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N,N-ジメチルホルムアミドによる健康障害を防止するための指針、
アントラセンによる健康障害を防止するための指針の一部を改正する
指針等の閲覧及び周知について

改正履歴


                                       基発第0614001号
                                       平成17年6月14日


都道府県労働局長 殿


                                   厚生労働省労働基準局長


         N,N-ジメチルホルムアミドによる健康障害を防止するための指針、
        アントラセンによる健康障害を防止するための指針の一部を改正す
        る指針等の閲覧及び周知について


 N,N-ジメチルホルムアミドについては、人に対するがん原性は現在確定していないものの、労働者
がこれに長期間ばく露された場合に将来においてがん等の重篤な健康障害を生ずる可能性が否定できない
ことから、これを労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第28条第3項の規定に基づき厚生労働大臣が定め
る物質として、平成17年6月14日付けでその名称を告示するとともに、別添1のとおり「N,N-ジメチル
ホルムアミドによる健康障害を防止するための指針」を策定し、同日付け官報に公示したところである。
 また、労働安全衛生法第28条第3項に基づきこれまでに指針を公表しているアントラセン等の12物質に
ついても、「アントラセンによる健康障害を防止するための指針の一部を改正する指針」等を策定し、
別添2のとおり、同日付け官報に公示したところである。

 同指針等は、作業記録の保存期間の起算日に関し改正を行うものであり、改正後の「アントラセンによ
る健康障害を防止するための指針」等は別添3のとおりである。
 ついては、下記事項に留意の上、N,N-ジメチルホルムアミドによる健康障害を防止するための指針、
改正後のアントラセンによる健康障害を防止するための指針等を閲覧に供するとともに、あらゆる機会を
とらえて事業者及び関係事業者団体等にその周知を図り、各事業場において、これらの化学物質による
健康障害の防止対策等が適正に行われるよう指導されたい。
 なお、関係事業者団体に対しては、別添4により、これらの指針の普及を図るよう要請したので了知さ
れたい。


                       記


第1 N,N-ジメチルホルムアミドによる健康障害を防止するための指針関係

1 趣旨
  厚生労働省においては、N,N-ジメチルホルムアミドについてがん原性の疑いに着目した有害性の
 調査を進めてきたところであるが、今般、日本バイオアッセイ研究センターにおける哺乳動物を用いた
 長期毒性試験の結果から、N,N-ジメチルホルムアミドが哺乳動物の肝臓に悪性の腫瘍を発生させる
 ことが判明した。
  N,N-ジメチルホルムアミドの人に対するがん原性については現在確定していないが、労働者がこ
 れに長期間ばく露された場合、がん等の重度の健康障害を生ずる可能性を否定できないため、労働者の
 健康障害の防止に特別の配慮が求められている。
  このようなことから、N,N-ジメチルホルムアミドのがん原性に着目し、指針において労働者の健
 康障害を防止するために講ずべき措置を定めることとしたものである。
  なお、この指針は、N,N-ジメチルホルムアミド又はN,N-ジメチルホルムアミドをその重量の1
 パーセントを超えて含有するもの(以下「N,N-ジメチルホルムアミド等」という。)を製造し、又は
 取り扱う業務全般を対象とするものである。

2 ばく露を低減するための措置について
 (1)指針2の(1)関係
   有機溶剤中毒予防規則(昭和47年労働省令第36号。以下「有機則」という。)が適用される業務につい
  ては、設備の密閉化、局所排気装置の設置等有機則に定めるばく露低減措置を講ずることは当然である
  が、これに加えて、指針に定める措置を講ずることによってN,N-ジメチルホルムアミド等による労
  働者へのばく露を低減させる趣旨であること。これらの措置については、有機則において特段の規定を
  設けていないが、N,N-ジメチルホルムアミドのがん原性に着目した場合に労働者へのばく露を低減
  させるために有効とされる措置であること。
 (2)指針2の(1)のア関係
   労働者のN,N-ジメチルホルムアミド等へのばく露の低減を図るため、事業場におけるN,N-ジメ
  チルホルムアミド等の製造量、取扱量、作業の頻度、作業時間、作業の態様等を総合的に勘案し、指針
  2の(1)のアに掲げる項目の中から当該事業場において適切な措置を講ずることとしたものであり、指針
  2の(1)のアに掲げるすべての項目について措置を講ずることを求める趣旨ではないこと。
   なお、指針2の(1)のアの「その他必要な措置」には、より有害性の少ない代替物質への変更、隔離室
  での遠隔操作等が含まれ、指針2の(1)のアの(ア)の「使用条件等の変更」には、使用温度の適正化等が
  あること。
 (3)指針2の(1)のイ関係
   N,N-ジメチルホルムアミド等を含有する排気、廃液等の処理については、事業場の汚染の防止に
  ついてはもちろん、付近一帯の汚染の防止に対しても配慮すること。
 (4)指針2の(1)のエ関係
   設備、装置等の操作及び点検、異常な事態が発生した場合の措置、保護具の使用等についての作業基
  準を作成し、これを労働者に遵守させることによって、より効果的にばく露の低減化を図ることを目的
  としたものであること。
 (5)指針2の(2)関係
   有機則適用業務以外の業務については、事業場におけるN,N-ジメチルホルムアミド等の製造量、
  取扱量、作業の頻度、作業時間、作業の態様等を総合的に勘案し、当該事業場において指針2の(2)のア
  に掲げる項目の中から適切な措置を講ずることとしているものであり、指針2の(2)のアに掲げるすべて
  の項目について措置を講ずることを求める趣旨ではないこと。例えば、1日のうちN,N-ジメチルホム
  アミド等にばく露する時間が極めて短時間である等の理由によって、設備の密閉化あるいは局所排気装
  置の設置が必ずしも現実的でない場合においては、作業方法の改善及び保護具の使用を効果的に行い、
  N,N-ジメチルホルムアミド等へのばく露の低減を図る等の措置を講ずることで足りるものであること。

3 作業環境測定について
  有機則においては作業環境測定の結果及びその評価の記録を3年間保存しなければならないこととさ
 れているが、指針においてはその業務の有機則適用業務、有機則適用業務以外の業務のいかんを問わず、
 作業環境測定の結果及びその評価の結果を記録し、これを30年間保存するよう努めることとしたこと。
 これは、N,N-ジメチルホルムアミドの人に対するがん原性については現時点では評価が確定してい
 ないものの、その可能性があることから、がん等の遅発性の健康障害は、そのばく露状況を長期間にわ
 たって把握する必要があることを考慮し、特定化学物質等障害予防規則(昭和47年労働省令第39号。以
 下「特化則」という。)の特別管理物質に係る記録の保存の規定に準じたものであること。
  なお、同様の趣旨から、N,N-ジメチルホルムアミドは、そのがん原性に着目した作業環境管理を
 行う必要があることから、指針の対象となる作業場については、作業環境評価基準(昭和63年労働省告
 示第79号)第2条の第1管理区分を維持するよう指導すること。
  また、指針3の(2)のイの「その他労働者の健康障害を予防するため必要な措置」には、産業医等が作
 業環境測定の評価の結果に基づいて必要と認めたときに行う健康診断、労働者の就業場所の変更等があ
 ること。

4 労働衛生教育について
  N,N-ジメチルホルムアミド等を製造し、又は取り扱う業務に従事している労働者及び当該業務に
 従事することとなった労働者に対して、N,N-ジメチルホルムアミドの有害性等に着目した労働衛生
 教育を行うこととしたこと。
  有機則適用業務にあっては、昭和59年6月29日付け基発第337号「有機溶剤業務従事者に対する労働衛
 生教育の推進について」により労働安全衛生法第59条第3項の「特別教育」に準じた教育を行うことと
 されているが、N,N-ジメチルホルムアミドの有害性にかんがみ、新たに指針の対象となる有機則適
 用業務以外の業務に従事する労働者に対しても適切な労働衛生教育を行うことを求めたものであること。

5 N,N-ジメチルホルムアミド等の製造等に従事する労働者の把握について
  労働者の氏名等の記録を保存することとしたのは、上記3と同様の趣旨であること。

6 危険有害性等の表示について
  N,N-ジメチルホルムアミドは、労働安全衛生法第57条、第57条の2及び第101条第2項の対象である
 とともに、化学物質等の危険有害性等の表示に関する指針(平成4年労働省告示第60号)別表の10のイに
 該当する物質であること。

第2 労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づき、化学物質による労働者の健康障害を防止するための指
 針の一部を改正する指針関係
1 趣旨
  この指針は、労働安全衛生法第28条第3項の規定によりこれまでに公表された12の物質についての
 「化学物質による労働者の健康障害を防止するための指針」について、特化則の特別管理物質に係る記
 録の保存の規定に準じて、2に掲げる内容の改正を行ったものである。

  労働安全衛生法第28条第3項の規定によりこれまでに指針として公表されている12物質

     
 アントラセン
 クロロホルム
 酢酸ビニル
 四塩化炭素
 1,4-ジオキサン
 1,2-ジクロルエタン(別名二塩化エチレン) 
 ジクロロメタン
 テトラクロルエチレン(別名パークロルエチレン)
 1,1,1-トリクロルエタン
 パラ-ジクロルベンゼン
 パラ-ニトロクロルベンゼン
 ビフェニル
2 内容   指針に掲げられた化学物質等を製造し、又は取り扱う業務に常時従事する労働者に係る記録の保存期  間の起算日を、労働者が当該業務に常時従事することになった日から当該記録を行った日に改めたもの  であること。 第3 関連通達の改正   平成17年3月31日付け基発第0331017号「屋外作業場等における作業環境管理に関する  ガイドラインについて」の別添1の別表第2中  
7 ジクロロメタン
固体捕集方法又は直接捕集方法
ガスクロマトグラフ分析方法

7 ジクロロメタン
固体捕集方法又は直接捕集方法
ガスクロマトグラフ分析方法
7の2 N,N−ジメチルホルムアミド 直接捕集方法 ガスクロマトグラフ分析方法

に、
10 パラ-ジクロルベンゼン
固体捕集方法
ガスクロマトグラフ分析方法

10 パラ-ジクロルベンゼン
固体捕集方法
ガスクロマトグラフ分析方法
10の2  パラ−ニトロクロルベンゼン 液体捕集方法又は固体捕集方法 1 液体捕集方法にあっては、吸光光度分析方法又はガスクロマトグラフ分析方法
2 固体捕集方法にあっては、ガスクロマトグラフ分析方法

改める。 (参考1)  日本バイオアッセイ研究センターにおける厚生労働省委託のN,N-ジメチルホルムアミドのラット及 びマウスを用いた吸入投与によるがん原性試験結果の概要(抄)  試験は、ラット(6週令)及びマウス(6週令)を用い、それぞれ雌雄各群50匹、4群の構成とし、合わせて ラット400匹、マウス400匹を使用した。  N,N-ジメチルホルムアミドの濃度をラットとマウスの雌雄とも800、400、200、0ppm(対照群)とし、 1日6時間、1週5日間、104週間(2年間)吸入投与(全身ばく露)した。  その結果、ラットでは、雌雄ともに200ppm以上で肝臓の肝細胞腺腫や肝細胞癌の発生増加が認められ、 N,N-ジメチルホルムアミドのラットの雌雄に対するがん原性を示す明らかな証拠が示された。  また、マウスでは、雌雄ともに200ppm以上で肝臓の肝細胞腺腫や肝細胞癌及び肝芽腫の発生増加が認め られ、N,N-ジメチルホルムアミドのマウスの雌雄に対するがん原性を示す明らかな証拠が示された。 (参考2) N,N-ジメチルホルムアミドに係る情報 1 性状   N,N-ジメチルホルムアミドは、常温常圧では無色透明の液体で、微アミン臭を有する。水及び通  常の有機溶剤に可溶である。   また、N,N-ジメチルホルムアミドを加熱すると、分解して一酸化炭素を生じる。   なお、物性等については表に示すとおりである。           表 N,N-ジメチルホルムアミドの物性等
CAS No.         68-12-2
化学式          (CH3)2NCHO
分子量          73.1
融点           -61℃
沸点           153℃
比重(液体)        1.0
蒸気圧(20℃)       356Pa(2.7mmHg)
引火点          60℃
発火点          445℃
爆発限界(空気中体積比)  2.2〜15.2%
2 用途  人工皮革又はウレタン系合成皮革、スパンデックス繊維、分析化学用(溶媒、ホルミル化試薬)、有機合 成用の溶媒(染料及び中間体の合成用、農薬、医薬品)、各種ポリマーの溶媒、触媒(セルロースのアセチ ル化)、ガス吸収剤(ブタジエン、アセチレン、エチレン、プロピレン、亜硫酸、硫化水素、青酸、三フッ 化ホウ素、無水硫酸等)、色素の溶剤等 3 人に対する影響  N,N-ジメチルホルムアミドは、皮膚、目、粘膜を強く刺激する物質であり、高濃度蒸気の吸入によ り、のどの刺激、悪心、吐き気を生じ、繰り返しばく露されることにより、胃、肝臓に障害を与えること がある。また、皮膚からも吸収される。 4 その他のがん原性に関する評価 (1)日本産業衛生学会   第2群B(人間に対しておそらく発がん性があると考えられる物質であって、その証拠が比較的十分で      ない物質) (2)国際がん研究機関(IARC)   Group3(人に対する発がん性があるとは分類できない物質) (3)米国産業衛生専門家会議(ACGIH)   A4(人に対する発がん性と分類しかねる物質) 5 指針と有機則との関係   指針と有機則との関係は次の図のとおりである。