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1,4−ジオキサンによる健康障害を防止するための指針について
(平成28年3月31日 基発0331第26号により廃止)
改正履歴

                                                                             基発第658号
                                                                          平成4年12月21日
労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第28条第3項の規定に基づき標記指針(以下「指針」という。) を作成し、その名称及び趣旨を平成4年12月21日付け官報に公示した。 指針は、1,4−ジオキサンによる労働者の健康障害の防止に資するため、その製造、取扱い等に際し事 業者が構ずべき措置に関する留意事項について定めたものである。 ついては、別添1<略>のとおり指針(全文)を送付するので、下記事項に留意の上、あらゆる機会をとらえ て事業者及び関係事業者団体等に対して、指針の周知を図るとともに、指針の趣旨を踏まえ各事業場にお いて1,4−ジオキサンによる健康障害の防止対策が適正に行われるよう指導されたい。 また、中央における関係事業者団体に対しては別添2により、指針の普及を図るよう要請したので了知 されたい。 なお、指針は、労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第24条の9の規定により、都道府県労働 基準局において閲覧に供することにより公表するものであるので念のため申し添える。 記 第1 趣旨 1,4−ジオキサンは、有機溶剤中毒予防規則(昭和47年労働省令第36号。以下「有機則」という。) 第1条第1項第4号の第2種有機溶剤に該当し、同項第6号に掲げる有機溶剤業務を行う場合には、比 較的高濃度、短期間の暴露を防止する観点から、有機則において労働者の健康障害の防止のための所要 の措置を講ずることとされているところである。 1,4−ジオキサンのがん原性については、米国労働安全衛生研究所(NIOSH)等の研究機関が、 哺(ほ)乳動物に対するがん原性の疑いに着目し、NIOSHでは、1,4−ジオキサンによる労働者の健 康障害を防止するための勧告を出している。労働省においてもそのがん原性についての調査を進めてき たところであるが、今般、日本バイオアッセイ研究センター(神奈川県秦野市)における哺(ほ)乳動物 を用いた長期毒性試験(経口投与)の結果から1,4−ジオキサンが哺(ほ)乳動物の肝臓及び鼻腔(こう) に悪性の腫瘍(しゆよう)を発生させることが判明した。1,4−ジオキサンの人に対するがん原性につい ては現在確定していないが、労働者がこれに長期間暴露された場合、肝障害、腎障害等従来から知られ ている健康障害のほかに、がん等の重度の健康障害を生ずる可能性も否定できず、この観点から労働者 の健康障害の防止に特別の配慮が求められる。 このようなことから1,4−ジオキサンのがん原性に着目し、指針において、現行の有機則の規定によ る措置以外に、1,4−ジオキサンを含有するものを製造し、又は取り扱う業務全般を対象として、労働 者の健康障害を防止するために構ずべき措置を定めることとしたものである。 なお、有機則は、1,4−ジオキサン又は1,4−ジオキサンを5パーセントを超えて含有するものにつ いて適用されるが、指針では1,4−ジオキサン又は1,4−ジオキサンを1パーセントを超えて含有する ものが対象となることに留意されたい。 (一部削除) 第2 1,4−ジオキサンへの暴露を低減するための措置 1 指針2の(1)関係 有機則が適用される業務については、設備の密閉化、局所排気装置の設置等有機則に定める暴露低減 措置を講ずることは当然であるが、これに加えて指針に定める措置を講ずることによって、1,4−ジオ キサンへの暴露を低減させる趣旨であること。これらの措置については、有機則において特段の規定を 設けていないが、化学物質のがん原性に着目した場合に労働者の1,4−ジオキサンへの暴露を減少させ るために有効とされる措置であること。 (1) 指針2の(1)のイ関係 労働者の暴露の低減を図るため、事業場における1,4−ジオキサン等の製造量、取扱量、作業の頻 度、作業時間、作業の態様等を総合的に勘案し、指針2の(1)のイに掲げた項目の中から当該事業場 において適切な措置を講ずることとしたものであり、指針2の(1)のイに掲げるすべての項目につい て措置を講ずることを求める趣旨ではないこと。例えば有機則適用業務であるために、すでに局所排 気装置の設置をしている場合に、さらに1,4−ジオキサンの暴露の低減を図るために、作業方法を改 善し、あるいは作業位置を工夫する等の措置は、指針の趣旨に沿うものであること。 また、1,4−ジオキサンは皮膚浸透性が強く、直接触れた場合に皮膚を通して体内に吸収されるこ と、また、眼、粘膜、皮膚等に付着した場合も刺激性を有することが知られているので、これらの点 についても配慮が必要であること。 なお、指針2の(1)のイの「その他必要な措置」には、代替物質への変更、隔離室での遠隔操作等 が含まれ、「使用条件等の変更」には、使用温度の適正化等があること。 (2) 指針2の(1)のロ関係 1,4−ジオキサンは水への溶解性が高く、一度混合すると水と分離しにくい性質もあることから、 当該物質を含有する排気、排液等の作業場外への排出にあたっては、事業場の汚染による労働者の健 康障害防止の観点からは勿論、付近一体の汚染防止に対しても当然配慮することを示したものである こと。 (3) 指針2の(1)のニ関係 設備、装置等の操作及び点検、異常な事態が発生した場合の措置、保護具の使用等についての作業 基準を作成し、これを労働者に遵守させることによって、より効果的に暴露の低減を図ることを目的 としたものであること。 (4) 指針2の(1)のホ関係 1,4−ジオキサンは水への溶解性が高く、一度混合すると水と分離しにくい性質があり、1,4−ジ オキサンを含む廃水の処理及び1,4−ジオキサンの混和した水の取扱い等の際にも1,4−ジオキサン に暴露するおそれがあることから定めたものであること。 2 指針2の(2)関係 有機則適用業務以外の業務については、1,4−ジオキサン等の製造量及び取扱量、作業の頻度、作業 時間、作業の態様等を総合的に勘案し、当該作業場において指針2の(2)のイに掲げるものの中から適 切な措置を講ずることとしたものであり、指針2の(2)のイに掲げるすべての項目について措置を講ず ることを求めるものではないこと。例えば、一日のうちで、1,4−ジオキサン等に暴露する時間が極め て短時間である等の理由によって、設備の密閉化あるいは局所排気装置の設置が必ずしも現実的でない 場合においては、作業方法の改善及び保護具の使用を効果的に行い、1,4−ジオキサンの暴露の低減を 図る等の措置は指針の趣旨に沿うものであること。また、1と同様、1,4−ジオキサンの経皮暴露につ いても配慮を要すること。 なお、指針2の(2)のイの「その他必要な措置」及び「使用条件等の変更」は、上記1指針2の(1)の イ関係における場合と同様の趣旨であるとともに、「局所排気装置等」には、局所排気装置のほか、プ ッシュプル型換気装置及び全体換気装置が含まれるものであること。また、機械部品の洗浄等に広く使 用されている第2種有機溶剤の1,1,1−トリクロルエタンには、数パーセント程度の1,4−ジオキサ ンが安定剤として添加されていることが多いので、1,1,1−トリクロルエタンを使用する事業者に対 しても1,4−ジオキサンの存在の有無及びその含有率をチェックし、適切な管理を行うよう指導するこ と。 第3 作業環境測定 有機則において作業環境測定の結果及びその評価の結果の記録を3年間保存しなければならないとさ れているが、指針においては有機則適用業務、有機則適用業務以外の業務を問わず、作業環境測定の結 果及びその評価の結果を記録し、これを30年間保存することとした。これは、1,4−ジオキサンの人に 対するがん原性については現時点では評価が確定してはいないものの、その可能性があることから、が ん等の遅発性の健康障害は、その暴露状況を長期間にわたって把握する必要があることを考慮し、特定 化学物質等障害予防規則(昭和47年労働省令第37号)の特別管理物質に関する記録の保存の規定になら ったものであること。 なお、1,4−ジオキサンは、そのがん原性に着目した作業環境管理を行う必要があることから、指針 の対象となる作業場については作業環境評価基準(昭和63年労働省告示第79号)第2条の第1管理区分 を維持するよう指導すること。 また、機械部品の洗浄等に広く使用されている第2種有機溶剤の1,1,1−トリクロルエタンには、 数パーセント程度の1,4−ジオキサンが安定剤として添加されていることが多いので、1,1,1−トリ クロルエタンを使用する事業者に対しては、当該有機溶剤を使用する事業場の作業環境測定等の際に、 1,4−ジオキサンの存在の有無及びその含有率をチェックし、1パーセントを超えて含有されている場 合には作業環境測定を実施するよう指導すること。 第4 労働衛生教育 1,4−ジオキサン等を製造し、又は取り扱う業務に従事している労働者及び当該業務に従事させるこ ととなった労働者に対して、1,4−ジオキサンの有害性等に着目した労働衛生教育を行うこととしたこ と。有機則適用業務にあっては、昭和59年6月29日付け基発第337号「有機溶剤業務従事者に対する労 働衛生教育の推進について」により労働安全衛生法第59条第3項の「特別教育」に準じた教育を行うこ ととされているが、1,4−ジオキサンの有害性にかんがみ、新たに指針の対象となる有機則適用業務以 外の業務に従事する労働者に対しても適切な教育を行うことが必要であることから、指針において同様 の労働衛生教育の実施について定めたものであること。 なお、本教育は作業の変更がない限り繰り返し行う必要はないこと。また、有機則適用業務において すでに上記通達による教育を実施している場合は、重ねて指針に基づく教育を実施する必要はないこと。 第5 暴露労働者の把握等 労働者の氏名等の記録を保存することとしたのは、上記第3と同様の趣旨であること。 (参考) 1 日本バイオアッセイ研究センターにおける飲水投与による長期がん原性試験の結果について(抄) 試験は、F344/DuCrj(Fischer)ラット(6週令)及びCrj:BDF1マウス(6週令)を用い、それぞれ雌 雄各群50匹、4群の構成とし、合わせてラット400匹、マウス400匹を使用し、1,4−ジオキサン濃度を ラットでは5,000、1,000、200、0ppm(対照群)、マウスでは、8,000、2,000、500、0ppm(対照群)と なるように飲水に混ぜ、試験期間中自由に摂取させた。104週間(約2年間)にわたる1,4−ジオキサ ンの投与の結果、ラットでは5,000ppm群で鼻腔(こう)の主として扁平上皮癌(がん)、肝細胞癌(がん)、 腹膜の中皮腫の発生増加が、また、マウスでは500ppm以上の群で肝細胞癌(がん)の発生増加が観察され たことから、ラット及びマウスに1,4−ジオキサンによるがん原性が示された。 鼻腔(こう)悪性腫瘍(しゆよう)、肝細胞癌(がん)及び腹膜中皮腫(しゆ)の発生数 (ラット、それぞれ50匹中)(表)
肝細胞癌(がん)発生数(マウス、それぞれ50匹中)(表)
2  1,4−ジオキサンについて
  (1) 性状
      1,4−ジオキサンは常温常圧では無色透明の液体で、エタノール様の芳香を有する。臭いのは閾値
    は170ppmといわれている。水のほかエタノール、エーテル等のほとんどの有機溶剤と自由に混和する、
    一般の飽和エーテルに似た化学反応性を示し、比較的安定しているが、空気中の酸素によって不安定
    な爆発性の過酸化物を形成する。
      なお、物性等については表に示すとおりである。(表)
  (2) 用途等
      1,4−ジオキサンは、ラッカー、セルロイド、セルロース系の樹脂、ペイントとワニスのはく離剤、
    洗浄剤、脱臭剤、合成皮革表面処理剤、医薬品用抽出溶剤、農薬用抽出溶剤、各種工業溶剤として使
    用されるが、主たる用途は塩素系有機溶剤(1,1,1−トリクロルエタン)の安定剤であり、平成2
    年度の製造・輸入の合計数量は合わせて約12,700トンである。
  (3) 有害性
      1,4−ジオキサンは、作業場における蒸気の吸入による粘膜の刺激症状が見られるとともに、皮膚
    からも吸収されて中毒作用を起こし、眠気、めまい、頭痛、食欲減退、吐き気などの症状が現れるほ
    か、肝障害、腎障害を起こすことがある。
3  その他の1,4−ジオキサンに係る情報
  (1) 日本産業衛生学会の評価
      哺(ほ)乳動物に対するがん原性試験の結果等を考慮し、人間に対しておそらくがん原性を有すると
    考えられるが、その証拠が比較的十分でない物質としている。
  (2) 国際がん研究機関(IARC)の評価
      1,4−ジオキサンはラットの肝臓、鼻腔(こう)、胆のうに悪性腫瘍(しゆよう)を発生させるほか、
    モルモットにも肝臓の悪性腫瘍(しゆよう)を発生させることから、哺(ほ)乳動物に対するがん原性の
    証拠は十分であるとしている。一方、人に対する影響についてはいくつかの報告があるが証拠は不十
    分であるとしている。
  (3) 米国労働安全衛生研究所(NIOSH)の評価
      1,4−ジオキサンに関するいくつかの動物実験の結果から人に対してもがん原性の疑いがある物質
    であるとしており、取扱い等に関する勧告を公表している。
4  本指針と有機則との関係
    本指針と有機則との関係は下表のとおりである。(表)
別添2(平成28年3月31日 基発0331第26号により廃止)
基発第658号の2
平成4年12月21日
日本化学工業協会会長
日本製薬団体連合会会長
農薬工業会会長                     あて
(株)日本塗料工業会会長
クロロカーボン衛生協会会長
労働省労働基準局長

1,4−ジオキサンによる健康障害を防止するための指針について
  労働基準行政の推進につきましては、平素より御協力を賜り厚くお礼申し上げます。
  さて、1,4−ジオキサンについては、これまで急性及び慢性中毒等を防止する観点から、有機溶剤中毒
予防規則において第2種有機溶剤として、労働者の健康障害の予防対策を推進してるところですが、今般、
労働省におきましては、動物実験でのがん原性が明らかとなった点に着目し、1,4−ジオキサンによる健
康障害を防止するための指針を平成4年12月21日別添1<略>のとおり公表するとともに、同指針の適正
な運用を図るため、別添2<略>のとおり都道府県労働基準局長あて通達したところです。
  つきましては、貴団体におかれましても本指針の趣旨を御理解いただき、傘下会員に対する本指針の周
知を図られるとともに、1,4−ジオキサンによる健康障害の防止対策が適正に行われるよう御配慮いた
だきますようお願い申し上げます。