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                                             (別添)
 
                                        平成20年12月18日
内閣府特命担当大臣
野田 聖子 殿

                                  自殺対策を考える議員有志の会

 
                  自殺緊急対策に関する要望書
 
 
【主旨】
 日本の自殺者数が 3万人を超えたのは 1998年。そのはじまりは「1998年3月」である。1997年の11月に三
洋証券と北海道拓殖銀行が相次いで経営破たんに陥り、さらに山一証券が自主廃業に追い込まれた。その年
度の決算期、つまり 1998年3月に完全失業率が初めて 4%を超え、倒産件数が1990年以降で過去最多を記録。
この経済情勢の悪化に引きずられるようにして日本の自殺者数は急増しはじめた。私たちは、それを「98年
3月ショック」と呼んでいる。
 そして今、そのとき以上の危機に直面していると思わざるを得ない。ご承知の通り、サブプライムローン
問題に端を発した世界的な金融危機は日本を直撃し、いま全国で倒産そして失業者が急増している。当時よ
りも深刻なのは、派遣労働者をはじめとする非正規労働者そして外国人労働者が次々と契約を打ち切られて
いることである。「仕事がなくなると住むところもなくなる。失業保険などの社会保障も受けられない」な
ど、解雇されると同時に生活基盤を失うことになる。雇用や住宅など緊急対策は取られようとしているが、
究極の悲劇である自殺に対する対応が弱いと考える。
 今年7月に民間の有志で作られた「自殺実態解析プロジェクトチーム」がまとめた「自殺実態白書2008」
に『自殺は、人の命に関わる極めて「個人的な問題」である。しかし同時に、自殺は「社会的な問題」であ
り、「社会構造的な問題」でもある』とある。国そして政治の最大の責任は「国民の命を守ること」だと考
える。自殺対策の現場で活動する人たちからも「このままだと“09年3月ショック”が起きかねない!」と
の声が数多く寄せられている。過去の教訓から学び、自殺に追い込まれる人を一人でも減らすために、そし
て国民の「いのち」を守るために、国を挙げて自殺対策に緊急的に取り組む必要がある。
 すべての省庁および都道府県や市区町村などにも緊急要請を行うとともに、あらゆる関係団体および民間
団体との連携を強化し、実効性と迅速性を上げる必要がある。また、そのために必要な経費の確保にも緊急
対応をすべきだと考える。私たち『自殺対策を考える議員有志の会』は政府を挙げての自殺緊急対策を強く
求めるとともに、直ちに次の「自殺緊急対策5項目」を実施することをここに強く要望する。
 
【自殺緊急対策 5項目】
  
1、自殺実態の緊急公表
  毎月の自殺者数を、翌月の早い段階で緊急公表すること。社会全体に警鐘を鳴らし、危機感を共有する
 とともに早急に具体的対応を実行すること。 
 ※5カ月前の統計では具体的対策が打てない。警察庁は硫化水素自殺の統計を翌月に公表しており、不可
  能ではないと考える。 
 
2、ハイリスク者への緊急支援策の実施
  自殺実態から、それぞれの地域での職業や性別、自殺の要因などを分析し、ターゲットを絞った上で、
 緊急かつ効果的な対策を実施すること。
 ※「自殺実態白書2008」から見えてきた自殺の危機経路(プロセス)を参考にして、倒産や失業から連鎖
  が想定される要因への対策を重点的に行う。 
 
3、緊急相談窓口の開設
  「死にたい。もう生きられない」という状況に追い込まれた人たちに対して、包括的な支援を行う緊急
 相談窓口を全国の市区町村に開設すること。また、自殺のハイリスク地(自殺の名所等)における水際対
 策(相談所の設置、パトロールの強化、相談所案内看板の設置等)の強化を図ること。 
 ※切迫した状況に追いやられている人ほど自分を見失い、どういった問題で悩んでいるのかを把握できな
  い傾向にある。まず相談できる窓口が必要であり、対策は様々な関係者と連携して行う。 
 
4、行き詰まった時のシェルター(緊急避難場所)の開設
  仕事も住むところも失って行き詰まった時に家族と一緒に駆け込める、社会的に「休息」できるシェル
 ター(緊急避難場所)を各都道府県に開設すること。
 ※倒産と失業は男性の自殺者を急増させる。 1998年では男性の自殺者が78.1%を占め、特に 45歳から64
  歳までの中高年男性の増加が顕著である。男性が家族と一緒に駆け込める場所が必要と考える。 
 
5、地域の相談員を対象とした緊急合同研修会の実施
  行政や民間を問わず、地域の相談員の間で様々な支援策や相談窓口に関する情報を共有するための合同
 研修会を早急に実施すること。
 ※行政の縦割りや専門分野の壁に阻まれて、問題を多く抱えた人ほど支援策にたどり着きづらいという社
  会的ジレンマが生じている。支援策に関する情報を、あらゆる窓口で提供できる体制が必要である。