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                                             別添1 
               酸素欠乏症等災害発生状況の分析

1 酸素欠乏症等災害の発生状況の推移 (昭和62年〜平成18年)(表1、図1〜3)
 休業4日以上の酸素欠乏症又は硫化水素中毒(以下「酸素欠乏症等」という。)による災害の発生件数 は減少傾向が伺えていたところ、平成18年において前年比40%増と再び増加に転じ、減少傾向が定着しな い状況にある。  また、酸素欠乏症等による死亡者が平成18年は11名と、平成15年以降最悪の数となっている。これを酸 素欠乏症と硫化水素中毒の別でみると、酸素欠乏症による死亡者が9名(前年比5名増)、硫化水素中毒に よる死亡者が2名(前年比2名増)であり、特に酸素欠乏症による死亡者数は、最近10年で平成12年の10人 に次ぐものであった。  なお、平成18年において、死亡者11名のうち救助しようとした者が被災するいわゆる二次災害による死 亡者は3名(前年比3名増)であった。
表1 休業4日以上の酸素欠乏症等発生状況(昭和62年〜平成18年)
62 63 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18
酸素欠乏症 被災者数 17 22 26 23 30 20 17 22 23 22 25 28 9 21 15 10 5 11 9 12 367
死亡者数 10 9 9 10 16 12 8 8 14 10 8 9 3 10 7 7 3 2 4 9 168
発生件数 14 14 14 16 20 13 13 16 14 13 15 17 7 17 12 7 5 10 8 11 256
硫化水素
中毒
被災者数 13 7 6 10 2 11 8 12 8 13 5 7 13 7 7 18 2 4 3 3 159
死亡者数 2 3 2 1 1 2 7 2 1 4 0 2 6 6 1 15 0 3 0 2 60
発生件数 7 3 4 5 2 6 3 6 4 8 3 5 6 3 5 7 2 2 2 3 86
合  計 被災者数 30 29 32 33 32 31 25 34 31 35 30 35 22 28 22 28 7 15 12 15 526
死亡者数 12 12 11 11 17 14 15 10 15 14 8 11 9 16 8 22 3 5 4 11 228
発生件数 21 17 18 21 22 19 16 22 18 21 18 22 13 20 17 14 7 12 10 14 342
備考 被災者数は死亡者数を含む。
図1 酸素欠乏症等発生状況(昭和62年〜平成18年)
図2 酸素欠乏症発生状況(昭和62年〜平成18年)
図3 硫化水素中毒発生状況(昭和62年〜平成18年)
2 酸素欠乏症等災害の発生原因(平成9年〜18年)(図4)

 最近10年間における酸素欠乏症等による災害発生件数147件について、その発生原因について見ると、 酸素濃度等の測定の未実施が原因の一つとなっているものが93件、換気の未実施が78件、空気呼吸器等の 未使用が62件と他の原因に比べて突出している。
図4 酸素欠乏症等の発生原因別発生件数(平成9年〜平成18年)
3 酸素欠乏症等災害の管理面での問題点(平成9年〜18年)(図5)

 最近10年間における酸素欠乏症等による災害発生件数147件について、管理面の問題点について見ると、
作業主任者未選任が原因の一つとなっているものが65件、特別教育未実施が62件、作業標準不徹底が54件、
安全衛生教育不十分が51件となっている。  平成18年においても、酸素欠乏症等災害件数14件中12件に作業主任者未選任、特別教育未実施、作業標 準不徹底、安全衛生教育不十分のいずれかの問題点が認められた。  その原因の多くは酸素欠乏危険作業であることの意識が希薄であったことによるものと考えられる。
図5 酸素欠乏症等の管理面での問題点別発生件数(平成9年〜平成18年)
4 酸素欠乏症等災害の発生形態別発生状況(平成9年〜18年)(図6、7)

 (1)最近10年間における酸素欠乏症による災害発生件数109件について、酸素欠乏空気の発生形態につ    いて見ると、無酸素気体に置換されたことによるものが66件と最も多く、次いで、有機物の腐敗、    微生物の呼吸等による空気中酸素の消費によるものが18件、タンクその他の素材の酸化によるもの    が14件となっている。  (2)平成18年においても、発生した災害の多くは無酸素気体に置換されたことによるものであるが、    木材の呼吸作用やタンクその他の素材の酸化が酸素欠乏空気の発生形態である災害も認められ、こ    のような発生形態にも日頃から注意する必要がある。    また、平成18年において、気中の空気が窒素ガス等無酸素気体に置換されたことによる災害の多く    は製造業で発生している。  (3)無酸素気体による置換について、その無酸素気体の種類別に見ると、窒素が28件と最も多く、次    いで、二酸化炭素が12件、プロパンが10件となっている。  (4)最近10年間における硫化水素中毒による発生件数38件について、硫化水素の発生形態を見ると、    し尿、汚水等からの発生が30件と大半を占めている。
図6 発生形態別発生件数(平成9年〜平成18年)
図7 置換した無酸素気体の種類別発生件数(平成9年〜平成18年)
5 酸素欠乏症等災害の月別災害発生件数(平成9年〜18年)(図8)

 最近10年間における酸素欠乏症等による月別災害発生件数について見ると、酸素欠乏症は特定の月に多 く発生する等の傾向は認められないが、硫化水素中毒は夏季に多く発生する傾向がみられる。平成18年に おいても、硫化水素中毒災害の発生はいずれも8月であり、夏季は特に硫化水素中毒に対する注意を要す る時期といえる。
図8 月別発生件数(平成9年〜平成18年)
6 酸素欠乏症等の業種別発生状況(平成9年〜18年)(図9〜10)

 最近10年間における酸素欠乏症等による災害発生件数147件について、業種別について見ると、製造業 で53件と最も多く、次いで建設業で39件、清掃業で21件となっている。製造業では、食料品製造業及び化 学工業における災害が比較的多いものの、酸素欠乏症は様々な業種で発生していることがわかる。また、 建設業では酸素欠乏症による災害が、清掃業では硫化水素中毒による災害が多く発生している。  主要業種における酸素欠乏症等による災害を発生場所別に見ると、マンホール、ピット、タンク等狭く、 通風が不十分な場所で多く発生している。
図9 酸素欠乏症等の業種別発生件数(平成9年〜平成18年)
図10 主要業種の発生場所別発生件数(平成9年〜平成18年)
7 まとめ

 酸素欠乏症等は、酸素濃度等の測定、十分な換気の実施、空気呼吸器等の使用等の措置を適正に実施す れば発生を防ぐことができるものであるにもかかわらず、後を絶たない。  平成18年は、二次災害による死亡者も3名を数え、多くの関係事業場において、酸素欠乏症等防止対策 の基本がおろそかにされていることが懸念される。  作業者の災害防止はもちろんのこと、二次災害を未然に防ぐには、空気呼吸器等を備え付け、かつこれ を確実に使用させる等の法令に定める酸素欠乏症等防止対策を徹底させることが重要であり、また当然の ことである。  加えて、平成18年における災害発生状況に鑑みて、事業者に対して下記事項を特に指導する必要がある。  (1) 酸素欠乏危険場所、酸素欠乏空気の発生メカニズム等を酸素欠乏危険作業に直接従事する者だ    けでなく、間接的に関わる者も含め、十分な安全衛生教育を実施すること。また、事業者自らも至    る所に酸素欠乏危険場所は存在しうるものであることを認識し、積極的にリスクの洗い出しに努め    ること。  (2) 製造工程等で取り扱われるガスについては、窒素等、当該気体によって酸素が置換され酸素欠    乏空気を発生させるものがあるが、酸化防止や爆発・火災防止等の利便性やそれ自体の無毒性ばか    りが注目されがちであり、各種無酸素気体の性質及び当該気体による酸素欠乏の危険性等について    教育を徹底すること。  (3) 一人作業時に発生した災害が認められるところであり、監視人の配備等異常を早期に把握する    ために必要な措置を講じること。  (4) 酸素欠乏危険場所であるにもかかわらず、有機溶剤用防毒マスクを着用して作業を行ったため、    被災した災害が認められる。防毒マスク及び防じんマスクは、酸素欠乏症等の防止には全く効力    のないものであり、酸素欠乏危険作業の際には絶対に用いてはならないものであることを認識する    こと。