(解説)
 本解説は、職場における熱中症予防対策を推進する上での留意事項を解説したものである。
1 熱中症について
  熱中症は、高温多湿な環境下において、体内の水分及び塩分(ナトリウム等)のバランスが崩れたり、
 体内の調整機能が破綻する等して、発症する障害の総称であり、めまい・失神、筋肉痛・筋肉の硬直、
 大量の発汗、頭痛・気分の不快・吐き気・嘔吐・倦怠感・虚脱感、意識障害・痙攣・手足の運動障害、
 高体温等の症状が現れる。

2 WBGT値(暑さ指数)の活用について
 (1) WBGT値の測定方法等は、日本産業規格JIS Z 8504を参考にすること。
 (2) 日射及び発熱体がなく、かつ、温度と湿度が一様な、気流の弱い室内作業環境であって、WBGT指数
  計等によるWBGT値の実測が行われていない場合には、日本生気象学会が作成した「日常生活における
  熱中症予防指針」における「図2.室内を対象とした気温と相対湿度からWBGTを簡易的に推定する図
  (室内用のWBGT簡易推定図)」等が熱ストレス評価を行う際の参考になること。

3 作業管理について
 (1) 暑熱順化の例としては、次に掲げる事項等があること。
  ア 作業を行う者が暑熱順化していない状態から7日以上かけて熱へのばく露時間を次第に長くする
   こと。
  イ 熱へのばく露が中断すると4日後には暑熱順化の顕著な喪失が始まり3〜4週間後には完全に失わ
   れること。
 (2) 作業中における定期的な水分及び塩分の摂取については、身体作業強度等に応じて必要な摂取量等
  は異なるが、作業場所のWBGT値がWBGT基準値を超える場合には、少なくとも、0.1〜0.2%の食塩水、
  ナトリウム40〜80mg/100mlのスポーツドリンク又は経口補水液等を、20〜30分ごとにカップ1〜2杯
  程度を摂取することが望ましいこと。
 (3) 飛沫飛散防止器具には、使い捨ての不織布マスク(サージカルマスク)、布マスク、ウレタンマスク、
  フェイスシールド、マウスシールド等が含まれること。

4 健康管理について
 (1) 糖尿病については、血糖値が高い場合に尿に糖が漏れ出すことにより尿で失う水分が増加し脱水状
  態を生じやすくなること、高血圧症及び心疾患については、水分及び塩分を尿中に出す作用のある薬
  を内服する場合に脱水状態を生じやすくなること、腎不全については、塩分摂取を制限される場合に
  塩分不足になりやすいこと、精神・神経関係の疾患については、自律神経に影響のある薬(パーキン
  ソン病治療薬、抗てんかん薬、抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬等)を内服する場合に発汗及び体温調整
  が阻害されやすくなること、広範囲の皮膚疾患については、発汗が不十分となる場合があること等か
  ら、これらの疾患等については熱中症の発症に影響を与えるおそれがあること。
 (2) 感冒等による発熱、下痢等による脱水等は、熱中症の発症に影響を与えるおそれがあること。また、
  皮下脂肪の厚い者も熱中症の発症に影響を与えるおそれがあることから、留意が必要であること。
 (3) 心機能が正常な労働者については1分間の心拍数が数分間継続して180から年齢を引いた値を超える
  場合、作業強度のピークの1分後の心拍数が120を超える場合、休憩中等の体温が作業開始前の体温に
  戻らない場合、作業開始前より1.5%を超えて体重が減少している場合、急激で激しい疲労感、悪心、
  めまい、意識喪失等の症状が発現した場合等は、熱へのばく露を止めることが必要とされている兆候
  であること。

5 救急処置について
  熱中症を疑わせる具体的な症状については表2の「熱中症の症状と分類」を、具体的な救急処置につ
 いてはの「熱中症の救急処置(現場での応急処置)」を参考にすること。
 
 

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