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クロロホルムによる健康障害を防止するための指針及びテトラクロルエチレン
(別名パークロルエチレン)による健康障害を防止するための指針について
(平成28年3月31日 基発0331第26号により廃止)
改正履歴

                                                                             基発第569号
                                                                          平成7年9月22日
クロロホルム及びテトラクロルエチレン(別名パークロルエチレン。以下略。)については、哺(ほ)乳 動物に対するがん原性が明らかになり、人に対する発がん性を否定できないことから、平成7年9月22日 付けでこれらを労働安全衛生法(昭和47年法律第57号。以下「法」という。)第28条第3項の規定の基づ き労働大臣が定める物質として定め、同日付けで告示するとともに、標記指針(以下「指針」という。) を作成し、その名称、趣旨等を同日官報に公示したところである。 指針は、労働者の重度の健康障害の防止に資するため、その製造、取扱い等に際し事業者が講じずべき 措置について定めたものである。 ついては、別添1<略>及び別添2<略>のとおり指針(全文)を送付するので、以下事項に留意の上、 あらゆる機会をとらえて事業者及び関係事業者団体等に対して、指針の周知を図るとともに、指針の趣旨 を踏まえて各事業場においてクロロホルム及びテトラクロルエチレンによる健康障害の防止対策が適正に 行われるよう指導されたい。 なお、関係事業者団体に対しては、別添3(略)及び別添4(略)により、指針の普及を図るよう要請した ので了知されたい。 また、指針は、労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第24条の9にて準用する同規則第24条の 規定により、都道府県労働基準局において閲覧に供することにより公表するものであるので、念のために 申し添える。 記 第1 趣旨 クロロホルムは、有機溶剤中毒予防規則(昭和47年労働省令第36号。以下「有機則」という。)第1 条第1項第3号の第1種有機溶剤等に該当し、また、テトラクロルエチレンは、有機則第1条第1項第 4号の第2種有機溶剤等に該当するため、同項第6号に掲げる有機溶剤業務を行う場合には、比較的高 濃度かつ短期間のばく露を防止する観点から、有機則において労働者の健康障害の防止のための所要の 措置を講ずることとされているところである。 クロロホルム及びテトラクロルエチレンについては、IARC(国際がん研究機関)が人に対する発がん 性があるかもしれないとしていること等から、労働省では、これら2物質について有害性の調査を進め てきたところであるが、今般、日本バイオアッセイ研究センターにおける哺(ほ)乳動物を用いた長期毒 性試験(吸入投与)の結果から、クロロホルムが哺(ほ)乳動物の肝臓及び腎臓に悪性の腫(しゆ)瘍を発 生させ、また、テトラクロルエチレンが哺(ほ)乳動物の脾臓及び肝臓に悪性の腫(しゆ)瘍を発生させる ことが判明した。 クロロホルム及びテトラクロルエチレンの人に対するがん原性については現在確定していないが、労 働者がこれに長期間ばく露された場合、中枢神経障害、肝臓障害等従来から知られている健康障害のほ かに、がん等の重度の健康障害を生ずる可能性を否定できず、この観点から労働者の健康障害の防止に 特別の配慮が求められる。 このようなことから、クロロホルム及びテトラクロルエチレンのがん原性に着目し、指針において、 現行の有機則に規定する措置以外に、クロロホルム若しくはクロロホルムを含有する物又はテトラクロ ルエチレン若しくはテトラクロルエチレンを含有する物を製造し、又は取り扱う業務全般を対象として、 労働者の健康障害を防止するために講ずべき措置を定めることとしたものである。 なお、有機則は、クロロホルム又はクロロホルムをその重量の5パーセントを超えて含有するもの及 びテトラクロルエチレン又はテトラクロルエチレンをその重量の5パーセントを超えて含有するものに 適用されるが、指針ではクロロホルム又はクロロホルムをその重量の1パーセントを超えて含有するも の(以下「クロロホルム等」という。)及びテトラクロルエチレン又はテトラクロルエチレンをその重 量の1パーセントを超えて含有するもの(以下「テトラクロルエチレン等」という。)が対象となるこ とに留意されたい。 第2 ばく露を低減するための措置 1 指針2の(1)関係 有機則が適用される業務については、設備の密閉化、局所排気装置の設備等有機則に定めるばく露低 減措置を講ずることは当然であるが、これに加えて、指針に定める措置を講ずることによってクロロホ ルム等又はテトラクロルエチレン等による労働者へのばく露を低減させる趣旨であること。これらの措 置については、有機則において特段の規定を設けていないがクロロホルム又はテトラクロルエチレンの がん原性に着目した場合に労働者へのばく露を低減させるために有効とされる措置であること。 (1) 指針2の(1)のイ関係 労働者へのばく露の低減を図るため、事業場におけるクロロホルム等及びテトラクロルエチレン等 の製造量及び取扱量、作業の頻度、作業時間、作業の態様等を総合的に勘案し、指針2の(1)のイに 掲げる項目の中から当該作業場において適切な措置を講ずることとしたものであり、指針2の(1)の イに掲げるすべての項目について措置を講ずることを求める趣旨ではないこと。例えば、有機則適用 業務であるために、すでに局所排気装置の設置をしている場合にクロロホルム等及びテトラクロルエ チレン等へのばく露の低減を図るために、作業方法の改善及び保護具の使用を効果的に行う等の措置 を講ずることは、指針の趣旨に沿うものであること。 なお、指針の2の(1)のイの「その他必要な措置」には、代替物質への変更、隔離室での遠隔操作 等が含まれ、「使用条件等の変更」には、使用温度の適正化等があること。 (2) 指針2の(1)のロ関係 クロロホルム等及びテトラクロルエチレン等を含有する排気、排液等の処理については、事業場の 汚染の防止についてはもちろん、付近一帯の汚染の防止に対しても配慮することを示したものである こと。 (3) 指針2の(1)のハ関係 設備、装置等の操作及び点検、異常な事態が発生した場合の措置、保護具の使用等についての作業 基準を作成し、これを労働者に遵守させることによって、より効果的にばく露の低減化を図る事を目 的としたものであること。 2 指針2の(2)関係 (1) 指針2の(2)のイ関係 有機則適用業務以外の業務については、事業場におけるクロロホルム等及びテトラクロルエチレン 等の製造量及び取扱量、作業の頻度、作業時間、作業の態様等を総合的に勘案し、当該事業場におい て指針2の(2)のイに掲げる項目の中から適切な措置を講ずることとしたものであり、指針2の(2)の イに掲げるすべての項目について措置を講ずることを求める趣旨ではないこと。例えば、1日のうち クロロホルム等及びテトラクロルエチレン等にばく露する時間が極めて短時間である等の理由によっ て、設備の密閉化あるいは局所排気装置の装置が必ずしも現実的でない場合においては、作業方法の 改善及び保護具の使用を適切に行い、クロロホルム及びテトラクロルエチレンへのばく露の低減を図 る等の措置は指針の趣旨に沿うものであること。 なお、指針の2の(2)のイの「使用条件等の変更」は、上記1のイと同様の趣旨であるとともに、 「局所排気装置等」には、局所排気装置のほか、プッシュプル型換気装置及び全体換気装置が含まれ るものであること。 第3 作業環境測定 有機則においては作業環境測定の結果及びその評価の記録を3年間保存しなければならないこととさ れているが、指針においては有機則適用業務、有機則適用業務以外の業務のいかんを問わず、作業環境 測定の結果及びその評価の結果を記録し、これを30年間保存することとしたこと。これはクロロホルム 及びテトラクロルエチレンの人に対するがん原性については現時点では評価が確定していないものの、 その可能性があることから、がん等の遅発生の健康障害は、そのばく露状況を長期間にわたって把握す る必要があることを考慮し、特定化学物質等障害予防規則(昭和47年労働省令第39号)の特別管理物質 に係る作業の記録の保存の規定にならったものであること。 なお、同様の趣旨から、クロロホルム及びテトラクロルエチレンは、そのがん原性に注目した作業環 境管理を行う必要があることから、指針の対象となる作業場については、作業環境評価基準(昭和63年 労働省告示第79号)第2条の第1管理区分を維持するよう指導すること。 第4 労働衛生教育 クロロホルム等又はテトラクロルエチレン等を製造し、又は取り扱う業務に従事している労働者及び 当該業務に従事することとなった労働者に対して、クロロホルム及びテトラクロルエチレンの有害性等 に着目した労働衛生教育を行うこととしたこと。 有機則適用業務にあっては、昭和59年6月29日付け基発第337号「有機溶剤業務従事者に対する労働 衛生教育の推進について」により法第59条第3項の「特別教育」に準じた教育を行うこととされている が、クロロホルム及びテトラクロルエチレンの有害性にかんがみ、新たに指針の対象となる有機則適用 業務以外の業務に従事する労働者に対しても適切な労働衛生教育を行うことを求めたものであること。 なお、本教育は作業の変更がない限り繰り返し行う必要はないこと。 第5 ばく露労働者の把握等 労働者の氏名等の記録を保存することとしたのは、上記第3と同様の趣旨であること。 第6 危険有害性等の表示について これら2物質は、化学物質等の危険有害性等の表示に関する指針(平成4年労働省告示第60号)別表 第10号のイに該当する物質であること。 (参考) 1 日本バイオアッセイ研究センターにおける労働省委託のクロロホルムのラット及びマウスを用いた吸 入投与によるがん原性試験結果の概要(抄) 試験は、F344/DuCrj(Fischer)ラット(6週令)及びCrj:BDF1マウス(6週令)を用い、それぞれ雌 雄各群50匹、4群の構成とし、合わせてラット400匹、マウス400匹を使用した。 クロロホルムのばく露濃度は、ラットでは、90ppm、30ppm、10ppm、0ppm(対照群)、マウスでは、 90ppm(但し、最初の2週間5ppm、次の2週間10ppm、次の2週間30ppm)、30ppm(但し、最初の2週 間5ppm、次の2週間10ppm)、5ppm、0ppm(対照群)として調整し、104週間(2年間)全身ばく露に より投与した。 その結果、F344/DuCrj(Fischer)ラットでは、雌雄ともクロロホルム投与による腫(しゆ)瘍の発生の 増加は認められなかったが、Crj:BDF1マウスでは、雄について腎細胞癌(がん)の発生増加が90ppm群で、 また、腎細胞癌(がん)と腎細胞腺腫(しゆ)とを合わせた発生の増加が3ppm以上群で認められ、雌では肝 細胞癌(がん)の発生が、増加傾向を示し、クロロホルムのがん原性が認められた。 腫(しゆ)瘍の発生数(マウス、それぞれ50匹中)(表)
2  クロロホルムついて
  (1) 性状
      クロロホルムは常温常圧で特有のエーテル臭を有する無色透明の液体であり、水に微溶、各種有機
    溶剤に可溶であり、また、物性等は表に示すとおりである。
  (2) 用途等
      クロロホルムはフッ素系冷媒やフッ素樹脂の製造、医薬品(麻酔剤、消毒剤)、溶剤(ゴム、酢酸、
    メチルセルロース等)、有機合成、アニリンの検出、血液防腐用などに使用されている。
  (3) 有害性
      クロロホルムは、人への影響としては強い麻酔性があり、また、肝臓、腎尿細管、心臓等に細胞毒
      として作用する。高濃度の上記を吸入すると、興奮状態、反射機能の喪失、感覚麻痺、意識喪失、
      呼吸停止が起こり死亡する。低能度の繰り返しばく露による慢性中毒症状としては、胃腸、肝臓、
      腎臓障害がある。

表 クロロホルムの物性等(表)
3  その他のクロロホルムに関する情報
  (1) 日本産業衛生学会の評価
      第2群B  (発がん性についての証拠が十分でない物質)
  (2) IARC(国際がん研究機関)の評価
      Group  2B  (ヒトに対する発がん性があるかもしれない物質)
  (3) EPA(米国環境保護庁)の評価
      Group  B2  (恐らくがん原性物質、動物での十分な証拠があり、かつ疫学的研究から、ヒトでの
    発がん性の不十分な証拠がある物質)
  (4) ACGIH(米国産業安全専門家会議)の評価
      A2  (ヒトに対して発がん性が疑われる物質)
  (5) EU(欧州連合)の評価
      Category3  (満足させる評価をするには、利用できる情報が適切ではないが、ヒトに対する発が
    ん性が懸念される物質)
  (6) DFG(ドイツ研究審議会)の評価
      B  (発がん性の可能性があることが正当に推定される化合物)
  (7) NTP(米国毒性プログラム)の評価
    (合理的に発がん性があることが懸念される物質)
4  日本バイオアッセイ研究センターにおける労働省委託のテトラクロルエチレンのラット及びマウスを
  用いた吸入投与によるがん原性試験結果の概要(抄)
    試験は、F344/DuCrj(Fischer)ラット(6週令)及びCrj:BDF1マウス(6週令)を用い、それぞれ雌
  雄各群50匹、4群の構成とし、合わせてラット400匹マウス400匹を使用した。テトラクロルエチレン濃
  度をラットでは600、200、50、0ppm(対照群)、マウスでは、250、50、10、0ppm(対照群)とし、1
  日6時間、週5日、吸入経路(全身ばく露)により2年間(104週)投与した。その結果、F344/DuCrj
  (Fischer)ラットでは雌雄に脾臓の単核球性発血病の発生増加が、また、Crj:BDF1マウスでは雄にハー
  ダー腺の腺腫(しゆ)の発生増加が、雄雌に肝細胞腺腫(しゆ)及び肝細胞癌(がん)の発生増加が観察され
  たことから、ラット及びマウスにテトラクロルエチレンによるがん原性が示された。

腫瘍の発生数(ラット、それぞれ50匹中)(表)


腫瘍の発生数(マウス、それぞれ50匹中)(表)

5  テトラクロルエチレンついて
  (1) 性状
      テトラクロルエチレンは常温常圧で無色透明の液体であり、水に難溶、エタノール、エーテル、ク
    ロロホルム及びベンゼンに可溶であり、また、物性等は表に示すとおりである。
  (2) 用途等
      テトラクロルエチレンは脂溶性が高くかつ不燃であるため、極めて優れた脱脂洗剤としてドライク
    リーニング用、金属の脱脂洗剤及び乾燥に使用されている。他に殺虫剤、防虫剤、セルロースエステ
    ル及びエーテルの混合物溶剤、有機合成中間体等にも幅広く使用されている。
  (3) 有害性
      テトラクロルエチレンは、吸入、繰り返し皮膚や粘膜との接触、口からの接種等により吸収すると
    中毒作用を呈し、中枢神経、肺、皮膚、粘膜、消化器系、肝臓及び腎臓に障害を起こす。また、短時
    間に多量の蒸気を吸入すると急性中毒を起こし、その症状は中枢神経系に現われる。亜急性中毒の症
    状としては頭痛、疲労、悪心、吐き気、嘔吐、精神錯乱、一時的な視力減弱等がある。繰り返し、ま
    た、長期間皮膚に接触すると皮膚脂肪が除去されるため皮膚炎を起こす。さらに、蒸気や飛末が目の
    中に入ると、流涙、しゃく熱痛を伴う炎症を起こす。飲み込むと初期症状として、悪心、嘔吐、下痢、
    血便など胃腸管刺激症状が現われる。

表 テトラクロルエチレンの物性等(表)
6  その他のテトラクロルエチレンに関する情報
  (1) 日本産業衛生学会の評価
      第2群B  (発がん性についての証拠が十分でない物質)
  (2) IARC(国際がん研究機関)の評価
      Group  2A  (ヒトに対して恐らく発がん性がある物質)
  (3) ACGIH(米国産業安全専門家会議)の評価
      A3  (動物がん原性物質)
  (4) EU(欧州連合)の評価
      Category3(満足させる評価をするには、利用できる情報が適切ではないが、ヒトに対する発がん
    性が懸念される物質)
  (5) DFG(ドイツ研究審議会)の評価
      B  (発がん性の可能性があることが正当に推定される化合物)
  (6) NTP(米国毒性プログラム)の評価
    (合理的に発がん性があることが懸念される物質)
7  指針と有機則との関係
    指針と有機則との関係は下図<略>のとおりである。