平成28年の職場における熱中症予防対策の重点的な実施について

基安発0229第1号
平成28年2月29日
都道府県労働局長 殿
厚生労働省労働基準局安全衛生部長

平成28年の職場における熱中症予防対策の重点的な実施について

 職場における熱中症予防対策については、平成21年6月19日付け基発第0619001号「職場における熱中
症の予防について」(別紙1。以下「基本対策」という。)により示しているところであるが、平成27年の
職場における熱中症による死亡者数(平成28年1月末時点速報値)は32人と例年より多く、特に建設業及び
建設現場に付随して行う警備業(以下「建設業等」という。)を合わせた死亡者数は19人と、猛暑であった
平成22年の死亡者数と同数である。
 このため、平成28年は建設業等を熱中症予防対策の重点業種とすることとし、基本対策のうち、屋外作
業を中心に特に留意すべき内容を下記のとおりまとめたので、関係事業場等に対する的確な指導等に遺漏
なきを期されたい。また、建設業等以外の業種の事業場についても、管内状況に応じ、必要な指導等を図
られたい。
 なお、職場における熱中症による死傷災害の発生状況(平成28年1月末時点速報値)について、別紙2のと
おり取りまとめたので、業務の参考とされたい。
 また、関係団体に対しては別添のとおり要請を行ったので、了知されたい。
1 「第1 WBGT値(暑さ指数)の活用」関係
 (1) 「1 WBGT値等」関係
   WBGT測定器の設置以外にWBGT値を求める方法として、環境省熱中症予防情報サイトで例年5月から
  10月頃までに公表されているWBGT予測値・実況値を確認する方法があること。
   また、当該サイトで、WBGT値の公表と併せて提供される個人向けメールサービス(無料)も、必要に
  応じて活用すること。
 (2) 「2 WBGT値に係る留意事項」関係
   黒球が付いていない測定器は、特に屋外でのWBGT値の測定精度が低いことが確認されているため、
  屋外で測定する場合には、黒球付きのWBGT測定器を使用すること。
   また、直射日光が当たる場所、地面に敷かれた鉄板やコンクリート等からの照り返しがある場所、
  通風が悪い場所などでは、環境省熱中症予防情報サイトで公表されるWBGT予測値・実況値より実際の
  WBGT値が高くなるおそれがあるので、そのような作業場所で当該サイトの値を活用する場合には、安
  全側に評価するよう配慮すること。
   なお、建設業労働災害防止協会において、建設現場における熱中症の危険度を簡単に判定できるフ
  ロー図が作成されており、同協会のホームページへの掲載が予定されているので、参考にすること。
 (3) 「3 WBGT基準値に基づく評価等」関係
   WBGT値の評価に当たっては、熱に順化している人より熱に順化していない人のWBGT基準値が低いこ
  とに留意すること。

2 「第2 熱中症予防対策」関係
 (1) 「1 作業環境管理」関係
  「(2) 休憩場所の整備等」関係
    冷房等を備えた休憩場所を独自に設置できない場合であって、現場管理者等が設置する休憩場所
   を借用することとした場合は、その旨を労働者に明確に伝達し、必要な休憩が確実に取れるよう配
   慮すること。また、休憩場所を提供する現場管理者等においても、所属労働者に対し、休憩場所の
   利用を認めている旨を伝達するなど、休憩を取りやすい環境作りに配意することが望ましいこと。
 (2) 「2 作業管理」関係
  ① 「(1) 作業時間の短縮等」
    WBGT基準値を大幅に超える場合は、原則作業を行わせないこと。
    WBGT基準値を大幅に超える作業場所で、やむを得ず作業を行わせる場合には、単独作業を控え、
   休憩時間を長めに設定するとともに、作業中は労働者の心拍数、体温及び尿の回数・色等の身体状
   況、水分及び塩分の摂取状況を頻繁に確認すること。
  ② 「(2) 熱への順化関係」関係
    熱への順化の有無が、熱中症の発生リスクに大きく影響することから、高温多湿作業場所におい
   て労働者に作業を行わせる場合には、当該労働者の熱への順化の有無を確認すること。
  ③ 「(3) 水分及び塩分の摂取」関係
    尿の回数が少ない又は尿の色が普段より濃い状態は、体内の水分が不足している状態である可能
   性があること。
    水分及び塩分の摂取については、労働者に呼びかけることに加え、労働者の摂取状況を確認する
   必要があること。また、便所に行きにくいことを理由として労働者が水分の摂取を控えることがな
   いよう、労働者が便所に行きやすい職場環境の形成に努めること。
 (3) 「3 健康管理」関係
  ① 「(1) 健康診断結果に基づく対応等」関係
    高温多湿作業場所において作業を行っている、又は予定している場合には、その旨を意見聴取す
   る医師等に伝え、熱中症の発症に影響を与えるおそれのある疾患を有する労働者への配慮事項等に
   ついても意見を求めることが望ましいこと。
  ② 「(3) 労働者の健康状態の確認」関係
    労働者が体調不良を訴えていなかったにもかかわらず、死亡に至った事例が確認されていること
   から、労働者の健康状態は、労働者の申出だけでなく、発汗の程度、行動の異常等についても確認
   すること。
  ③ 「(4) 身体の状況の確認」関係
    高温多湿作業場所での作業が原因で、帰宅途上又は帰宅後に、死亡に至った事例が確認されてい
   ることから、労働者に高温多湿作業場所で作業を行わせた場合には、作業終了時に当該労働者の体
   温を測定し、必要に応じて、水分摂取や濡れタオルの使用等により体温を下げるように努め、平熱
   近くまで下がることが確認できるまでは、一人にしないことが望ましいこと。なお、作業終了時の
   体温が平熱より相当程度高かった場合には、病院等に搬送することが望ましいこと。
 (4) 「4 労働衛生教育」関係
   労働者に対する労働衛生教育が確実に実施されるよう、高温多湿作業場所における作業を管理する
  者に対しては、別表1に基づく労働衛生教育を行うこと。なお、事業者が自ら当該教育を行うことが
  困難な場合には、関係団体が行う教育を活用すること。
   また、労働者に対する労働衛生教育は継続的に行うことが望ましいことから、雇入れ時又は新規入
  場時教育等の中で別表2に示す内容について教育するとともに、日々の朝礼等の際にも、繰り返し教
  育することが望ましいこと。
   なお、教育用教材としては、厚生労働省ホームページに公表されている「職場における熱中症予防
  対策マニュアル」及び熱中症予防対策について点検すべき事項をまとめたリーフレット等、環境省熱
  中症予防情報サイトに公表されている熱中症に係る動画コンテンツ及び救急措置等の要点が記載され
  た携帯カード「熱中症予防カード」などが活用できること。
 (5) 「5 救急処置」関係
  ① 「(1) 緊急連絡網の作成及び周知」関係
    身体症状が急激に悪化し、死亡に至った事例が確認されていることから、あらかじめ、緊急時に
    直ちに熱中症に対応できる近隣の病院、診療所の情報を把握しておくこと。
  ② 「(2) 救急措置」関係
    救急措置が円滑に実施されるよう、あらかじめ、救急措置の手順を作成し、関係者に周知するこ
   と。
    身体を冷やす方法には、うちわ、扇風機等の風を当てること、脇の下、太腿の付け根等を保冷剤
   で冷やすこと等があること。
    基本対策の表3の「熱中症の症状と分類」において、U度に分類される症状が現れた場合には、
   病院等に搬送することが望ましく、V度に分類される症状が現れた場合には、直ちに救急隊を要請
   すること。
    症状が急激に悪化する場合に備え、熱中症を疑う症状がなくなる、又は病院等に搬送するまでは、
   可能な限り、当該労働者を一人にしないこと。




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別紙2PDFが開きます(PDF:342KB)
参考
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