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別紙 (平成18年8月21日 基安化発第0821001号により廃止)

               建材中の石綿含有率の分析方法

1 測定手順の概要
 石綿含有建材の石綿含有率測定は次の手順に従って実施する。
 分析対象の建材から適切な量の試料を採取し、当該建材の形状や共存物質の状況に応じて、研削、粉砕、
加熱等の処理を行った後、分析用試料を調整する。次に、分析用試料に石綿が含有しているか否かについ
て、位相差顕微鏡を使用して分散染色分析法による定性分析及びエックス線回折分析法による定性分析を
実施し、石綿の含有を確認する。石綿の含有が確認された試料は、ぎ酸で処理して定量分析用の試料を調
整し、基底標準吸収補正法によるエックス線回折分析法により定量分析を行い、石綿含有量を求め、石綿
含有率を算出する。
     
2 石綿含有率測定方法
(1) 試料の採取
  [1] 現場から試料を採取する場合は、粉じんの飛散に留意し、鋭利なカッターなどを用いて行う。
    吹付け材や保温材のような柔らかな材料の場合は1箇所あたり10cm3程度で3箇所から採取する。
    成形された建材の場合は1箇所あたり100cm2で3箇所から採取する。
  [2] 採取した試料は、粉じんの飛散に留意して密封できる容器に入れて必要事項を記載し、保管・
    搬送する。

(2) 分析用試料の調整
  [1] 無機成分試料の場合
     採取した試料を適量粉砕器に入れて十分に粉砕した後、目開き425〜500µmのふるいを通して
    ふるい分けし、すべての試料がふるい下になるまで粉砕とふるい分けの操作を繰り返して行い分
    析用試料とする。成形された建材試料の場合は、カッターナイフやボードサンダー等で側面を削
    りとった試料を粉砕器に入れる。
  [2] 有機成分試料の場合
     試料の適量を磁性るつぼに入れ、450℃±10℃に設定した電気炉に入れ、1時間以上加熱後清浄
    な状態で放冷するか低温灰化装置を用いて有機成分を灰化した後粉砕器に入れ、上記[1]に従っ
    て調整し、分析用試料とする。

(3) 定性分析
  [1] 位相差顕微鏡を使用した分散染色分析法
   ア 標本の作製方法
      容量50mlの共栓試験管に分析用試料10〜20mgと無じん水40mlを入れ、激しく振とうした後、
     容量50mlのコニカルビーカーに移し、回転子をいれ、マグネチックスターラーで撹拌しながら
     清拭した3枚のスライドグラス上にそれぞれマイクロピペッターで10〜20µl滴下し乾燥する。
      次に、屈折率nD25℃=1.550、1.680、1.700の3種類の浸液をそれぞれのスライドグラスに3
     〜4滴滴下し、ピンセットの尖端で浸液と十分に混合・分散し、その上に清拭したカバーグラ
     スを載せて標本とし、試料aA浸液の屈折率をそれぞれ記載しておく。このようにして作製し
     た3枚のスライドグラスを1標本とし、同様の操作を3回繰り返し、1分析用試料について3標本
     を作製する。
   イ 位相差顕微鏡を使用した分散染色分析法による定性分析
      作製した標本を位相差・分散顕微鏡のステージに載せ、倍率10倍の分散対物レンズで分散色
     を示す繊維があるか確認する。分散色を示す繊維が確認された標本について、分散対物レンズ
     の倍率を40倍に切り替え、接眼レンズのアイピースグレーティクルの直径100µmの円内に存在
     するすべての粒子数と分散色を示したアスペクト比3以上の繊維数を計数し、その合計粒子数
     が1000粒子になるまでランダムに視野を移動して計数し、分散色を示した繊維の種類と繊維数
     を記録する。アイピースグレーティクルの直径100µmの円の境界に掛かる粒子の取り扱いは
     「作業環境測定ガイドブック1」((社)日本作業環境測定協会)に準じる。
   ウ 石綿の分散色
 
石綿の種類
浸液の屈折率(nD25℃)
分散色
クリソタイル
1.550
赤紫色〜青色
アモサイト
1.680
桃色
1.700
青色
クロシドライト
1.680
橙色
1.700
青色
  [2] エックス線回折分析法による定性分析      分析用試料を一定量試料ホルダーに充填しエックス線回折分析装置にセットし、エックス線対     陰極:銅(Cu)、管電圧:30〜40kV、管電流:30〜40mAで回転試料台を使用して、2θ=5°〜70°の範     囲で、走査速度を毎分1°〜2°のエックス線回折パターンを測定し、得られたエックス線回折パ     ターンの回折線ピークに石綿の回折線ピークが認められるか否かを確認する。   [3] 石綿含有の有無の確認     石綿含有の有無の確認は、次により判定する。    ア 位相差顕微鏡を使用した分散染色分析法による定性分析の結果、3つの標本のうち一つでも1000     粒子中の石綿繊維が10繊維以上あり、かつエックス線回折分析法による定性分析の結果、一つの     分析用試料でも石綿の回折線ピークが認められた場合は「石綿含有試料」と判定する。    イ 位相差顕微鏡を使用した分散染色分析法による定性分析の結果、3つの標本のうち一つでも1000     粒子中の石綿繊維が10繊維以上認められたが、エックス線回折分析法による定性分析の結果、3つ     の分析用試料のいずれも石綿の回折線ピークが認められない場合は「石綿含有試料」と判定する。    ウ 位相差顕微鏡を使用した分散染色分析法による定性分析の結果、3つの標本のいずれも1000粒     子中の石綿繊維が10繊維未満であったが、エックス線回折分析法による定性分析の結果、一つの     分析用試料でも石綿の回折線ピークが認められた場合は、エックス線回折分析法による回折線が     石綿の回折線であるか否かを確認するために、浸液の屈折率を変えて再度位相差顕微鏡を使用し     た分散染色分析法による定性分析を行い、再分析の結果、石綿以外の物質(アンチゴライト、リ     ザルダイト、クロライト、カオリナイト、ハロサイト、タルク等)であるとの確認がとれた場合     は「石綿含有せず」と判定し、確認がとれなかった場合は「石綿含有試料」と判定する。    エ 位相差顕微鏡を使用した分散染色分析法による定性分析の結果、3つの標本のいずれも1000粒     子中の石綿繊維が10繊維未満で、かつエックス線回折分析法による定性分析の結果、3つの分析     用試料のいずれも石綿の回折線ピークが認められない場合は「石綿含有せず」と判定する。 (4) エックス線回折分析法(基底標準吸収補正法)による定量分析    (3)の[3]で石綿含有が認められた試料について基底標準吸収補正法によるエックス線回折分析法に   より定量分析を行い、石綿含有量を求め、石綿含有率を算出する。   [1] 定量分析用試料の調製      い定量分析に使用する直径25mmのふっ素樹脂バインダグラスファイバーフィルタ(以下「フィ     ルタ」という。)の質量及び基底標準板のエックス線回折強度を計測しておく。      (2)で調整した分析用試料を100mg(M1)精秤してコニカルビーカーに入れ、20%のぎ酸を20ml、     無じん水を40ml加えて、超音波洗浄器で1分間分散した後、30℃±1℃に設定した恒温槽内に入れ、     30秒撹拌、1分30秒静置の操作を6回繰り返してから、フィルタを装着した直径25mmのガラスフィ     ルタベース付きの吸引ろ過装置で吸引ろ過を行う。ろ過後のフィルタを取り出し、乾燥後、フィ     ルタ上に捕集された試料の質量(M2)を求め、定量分析用試料とする。定量分析用試料の作製に当     たっては、1分析用試料当り3つの定量分析用試料を作製する。   [2] 検量線の作製      検量線の作製に使用する直径25mmのフィルタの質量及び基底標準板のエックス線回折強度を計     測しておく。      分析対象の石綿標準試料を0.1mg、0.5mg、1.0mg、3.0mg、5.0mg精秤し(最小試料の秤量値:Mk1)、     コニカルビーカーに入れ、それぞれ20%のぎ酸を0.02ml、0.1ml、0.2ml、0.6ml、1.0ml、無じん水     を0.04ml、0.2ml、0.4ml、1.2ml、2.0ml加えて超音波洗浄器で1分間分散した後、30℃±1℃に     設定した恒温槽内に入れ、30秒撹拌、1分30秒静置の操作を6回繰り返してから、フィルタを装着     した直径25mmのガラスフィルタベース付きの吸引ろ過装置で吸引ろ過を行う。ろ過後のフィルタ     を取り出し、乾燥後、フィルタ上に捕集された試料の質量を求め(最小試料の秤量値:Mk2)、検量     線用試料とする。      作製したそれぞれの検量線試料をエックス線回折分析装置の試料台に固定して、基底標準板と     分析対象の石綿のエックス線回折強度を計測し、基底標準吸収補正法によって検量線を作成する。   [3] 定量分析手順      (4)の[1]で作製した定量分析用試料をエックス線回折分析装置の試料台に固定して、検量線作     成と同一の条件で基底標準板と分析対象の石綿のエックス線回折強度を計測し、基底標準吸収補     正法によって上記[2]で作製した検量線から当該石綿の質量(As)を算出し、次式により石綿含有     率を求める。      Ci = As/M1×R×100      R = M1/(M1-M2)      C = (C1+C2+C3)/3     ここに、Ci:1つの定量分析用試料の石綿含有率 (%)         As:検量線から読み取った定量分析用試料中の石綿質量 (mg)         M1:分析用試料の秤量値 (mg)         M2:定量分析用試料の秤量値 (mg)         R :補正係数         C :分析対象試料の石綿含有率 (%)   [4] 検出下限及び定量下限      検量線用最小試料をエックス線回折分析装置の試料台に固定して、検量線作成と同一の条件で     基底標準板と分析対象の石綿のエックス線回折強度を繰り返して10回計測し、積分エックス線強     度の標準偏差(σ)を求め次式により石綿含有率の検出下限と定量下限を算出する。      Ck=(3σ/a)/M1×Rk×100      Ct=(10σ/a)/M1×Rk×100      Rk=Mk1/(Mk1-Mk2)     ここに、a : 検量線の傾き         M1:分析用試料の秤量値 (100mg)         Mk1:検量線作製時のぎ酸処理前の最小試料の秤量値 (mg)         Mk2:検量線作製時のぎ酸処理後の最小試料の秤量値 (mg)         Rk:検量線に係る補正係数         Ck:石綿含有率の検出下限 (%)         Ct:石綿含有率の定量下限 (%)