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別紙2
              コーヒー抽出設備で発生した一酸化炭素中毒


1 発生日時    平成6年11月10日 午前9時30分頃

2 被災状況    死亡1名

3 発生箇所状況
(1)事業場、設備の概要
  災害発生事業場は、飲料缶詰製造、果物缶詰製造、レトルト加工が行われている工場であり、災害はその
 中のコーヒー抽出設備で発生した。
  コーヒー抽出工程は、抽出容器(円筒形、直径150cm、高さ181cm、内容積約3m3)に粉砕加工済み焙煎コー
 ヒー豆及び温水等を投入し行う。

(2)作業の概要
  コーヒー液の抽出作業は、次のような過程により行われる。
  [1] 抽出容器内に温水を入れる。
  [2] 天井クレーンでコーヒー原料の入ったフレキシブルコンテナを抽出容器上部に運搬し、フレキシブ
    ルコンテナ下部の縛り口をとき、抽出容器の投入口から投入する。
  [3] かまし棒(長さ150cm)でコーヒー原料を平らにならし、上蓋を締める。
  [4] 抽出容器内に温水を入れる。
  [5] 抽出されたコーヒー液は抽出容器下部についているパイプを通って抽出タンクに移送される。温水
    は抽出容器内の水位を保つため、適宜注入する。
  [6] 抽出終了後、フィルター上部に水が残っていないことを確認する。基本的には行わないが、手で上
    蓋を開けてコーヒー原料の異常の有無等を目視する場合がある。
  [7] 制御盤により抽出容器下蓋を開けてコーヒー原料の残滓物を排出する。
  [8] 抽出容器内部に付着している残滓物は抽出容器内の清掃用散水シャワーや投入口からのホースによ
    る放水で落とす。

(3)災害発生状況
  災害発生日当日、1名が抽出工程、1名が調合工程を担当していた。抽出担当者は、2階からコーヒー原料
 を投入し、かまし棒でコーヒー原料を平らにならしてから、上蓋を締め、温水等を注入するため制御盤を操
 作していた。1回の抽出を終え、2回目の抽出工程を終了したところで、コーヒー原料の残滓物の排出がなか
 なか行われなかったため、調合担当者が抽出担当者の様子を見に2階に上がったところ、抽出容器内部で倒
 れている抽出担当者を発見した。応援を呼び3名で被災者を抽出容器内部から救出し、救急車で病院へ運ん
 だが、1ヶ月後死亡した。抽出容器内部にかまし棒があったことから、被災者はコーヒー原料をかまし棒で
 ならしていた際に抽出容器内にかまし棒を誤って落とし、抽出終了後にかまし棒を取るために抽出容器内部
 に立ち入ったものと推定される。

4 災害発生原因
(1)原因物質の特定
  死亡した被災者は、事故発生当日の血液中の一酸化炭素ヘモグロビン量が高かったことから、一酸化炭素
 中毒と診断された。
  再現実験を行ったところ、コーヒー原料の入ったフレキシブルコンテナ内の一酸化炭素濃度が3%、抽出後
 の抽出容器内部の一酸化炭素濃度が1.4%と高濃度の一酸化炭素が発生していることが判明した。
(2)災害発生原因
  [1] 事業者にコーヒー抽出工程において一酸化炭素が発生するという危険認識がなく、換気、測定及び
    呼吸用保護具の備付け等健康障害防止のための対応がとられていなかったこと。
  [2] 労働者に対しても一酸化炭素の危険性に関する教育を行っていなかったこと。
  [3] 労働者に危険認識がなかったこと。
  [4] 焙煎豆メーカーも焙煎豆から一酸化炭素が発生するという危険認識がなく、納入先にその危険性を
    周知していなかったこと。