安全衛生情報センター
平素から厚生労働行政の運営に御協力いただき厚く御礼申し上げます。 さて、近年、介護サービスの需要増大を背景として介護施設における労働災害が著しく増加しており、 その発生率は全産業の平均値より高く、平均休業見込み日数も1ヶ月を超えるなど重篤なものが多くなっ ています。 労働災害の防止は事業者の責務であり、介護労働者が安心して働くことができる職場環境を実現するた めには、介護事業者がその責務を認識し、必要な措置を恒常的に実施していくことが不可欠です。貴職に おかれましては、下記のとおり介護施設における労働災害の現状にご留意いただくとともに、あらゆる機 会を通じた介護事業者を含む関係者への周知や取組への働きかけ等につき、御協力方よろしくお願い申し 上げます。
1 介護労働者の労働災害防止に取り組む重要性 労働災害の防止はすべての事業者の責務であるが、介護事業者が介護労働者の労働災害防止に取り組 むことは、単に労働者の安全衛生確保という観点のみならず、介護業界が直面する様々な課題に直結す る経営上の観点からも極めて重要であり、これを怠ることにより、介護サービスの質の確保、ひいては 事業継続にも支障を及ぼし得るものである(別添参照)。 このため、介護事業者は、このことを認識の上、介護サービスの維持・質の確保とあいまって、介護 労働者の労働災害の防止に積極的に取り組む必要がある。 2 介護施設における労働災害の現状 (1) 令和4年の全産業における休業4日以上の労働災害の件数は132,355件となっており、介護施設にお ける件数はその約7%を占めている。さらに、全産業における労働災害の件数は近年増加傾向にあり、 過去10年間で11%(12,779件)の増加となっているが、介護施設における労働災害は約78%(約4,000 件)増加しており、全産業の増分のうちの約3割を占め、介護施設における労働災害が全体の件数を押 し上げている状況にある。 また、令和3年の介護施設における労働災害の発生率は、全産業平均と比較して約1.6倍となってい る。介護施設は労働災害が発生しやすい職場であり、その傾向が加速している状況となっている。 (2) 介護施設において多発している労働災害は、労働者の転倒による骨折等や腰痛等の動作による身体 の部位の負傷となっており、この2類型で全体の約7割を占め、平均休業見込み日数(休業4日以上の労 働者死傷病報告を集計したもの。)は約39日と長期になっている。 3 労働災害防止のために必要な取組 介護施設において多発している労働者の転倒による骨折等や腰痛等の動作による身体の部位の負傷を 防ぐためには、特に次の取組が重要であるので、これらについて周知すること。 (1) 労働者の転倒による骨折等の防止 労働者の転倒による骨折等は、労働者の不注意によって発生するものと考えられがちであるが、中 高年齢労働者による災害が若年の労働者のそれより著しく多くなっており、実際には、通路の段差等 の設備的要因と、労働者の加齢に伴う身体機能の低下とが相まって発生している。このため対策とし て、労働者への注意喚起にとどまらず、厚生労働省が作成したリーフレット(https://www.mhlw.go. jp/content/001101748.pdf)を参考に設備的要因の解消を図るとともに、労働者が転倒しにくい・ 怪我をしにくい身体づくりの取組を進めること。 (2) 腰痛等の動作による身体の部位の負傷の予防 介助中の腰痛等の動作による身体の部位の負傷への対策として、厚生労働省等が作成した「介護者 の腰痛予防のための安全衛生活動チェックポイント」(https://www.jniosh.johas.go.jp/publica tion/houkoku/careworker_checkpoint.pdf)や「介護作業者の腰痛予防対策チェックリスト」(htt ps://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000188449.pdf) を活用し、介護作業における腰痛リスクの洗い出しや各施設にあった安全衛生活動を実践するととも に、「腰痛を防ぐ職場の事例集」(https://www.mhlw.go.jp/content/001103538.pdf)も参考とし つつ身体の負担軽減のための介護技術であるノーリフトケアを積極的に導入すること。 4 厚生労働省による労働災害防止のための事業者への支援策等 (1) 介護事業者に対し、3の取組を行うための厚生労働省による次の支援策等について周知及び活用の 勧奨をすること。 @ エイジフレンドリー補助金 厚生労働省においては、労働者の転倒による骨折等の労働災害の防止や腰痛等の動作による身体 の部位の負傷の予防のための対策(設備的対策や身体機能の維持向上のための運動指導の導入、ノ ーリフトケアの修得のための教育)等を行う中小企業事業者に対して一定の補助金を交付している。 令和6年度については5月以降に申請受付を開始する予定であり、詳細は下記URLに掲載予定である。 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_09940.html A 中央労働災害防止協会(特別民間法人)による中小規模事業場安全衛生サポート事業 厚生労働省の補助により、中央労働災害防止協会において、介護施設を含めた小規模事業所に対 する安全衛生対策の指導・支援(無料)を実施している。令和6年度については4月以降に同支援を実 施する予定であり、詳細は下記URLに掲載予定である。 https://www.jisha.or.jp/chusho/support.html (2) 厚生労働省においては、介護事業者を含めた事業者による労働災害防止の優れた取組を顕彰する 「SAFEアワード」(https://safeconsortium.mhlw.go.jp/award/)を実施している。介護事業者が 自施設における取組を進める上で参考となるよう周知いただくとともに、各事業者において実施され ている取組について応募を勧奨していただきたい。顕彰された事業者においては、労働者が安心して 働くことができる職場づくりを進める事業者であることをアピールすることができる。別添(PDF:10MB)