかじめ有害性等を把握すること。
    その際、事業者は「化学物質等の危険有害性等の表示に関する指針」(平成4年労働省告示第60号)
  に基づき、HCFC−123を譲渡し、又は提供する者が、HCFC−123の有害性等についてその譲渡又は提供先
  に提供する化学物質等安全データシート(MSDS)を入手し、活用すること。
5  その他の措置
    事業者は、工事、研究所等において、新たにHCFC−123を使用するときは、衛生委員会等における事
  前の調査・審議、その他必要な労働衛生管理を実施すること。

別添1

電気機械器具製造業の研究所で発生した肝障害(概要)<略>

(参考)

HCFC−123の有害性等情報 

1  化学名
    1,1−ジクロロ−2,2,2−トリフルオロエタン
2  化学式
  CHCl2CF3
 

  構造

    注)HCFCとは「ハイドロクロロフルオロカーボン」の略である。
3  化学的性質
    外観は無色透明
      沸点:27.7℃
      融点:−107℃
      蒸気圧:0.0922 MPa(25℃)
      蒸気密度比:5.3(空気=1)
4  危険有害性
      危険性
      不燃性の液体
      有害性
  (1) 高濃度ガスを吸入すると全身麻酔類似症状を呈する。
  (2) ばく露濃度が高濃度となると、吐き気、頭痛、陶酔感(思考力減退)、意識喪失、不整脈、心停止
    等が起こる。
  (3) 油脂を溶解するため皮膚を脱脂する。
  (4) 肝障害を起こす旨の報告 1) がある。
5  主な用途等
    冷凍機用冷媒及びエアコン用冷媒に使用されている。
    冷凍機等を解体する業者においては、その取扱いに注意すること。

参考
1)  P. Hoet, Mary Louis M. Graff, M. Bourdiet al.
  Epidemic of liver disease caused by hydrochlorofluorocarbons used as ozone−sparing substitutes
  of chlorofluorocarbons. Lancet 1997, 350 (9077) : 556−559

別添2

基安発第15の2号
平成10年6月1日

社団法人日本化学工業協会会長
社団法人日本フルオロカーボン協会会長  殿
社団法人日本化学工業品輸入協会会長

労働省労働基準局安全衛生部長

代替フロンによる健康障害予防のための当面の対策の推進について 

  オゾン層破壊防止のため、平成4年(1992年)にモントリオール議定書(以下「議定書」という。)が
改定され、特定フロン(クロロフルオロカーボン−11(CFC−11)等5物質)が平成8年(1996年)には全
廃された。また、これに伴い、特定フロンの代替となるフロン(以下「代替フロン」という。)の一種と
して、1,1−ジクロロ−2,2,2−トリフルオロエタン(以下「HCFC−123」という。)の使用が進んでいる
が、この物質についても議定書により平成22年(2020年)を期限に全廃することにされており、通商産業
省及び環境庁において「特定物質の規制等によるオゾン層保護に関する法律(昭和63年法律第53号)」
(通称「オゾン層保護法」)により製造、排出規制等が行われているところです。
  HCFC−123の有害性については、従来眼に対する刺激作用等が知られるに留まっていたが、昨年8月、
英国医学誌「THE LANCET」に掲載された論文において、肝障害の発生事例が報告されました。
  この報告の後、同年10月、神奈川労働基準局管内の大手電気機械器具メーカーの研究所において、光通
信システムの部品開発に従事する労働者に同種健康障害が、発生した。当該災害の概要は別添1のとおり
であるが、神奈川局及び本省が労働省産業医学総合研究所とともに、原因究明に当たった結果、HCFC−123
が原因とみられるところとなりました。
  このたびの災害は、代替フロンに起因し、かつ、先端技術製品の開発を進める研究所において発生した
という、行政上注目すべきものであることにかんがみ、今般、労働者の健康障害を予防するため、当面の
対策を下記のとおり定めたところです。
  なお、HCFC−123については、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第58条(事業者の行うべき有害
性の調査等)の規定に基づき労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第576条及び第593条等の適用
があるものであります。
  つきましては、貴協会会員企業に対する周知とともに、指導にご配慮頂けますようお願い致します。