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エレベーター構造規格第43条に基づく適用除外の申請について

改正履歴
基収第882号の2
平成11年5月20日
都道府県労働基準局長 殿
労働省労働基準局長

エレベーター構造規格第43条に基づく適用除外の申請について
 標記について、株式会社東芝代表取締役西室泰三並びに株式会社東芝府中工場工場長古賀孝也から別紙甲のとおり照会があり、別紙乙のとおり回答したので了知されたい。
別紙甲
平成10年11月30日
労働省労働基準局長
伊藤庄平 殿
株式会社東芝 代表取締役 西室泰三
株式会社東芝府中工場 工場長 古賀孝也
適用除外許可申請
 今般、弊社において機械室を設けない、いわゆるマシンルームレスエレベーターを開発しました。本エレベーターはエレベーター構造規格第16条第1項第4号の頂部すき間と、同規格第21条第1項第5号のかご天井等の救出口の2点については適合しておりません。しかしながら、安全上十分な対策を講じておりますのでエレベーター構造規格第43条の適用除外項目として、ご認可下さるようお願い致します。
以上
1 頂部すき問(エレベーター椿造規格第16条第1項第4号)
(1) エレベーターの構造概要(図1図2参照)
 本エレベーターは機械室を設けない特殊な構造とするため、従来機械室に設置されていた巻上機を昇降路頂部に、制御盤を最上階乗場等に設けることで据付、調整、保守時の安全と作業性の向上を考慮して開発した製品です。
(2) 頂部すき間について
機械室を設けず、さらに建物におけるエレベーターの設置位置に制約を与えないために、頂部すき間は油圧エレベーターと同程度にして、通常の建物階高の範囲に納める必要があります。このため頂部すき間は、通常運転時にはかご内乗客とかご上機器の保護を、また保守点検作業時には作業員の安全を考慮した上で、最小寸法とする必要があります。
本エレベーターでは頂部すき間寸法を表1の通り設定しています。
これらの条件を満足するために、本エレベーターではリミットスイッチを最上階および最下階に各3段(終端階強制停止リミットスイッチ、方向制限リミットスイッチ、ファイナルリミットスイッチ)設けております。
万が一、かごが最上階で正常に減速しない場合、まず1段目と2段目のリミットスイッチが動作し、頂部すき間を確保した状態でかごを停止させます。
何らかの原因で1段目と2段目が動作しない場合には3段目のファイナルリミットスイッチが動作します。この状態でかごを強制停止させると、つり合おもりが緩衝器に衝突することもあります。その時においても、かご上機器が昇降路頂部に当たらないだけの余裕寸法を確保しています。
(図3参照)
本エレベーターでは、かご側の余裕寸法を表2の通り設定しています。
一方建物の構造上従来のシステムではエレベーター専用の機械室を昇降路直上部等に設けるため、法令に準拠した所要寸法を確保できたが、本エレベーターでは機械室を設けないことと、建物内でのエレベーターの配置を自由にするためには、建物の階高に合わせた昇降路となり、法令に準拠した頂部すき間が確保できなくなります。
また、保守点検作業時には保守員の安全を図るため、かごの位置を最上階乗場位置よりも低い位
置にし、作業に必要な空間を確保する必要があります。
(3) 安全に対する基本的な考え方
従来の機械室で行う保守点検を昇降路内で行うため、作業場はかご上となります。そのため保守員の転落防止に対し有効な安全柵(かご上手すり)を設けています。このかご上手すりは通常時は折りたたんだ状態で、点検時に簡単にセットできる構造を採用しています。
また、通常運転時には3段のリミットスイッチを設けることで、安全が確保でき間題のない頂部すき間も、保守員がかご上で保守点検作業を行う時には問題となるため、点検に必要な寸法を確保するためにかご上と頂部間1.2m以上を強制的に確保するリミットスイッチ(保守点検作業時のみ機能する頂部安全距離確保スイッチ)を設けています。
同様に昇降路頂部での巻上機、調速機等の点検時には不用意にかごが動いては危険なため、かご上梁に設けたかご固定装置とガイドレールに固定したかご固定板を繋いで、かごを固定します。この装置を作動させるとかごの運転回路をしゃ断するかご固定確認スイッチが連動して動作し、保守員の安全を確保します。
(4) 頂部すき問に対する安全対策措置
[1] 通常運転時
通常運転とは、乗客を乗せて通常走行する運転状態をいう。また、本エレベーターの定格速度は45,60,90,105m/分の4種類がある。
頂部すき間は定格速度に応じ表1の通り設定する。
本エレベーターには、方向制限リミットスイッチ、ファイナルリミットスイッチに加え、終端階強制停止リミットスイッチおよび終端階強制減速リミットスイッチ(定格速度60m/分を超え105m/分以下の場合)を設ける。(図2図5参照)
なお、これらのスイツチは回路電圧に直流24V以上を使用し、接触信頼性を確保すると共に構造的にも接点レバーの可動範囲を大きくとり、電気接点を機械的に確実に動作する方式を採用し、弊社にて約20年間の実績があり、十分信頼性の高いものである。
また、本エレベーターに追加している終端階強制停止リミツトスイツチ、終端階強制減速リミットスイッチは制御盤での運転制御に不具合が生じた時、バックアップとして機能するスイッチである。
定格速度60m/分を超え105m/分以下の場合に設ける終端階強制減速リミットスイッチは、最下階および最上階の停止位置手前から定格速度別に表3の各寸法位置で動作し、万が一かごが正常に減速を開始していない場合強制的に減速を行い、正常な停止位置にかごを停止させる。
終端階強制停止リミツトスイツチは最下階および最上階の停止位置手前から定格速度別に表3の各寸法位置で動作し、万が一かごが昇降中に最下階もしくは最上階付近で正常に減速していない場合、電磁ブレーキを作動させることによりかごをただちに停止させる。
方向制限リミットスイッチは最下階および最上階から約30mm過ぎた位置で動作し、このスイッチが機能すると電磁ブレーキを作動させ、その方向へのかごの動きをただちに停止させる。
ファイナルリミットスイッチは方向制限リミットスイッチから約120mm先で動作し、方向制限リミットスイッチが機能しなかった場合でも、終端階を著しく行き過ぎないうちにこのファイナルリミットスイッチが機能し、電磁ブレーキを作動させることにより、かごをただちに停止させる。
スイッチに万が一不具合があった場合、つり合おもりがピットに設置された緩衝器に衝突することが予想されるが、かご上機器の走行余裕寸法を十分確保しており、昇降路天井壁には衝突することはない。(図3参照)
このように通常運転時には種々の状況に応じて安全装置を備えることで、十分に安全を確保しています。
[2] 保守点検作業時
かご上にて点検作業を行う場合、制御盤内の運転切換スイッチを『点検』側に入れ、運転方向切換スイッチを『上昇』または『下降』のいづれかに入れて、エレベーターを点検速度(16m/分)で動かし、制御盤内のエレベーター位置表示装置(階床とエレベーターの位置を表示する)を目視確認して、かご乗込み位置に停止させる。(図6参照)かご乗り込みは最下階を除き全階で可能。
乗場ドアをアンロックキーで開け、ドアストッパーでドアを固定する。
乗場から、かご上点検スイッチボックスに設けたかご上停止スイッチを『停止』にし、次に点検スイッチを『点検』側にした後、かご上手すり(折りたたみ式)を起こし、固定する。なお、点検スイッチを『点検』とすることで、それ以降かご上以外では運転操作ができない状態を保持します。
かご上に乗込み、乗場ドアを閉めた後、安全帯をかけ、かご上停止スイッチを『運転』に切替えてかごを点検速度で昇降させる。
昇降路頂部で点検作業を行う場合は点検速度でかごを上昇させ、頂部すき間1.5m以上を確保した位置でガイドレールに固定したかご固定板の位置でかごを停止させ、かご側のかご固定装置のロック棒を動かして、かご固定板の固定穴に差し込み、かごを機械的に固定する。この際、ロック棒が不用意に動かないようにするため、レバー固定板の溝にレバーを入れ、ロック棒を固定する。
かご固定装置の装着と同時に、かご固定確認スイツチが動作し、そのスイッチが作動中はかごの運転を停止する。
かご固定装置を解除して、点検運転で上昇し続けると、頂部すき間1.2mを確保した位置で上昇運転を停止させる頂部安全距離確保スイッチが動作し、かごの運転を停止させる。
点検作業修了後、前項ハのかご上手すりを固定した状態でかご上点検スイッチボックスの点検スイッチを『点検』運転から『通常』運転に切り換えても、手すり収納確認スイッチによりエレベーターは起動しない構造とする。
このように保守点検作業時には種々の状況に応じて安全装置を備えることで、十分に安全を確保しています。
2 天井救出口(エレベーター構造規格第21条第1項第5号)
(1) エレベーターの構造概要(図1図2参照)
本エレベーターは機械室を設けない特殊な構造とするため、従来機械室に設置されていた巻上機を昇降路頂部に、制御盤を最上階乗場等に設けることで据付、調整、保守時の安全と作業性の向上を考慮して開発した製品です。
(2) 天井救出口について
本エレベーターでは法令に準拠したかご天井救出口はありませんが、次の方法、順序で乗場出入口から乗客を安全に救出することができます。
なお、乗場ドアロック開放装置は全階に取り付けているため、全ての階から救出可能です。
また、最上階でかごが突き上げした状態と、最下階でかごが突き下げした状態をに示しますが、いづれの状態でも、かご床と乗場床の段差が200mm〜500mm程度と少ないため、乗場からドアを開き容易に救出が可能です。
例えば、かごが突き上げした状態においては定格速度45m/分では最小つり合おもり側ランパイ寸法(152mm)とつり合おもり側緩衝器ストローク(103mm)の合計値(255mm)を切り捨てた算定値(かご突き上げした状態によっては、この値より小さくなる)となり、また定格速度105m/分では標準のつり合おもり側ランバイ寸法(250hm)とつり合おもり側油圧緩衝器ストローク(232mm)の合計値(482mm)を切り上げて算定した値となるため、かご床と乗場床の段差が200mm〜500mm程度となります。
各速度ごとのかご突ぎ上げ、突き下げ状態でのかご床と乗場床の段差を表4に示します。
[1] 制御装置が作動可能な場合
救出現場にて安全を確認する。
点検速度にてドア開閉可能な最寄階までかごを昇降させる。
かごの昇降は制御盤内ののぞき窓から巻上機またはロープによってかごの動きを確認し、制御盤内に設けたブザーまたは位置表示装置によりかごの位置を確認しながら行う。
停止した階のドアを開き、乗客を救出する。
[2] 制御装置が作動しない場合(救出手順は図7図8参照)
救出現場にて安全を確認する。
三方枠内にある制御盤内のブレーキ開放装置のレバー操作を断続的に行い、かごをドア開閉可能な最寄階まで徐々に走行(数m/分)、停止を繰り返しながら昇降させる。
なお、ブレーキ本体は万が一片方のブレーキが異常な場合でも、もう一方のブレーキが働く2重安全保持構造になっている。
また、ブレーキワイヤが万が一破断した場合には、ブレーキが作動する構造となっており、十分な信頼性がある。
本エレベーターにはギアレス巻上機を採用しているため、かごとつり合おもりのわずかなアンバランス荷重でもスムースに動くことから、救出が従来に比べ容易となる。ここで、かごとつり合おもりが釣り合っていて制御盤内に設置したブレーキ開放装置によりブレーキを開放してもかごが動かない場合は、かご上に重り(20〜40kg)をのせてかごとつり合おもりを不釣り合いの状態にし、かごを徐々に下降させる。重りはどの階からもかご上にのせることができ、保管場所は昇降路内またはお客様に提供していただいた場所とする。
かごの昇降は制御盤内ののぞき窓から巻上機またはロープによってかごの動きを確認し、制御盤内に設けたブザーまたは位置表示装置(LED)によりかごの位置を確認しながら行う。
停止させた階のドアを開き、乗客を救出する。
このように種々の状況に応じて、乗場出入口から乗客を安全に救出することができます。
(3) 安全に対する基本的な考え方
近年エレベーターの制御技術は著しく進歩しており、非常の場合においても、かご天井等に設けた救出口を実際に使用する例はほとんど無く、乗客の救出はエレベーター保守員等の専門家の手で最寄階までかごを移動し、通常の乗場出入口から救出する方法が一般的となっております。このような救出方法は、かご天井からの救出と比べ昇降路内に乗客が出ることなく、より安全な方法であると考えます。
(4) 非常時の救出に対する安全対策措置
[1] 制御盤内に、かごまたは巻上機の動きを確認できるのぞき窓を設ける。
[2] 制御盤内に、かごが最寄り階着床範囲に入ったことを知らせるブザーとかごの位置を確認できる表示装置を設ける。
[3] 制御盤内にブレーキ開放装置を設ける。
[4] ブレーキを開放してもかごがバランスして動かない時に用いる重りを用意しておく。
このように非常時の救出においても乗場出入口から乗客を安全に救出することができます。
<注釈>
ランバイ寸法とは
 エレベーターのかごが最下階に着床しているときの、かご下わくと緩衝器との間の垂直距離、またはかごが最上階に着床しているときの、つり合おもり底部と緩衝器との間の垂直距離をいう。 (表1)(表2)(表3)(表4)
別紙乙
基収第882号
平成11年5月20日
株式会社東芝
代表取締役 西室泰三 殿
労働省労働基準局長

エレベーター構造規格第43条に基づく適用除外の申請について
 平成10年11月30目付けで申請のあった標記については、申請のとおり認めるので通知する。


改正履歴
都道府県労働基準局長 殿
労働省労働基準局長

エレベーター構造規格第43条に基づく適用除外の申請について
 標記について、株式会社日立製作所水戸工場工場長滝澤正夫から別紙甲のとおり照会があり、別紙乙のとおり回答したので了知されたい。
平成11年3月30日
労働省労働基準局長 殿
(株)日立製作所水戸工場
工場長 滝澤正夷

エレベーター構造規格第43条に基づく適用除外の申請について
 標記について、次紙2項の特殊な構造のエレベーターの非常時の救出方法について申請いたします。 本申請に係るエレベーターの非常時の搬器内の人の救出方法に関する内容は次紙2項のとおりですが、3項の理由により、エレベーター構造規格第21条第1項第5号の規定に適合するものと同等の効力があるものとして、認めていただきたくお願い申し上げます。
1 事業場
設計:(株)日立製作所水戸工場(茨城県ひたちなか市市毛1070番地)
製造:同上
2 申請の理由
2.1  エレベーター構造規格第21条第1項第5号により、非常の場合において搬器内の人を安全に搬器外に救出することができる開閉部が設けられていること。
 従来、救出部から行っていた搬器内の人の救出をより安全に行うために、乗り場側からブレーキをコントロールして救出を行なうことにより、開口部を不要としたものです。(参照ください)
3  適用除外理由 本申請に係るエレべーターには、非常の場合において搬器内の人を安全に搬器外へ救出させるための開口部を特に設けておらずエレベーター構造規格第21条第1項第5号に定める機造になっておりませんが、最下階乗り場にブレーキコントロールスイッチボックスを捧続し、制御盤に内蔵された自動充電式のバッテリー電源で電気的にブレーキを開放することにより、搬器をアンバランス方向の最寄り階へ移動させると共に、移動させた階において特殊な鍵を用いて乗り場戸及び搬器の戸を開放し、安全に乗客の救出が行なえる権造としております。本内容については、建築基準法第38条の規定に基づ き申請を行ない認定を取得しております。(建設省東住指発第65号)
4 添付図書
4.1 申し込み主旨及びエレベーター仕様
4.2 全体構造概要図
4.3 全体構造説明
4.4 非常時の救出方法
4.1 申し込み主旨及びエレベーター仕様
申込主旨
 従来の一般的なロープ式エレベーターは建物上部に機械室を必要としており、中低層ビルにおいては日影規制・斜線制限等により、エレベーターの設置位置が限定される等建物の設計上大きな制約となることがありました。
 一方、建物上部に機械室を必要としない油圧エレベーターにおいては、その性質からここ数年納入台数数が増加すると共に技術的にも進展を続けてきました。しかし、従来の油圧エレベーターは全荷重を油圧ジャッキで押し上げる方法であったため、大きな駆動力が必要となり省エネルギーという杜会的要求を満足させるにはたくさんの技術的課題がありました。さらに、ここ数年の国際的趨勢を見てみますと、駆動装置をかごに備えた自走式のエレベーターや、つり合おもりにリニヤモーターを搭載したエレベーター等、前記の技術的課題を克服する新方式のエレベーターが開発されております。
 今回申請の『巻上機等の機械室品を昇降路内に設置する』ことを特徴とするロープ式エレベーターは前記課題を克服すると共に、巻上機を昇降路ピット部に制御盤を昇降路内側に設置することを可能にしたことにより、建屋空間の有効利用等顧客満足度の高い製品として開発しました。
 しかし、エレベーター構造規格第21条第1項第5号の非常時の救出方法について準拠しておらず、特殊な構造のエレベーターとして適用除外申請致します。本申請の主たるエレベーター仕様は下記の通りです。また、全体構造概要を次ぺ一ジに示します。エレベーター仕様
4.2 全体構造図
4.3 構造・機能
(1) 全体構造
 本申請のエレベーターの駆動方式はロープトラクション式としており、全体構造は前ぺ一ジに示す通りとなっています。
 また、昇降路底部にベ一スを敷設し、そのべ一ス上に巻上機及びガイドレールを設置します。このガイドレール上方は建屋楊造体に固定され、ガイドレール頂部にかご及びつり合おもり用の綱車
が吊り下げられ固定されます。この結果、ガイドレールでかご及びつり合おもりによる垂直荷重を負担する半自立型昇降路を形成することになります。
 本例ではかごの床下に2個の綱車を配置したせり上げ方式2:1ローピングを示しています。
(2) 昇降路
 昇降路は、建築構造体として建築工事で構築いただきますが、上記全体構造で説明しましたように、その内側にエレベーター工事によりガイドレールで半自立型の鉄塔を構成して、エレベーター側荷重の垂直荷重をピット床部で支持し、地震等の水平荷重を建築構造体で受ける構造とします。
 昇降路は別紙仕様書に記載した材料(建築基準法施行令第129条の6(エレベーターの昇降路の構造)に定められたもの)で囲んでいただき、各階乗り場には戸を設けます。
(3) 機械室
 機械室は別に設けず、巻上機を昇降路内のピット部へ設置します。また、エレベーター用の制御盤は昇降路内に収納するか、別に制御盤室(昇降路隣接型又は分離型)を設けて設置します。
 巻上機の保守・点検は、乗り場戸を非常解錠かぎで開けて昇降路内に入り作業を行います。また、制御盤の保守・点検は、巻上機同様昇降路ピットまたはかご上で行なうか、制御盤室で行ないます。
(4) 駆動装置
 巻上機はロープトラクション式を採用し、主索には直径10m以上のワイヤーロープを3本以上使用するものとします。また、綱車の直径は主索の直径の40倍以上(主索に接する部分の長さがその周の長さの1/4以下であるものの直径は36倍以上)とし、主索の端部は、1本ごとにバビット式又は楔式ソケットによるソケット止めとしています。また前記巻上機には、希土類永久磁石を使用した同期電動機によるギヤレス巻上機を採用しております。
(5) ガイドレール
 ガイドレールにはかご側及びつり合おもりの懸垂荷重が作用することを考慮して、負担する垂直荷重による座屈強度や地震力による応力度、撓み等支障を生ずることのないよう、レールブラケットを介して建屋に強固に取付けます。また、このガイドレールはJEASで定められている丁形の公称8キロレール以上を使用するものとします。
(6) かご
 かご内には、用途・定員・積載荷重の表示、かご位置表示器、停電灯および非常の場合かご内から外部へ連絡するための連絡装置(インターホン)を設置します。
(7) 安全装置
 次に掲げる安全装置を設けます。
(イ) かご及び昇降路のすべての出入口の戸が閉じていなければ、かごを昇降させることができない装置(かご戸及び乗り場戸スイッチ)
(ロ) 昇降路の出入口の戸は、かごがその戸の位置に停止していない場合においては、かぎを用いなければ外から開くことができない装置(乗り場戸ロックスイッチ)
(ハ) かご内及びかごの上で動力を切ることができる装置(停止スイッチ)
(ニ) かごの逮度が異常に増大した場含において、毎分の逮度が定格速度の1.3倍(かごの定格速度が45メートル以下のエレベーターにあっては63メートル)を超えないうちに動力を自動的に切る装置(過速スイッチ)
(ホ) 動力が切れたときに惰性による原動機の回転を自動的に制止、又はかご側とつり合おもり側の不平衡荷重を保持する装置(電磁ブレーキ)
(ヘ) かごの降下時に(二)項の作動速度を超えた場合において、毎分の速度が定格速度の1.4倍(かごの定格速度が45メートル以下のエレベーターにあっては68メートル)を超えないうちにかごの降下を自動的に制止する装置(非常止め装置)
(ト) かご又はつり合おもりが昇降路の底都に衝突しそうになった場合においてこれに衝突しないうちにかごの昇降を自動的に制御し、及び制止する装置(リミットスイッチ)
(チ) かご又はつり合いおもりが昇降路の底部に衝突した場合においても、かご内の人が安全であるように衝撃を緩和する装置。(緩衝器)
(リ) 停電等の非常の場合においてかご内からかご外に連絡することができる装置(インターホン)
(ヌ) 積載荷重を著しく超えた場合において警報を発し、かつ、出入口の戸の閉鎖を自動的に制止する装置(過負荷検出装置)
(ル) 停電の場合においても、床面で1ルックス以上の照度を確保することができる照明装置(停電灯)
(ヲ) 乗用エレベーターにあっては、かごが必ず昇降路のすべての出入口ごとに停止し、かつ、かごの停止に伴いかご及び昇降路の当該出入口の戸が自動的に開くこととすることができる装置。(各階停止装置)
(8) 本申請のエレベーター特有の安全装置エレベーターの特殊性を考慮し、次に掲げる安全装置を設けるものとします。
(ワ) かご上運転をする際に、頂部安全距離1.2メートル以上を確保し、それ以上かごの上昇を自動的に停止するための装置(頂部安全距離確保スイッチ)
(カ) エレベーターの設置環境により、雨水等が昇降路ピット内に入り込む恐れがある場合に、この雨水等を検出してエレベーターを上方階に移動すると共に、運転を停止する装置(冠水検出スイッチ)
(ヨ) 故障、停電等非常の場合の乗客救出用として、ブレーキを開放しかごとつり合おもりの重量の不均衡を利用して、かごを最寄り階へ移動させる装置(ブレーキ開放装置)
(タ) かご上で作業を行なう場合において、作業者の安全を確保するための装置(かご上安全手摺り)
(レ) つり合おもりが昇降路底部の緩衝器に到達しこの緩衝器が全圧した場合において、かご上作業者の安全を確保する装置(かご上安全手摺り)が、昇降路の頂部に衝突することを防止する装置(かご上安全手摺りスイッチ)
(ソ) ピット内機器の点検等をする場合において作業者の安全を確保するため、エレベーターが下降するのを制止する装置(ピットスイッチ)
(9) 運転操作方法
運転操作方法は、乗合全自動方式・群乗合全自動方式または群管理方式とします。乗り場およびかごの戸は電動式とします。また、各階の乗り場には、昇降方向別呼びボタン・運転方向灯・かご位置表示灯等必要に応じて設けるものとします。
4.4 非常時の救出方法
(1) 第129条の5第四号……かご天井には救出口を設けること
 故障、停電等非常の場合、かご内の人を救出するために天井救出口を設けること、という従来の規定に対し、本機では天井救出口を設けない揚合があります。これは、昇降路の全体高さを抑え、空間を有効に活用するという観点から、従来機械室または敦出口から行ならていた下記条件におけるかご内の人の救出を、乗場側から可能としました。
(1)-1 異常時の救出方法
 建屋側に設置したエレベーター専用のブレーカー電源を切り、最下階乗場のインジケータボックス内または専用のボックス内のコネクタに、ブレーキコントロールスイツチボックスを接続し、制御盤に内蔵されたバッテリー電源で電気的にブレーキを開放して、かごをアンバランス方向の最寄り階に移動し乗客を救出します。また、平衡負荷時においてはかご上にアンバランス用のおもりを載せるか、保守員が乗ることでアンバランス状態にします。また、最上階付近において平衡負荷状態で停止した場合には、ピットからつり合おもりをチェーンブロック等により引き下げ、かごを最寄り階へ移動して乗客を救出します。
(1)-2 停電時の救出方法
1) 付加仕様として、バッテリー電源を用いてかごを自動的に最寄り階(アンバランス方向)に  着床させ乗客を救出する停電時自動着床装置を準備しています。
2) 停電時自動着床装置木付きのときは、保守員により上記(3)一1異常時の救出方法によ  り乗客を救出します。
(1)-3 非常止め装置動作時の救出方法
イ) 機械系、電気系の故障内容にもよりますが、基本的には調速機スイッチを電気的にショ  ートさせ、低速運転にてかごを最寄り上方階へ移動させて乗客を救出します。
口) 上記イ)にてかごを移動することが出来ない場合は、チエーンブロック等によりかごを最   寄り階へ引き上げることにより救出を行います。また、かごが最上階付近ににあり、前記  方法が困難な場合はピットからつり合おもりをチェーンブロック等により引き下げることで  かごを最寄り階へ移動し乗客を救出します。
(1)-4 その他
a) ブレーキコントロールスイッチボックスの操作方法
[1] まず、インジケーターにてエレベーターの停止位置の確認を行います。停電時などのようにインジケーターに表示されない揚合においては、乗り場戸を開いてエレベーターの停止位置を確認します。
[2] 最下階の乗場のインジケータボックス内のコネクタに、プレーキコントロールスイッチボックスを接続し、電源スイッチを『入』にします。
[3] かごがドアゾーン内に停止していない場合は.ブレーキコントロールスイッチボックス内に内蔵されたブザーが鳴動します。
[4] 鳴動状態を確認したら、乗り場戸を開放することによって、エレベーターの動きを確認して、キースイッチを操作しながら同時に押しボタンスイッチを断続的に押します。
[5] 押しボタンスイッチを断続的に押すことによって、ブレーキが開放され、かごがアンバランス方向へ約15m/minの速度で、断続運転します。
[6] かごが移動し、最寄り階の停止位置付近(戸閑閉可能ゾーン内)へ到着するとブザーが停止します。
[7] ブザーが鳴り止んだら、キースイッチと押しボタンの操作を中止します。
[8] かごが停止した階の乗場の戸を開き、かご内の乗客を救出します。
b) ブレーキコントロールスイッチボックスでの救出運転に関する補足説明
※スイッチの故障について
 最悪時、スイッチの故障(固渋等)によりブレーキが連続開放状態となるという状態を防止するため、スイッチはキースイッチ式と押しボタン式の2段式を採用しています。
別紙乙
基収第272号
平成11年7月13日
株式会社日立製作所
水戸工場工場長 滝澤正夫 殿
労働省労働基準局長

エレベーター構造規格第43条に基づく適用除外の申請について
 平成11年3月30日付けで申請のあった標記については、申請のとおり認めるので通知する。