安全衛生情報センター
労働安全衛生規則の一部を改正する省令(令和元年厚生労働省令第33号。以下「改正省令」という。)及 び安全衛生特別教育規程の一部を改正する件(令和元年厚生労働省告示第83号。以下「改正告示」という。) が、令和元年8月8日にそれぞれ公布又は告示され、令和元年10月1日から施行又は適用することとされた ところである。 改正省令及び改正告示の趣旨及び内容については、下記のとおりであるので、関係事業者に対する周知 を図るとともに、その施行に遺漏なきを期されたい。 1 趣旨・目的 対地電圧が50ボルトを超える低圧の蓄電池を内蔵する自動車(以下「電気自動車等」という。)の整備 の業務は低圧の電気取扱業務に含まれることから、事業者は、電気自動車等の整備の業務に労働者を就 かせるときは、当該労働者の電気による危険を防止するため、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第 59条第3項の規定に基づき、労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号。以下「安衛則」という。)第 36条第4号で定めるところにより、当該業務に関する安全又は衛生のための特別の教育(以下「特別教育」 という。)を実施することが義務付けられている。また、当該特別教育は、安全衛生特別教育規程(昭和 47年労働省告示第92号)第6条に定められた科目(範囲)及び時間により実施されている。 一方で、電気自動車等には低圧の電気取扱業務において一般に取り扱われる配電設備又は変電設備が 搭載されていないこと並びに電気自動車等の整備の業務を行うに当たっては電気自動車等に特有の構造 及び整備方法について習得している必要があることから、厚生労働省では、「電気自動車等の整備業務 に必要な特別教育のあり方に関する検討会」を開催し、その報告書(平成31年4月26日公表。以下「報告 書」という。)をとりまとめた。今般、報告書に基づき、電気自動車等の整備業務に係る作業の実態を 踏まえた上で、電気による労働災害を防止する観点から、当該業務に従事しようとする労働者に必要な 知識及び技能を習得させるための特別教育として、電気自動車等の整備業務を低圧の電気取扱業務から 分離して新たに規定するものである。 2 改正の要点 (1) 改正省令関係 特別教育の対象業務として、電気自動車等の整備業務を規定すること。 また、従来から特別教育の対象業務とされている低圧の電気取扱業務の範囲から、電気自動車等の 整備業務を除くこと。 (2) 改正告示関係 電気自動車等の整備業務に係る特別教育の実施について必要な事項として、学科教育及び実技教育 の科目、範囲及び時間を規定したこと。 3 細部事項 (1) 対象の自動車 対地電圧が50ボルトを超える低圧の蓄電池を内蔵する自動車には、ハイブリッド自動車、プラグイ ンハイブリッド自動車、電気自動車(内燃機関を有さないもの)、燃料電池自動車、バッテリー式のフ ォークリフト等の車両系荷役運搬機械及びバッテリー式のドラグ・ショベル等の車両系建設機械が含 まれること。 (2) 学科教育の科目の範囲 ア 「低圧の電気装置に関する基礎知識」の「配線」には、駆動用蓄電池(バッテリー)から駆動用原 動機(モーター)、12ボルトバッテリー等からエアコン等への配線(サービスプラグを含む)が含まれ る。 イ 「低圧の電気装置に関する基礎知識」の 「駆動用蓄電池及び充電器」には、蓄電池(バッテリ ー)内部の電解液等の化学物質の知識が含まれる。 ウ 「低圧用の安全作業用具に関する基礎知識」の「絶縁用保護具」には、絶縁手袋、絶縁用靴が含 まれる。 エ 「低圧用の安全作業用具に関する基礎知識」の「検電器」には、サーキットテスター、絶縁抵抗 計が含まれる。 オ 「低圧用の安全作業用具に関する基礎知識」の「その他の安全作業用具」には、保護眼鏡が含ま れる。 カ 「自動車の整備作業の方法」の「充電電路の保護」には、配線の絶縁処理が含まれる。 キ 「自動車の整備作業の方法」の「作業者の絶縁保護」には、絶縁用保護具、絶縁工具等の使用が 含まれる。 ク 「自動車の整備作業の方法」の「サービスプラグの取扱いの方法」には、サービスプラグの取外 し、取付け、管理が含まれる。 ケ 「自動車の整備作業の方法」の「停電電路に対する措置」には、残留電荷の確実な放電が含まれ る。 (3) 実技教育の科目の範囲 「安衛則第三十六条第四号の二の自動車の整備作業の方法」には、絶縁用保護具等の使用、サービ スプラグの取外し、取付け、管理が含まれる。 (4) 科目の省略 電気自動車等の整備業務に係る特別教育については、改正告示による改正後の安全衛生特別教育規 程(以下「新規程」という。)第6条の2に定める学科教育及び実技教育により行うこと。 安衛則第37条の規定により、特別教育の科目の全部又は一部について十分な知識及び技能を有して いると認められる労働者については、当該科目についての特別教育を省略することができることから、 同条の規定に基づき次のとおり特別教育を省略することができること。 ア 自動車整備士技能検定規則(昭和26年運輸省令第71号)に基づく次の技能検定に合格した者であっ て、業務に必要な教育又は研修の受講歴等から低圧の電気の危険性に関する基礎知識を有している と認められるもの(以下、「電気の基礎知識を有する自動車整備士」という。)は、学科教育の科目 のうち「低圧の電気に関する基礎知識」について十分な知識を有していると認められる者として取 り扱うことができること。 1 一級大型自動車整備士 2 一級小型自動車整備士 3 一級二輪自動車整備士 4 二級ガソリン自動車整備士 5 二級ジーゼル自動車整備士 6 二級自動車シャシ整備士 7 二級二輪自動車整備士 8 三級自動車シャシ整備士 9 三級自動車ガソリン・エンジン整備士 10 三級自動車ジーゼル・エンジン整備士 11 三級二輪自動車整備士 12 自動車電気装置整備士 (5) 特別教育の講師 特別教育の講師についての資格要件は定めていないが、学科及び実技の科目について十分な知識、 経験等を有する者でなければならないこと。 4 経過措置等 (1) 施行日より前に、新規程第6条の2に規定する電気自動車等の整備業務に係る特別教育の全部又は一 部の科目に相当する教育を受けた者については、安衛則第37条の規定に基づき、当該受講した科目を 省略できること。 (2) 施行日より前に、改正告示による改正前の安全衛生特別教育規程(以下「旧規程」という。)第6条 に規定する特別教育を受講した者については、改正省令附則第2条に基づき、新規程第6条の2に規定 する特別教育を受講することを要しないこと。 (3) 3(4)アのとおり、電気の基礎知識を有する自動車整備士は、「低圧の電気に関する基礎知識」を有 していると認められることから、旧規程第6条に規定する特別教育についても、安衛則第37条の規定 に基づき当該科目を省略することができるものとして差し支えないこと。 即ち、事業者が必要な知識及び技能を有していると認める者については、安衛則第37条の規定に基 づき、特別教育の科目の全部または一部の省略が可能であるが、個別の労働者の知識及び技能を確認 のうえ、判断すること。