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酢酸ビニルによる健康障害を防止するための指針、
1,1,1−トリクロルエタンによる健康障害を防止するための指針、
パラ−ジクロルベンゼンによる健康障害を防止するための指針及び
ビフェニルによる健康障害を防止するための指針について
(平成28年3月31日 基発0331第26号により廃止)
改正履歴
                                                                             基発第80号
                                                                           平成9年2月6日
 
  酢酸ビニル、1,1,1−トリクロルエタン、パラ−ジクロルベンゼン及びビフェニルについては、哺乳動
物に対するがん原性が明らかになり、人に対する発がん性を否定できないことから、平成9年2月6日付
けでこれらを労働安全衛生法(昭和47年法律第57号。以下「法」という。)第28条第3項の規定に基づ
き労働大臣が定める物質として定め、同日付けで、告示するとともに、標記指針(以下「指針」という。)
を作成し、その名称、趣旨等を同日官報に公示したところである。
  指針は、労働者の重度の健康障害の防止に資するため、その製造、取扱い等に際し事業者が講じずべき
措置について定めたものである。
  ついては、別添1<略>、別添2<略>、別添3<略>及び別添4<略>のとおり指針(全文)を送付
するので、下記事項に留意の上、あらゆる機会をとらえて事業者及び関係事業者団体等に対して、指針の
周知を図るとともに、指針の趣旨を踏まえて各事業場において酢酸ビニル、1,1,1−トリクロルエタン、
パラ−ジクロルベンゼン及びビフェニルによる健康障害の防止対策が適正に行われるよう指導されたい。
  なお、関係事業者団体に対しては、別添5<略>、別添6<略>、別添7<略>及び別添8<略>によ
り、指針の普及を図るよう要請したので了知されたい。
  また、指針は、労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第24条の9にて準用する同規則第24条の
規定により、都道府県労働基準局において閲覧に供することにより公表するものであるので、念のために
申し添える。

                        記

第1 酢酸ビニルによる健康障害を防止するための指針、パラ−ジクロルベンゼンによる健康障害を防止
   するための指針及びビフェニルによる健康障害を防止するための指針について
 1 趣旨
   労働省においては、酢酸ビニル、パラ−ジクロルベンゼン及びビフェニルについて、がん原性の疑
  いに着目した有害性の調査を進めてきたところであるが、今般、日本バイオアッセイ研究センターに
  おける哺乳動物を用いた長期毒性試験の結果から、酢酸ビニルが哺乳動物の口腔、食道、前胃及び咽
  頭に、パラ−ジクロルベンゼンが哺乳動物の肝臓及び肺に、また、ビフェニルが哺乳動物の膀胱及び
  肝臓にそれぞれ悪性の腫瘍を発生させることが判明した。
   酢酸ビニル、パラ−ジクロルベンゼン及びビフェニルの人に対するがん原性については現在確定し
  ていないが、労働者がこれに長期間ばく露された場合、がん等の重度の健康障害を生ずる可能性を否
  定できず、この観点から労働者の健康障害の防止に特別の配慮が求められる。
   このようなことから、酢酸ビニル、パラ−ジクロルベンゼン及びビフェニルのがん原性に着目し、
  指針において、労働者の健康障害を防止するために講ずべき措置を定めることとしたものである。指
  針においては、酢酸ビニル又は酢酸ビニルをその重量の1パーセントを超えて含有するもの(以下
  「酢酸ビニル等」という。)、パラ−ジクロルベンゼン又はパラ−ジクロルベンゼンをその重量の1
  パーセントを超えて含有するもの(以下「パラ−ジクロルベンゼン等」という。)及びビフェニル又
  はビフェニルをその重量の1パーセントを超えて含有するもの(以下「ビフェニル等」という。)を
  製造し、又は取り扱う業務全般を対象とする。
   なお、指針における酢酸ビニルは、いわゆる酢酸ビニルモノマーの意であり、酢酸ビニル樹脂等酢
  酸ビニルを重合させたものは、酢酸ビニルには該当しないこと。しかしながら、これら重合物につい
  ても、酢酸ビニルの含有量がその重量の1パーセントを超えるものは指針の対象となることに留意さ
  れたい。
 2 ばく露を低減するための措置について
   (1) 指針2の(1)関係
    労働者の酢酸ビニル、パラ−ジクロルベンゼン又はビフェニルへのばく露の低減を図るため、事
   業場における酢酸ビニル等、パラ−ジクロルベンゼン等又はビフェニル等の製造量及び取扱量、作
   業の頻度、作業時間、作業の態様等を総合的に勘案し、指針2の(1)に掲げる項目の中から当該事
   業場において適切な措置を講ずることとしたものであり、指針2の(1)に掲げるすべての項目につ
   いて措置を講ずることを求める趣旨ではないこと。例えば、1日のうち酢酸ビニル、パラ−ジクロ
   ルベンゼン又はビフェニルにばく露する時間が極めて短時間である等の理由によって、設備の密閉
   化あるいは局所排気装置の設置が必ずしも現実的でない場合においては、作業方法の改善及び保護
   具の使用を効果的に行い、酢酸ビニル、パラ−ジクロルベンゼン又はビフェニルへのばく露の低減
   を図る等の措置を講ずることは、指針の趣旨に沿うものであること。
    なお、指針の2の(1)の「その他必要な措置」には、より有毒性の少ない代替物質への変更、隔
   離室での遠隔操作等が含まれ、指針の2の(1)のイの「使用条件等の変更」には、使用温度の適正
   化等が、「局所排気装置等」には局所排気装置のほか、プッシュプル型換気装置及び全体換気装置
   が含まれるものであること。
  (2) 指針2の(2)のハ関係
    酢酸ビニル等、パラ−ジクロルベンゼン等又はビフェニル等を含有する排気、排液等の処理につ
   いては、事業場の汚染の防止についてはもちろん、付近一帯の汚染の防止に対しても配慮すること
   を示したものであること。
   (3) 指針2の(4)関係
    設備、装置等の操作及び点検、異常な事態が発生した場合の措置、保護具の使用等についての作
   業基準を作成し、これを労働者に遵守させることによって、より効果的にばく露の低減化を図る事
   を目的としたものであること。
 3 作業環境測定について
   (1) 指針3の(1)関係
    酢酸ビニル等、パラ−ジクロルベンゼン等又はビフェニル等を製造し、又は取り扱う業務の作業
   環境測定の方法等については、作業環境測定基準(昭和51年労働省告示第46号)に規定がないとこ
   ろであるが、同基準にならって次のように測定を行うこと。
   イ 酢酸ビニル、パラ−ジクロルベンゼン又はビフェニルの測定は、試料採取方法は固体補集方法
    又はこれと同等以上の性能を有するものに、分析方法はガスクロマトグラフ分析方法又はこれと
    同等以上の性能を有するものによること。
   ロ 測定点は、単位作業場所(当該作業場の区域のうち労働者の作業中の行動範囲、有害物の分布
    等の状況等に基づき定められる作業環境測定のための区域をいう。以下同じ。)の床面上に6メ
    ートル以下の等間隔で引いた縦の線と横の線との交点の床上50センチメートル以上150センチメ
    ートル以下の位置(設備等があって測定が著しく困難な位置を除く。)とすること。ただし、単
    位作業場所における空気中の測定対象物の濃度がほぼ均一であることが明らかなときは、測定点
    に係る交点は、当該単位作業場所の床面上に6メートルを超える等間隔で引いた縦の線と横の線
    の交点とすることができる。
   ハ 上記ロの規定にかかわらず、上記ロの規定により測定点が5に満たないこととなる場合にあっ
    ても、測定点は、単位作業場所について5以上とすること。ただし、単位作業場所が著しく狭い
    場合であって、当該単位作業場所における空気中の酢酸ビニル、パラ−ジクロルベンゼン又はビ
    フェニルの濃度がほぼ同一であることが明らかな場合は、この限りではない。
   ニ 測定は、作業が定常的に行われている時間に行うこと。
   ホ 酢酸ビニル、パラ−ジクロルベンゼン又はビフェニルの蒸気の発散源に近接する場所において
    作業が行われる単位作業場所にあっては、上記ロからニによる測定のほか、当該作業が行われる
    時間のうち、空気中の酢酸ビニル、パラ−ジクロルベンゼン又はビフェニルの濃度が最も高くな
    ると思われる時間に、当該作業が行われる位置において測定を行うこと。
   ヘ 1の測定点における試料空気の採取時間は、10分以上の継続した時間とすること。
  (2) 指針3の(2)関係
    イ 測定結果の評価に当たっては、上記(1)と同様の趣旨から、作業環境評価基準(昭和63年労働
    省告示第79号)にならって単位作業場ごとに次のように評価を行うこと。
    (イ) 上記(1)のロからニによる測定(以下[A測定]という。)のみを行った場合は、評価値を
     作業環境測定結果を評価するための基準となる値(以下「基準濃度」という。)と比較すること。
      評価値は次の式により計算するものとする。
      また、基準濃度は、酢酸ビニルについては10ppm、パラ-ジクロルベンゼンについては10ppm、
     ビフェニルについては0.2ppmとする。
 

            
      EA、M及びδはそれぞれ次の値を表すものとする。
            EA:評価値
            M:A測定の測定値の幾何平均値
            δ:A測定の測定値の幾何標準偏差
        
    (ロ) A測定及び上記(1)のホによる測定(以下[B測定]という。)を行った場合は、評価値及
     びB測定の測定値(2以上の測定点において測定を実施した場合はその最大値)を基準濃度と
     比較すること。
    (ハ) 測定する機器については、基準濃度の10分の1まで精度よく測定できるものを使用すること。
    (ニ) 測定対象物の濃度が当該測定で採用した試料採取方法及び分析方法によって求められる定量
     下限の値に満たない単位作業場所にあっては、当該定量下限の値を当該測定点における測定値
     とみなすこと。
    (ホ) 測定値が基準濃度の10分の1に満たない場合には、基準濃度の10分の1を当該測定点におけ
     る測定値とみなすことができること。
   ロ 酢酸ビニル、パラ−ジクロルベンゼン及びビフェニルについては、人に対するがん原性につい
    ては現時点では評価が確定していないものの、その可能性があることに着目した作業管理を行う
    必要があることから、指針の対象となる事業場については、評価値及びB測定による測定値が常
    に基準濃度未満となる管理を維持するよう指導すること。
     なお、指針3の(2)の「その他労働者の健康障害を予防するための必要な措置」には、産業医
    等が作業環境測定の評価の結果に基づいて必要と認めたときに行う健康診断、労働者の就労場所
    の変更があること。
  (3) 指針3の(3)関係
    上記(2)のロと同様の趣旨から、がん等の遅発性の健康障害はそのばく露状況を長時間にわたっ
   て把握する必要があることを考慮し、特定化学物質等障害予防規則(昭和47年労働省令第39号)の
   特別管理物質に係る作業の記録の保存の規定にならったものであること。
 4 労働衛生教育について
   酢酸ビニル等、パラ−ジクロルベンゼン等又はビフェニル等を製造し、又は取り扱う業務に従事し
  ている労働者及び当該業務に従事することとなった労働者に対して、酢酸ビニル、パラ−ジクロルベ
  ンゼン及びビフェニルの有毒性等に着目した労働衛生教育を行うこととしたこと。
   なお、本教育は作業の変更がない限り繰り返し行う必要はないこと。
 5 酢酸ビニル等、パラ−ジクロルベンゼン等又はビフェニル等の製造等に従事する労働者の把握につ
  いて労働者の氏名等の記録を保存することとしたのは、上記3の(3)と同様の趣旨であること。
 6 危険有害性等の表示について
   酢酸ビニル、パラ−ジクロルベンゼン及びビフェニルは、化学物質等の危険有害性等の表示に関す
  る指針(平成4年労働省告示第60号)別表第10号のイに該当する物質であること。

第2 1,1,1−トリクロルエタンによる健康障害を防止するための指針について
 1 趣旨
   1,1,1−トリクロルエタンは、有機溶剤中毒予防規則(昭和47年労働省令第36号。以下「有機則」
  という。)第1条第1項第4号の第2種有機溶剤等に該当するため、同項第6号に掲げる有機溶剤業
  務を行う場合には、比較的高濃度かつ短期間のばく露を防止する観点から、有機則において労働者の
  健康障害の防止のための所要の措置を講ずることとされているところである。
    労働省では1,1,1−トリクロルエタンのがん原性の疑いに着目した有害性の調査を進めてきたとこ
  ろであるが、今般、日本バイオアッセイ研究センターにおける哺乳動物を用いた長期毒性試験の結果
  から、1,1,1−トリクロルエタンが哺乳動物の肺、腹膜及び脾臓に悪性の腫瘍を発生させることが判
   明した。
    1,1,1−トリクロルエタンの人に対するがん原性については現在確定していないが、労働者がこれ
  に長期間ばく露された場合、中枢神経障害等従来から知られている健康障害のほかに、がん等の重度
  の健康障害を生ずる可能性を否定できず、この観点から労働者の健康障害の防止に特別の配慮が求め
  られる。
    このようなことから1,1,1−トリクロルエタンのがん原性に着目し、指針において、現行の有機則
  に規定する措置以外に、1,1,1−トリクロルエタン又はこれを含有するものを製造し、又は取り扱う
  業務全般を対象として、労働者の健康障害を防止するために講ずべき措置を定めることとしたもので
  ある。
    なお、有機則は、1,1,1−トリクロルエタン又は1,1,1−トリクロルエタンをその重量の5パーセン
  トを超えて含有するものに適用されるが、指針では1,1,1−トリクロルエタン又は1,1,1−トリクロル
  エタンをその重量の1パーセントを超えて含有するもの(「以下1,1,1−トリクロルエタン等」とい
  う。)が対象となることに留意されたい。
   2 ばく露を低減するための措置について
    (1) 指針の2の(1)関係
        有機則が適用される業務については、設備の密閉化、局所排気装置の設置等有機則に定めるばく
   露低減措置を講ずることは当然であるが、これに加えて、指針に掲げる措置を講ずることによって、
   労働者の1,1,1−トリクロルエタンへのばく露を低減させる趣旨であること。これらの措置につい
   ては、有機則において特段の規定を設けていないが、1,1,1−トリクロルエタンのがん原性に着目
   した場合に労働者の1,1,1−トリクロルエタンへのばく露を低減させるために有効とされる措置で
   あること。
      イ 指針2の(1)のイ関係
      労働者の1,1,1−トリクロルエタンへのばく露の低減を図るため、事業場における1,1,1−ト
    リクロルエタン等の製造量及び取扱量、作業の頻度、作業時間、作業の態様等を総合的に勘案し、
    指針2の(1)のイに掲げた項目の中から当該事業場において適切な措置を講ずることとしたもの
    であり、指針2の(1)のイに掲げるすべての項目について措置を講ずることを求める趣旨ではな
    いこと。例えば、有機則適用業務であるために、すでに局所排気装置の設置をしている場合に、
    1,1,1−トリクロルエタンのばく露の低減を図るために、作業方法の改善及び保護具の使用を効
    果的に行う等の措置を講ずることは、指針の趣旨に沿うものであること。
      なお、指針2の(1)のイの「その他必要な措置」には、より有害性の少ない代替物質への変更、
    隔離室での遠隔操作等が含まれ、「使用条件等の変更」には、使用温度の適正化等があること。
      ロ 指針2の(1)のロ関係
      1,1,1−トリクロルエタンを含有する排気、排液等の処理については、事業場の汚染の防止に
    ついてはもちろん、付近一帯の汚染防止に対しても配慮することを示したものであること。
      ハ 指針2の(1)のニ関係
      設備、装置等の操作及び点検、異常な事態が発生した場合の措置、保護具の使用等についての
    作業基準を作成し、これを労働者に遵守させることによって、より効果的にばく露の低減化を図
    ることを目的としたものであること。
    (2) 指針2の(2)関係
     有機則適用業務以外の業務については、事業場における1,1,1−トリクロルエタン等の製造量及
   び取扱量、作業の頻度、作業時間、作業の態様等を総合的に勘案し、当該事業場において指針2の
    (2)のイに掲げる項目の中から適切な措置を講ずることとしたものであり、掲げるすべての項目に
   ついて措置を講ずることを求める趣旨ではないこと。例えば、一日のうち、1,1,1−トリクロルエ
   タンにばく露する時間が極めて短時間である等の理由によって、設備の密閉化あるいは局所排気装
   置の設置が必ずしも現実的でない場合においては、作業方法の改善及び保護具の使用を適切に行い、
   1,1,1−トリクロルエタンへのばく露の低減を図る等の措置は指針の趣旨に沿うものであること。
     なお、指針2の(2)のイの「使用条件等の変更」は、上記(1)のイと同様の趣旨であるとともに、
   「局所排気装置等」には、局所排気装置のほか、プッシュプル型換気装置及び全体換気装置が含ま
   れるものであること。
 3 作業環境測定について
    有機則においては作業環境測定の結果及びその評価の記録を3年間保存しなければならないことさ
  れているが、指針においては有機則適用業務、有機則適用業務以外の業務のいかんを問わず、作業環
  境測定の結果及びその評価の結果を記録し、これを30年間保存することとした。これは、1,1,1−ト
  リクロルエタンの人に対するがん原性については現時点では評価が確定してはいないものの、その可
  能性があることから、がん等の遅発性の健康障害は、そのばく露状況を長期間にわたって把握する必
  要があることを考慮し、特定化学物質等障害予防規則の特別管理物質に係る作業の記録の保存の規定
  にならったものであること。
    なお、同様の趣旨から、1,1,1−トリクロルエタンは、そのがん原性に着目した作業環境管理を行
  う必要があることから、指針の対象となる作業場については、作業環境評価基準第2条の第1管理区
  分を維持するよう指導すること。
    また、指針3の(2)のロの「その他労働者の健康障害を予防するため必要な措置」には、産業医等
  が作業環境測定の評価の結果に基づいて必要と認めたときに行う健康診断、労働者の就業場所の変更
  等があること。
 4 労働衛生教育について
   1,1,1−トリクロルエタン等を製造し、又は取り扱う業務に従事している労働者及び当該業務に従 
  事することとなった労働者に対して、1,1,1−トリクロルエタンの有害性等に着目した労働衛生教育
  を行うこととしたこと。
    有機則適用業務にあたっては、昭和59年6月29日付け基発第337号「有機溶剤業務従事者に対する
  労働衛生教育の推進について」により法第59条第3項の「特別教育」に準じた教育を行うこととされ
  ているが、1,1,1−トリクロルエタンの有害性にかんがみ、新たに指針の対象となる有機則適用業務
  以外の業務に従事する労働者に対しても適切な労働衛生教育を行うことを求めたものであること。
    なお、本教育は作業の変更がない限り繰り返し行う必要はないこと。
  5 1,1,1−トリクロルエタン等の製造等に従事する労働者の把握について
    労働者の氏名等の記録を保存することとしたのは、上記3と同様の趣旨であること。
  6  危険有害性等の表示について
    1,1,1−トリクロルエタンは、化学物質等の危険有害性等の表示に関する指針別表第10号のイに該
  当する物質であること。

(参考1)日本バイオアッセイ研究センターにおける労働省委託の酢酸ビニルのラット及びマウスを用
いた経口投与によるがん原性試験結果の概要(抄)
  試験は、F344/DuCrj(Fischer)ラット(6週令)及びCrj:BDF1マウス(6週令)の、それぞれ雌雄各
群50匹の4群、合わせてラット400匹、マウス400匹を使用した。
  酢酸ビニルをラット、マウスともに、10,000ppm、2,000ppm、400ppm、0ppm(対照群)の濃度に希釈調
製した飲水を、104週間(2年間)自由摂取で投与した。
  その結果、F344/DuCrj(Fischer)ラットでは、雄に口腔の扁平上皮癌と扁平上皮乳頭腫、雌に口腔と食
道の扁平上皮癌の発生が認められ、酢酸ビニルのがん原性が証明された。
  また、Crj:BDF1マウスでは、雌雄の口腔と前胃に扁平上皮癌と扁平上皮乳頭腫、食道と咽頭に扁平上
皮癌、雌の食道に扁平上皮乳頭腫が認められ、酢酸ビニルのがん原性が証明された。

表1 腫瘍の発生数(ラット)(表)

表2 腫瘍の発生数(マウス)(表)
(参考2)  酢酸ビニルに係る情報
1  性状
    酢酸ビニルは常温常圧で特有の甘い香りを有する無色透明の液体であり、水に微溶、アルコールと混
  和する。また、物性等は表に示すとおりである。(表)
2  用途
    酢酸ビニル樹脂用原料、エチレン・スチレン等との共重合体原料、接着剤合成用原料、合成繊維用原
  料等
3  人に対する影響
    粘膜、皮膚を刺激し、高濃度でばく露されると皮膚脱脂、麻酔作用がある。
4  その他の発がん性に関する評価
      ・IARC(国際がん研究機関)
        Group 2B(人に対して発がん性があるかもしれない物質)
      ・ACGIH(米国産業衛生専門家会議)
        A3(動物に対してのみ発がん性が確認された物質)
5  ばく露限界濃度
      ・ACGIH    TLV−TWA    10ppm(1993年)
                      TLV−STEL  15ppm(1993年)
      (注)TLV−TWA  :時間加重平均ばく露限界濃度
            TLV−STEL:短時間ばく露限界濃度
          (  )内の年は、濃度についての提案年又は最終改訂年

(参考3)  日本バイオアッセイ研究センターにおける労働省委託の1,1,1−トリクロルエタンのラット
            及びマウスを用いた吸入投与によるがん原性試験結果の概要(抄)
  試験は、F344/DuCrj(Fischer)ラット(6週令)及びCrj:BDF1マウス(6週令)の、それぞれ雌雄各
群50匹の4群、合わせてラット400匹、マウス400匹を使用した。
  1,1,1−トリクロルエタン(1,4−ジオキサン:3.34〜3.50%を含む)をラット、マウスともに、3,200
ppm、800ppm、200ppm、0ppm(対照群)の濃度で1日6時間、1週5日間、全身暴露で104週間(2年間)
投与した。
  その結果、1,1,1−トリクロルエタンの2年間にわたる吸入投与によるがん原性試験の結果、F344/
DuCrj(Fischer)ラットでは、雄に腹膜の中皮腫の発生増加が認められ、1,1,1−トリクロルエタンのがん
原性が証明された。
  一方、Crj:BDF1マウスでは、雄のハーダー腺の腺腫と脾臓由来の悪性リンパ腫及び肺の細気管支−肺
胞上皮癌、雌の肝細胞腺腫と細気管支−肺胞上皮腺腫の発生増加が認められ、1,1,1−トリクロルエタン
のがん原性が証明された。
表1 腫瘍の発生数(ラット)(表)
表2 腫瘍の発生数(マウス)(表)
a):検査動物49

(参考4)  1,1,1−トリクロルエタンに係る情報
1  性状
    1,1,1−トリクロルエタンは常温常圧で無色透明の液体で揮発性がある。また、特有の甘い香りを有
  する。水には少量可溶である。物性等は表に示すとおりである。

表 1,1,1−トリクロルエタンの物性等(表)
2  用途
    金属の常温洗浄及び蒸気洗浄、ドライクリーニング用溶材等
3  人に対する影響
    高濃度の蒸気にばく露されると、麻酔作用と粘膜刺激性がある。皮膚からも吸収される。
4  その他の発がん性に関する評価
      ・IARC
        Group 3(人に対して発がん性があるとは分類できない物質)
5  指針と有機則の関係
    指針と有機則の関係は次の図のとおりである。(図)

(参考5)  日本バイオアッセイ研究センターにおける労働省委託のパラ−ジクロルベンゼンのラット及
            びマウスを用いた吸入投与によるがん原性試験結果の概要(抄)
  試験は、F344/DuCrj(Fischer)ラット(6週令)及びCrj:BDF1マウス(6週令)の、それぞれ雌雄各
群50匹の4群、合わせてラット400匹、マウス400匹を使用した。
  パラ−ジクロルベンゼンをラット、マウスともに、300ppm、75ppm、20ppm、0ppm(対照群)の濃度で1
日6時間、1週5日間、全身暴露で104週間(2年間)投与した。
  その結果、Crj:BDF1マウスの雄に肝臓の肝細胞癌と組織球性肉腫、雌に肝臓の肝細胞癌と肝細胞腺腫
及び肺の細気管支−肺胞上皮癌の発生増加が認められ、パラ−ジクロルベンゼンのマウスに対するがん原
性が証明された。

表 腫瘍の発生数(マウス)(表)
(参考6)  パラ−ジクロルベンゼンに係る情報
1  性状
    パラ−ジクロルベンゼンは常温常圧で白色結晶の固体であるが、昇華性を有する。また、特有の強い
  刺激性の臭気を持つ。水に不溶、エタノール、クロロホルム、エーテル、ベンゼン及び二硫化炭素に可
  溶であり、物性等は表に示すとおりである。

表 パラ−ジクロルベンゼンの物性等(表)

2  用途
    防臭・防虫剤・合成樹脂用原料、染料合成用原料、有機合成用原料
3  人に対する影響
    高濃度の蒸気にばく露されると、眼、鼻及び咽喉の粘膜に刺激性がある。慢性ばく露により、脱力等
  の神経症状を生じた例がある。
4  その他の発がん性に関する評価
      ・日本産業衛生学会
          第2群B(人間に対しておそらく発がん性があると考えられる物質であって、その証拠が比較
                    的十分でない物質)
      ・IARC
          Group2B(人に対して発がん性があるかもしれない物質)
      ・ACGIH
          A3(動物に対してのみ発がん性が確認された物質)
      NTP(米国毒性プログラム)
          Group b(合理的に発がん性があることが懸念される物質)
5  ばく露限界濃度等
      ・日本産業衛生学会許容濃度      50ppm(1966年)
      ・ACGIH    TLV−TWA  10ppm(1993年)
        (注)TLV−TWA:時間加重平均ばく露限界濃度
        (  )内の年は、濃度についての提案年又は最終改訂年

(参考7)  日本バイオアッセイ研究センターにおける労働省委託のビフェニルのラット及びマウスを用
            いた経口投与によるがん原性試験結果の概要(抄)
  試験は、F344/DuCrj(Fischer)ラット(6週令)及びCrj:BDF1マウス(6週令)の、それぞれ雌雄
各群50匹の4群、合わせてラット400匹、マウス400匹を使用した。
  ビフェニルをラットは4,500ppm、1,500ppm、500ppm、0ppm(対照群)、マウスは、6,000ppm、2,000ppm、
667ppm、0ppm(対照群)の濃度で飼料に混入し、104週間(2年間)自由摂取させた。
  その結果、F344/DuCrj(Fischer)ラットでは、雄に膀胱の移行上皮癌、移行上皮乳頭腫、扁平上皮癌
及び扁平上皮乳頭腫が発生し、ビフェニルのがん原性が証明された。
  一方、Crj:BDF1マウスでは、雄に肝臓の肝細胞癌と肝細胞腺腫の発生増加が認められ、ビフェニルの
がん原性が証明された。

表1 腫瘍の発生数(ラット)(表)
表2 腫瘍の発生数(マウス)(表)
(参考8)  ビフェニルに係る情報
1  性状
    ビフェニルは常温常圧で無色うろこ状又は白色雲母状結晶の固体であり、水に不溶、エタノール・エ
  ーテルに可溶である。また、物性等は表に示すとおりである。

表 ビフェニルの物性等(表)
2  用途
    熱媒体及びその原料、合成樹脂用原料、染色助剤、防かび剤
3  人に対する影響
    眼、皮膚、粘膜に弱い刺激作用がある。
4  その他の発がん性に関する評価
      ・日本産業衛生学会、IARC、ACGIH、NTPはいずれも評価を行っていない。
5  ばく露限界濃度等
      ・ACGIH    TLV−TWA  0.2ppm(1987年)
      (注)TLV−TWA:時間加重平均ばく露限界濃度
      (  )内の年は、濃度についての提案年又は最終改訂年