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第1  労働行政を取り巻く情勢
1  社会経済情勢
(1) 経済社会の構造的な変化
我が国経済社会は、高い実質経済成長率を期待しがたい環境の中で、経済の国際化、情報化、サービス経済化並びに生産設備の海外移転及び規制改革等に伴う産業構造の変化が急速に進展している。
このような状況の下、労働力需給のミスマッチの拡大がみられる。同時に、企業における能力主義、成果主義的な賃金・処遇制度の導入など人事労務管理の個別化も進んでおり、女性労働者の増加並びにパートタイム労働者等の増加などの就業形態の多様化及び若年層を中心とした就業意識の多様化も進展している。
また、経済社会の国際化の中で我が国で就労する外国人労働者が増加している。
一方、急速な少子・高齢化が進行しているが、背景として仕事と子育ての両立の負担感等が指摘される中、現状のままでは、少子化は今後一層進行すると予想されている。加えて、働きながら介護の負担を担わなければならない者が今後ますます増加することが見込まれる。
(2) 最近の経済情勢
景気は、設備投資と輸出に支えられ、着実な回復を続けている。また、生産は増加し、企業収益も改善が続いており、個人消費は持ち直している。
政府としては、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」の早期具体化により、構造改革の一層の強化を図るとともに、日本銀行と一体となって、金融・資本市場の安定及びデフレ克服を目指し、引き続き強力かつ総合的な取組を行う。

2  雇用を巡る動向
(1) 最近の雇用失業情勢
最近の雇用失業情勢は、依然として厳しいものの、改善の動きがみられる。
公共職業安定所で取り扱う新規求人数は、前年同月比で平成14年7月以降増加が続いている。一方、求職者数は前年同月比で平成14年11月以降減少傾向が続いている。これらの結果、有効求人倍率は上昇しており、平成15年10月以降、平成9年10月以来6年ぶりの水準である0.7倍台となっている。
また、完全失業者数は、平成15年6月に4か月ぶりに減少に転じて以降8か月連続で減少しているが、依然として300万人を超える高い水準で推移している。また、完全失業者のうち失業期間が1年以上の長期失業者については、15年10〜12月期で、全体の34.7%を占めており、かつ増加傾向が続いている。完全失業率は、平成14年8月、15年1月にこれまでで最も高い水準の5.5%となった後、平成15年12月には4.9%と2年6か月ぶりに4%台に低下したが、1月には再び5.0%となった。このように、完全失業率は依然として高い水準で推移している。
雇用者数は、前年同月比で平成15年3月に19か月ぶりに増加に転じた後、前年同月比で減少する月もあり、一進一退の動きで推移してきたが、11月から3か月連続で増加している。企業の雇用過剰感は、産業別、規模別にみても低下傾向にあるが、依然として残っている。また、雇用調整の実施事業所割合については、低下傾向にある。
このように、公共職業安定所においては、求人数が増加し、求職者数が減少する中で、就職件数も増加しているなど改善の動きがみられるが、労働市場全般をみると依然として厳しい状況となっている。また、雇用失業情勢の改善の状況には地域差がみられる。
(2) 若年者の雇用状況
若年者の雇用情勢については、平成16年1月の15〜24歳層の完全失業率が9.5%と、年齢計の5.0%と比べ高水準で推移しており、また、フリーターについては平成14年には209万人に達していると推計されるなど、依然として厳しい状況が続いている。
また、平成16年3月高校新卒者の就職内定状況(平成16年1月末現在)を見ると、全国の内定率は76.7%と、過去最低であった前年同期(平成15年1月末現在)に比べ2.3ポイント上昇しているが、その状況をみると33.0〜82.2%と地域ごとに違いが見られる。平成16年3月大学新卒者の就職内定状況(平成16年2月1日現在)を見ると、全国の内定率は82.1%と、前年同期(平成15年2月1日現在)に比べ1.4ポイント低下している。
(3) 高齢者の雇用状況
高齢者の雇用管理の現状(平成15年1月1日現在)をみると、少なくとも65歳まで働ける場を確保する企業は71.8%、そのうち、原則として希望者全員を対象とする企業は28.8%となっている。また、雇用失業情勢については、平成16年1月の60〜64歳層の完全失業率は6.4%と高水準で推移し、有効求人倍率は0.23倍と依然として低く、一旦離職すると再就職が厳しい状況にあり、失業期間も長期化する傾向にある。
(4) 障害者の雇用状況
障害者については、民間企業の実雇用率の上昇(平成15年6月1日現在1.48%。前年より0.01ポイントの上昇)、解雇者数の減少(前年同期比(4〜9月)40%減少)、就職件数の増加(前年同期比(4〜10月)15%増)等明るい動きもあるものの、法定雇用率未達成企業の割合が57.5%(平成15年6月1日現在)と依然として高水準にあるほか、有効求職者も平成15年10月に15万8千人と過去最高となるなど、依然として厳しい状況となっている。
(5) 女性の雇用状況
女性雇用者数は平成15年には2,177万人となり、平成14年に比べ16万人増加(14年度比0.7%増)した。
また、年齢階級別労働力率をみるとM字型カーブの底である30〜34歳層の労働力率は60.3%と、労働力調査の開始(昭和21年9月)以来初めて60%を超えた。20〜24歳層の労働力率が1.9ポイントと大幅に低下したことから、M字型カーブの左山は、初めて20〜24歳層から25〜29歳層にシフトした。
(6) パートタイム労働者の雇用状況
短時間雇用者(週間就業時間が35時間未満の非農林業の短時間雇用者)数は、平成15年においては1,259万人と、雇用者総数の約4分の1を占めるに到るとともに、勤続年数の伸張、基幹的な役割を担う者の増加も見られる。

3  労働条件等を巡る動向
(1) 申告・相談等の状況
景気は着実に回復しているものの、労働者を取り巻く環境は依然として厳しく、労働基準監督署には、賃金不払や解雇など労働基準関係法令上の問題が認められる申告・相談事案が数多く寄せられており、企業における法令遵守(コンプライアンス)意識の低下も懸念される。
また、都道府県労働局雇用均等室には、妊娠・出産等を理由とする解雇等差別的取扱い、セクシュアルハラスメント、育児・介護休業の取得等に関する相談も多数寄せられている。
さらに、都道府県労働局総務部企画室及び総合労働相談コーナーには、労働条件その他労働関係に関する事項についての個々の労働者と事業主との間の紛争(以下「個別労働関係紛争」という。)に関する相談やあっせんの申請等が数多く寄せられ、増加傾向が続いている。また、紛争の内容をみると、解雇や労働条件の切下げに関するものが中心であるが、いじめ・嫌がらせなどもあり、多様なものとなっている。
(2) 労働時間・賃金の状況
平成15年における年間総実労働時間は1,846時間(所定内労働時間は1,700時間、所定外労働時間は146時間)となっており、前年に比べて9時間増加しており、一般労働者(常用労働者のうち、パートタイム労働者を除いた労働者)についても年間総実労働時間は2,004時間(所定内労働時間は1,834時間、所定外労働時間は170時間)と前年に比べて8時間増加している。平成14年度における年次有給休暇の取得率については、48.1%となっており、近年50%を下回る状況が続いている。
また、平成15年における平均月間現金給与総額は、34万1,898円で前年比0.4%減と3年連続で減少したが、現金給与総額のうち所定内給与及び所定外給与は減少したものの特別に支払われた給与が増加したことから、減少幅は縮小した。
さらに、一般労働者の所定内給与額の男女間賃金格差は男性を100としたときに女性は66.5となり、長期的には緩やかな縮小傾向が続いている。
この他、パートタイム労働者と通常の労働者との賃金等に係る処遇の格差について、合理的な説明が困難な事例が見られるなど、パートタイム労働者の雇用管理の改善等が十分に図られているとは言えない状況がある。
(3) 労働災害・労災補償の状況
労働災害による被災者数は長期的には減少傾向にあるものの、このうち約1,600人が死亡している状況にあり、特に重大災害(一度に3人以上の労働者が死傷する災害)については、我が国を代表する企業において爆発災害等が多発するなど、減少傾向が認められない。
また、労働者の健康面についても、一般健康診断結果の有所見率が増加し、職場生活等において強い不安、ストレスを感じる労働者の割合が6割にも達している。さらに化学物質等による職業性疾病の発生も依然として、後を絶たない。
労災補償については、平成14年度における新規受給者数は、近年減少傾向にあるが、依然として約58万人であり、また、社会的関心の高い「過労死」、「過労自殺」等の労災請求・認定件数については、平成14年度において過去最高となっている。

第2  平成16年度地方労働行政の課題
1  厳しい雇用情勢下における雇用の安定、労働条件の確保に向けた総合的な対応
改善の動きが見られるものの依然として厳しい雇用情勢の中で、離職者の早期再就職の促進や新たな雇用機会の創出等とともに、適正な労働条件の確保を図ることが引き続き課題となっている。
(1) 雇用の改善と雇用機会の創出
新規求人数の増加など雇用の改善の動きがみられるものの、労働市場全般をみると依然として厳しい状況になっている。こうした背景には、職種、年齢、能力、賃金等における労働力需給のミスマッチが存在することが考えられる。このため、公共職業安定所における職業紹介、職業指導等の在り方を労働市場の状況に応じて不断に見直し、マッチング機能を高めるとともに、早期再就職の促進のための支援策の強化、失業者の特性に応じたきめ細かな就職支援等を実施することにより、ミスマッチの解消と雇用の改善に全力を挙げて取り組むことが重要である。
併せて、早期再就職を促進するためには、再就職に結びつく効果的な職業能力開発を実施するとともに、求職から就職に至るまでの一貫した支援を実施する必要がある。
一方、失業者が依然として300万人を超えている状況にかんがみれば、新たな雇用機会の創出も必要である。平成15年6月に策定された「530万人雇用創出プログラム」により、新規分野を含むサービス分野を中心に新たな雇用の創出を図るための政府全体の取組を踏まえつつ、関係省庁と連携して、雇用対策の面から、新たな雇用機会の創出に取り組むことが重要である。
また、内閣府に「地域再生本部」が設置され、平成15年12月に地域再生基本指針が、平成16年2月に「地域再生推進のためのプログラム」が策定されるなど地域再生に向けた取組が進められているところであるが、地域経済の活性化と雇用の創出のためには、地域の主体的な取組と各地域における創意工夫が不可欠である。このため、地域主導による雇用対策の充実を図るとともに、地域における主体的な取組に対して、必要な支援と連携協力を行うことが重要である。
さらに、高い失業率や離職率、フリーターの増大など、深刻な状況にある若年者の雇用については、雇用政策のみならず、教育政策、産業政策を含めた総合的な対応が必要である。このため、4府省共同で平成15年6月に策定した「若者自立・挑戦プラン」に基づき、関係施策を総合的に展開することにより、若年者の職業的自立を促進することが重要である。
また、障害者を取り巻く厳しい雇用情勢に適切に対応するため、雇用と福祉との積極的な連携を図っていくとともに、障害者の雇用確保・職場定着のための施策及び精神障害者の雇用・就業施策を充実させることが重要である。
(2) 労働条件の確保・改善
依然として厳しい経営環境の中、労働条件の引下げ、会社都合等による解雇等が行われ、こうした動きに関連し、賃金の支払、賃金不払残業、解雇手続等の法定労働条件の履行を確保する上での問題も生じている。しかしながら、いかなる経済・雇用情勢下においても、法定労働条件は確保されなければならないものであり、特に現下のような状況においては、労働条件の確保に関する国民の関心と期待は高く、その期待に的確に応えていくことが求められている。
このような状況を踏まえ、一般労働条件の確保・改善対策を積極的に推進することにより、企業の法令遵守(コンプライアンス)意識を高めていくとともに、労働者の抱える不安感を払拭していくことが必要である。
(3) 大型倒産等への対応
雇用の安定や労働条件の確保等の課題に効果的に対応するため、大型倒産や大規模な雇用調整に際して、取引先企業の労働者を含めた大量失業の予防、労働債権の確保、早期再就職促進に向けた対策等を一体的かつ迅速に実施していくことが重要である。

2  健康で安心して働ける環境の整備
労働環境が変化する中で、全ての労働者が健康で安全に働くことができ、また性別にかかわりなく安心して働ける環境作りを推進することが課題となっている。
(1) 労働安全衛生の確保
リストラに伴う人員削減や事業の再編などにより、仕事の進め方や人事労務管理体制等が変化する中、大規模製造業における爆発災害等が多発し、「過労死」等の労災認定件数も増加していることから、第10次の労働災害防止計画を踏まえ、労働安全衛生関係法令の遵守をはじめとした労働安全衛生面の対策を的確に推進し、健康で安心して働ける職場を実現していくことが必要である。特に、大規模製造業における安全管理を徹底するとともに、建設業をはじめとした業種別労働災害防止対策、交通労働災害等の特定災害防止対策、事業者及び労働者による自主的な安全衛生活動を推進するための労働安全衛生マネジメントシステムの普及促進等を引き続き推進する必要がある。
また、社会的問題となっている「過労死」等を防止するため、過重労働による健康障害防止対策、職場におけるメンタルヘルス対策を積極的に推進するとともに、併せて石綿等の化学物質による健康障害防止対策等の労働者の健康を確保するための施策を積極的に推進していく必要がある。
(2) 労災補償の迅速・公平性の確保
労災補償に関する迅速性と公平性の確保について国民の強い関心が向けられる中、脳・心臓疾患、精神障害事案といった調査・判断の難しい事案が急増していることを踏まえ、労災補償事務に関する事務処理能力の向上や組織的対応の一層の推進を図る必要がある。
(3) 男女雇用機会均等の確保
働く女性が性別により差別されることなく、その能力を十分に発揮できる雇用環境をつくるため、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」(以下「男女雇用機会均等法」という。)の履行確保を図るとともに、女性の能力発揮のための企業の積極的取組(ポジティブ・アクション)を促進すること等により、実質的な男女の均等確保の実現を目指すことが重要となっている。
(4) 個別労働関係紛争の解決の促進
企業組織の再編や、企業の人事労務管理の個別化、就業形態の多様化等を背景に、個別労働関係紛争)の増加も依然として大きな社会問題となっているため、その実情に即した迅速かつ適正な解決を図っていく必要がある。
(5) 労働保険制度の適正な運営
労働保険が、労災保険給付や失業等給付を通じた労働者の福祉の増進に寄与する制度として的確な役割を果たしていくため、その適用徴収業務については、これまで以上に費用負担の公平性等が求められているところであり、(1)未手続事業の把握及び解消、(2)労働保険料の適正徴収、(3)労働保険事務組合制度の充実・発展などが必要である。

3  少子・高齢化の進行と多様な働き方への対応
少子・高齢化の進行、産業構造の変化等社会構造が大きく変化し、働く者の意識も変化する中で、すべての働く者が仕事と生活を調和させ、働き方を自律的に選択できる環境を整備することが課題となっている。
(1) 仕事と子育ての両立支援
急速な少子化の進行は、今後、我が国の経済社会全体に極めて深刻な影響を与えるものであることから、その流れを変えるため、改めて国・地方公共団体・企業等が一体となって、従来の取組に加え、もう一段の対策を進める必要がある。
こうした状況に対応し、男性を含めた働き方の見直しや仕事と子育ての両立を推進し、子どもを安心して生み育てられる職場づくりの実現が大きな課題となっている。このため、平成15年7月に成立した「次世代育成支援対策推進法」(以下「次世代法」という。)の円滑な施行準備を進めるとともに、引き続き、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(以下「育児・介護休業法」という。)の実効を確保していく必要がある。
(2) 高齢者の雇用の確保
高齢化の進行の中で、国民の一人一人が長生きして良かったと実感できる豊かで活力ある社会を実現するためには、高齢者の高い就業意欲が活かされ、その有する能力が十分に発揮されることが不可欠となる。これを踏まえ、当面は65歳までの雇用の確保に取り組みつつ、将来的には年齢にかかわりなく働ける社会の実現に向けた環境整備を進めることが重要である。また、高齢期には、個々の労働者の意欲、体力等の個人差が拡大することから、労働者の多様なニーズに対応した雇用・就業機会を確保することも併せて重要である。
(3) 多様な働き方への対応
多様な働き方の選択肢の整備を図るため、ワークシェアリングの普及・啓発を進めるとともに、長時間労働を行う労働者が増加していること等を踏まえ、労働時間の短縮について、政府目標である年間総実労働時間1,800時間の達成・定着に向けて、所定外労働の削減及び年次有給休暇の取得促進に重点を置いて引き続き取り組んでいく必要がある。
また、雇用・就業形態の多様化に伴う課題に対応するため、パートタイム労働者と通常の労働者との均衡等を考慮した適正な労働条件の確保及び雇用管理の改善、派遣労働者の就業条件の整備、在宅ワークの健全な発展のための施策の推進等が求められている。

4  地方労働行政の運営上の基本的課題
上記1から3のとおり、労働行政をめぐる課題は多岐にわたるとともに、経済社会情勢の変化や新たなニーズへの対応が求められている。このため、平成16年度の地方労働行政運営に当たっては、労働行政の実施を通じて地域の発展に積極的に貢献することを基本に据えて、より一層地域の住民等のニーズや労働市場の動向に即した施策を実施していくこととする。
(1) 地域における行政へのニーズの把握
都道府県労働局、労働基準監督署及び公共職業安定所は、日頃から地方公共団体や地域の住民、労使の意見に耳を傾け、地域の経済社会情勢や労働市場の状況を的確に把握するとともに、行政へのニーズを積極的にくみ取っていくことが必要である。
(2) 総合労働行政機関としての機能の発揮 
都道府県労働局における労働基準行政、職業安定行政及び雇用均等行政がそれぞれの専門性を一層発揮しつつ、厳しい雇用情勢下での雇用の安定と労働条件の確保やワークシェアリング等3行政が連携して取り組む必要のある課題や、少子・高齢化の下での働き方の見直しや仕事と子育ての両立支援等それぞれの行政分野の枠組みを超えて一体となった対応が必要となる課題も増加していることから、こうした課題について、3行政の連携をより一層密にし、総合労働行政機関としての機能を発揮していく必要がある。
(3) 地域の関係機関との連携
地方労働行政の運営に当たっては、都道府県労働局のみならず、都道府県等の地方公共団体や地域の労使団体、関係機関との有機的な連携を図ることにより、地域の実情に応じた施策を実施していくことも重要となっている。
(4) 行政運営の効率化・重点化
行政を運営していく上で、限られた人的・物的資源を効率的、集中的に配分し、活用していくとともに、行政運営方針に基づき重点的な行政運営が行われているか検証し、また、地域の意見、評価を聴取し、その結果を行政運営に反映させていくことが必要である。

第3  平成16年度地方労働行政の重点施策
1  労働基準行政の重点施策
(1) 労働条件の確保・改善等
 労働契約に係るルールの明確化の推進
平成16年1月より施行された改正労働基準法における改正内容である解雇に係る規定の整備や有期労働契約の見直しについて、施行通達(平成15年10月22日付け基発第1022001号)及び周知通達(平成15年10月22日付け基発第1022002号)に基づいて、同改正法の周知及び円滑な施行を図ることにより、労働契約に係るルールの明確化等を推進する。
具体的には、解雇については、労働基準法第18条の2の規定の趣旨について、関係する判例・裁判例とともに周知を図り、また、就業規則への「解雇の事由」の記載の徹底を指導し、併せて「解雇の事由」ができる限り明確に記載されるよう、使用者からの相談に応じ、必要な援助を行う。
また、有期労働契約については、有期労働契約が労使双方から良好な雇用形態の一つとして活用されるよう、契約期間の上限を延長した改正規定の円滑な施行を図るとともに、「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」に関しても、必要な助言及び指導を行うことにより、その遵守の徹底を図る。
 労働時間に関する法定労働基準等の遵守徹底
(イ) 時間外労働の限度基準の遵守の徹底
長時間にわたる時間外労働の抑制を図り、また過重労働による健康障害を防止するため、労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準(以下「限度基準」という。)が遵守されるよう、引き続き使用者、労働組合等の労使当事者に対し周知・指導を行い、遵守の徹底を図る。
また、特別条項付き協定を締結する場合の「特別の事情」は「臨時的なものに限る」ことを明確にする限度基準の改正が、平成16年4月1日より施行されることから、施行通達(平成15年10月22日付け基発第1022003号)を踏まえ、労使当事者に対し、同改正内容の周知・指導を行い、遵守の徹底を図る。
(ロ) 労働時間管理の適正化の徹底
賃金不払残業の解消を図るため、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」の遵守を重点とした監督指導等を引き続き実施するとともに、「賃金不払残業総合対策要綱」に基づき「賃金不払残業の解消を図るために講ずべき措置等に関する指針」の周知を図り、労使の自主的な改善を促すなど総合的な対策を推進する。
また、時間外・休日労働協定の適正な締結、届出及び締結された協定の限度時間等の遵守の徹底を図るとともに、時間外労働等に係る割増賃金の適正な支払等法定労働条件の履行確保に努め、重大かつ悪質な事案に対しては、司法処分を含め厳正に対処する。
 一般労働条件の確保・改善対策の推進
(イ) 法令遵守の徹底
すべての労働者が適法な労働条件の下で安心して働くことができるようにするため、一般労働条件の確保・改善対策を一層積極的に推進する。
そのため、ロ(ロ)に前掲した労働時間管理の適正化のほか、最も基本的な労働条件である賃金の支払、解雇を行う場合の法定の手続の履行など、労働基準関係法令の遵守の徹底を図る。
また、労働基準関係法令違反に対しては、厳正に対処する。
(ロ) 経済、企業動向の変化に伴う労働条件の履行確保
管内の経済・雇用情勢や企業の動向を注視し、企業倒産、事業場閉鎖、人員削減、労働条件の引下げ等に伴い法定労働条件の履行確保の問題が懸念される事案に対しては、早期に情報を把握し、賃金をはじめとする労働債権の確保や社内預金の保全等について迅速かつ的確な対応を図る。
また、労働基準関係法令上の問題が認められる賃金不払、解雇等に係る申告・相談がなされた場合には、申告者・相談者が置かれている状況に十分に意を払い、その解決のための迅速かつ的確な対応を図る。
 未払賃金立替払制度の迅速かつ適正な運営
企業の倒産件数に減少傾向が見られるものの、依然として本制度の利用が高水準で推移していることを踏まえ、企業倒産により賃金の支払を受けられない労働者の救済を図るため、引き続き迅速かつ適正な対応を図る。
 企業倒産等の場合における労働債権の取扱いについて
「担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を改正する法律」が平成16年4月1日から施行されることに伴い、先取特権を有する労働債権の範囲が拡大されること等について、別途送付するパンフレット等を利用し周知を図る。
 最低賃金制度の適正な運営
最低賃金制度については、我が国経済の動向、地域の実情を踏まえ適正な運営を図る。
特に、産業別最低賃金については、平成14年12月に取りまとめられた「中央最低賃金審議会産業別最低賃金制度全員協議会報告」を踏まえ、引き続き地方最低賃金審議会において円滑・適切な運営に努める。
また、最低賃金法の履行を確保するため、最低賃金の一層の周知徹底を図るとともに、問題のある地域、業種、職種等を的確に把握し、監督指導等を行い、その遵守の徹底を図る。
 特定の労働分野における労働条件確保対策の推進
(イ) 自動車運転者
長時間労働を原因とする重大な交通労働災害が発生していることから、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」等の周知及び遵守を徹底するとともに、過労運転事案については、関係行政機関とも連携を図り、引き続き自動車運転者の労働条件の改善を図る。また、併せて(3)イ(ハ)に後掲する交通労働災害防止対策を推進する。
(ロ) 介護労働者
介護サービスに従事する労働者の法定労働条件の履行確保を図るため、引き続き労働基準関係法令の遵守の徹底を図る。
(ハ) 医療機関の労働者
医療機関における休日及び夜間勤務の適正化を引き続き推進する。
(ニ) 派遣労働者
派遣労働者が年々増加しており、また、平成16年3月より施行された改正労働者派遣法により、派遣対象業務が物の製造の業務に拡大されたこと等を踏まえ、派遣労働者の労働条件確保の観点から、引き続き職業安定行政との連携を図りつつ、派遣元及び派遣先双方の事業主に対して労働基準関係法令の遵守の徹底を図る。また、併せて(3)イ(ヘ)に後掲する労働災害防止対策を推進する。
(ホ) 外国人労働者、技能実習生
外国人労働者にも労働基準関係法令が適用されることについて周知徹底を図るとともに、「外国人労働者の雇用・労働条件に関する指針」に基づく啓発・指導により、引き続き外国人労働者の適正な労働条件確保対策を推進する。重大悪質な労働基準関係法令違反において、資格外活動、不法残留等出入国管理及び難民認定法違反に当たると思われる事案が認められた場合には、職業安定行政との連携を図りつつ、出入国管理機関にその旨情報提供する。
また、技能実習生については、労働契約時の労働条件の書面による明示、賃金支払の適正化等労働基準関係法令に基づく労働条件の履行確保を図る。
(ヘ) 短時間労働者
「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(以下「パートタイム労働法」という。)並びに「事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等のための措置に関する指針」(以下「パートタイム労働指針」という。)の趣旨及び内容についての周知、啓発を重点とした対策を推進し、事業主による自主的な取組を促進する。
(ト) 障害者である労働者
障害者である労働者の労働環境の整備が求められている中で、引き続き法定労働条件の履行確保を図るため、職業安定行政との連携の下、これら労働者を使用する事業主に対する啓発・指導に努めるとともに、的確な情報の把握を行い、問題事案の発生の防止及び早期是正に努める。
(チ) 出稼労働者
出稼労働者に対する適正な賃金の支払の確保、有給休暇制度の普及促進、労働災害の防止、健康管理の充実等、引き続き、労働条件確保対策を推進する。
また、建設業附属寄宿舎を設置する使用者に対して寄宿舎における労働基準関係法令の遵守を図る。
(2) 働く者の多様な働き方が可能となる労働環境の整備
 仕事と生活の調和のとれた働き方を可能とする環境整備
(イ) 労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法に基づく施策の推進
政府目標である年間総実労働時間1,800時間の達成・定着を図るため、所定外労働の削減及び年次有給休暇の取得促進に重点を置き、引き続き労働時間の短縮に向けた事業主の自主的な努力を促進する。
(1)  自律的、効率的に働くための労働時間制度の改善支援
事業場の労働実態に応じ、フレックスタイム制や裁量労働制の導入等労働時間制度の改善に取り組む事業主を支援するため、労働時間短縮支援センターが実施する労働時間制度改善支援事業の活用促進を図る。
(2)  年次有給休暇の取得促進
年次有給休暇の取得は労働者の権利であり、集団指導等の場を通じ、年次有給休暇の取得促進を図る。
また、全国の主要都市において、長期休暇制度の普及と定着に関するシンポジウムを開催するとともに、労働時間短縮支援センターが支給業務を行う「長期休暇制度基盤整備助成金」や「中小企業長期休暇制度モデル企業助成金」等により、長期休暇(L休暇)制度導入のための労使の取組に対する援助等を行う。
(3)  所定外労働の削減のための啓発・勧奨
「所定外労働削減要綱」の周知啓発により、休日労働を含めた所定外労働の削減に向けた労使の取組を促進する。
(ロ) 仕事と生活の調和に関する検討
すべての働く者が仕事と生活を調和させ、安心・納得できる働き方を自律的に選択できる環境の整備に関し、「仕事と生活の調和に関する検討会議」において総合的な施策を検討する。
 裁量労働制の適正な実施の確保
平成16年1月に施行された改正労働基準法に基づいて、改正内容である裁量労働制の見直しについて、周知通達(平成15年10月22日付け基発第1022002号)に沿って、同改正法の周知及び円滑な施行を図るとともに、制度の趣旨に適合した上での有効な活用を推進する。
具体的には、企画業務型裁量労働制については、対象となる業務の範囲等を含め、制度が適正に実施されるよう改正された「労働基準法第38条の4第1項の規定により同項第1号の業務に従事する労働者の適正な労働条件の確保を図るための指針」の趣旨及び内容について周知及び円滑な施行を図る。
また、専門業務型裁量労働制については、同制度が働き過ぎにつながることのないよう、企画業務型裁量労働制と同様に、労使協定により健康・福祉確保措置及び苦情処理措置の導入を必要とする改正の趣旨及び内容について周知及び円滑な施行を図る。
 テレワーク対策の推進について
在宅勤務に伴う労務管理上の様々な問題を解消するため、在宅勤務に関する労働基準関係法令上の取扱い等を明確にした在宅勤務に係るガイドラインを事業主等に対して周知を図る。
 賃金・退職金制度の改善の推進
賃金・退職金制度改善指導業務については、本省において中・長期的な視野に立ち、これからの賃金制度の在り方をも含め、今後の改善指導の手法、実施体制、実施事業についての検討を行う。
また、経済社会の構造的変化に対応した賃金制度の相談・援助等の充実を図るため、賃金・退職金セミナー及び中小企業賃金制度支援事業の効果的な実施に努める。
 勤労者生活の基盤の整備・充実について
勤労者財産形成促進制度については、本省において勤労者を取り巻く状況に対応した制度改善の検討を行う。中小企業退職金共済制度については、制度の安定的運営に努めているところであり、引き続き、制度の周知を図る。
また、勤労者マルチライフ支援事業については、地域の推進地域協議会を通じて実施しているところであるが、都道府県労働局総務部にあっては、その事業の積極的な実施状況の把握に努める。
(3) 労働者の安全と健康を確保するための施策の展開
 大規模な爆発災害の防止等事業場における安全確保の徹底
(イ) 大規模製造業における安全管理の徹底
平成15年11月に実施した「大規模製造業における安全管理体制及び活動等に係る自主点検表」による自主点検結果により、引き続き安全管理に問題が認められる事業場に対して監督指導等を実施し、また「大規模製造業における安全管理の強化に係る緊急対策要綱」(平成16年3月16日付け基発第0316001号)により、企業の安全管理活動の強化の促進を図るとともに、本省において企業の安全管理体制の在り方について、総合的な検討を行う。
災害調査の実施に当たっては、災害の直接的要因のみならず、人員の減少、経費の削減、設備の老朽化等の背景要因についても調査するとともに、調査結果の迅速な報告を行い、再発防止措置を徹底させる。
また、平成15年12月に取りまとめた総務省消防庁、経済産業省原子力安全・保安院と合同で設置した「産業事故災害防止対策推進関係省庁連絡会議」における中間とりまとめの周知を図るとともに、同中間取りまとめにおいて地方における関係行政機関相互の連携が掲げられていることを踏まえ、地方経済産業局、都道府県の消防防災担当部署等との連携を図る。
(ロ) 爆発・火災災害防止対策の推進
平成15年、鉄鋼関連施設や石油関連施設等において爆発・火災災害が頻発したことを踏まえ、「鉄鋼生産設備の非定常作業における安全衛生対策のためのガイドライン」(平成9年3月24日付け基発第190号)、「化学設備の非定常作業における安全衛生対策のためのガイドライン」(平成8年6月10日付け基発第 364号)、「化学プラントにかかるセーフティ・アセスメントに関する指針」(平成12年3月21日付け基発第149号)の周知徹底を図るなど、爆発・火災災害防止対策の徹底を図る。
(ハ) 交通労働災害防止対策の推進
「交通労働災害防止のためのガイドライン」(平成6年2月18日付け基発第83号)の周知徹底を図るとともに、事業場における交通労働災害防止対策の好事例の収集、モデル事業場の育成等を推進し、併せて(1)ト(イ)に前掲した自動車運転者に係る労働条件確保対策を推進する。特に、トラック運転者等の長時間労働を背景とした交通労働災害については、平成15年実施した「トラック関係事業者に対する長時間労働を背景とした交通労働災害防止に関する緊急対策」(平成15年7月17日基発第0717001号)の結果を踏まえ、災害防止対策の推進を図る。また、製造業等の事業場を対象とした交通労働災害防止担当管理者教育を推進する。
(ニ) 建設業における労働災害防止対策の推進
「建設業における総合的労働災害防止対策の推進について」(平成5年3月31日付け基発第214号)に基づき、引き続き的確な対策を実施する。
特に、中小総合工事業者に対しては、「中小総合工事業者指導力向上事業」、また、専門工事業者に対しては、「専門工事業者安全管理活動等促進事業」の推進により、自律的な安全衛生管理能力の向上を図る。
墜落災害の防止対策を徹底させるため、木造家屋等低層住宅建築工事について、「足場先行工法に関するガイドライン」(平成8年11月11日付け基発第660号)の周知、「木造家屋等低層住宅建築工事安全対策推進モデル事業」の推進により足場先行工法の普及を図る。また、足場の組立・解体時の災害を防止するため、中小ビル建築工事について、「手すり先行工法に関するガイドライン」(平成15年4月1日付け基発第0401012号)の周知、「手すり先行工法安全対策推進モデル事業(仮称)」の推進により手すり先行工法の普及を図る。
上下水道等工事における土砂崩壊災害の防止を図るため、「土止め先行工法に関するガイドライン」(平成15年12月17日付け基発第1217001号)の発注機関等に対する周知、同ガイドラインに基づく土止め先行工法による工事の普及を図る。
また、最近の災害発生状況等を踏まえ、建築物等の解体工事における災害防止対策の徹底を図る。
(ホ) 機械設備の安全化の促進
「機械の包括的な安全基準に関する指針」(平成13年6月1日付け基発第501号)の周知徹底を図るとともに、機械の製造者等に対してはリスクアセスメント手法の普及を図り、また、機械の使用者に対しては機械を使用する上で留意すべき事項に関する情報を活用することによる安全方策の実施を促進する。
ボイラー等の連続運転制度については、その安全管理等が優良な事業場を認定する制度であることを踏まえ、ボイラー等の保全管理の適切な実施等本制度の適切な運営の徹底を図る。
(ヘ) 第三次産業における労働災害防止対策の推進等
第三次産業における業種別の労働災害防止のためのガイドラインの周知徹底を図るとともに、「成長産業における安全衛生活動基盤整備事業」において在宅介護サービス業を対象とした労働災害防止対策を推進する。
(ト) 派遣労働者に係る安全衛生確保対策 
平成16年3月から施行された改正労働者派遣法により、派遣対象業務が物の製造の業務に拡大されたこと等を踏まえ、派遣元及び派遣先双方の事業主に対し労働安全衛生法上の義務の履行確保を図るとともに、併せて(1)ト(ニ)に前掲した派遣労働者に係る労働条件確保対策を推進する。なお、製造業における派遣労働者の労働災害発生状況の動向の把握に努める。
 過重労働の防止等労働者の健康を確保するための施策の展開
(イ) 過重労働による健康障害防止のための総合対策の推進
総合対策に基づき、時間外労働の削減、産業医等による助言指導等の健康管理対策の強化、過重労働による業務上の疾病を発生させた事業場に対する再発防止の徹底等の対策を推進する。
また、労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト等を広く周知すること等により、労働者自身の健康確保意識の啓発等を図る。
(ロ) 職場における着実な健康確保対策
健康診断の実施及びその結果に基づく事後措置の徹底を図る等、事業場における産業保健活動の推進を図る。
小規模事業場における健康確保対策については、その充実を図るため、独立行政法人労働者健康福祉機構(平成16年4月より設置)において作成した、産業保健活動の実施方法を具体的に示したマニュアルの普及を図るとともに、地域産業保健センター事業、産業医共同選任事業等の一層の利用促進を図る。
また、心身両面にわたる健康保持増進対策(以下「THP」という。)の一層の推進を図るため、「中小規模事業場健康づくり事業」を推進し、中小規模事業場に対するTHPの効果的な普及を図る。
(ハ) 職業性疾病予防対策等の推進
粉じん障害防止対策については、第6次粉じん障害防止総合対策(平成15年5月29日付け基発第0529004号)を推進することにより、粉じんのばく露防止の措置、健康管理対策等の徹底を図る。
また、ずい道建設工事における粉じん対策を推進するため、引き続き「ずい道等建設工事における粉じん対策に関するガイドライン」(平成12年12月26日付け基発第768号の2)の周知徹底を図る。
鉛中毒予防規則(昭和47年労働省令第37号)及び特定化学物質等障害予防規則(昭和47年労働省令第39号)について、プッシュプル型換気装置の設置等の追加に関する改正を行ったことから、その内容について周知徹底を図る。
VDT作業による心身の負担を軽減するため「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(平成14年4月5日付け基発第0405001号)の周知徹底を図る。
電離放射線障害防止対策については、原子力施設における下請事業場を含めた総合的な安全衛生管理対策の徹底を図るとともに、「原子力発電所における放射線業務に係る被ばくの低減化」(平成11年11月5日付け基発第639号の3)に基づき、原子力施設等に対する被ばく低減化指導を適切に実施する。
(ニ) 化学物質による健康障害防止対策の推進 
石綿について、平成16年10月より、代替化が可能な石綿含有建材等の製造、使用等を禁止することとなることから、重点的な周知広報等による円滑な施行を図るとともに、禁止猶予石綿含有製品についても代替化の促進を図る。
また、石綿含有建築物の解体作業等における健康障害防止対策の充実を図る。
廃棄物焼却施設内作業におけるダイオキシン類ばく露防止対策(平成13年4月25日付け基発第401号の2)、ホルムアルデヒドの濃度低減対策(平成14年3月15日付け基発第0315002号)、化学物質等による眼・皮膚障害防止対策(平成15年8月11日付け基発第0811001号)を徹底する。さらに特定化学設備を所有している事業者が、当該設備の改造、修理等の作業を他の事業者に発注している場合における健康障害防止対策(平成15年11月18日付け基発第1118002号)などの推進を図る。
国による未規制化学物質のリスク評価・リスク管理の充実、化学物質の分類、表示等に関する国連勧告等の国際動向への対応等を図る。
 職域・地域の連携等によるメンタルヘルス対策の推進
「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」(平成12年8月9日付け基発第522号)の効果的な周知徹底を図るとともに、メンタルヘルス対策推進連絡会議の開催等職域・地域の連携を図る。
また、産業保健推進センター、地域産業保健センター及び労災病院におけるメンタルヘルスに関する相談の利用促進を図る。
さらに、自殺予防マニュアル等を活用し、労働者の自殺予防に必要な知識の普及・啓発を図るとともに、相談体制の充実を図るため、地域において産業保健に意欲的な精神科医を対象として行う産業保健研修の周知を図る。
 事業場における安全衛生水準の一層の向上を図るための施策の展開
(イ) 労働安全衛生マネジメントシステムの普及促進等
労働安全衛生マネジメントシステム(以下「マネジメントシステム」という。)の普及を推進している労働災害防止団体等とも連携し、関係者に対しマネジメントシステムやその効果に関する理解を更に深めるとともに、各地域において指導的立場にある大企業のみならず、中小企業に対しても、システム構築・運用好事例の収集、紹介等も含め、幅広くマネジメントシステムの普及を図る。
特に、建設業に対しては、店社と現場とが一体となった管理が必要な建設業の特性を踏まえ、マネジメントシステムの普及を図るとともに、建設工事に従事する労働者に対する教育の普及により、安全衛生水準の一層の向上を図る。
さらに、事業者が行う安全衛生教育の充実、安全衛生対策の実施等に資するため、災害事例、化学物質情報等を提供する安全衛生情報センターの利用促進を図る。
(ロ) 中小企業における自主的安全衛生管理活動の推進
安全衛生管理活動を積極的に行おうとする中小企業を対象として安全衛生相談等を行う「中小企業自主的安全衛生活動支援事業」や、中小企業の小規模事業場等団体を対象として基本的な安全衛生対策の実施を支援する「小規模事業場等団体安全衛生活動援助事業」などを推進し、中小企業の安全衛生水準の向上を図る。
(ハ) 事業場における自律的な化学物質管理の推進
化学物質に係る作業形態等が多様であることなどに対応した健康障害防止対策を推進するため、「化学物質等による労働者の健康障害を防止するための必要な措置に関する指針」(平成12年3月31日付け公示第1号)等に基づき、事業者自らがリスク評価を実施し、評価結果に基づき所要の対策を実施するよう、事業者に対する啓発指導、情報提供等の事業者支援を行う。
(ニ) 労働者の意識啓発の推進
労働者も事業主とともに、労働災害防止を担う当事者であり、また職場の状況について最も熟知している立場にあることから、安全衛生委員会活動への参画、危険予知活動の普及促進等の労働者の安全意識や健康確保意識の高揚を図るための施策を展開し、労働者自身の意識啓発の推進を図る。
 職場環境の快適化の推進
快適職場推進計画の認定を促進するとともに、都道府県との連携を図りながら、新たな「職場における喫煙対策のためのガイドライン」(平成15年5月9日付け基発第0509001号)の周知、普及啓発活動の充実等により、職場環境の快適化の推進を図る。
 改正労働安全衛生法等の円滑な施行
機械等の検査・検定、技能講習等の実施について、国が指定する機関から登録機関による実施に変更することを内容とする、改正労働安全衛生法及び改正作業環境測定法の円滑かつ適切な施行を図る。また、登録機関に対する監査指導を的確に実施し、不正事案には厳正に対処する。
(4) 労災補償対策の推進
 労災保険給付の迅速・適正な処理
労災保険給付の請求については、迅速かつ適切な調査を行うこと等により、標準処理期間内の処理に努める。また、請求が長期間にわたり滞留するようなことがないよう、チェック体制を整備する。標準処理期間が定められていない脳・心臓疾患、精神障害事案等についても、6か月以内の処理を目指した調査の実施に努める。
また、二次健康診断等給付制度については、一層の周知を図る。
労災診療費については、適正な審査を行うとともに、平成16年度に見直しが行われることも踏まえ労災診療費算定基準の医療機関への周知徹底、誤請求の多い医療機関への指導、関係機関との連携等により、診療費の適正払いの一層の推進を図る。
 労災かくしの排除の徹底
労災かくしの排除を徹底するため、労災担当部署や安全衛生担当部署において、労災請求の相談等を通じて労災かくしの疑いのある事案を把握した場合や、虚偽の死傷病報告が発覚した場合などは、速やかに監督担当部署へ情報提供するなど、各部署の密接な連携を図る。
また、労災かくしの排除を期すため、引き続き、的確な監督指導等を実施するとともに、その存在が明らかとなった場合には、司法処分を含め厳正に対処する。
 労災認定等を踏まえた労働災害再発防止策の推進
労災担当部署においては、労災請求・認定事案について、必要に応じ監督担当部署及び安全衛生担当部署に情報を提供し、各部署においては事案の内容に応じて当該事業場に対して再発防止のための指導等を実施するなど、労働災害防止対策の推進のため、監督担当部署、安全衛生担当部署及び労災担当部署の密接な連携を図る。
また、本省における労災補償部と安全衛生部の協力を強固にし、両部による労災認定事案の分析等により、労働災害の再発防止対策を迅速に確立する。
 認定基準の的確な運用等
平成15年9月に改正された「石綿による疾病の認定基準」について、引き続き周知を図るとともに、石綿ばく露労働者に発生した肺がん、中皮腫等の的確な労災補償を行う。
平成16年度においては、整形外科分野の障害等級をはじめとした認定基準が医学的知見の進展等を踏まえて改正予定であり、各局においてはこれを踏まえ、的確な運用に努める。
 行政争訟に対する迅速・的確な対応
審査請求の処理に当たっては、3か月以内の迅速・的確な処理に努める。
訴訟追行については、法務当局との密接な連携の下に、医学経験則、客観的な根拠等に基づいた分かりやすく丁寧な主張・立証を行う等的確な対応に努める。
 労災年金相談所の活用等
重度被災労働者に対する介護施策を推進するため、労災特別介護施設(ケアプラザ)入居に係る広報活動を強化するとともに、労災年金相談所の活用を図り、積極的な入居促進を行う。
また、労災保険制度や脳・心臓疾患に係る認定基準の周知及び年金受給者等からの相談、援護等についても引き続き、労災年金相談所の活用を図る。
 労災補償制度の改善
本省において労災保険料の設定の在り方や労働者の多様な就業形態等に対応した通勤災害保護制度等の在り方を検討する。
(5) 労働基準行政の効果的な展開
 地域の産業・経済状況に応じた的確かつ機動的な労働基準行政の展開
労働基準行政の運営に当たって、管内事情に即した重点課題の把握及び計画の策定を的確に行い、重点指向に徹し実効性のある運営を図る。
また、管内の情勢変化を的確に把握し、労働基準行政の積極的展開を図るため、自主点検・集団指導、関係団体との連携、各種の業種団体或いは市町村等従来以上に幅広く働きかけを行うなどにより、労働条件の確保・改善、過重労働による健康障害防止対策をはじめとする労働者の健康確保、労働時間の短縮、自主的な労働災害防止活動の促進等の対策を計画的・積極的に実施する。
 関係行政機関との連携による効率的な行政運営
局署内各部署の密接な連携を図るとともに、他の関係行政機関の情報にも意を払い、労災かくしの摘発、重大災害発生時の迅速な対応など労働基準行政の適正な運営を図る。
 法令遵守(コンプライアンス)意識を高めるための広報活動の強化
労働基準関係法令や施策等について、分かりやすく国民各層の理解を促し、信頼と協力を得ることにより労働基準行政の円滑な運営に資するため、テレビ、新聞等のメディア、都道府県・市町村等が発行する広報誌、事業主団体が発行する機関誌等を利用し、積極的な広報活動を行う。
 相談等に対する対応
労働基準監督機関に対する労働者等からの相談等に対しては、労働者等の置かれている状況に十分に意を払い、懇切丁寧な対応に努める。
 情報化の一層の推進
労働基準行政情報システムにおいては、局署で収集した情報の蓄積等、データベースの充実を図るとともに、これらの情報を分析することにより、適切な行政対象を選定するなど、情報の積極的な活用を推進する。
また、第4の2(3)に後掲したように、申請・届出等手続のオンライン申請については、平成16年3月から「申請・届出等処理支援システム」が全国稼動したことを踏まえ、適切に対応する。

2  職業安定行政の重点施策
(1) 早期再就職促進のための支援策の強化
 ミスマッチの解消に向けた失業者の早期再就職の促進への取組み
公共職業安定所において、ミスマッチの解消に向けた失業者の早期再就職の促進への取組を一層強力に推進することにより、公共職業安定所の求職者の就職率(公共職業安定所の紹介により就職した者の新規求職者に対する比率)を30%程度に引き上げることを目指す。
とりわけ、雇用保険受給者の早期再就職の促進に努め、受給資格者のうち早期に就職した者の比率(早期再就職支援金の支給対象者として早期に再就職した者の受給資格決定件数に対する比率)を12%程度に引き上げることを目指す。
(イ) 公共職業安定所の職業相談・紹介業務等の強化
求職者の属性やニーズに応じ、労働市場の状況を踏まえつつ、きめ細かな職業相談・紹介の実施に努め、マッチングの促進に努める。
(ロ) 労働市場の的確な分析及び情報の提供
それぞれの労働市場における職種、能力、経験等のミスマッチの状況を的確に分析し、円滑なマッチングにつなげるよう求人アシスタントを活用するなど地域の実情にあった効果的な情報提供を徹底する。
(ハ) 効果的な求人開拓の実施
求職者のニーズに比べて相対的に不足している職種に重点を置いた求人開拓や個別の求職者の希望に応じた個別求人開拓を効果的・効率的に実施するとともに、開拓した求人のフォローアップを徹底する。
(ニ) 早期再就職に向けた個別支援の強化
就職支援ナビゲーターを増置し、早期再就職の緊要度が高い求職者に対して、体系的かつ計画的なきめ細かな就職支援を行う再就職支援プログラムを実施する。このプログラムに関し、開始件数7万件、就職率7割程度を確保することを目指す。
また、再就職プランナーを配置し、就職意欲が高い求職者に対して、再就職に向けた求職活動計画(就職実現プラン)を作成し、個別総合的な相談援助を実施する。就職実現プランの作成件数について5万件以上を目指す。
(ホ) 雇用保険受給者に対する就職支援セミナーの実施
公共職業安定所等において、雇用保険受給者に必要な知識を付与し、早期再就職を図るための就職支援セミナーを開催する。その受講者を110万人以上とすることを目指す。
 求人年齢制限緩和の推進
公共職業安定所における年齢不問求人の割合を平成17年度に全求人の30%に引き上げることを目標として、平成16年度には、年齢不問求人の割合が平成15年度を上回ることを目指す。
 未充足求人へのフォローアップの徹底等求人者サービスの充実を通じた就職促進
すべての受理後3週間を経過しても未充足求人となっている求人を出している事業主に対し、何らかの接触を行うとともに、さらに必要性に応じ、求職者情報の提供、求人条件の緩和指導、事業所見学会等の積極的関与を行う。
 雇用関係情報の積極的提供
官民連携した雇用情報システムである「しごと情報ネット」については、情報提供機能の拡充(障害者求職情報の提供、職業能力開発関係情報の提供機能の充実(リンクの設定))等により、利用者サービスの向上を図るとともに、民間の労働力需給調整機関や地方公共団体等に対し積極的に参加及び求人情報の提供の働きかけを行う。
また、引き続き、ハローワークインターネットサービスによる求人情報の提供を的確に実施していくこととする。
 改正職業安定法・労働者派遣法の円滑な施行
平成15年改正した職業安定法及び労働者派遣法の円滑な施行を図る。その際、物の製造業務への労働者派遣と製造請負の区分の明確化、労働者派遣の役務の提供を受けようとする期間に係る意見聴取の適切かつ確実な実施、派遣労働者の雇用の安定等について周知を図るとともに、労働基準行政との連携を図りつつ的確かつ厳正な指導監督を実施する。
 円滑な労働移動の効果的な支援
現下の厳しい雇用失業情勢により的確に対応していく観点から、雇用調整を予定している企業の動向の把握に努め、大量雇用変動届、再就職援助計画作成が適切に行われるよう指導する。その際、平成16年度から、労働移動支援助成金について、職業相談室の設置、職業相談員の配置等による早期再就職援助に取り組む企業への支援の拡充等を行うこととしたところであるので、これにより円滑な労働移動の効果的な支援が十分に行われるよう、積極的な周知・活用を図る。

(2) 失業者の特性に応じたきめ細かな就職支援の実施
 長期失業者対策の充実・強化
長期失業者の安定した就職の実現を図るため、キャリア交流事業の長期失業者コースを円滑かつ着実に推進するとともに、大都市圏(北海道、東京、愛知、大阪及び福岡)において、緊急雇用創出特別基金を活用して就職支援から就職後の定着指導までを民間事業者に包括的に委託する。
 地域主導による雇用対策の推進
(イ) 地域の自主性を活かした雇用対策の促進
地域が行う経済の活性化と地域雇用の創造に関する自主的な取組に対して、雇用対策の面から支援するため、新たに、地域雇用開発促進法に基づく雇用機会増大促進地域において、市町村及び地元経済界による雇用創出のための事業に対する支援を行う。
また、求職活動援助地域におけるミスマッチ解消事業(地域求職活動援助事業)について都道府県の企画・立案による実施方式に改める。
(ロ) 公共職業安定所と地方公共団体との連携
地方公共団体の行う無料職業紹介事業について、地方公共団体の要請がある場合には、無料職業紹介事業を行う地方公共団体に対し、求人者が公開に同意している求人情報の提供等の連携、協力を行う。
また、公共職業安定所の設置状況等からみて、地域の労働力需給調整機能が高まると判断される場合には、地域住民に対する行政サービスを提供する地方公共団体の施設に公共職業安定所の職業紹介窓口を設置するなど、地方公共団体と公共職業安定所との連携を推進する。
(ハ) 地域の労使による就職支援事業の推進
民間の労使が相協力して地域の雇用の改善のための事業を行う「地域労使就職支援機構」に、地域における失業者等の再就職の促進に資すると認められる事業などを委託する。
(ニ) 地域再生雇用支援ネットワーク事業の推進
自ら主体的に地域再生に取り組む市町村等を雇用面から総合的に支援する「地域再生雇用支援ネットワーク事業」を、関係機関と連携して推進する。特に、地域再生に取り組む市町村等に対するワンストップ窓口の設置、市町村等と公共職業安定所による情報・意見交換を行う「地域再生雇用支援連絡会議」の開催及び当該会議における意見交換等を踏まえたニーズに対応した就職支援の実施などに積極的に取り組む。
(ホ) 地域産業・雇用対策プログラムの推進
平成13年8月末に、経済産業省と共同で策定した雇用のミスマッチ解消や新たな雇用創出のための施策プログラムである「地域産業・雇用対策プログラム」について、引き続き、経済産業局、都道府県、経済団体等の関係機関と連携して取り組む。
(ヘ) 緊急地域雇用創出特別交付金事業の推進に向けた連携協力
地域の創意工夫による雇用機会の創出を目的とする「緊急地域雇用創出特別交付金事業」について、交付金事業に係る求人へのあっせんや交付金事業に就労した者に対する再就職支援に関して都道府県、市町村と連携する。
(ト) 地域に貢献する事業を行う法人に対する設立の支援
地域に貢献する事業を行う法人の設立を支援する地域雇用受皿事業特別奨励金について、都道府県や事業主団体等に対し、広報誌等への掲載や創業イベントにおける資料の配付等による周知・協力を依頼するとともに、連携体制の強化や創業イベントの共催等を行い、その活用を図ることにより、地域における雇用機会の創出を推進する。
 産業別・職業別の労働移動、人材確保対策の推進
(イ) 建設労働者の円滑な労働移動に対する総合的支援(「建設雇用再生トータルプラン」)
過剰供給構造の是正に向けた建設業における再編等の動向に対応し、業界内外での円滑な労働移動の支援や新規・成長分野への進出の促進、労働移動等に関する相談窓口の設置等の施策を総合的に実施する「建設雇用再生トータルプラン」を独立行政法人雇用・能力開発機構、建設業界団体等と連携を図りつつ推進する。
(ロ) 「農林業をやってみよう」プログラムの推進
農林業等就職相談コーナー等により、農林業等への多様な就業希望に応えるべく、農林水産省及び関係団体との連携のもとに求人情報の提供、職業相談・紹介、農林業等関連各種情報の提供等を行う。
(ハ) 介護分野における雇用管理改善の推進
財団法人介護労働安定センターにおいて、介護労働者の雇用管理改善のための施策を推進するとともに、各労働局・公共職業安定所においては、事業主に対する周知や財団法人介護労働安定センター都道府県支部への相談の奨励、介護基盤人材確保助成金の支給等、必要な連携を図り、介護分野における雇用管理の改善、良好な雇用機会の創出を図る。
 失業者向け生活関連情報の公共職業安定所による一元的提供体制の整備
失業に直面した際に生ずる社会保険、税制、住宅、教育、育児、心の悩み等の生活関連情報について各分野の専門家による相談及び助言を一元的に行う生活関連情報相談コーナーを大都市圏の公共職業安定所に設置する。また、ハローワークインターネットサービスを活用し、全国の失業者に生活関連情報の提供を行う。
(3) 良好な雇用機会の創出・確保等
 良好な雇用機会の創出を図るため、関係省庁、関係団体、都道府県、市町村、経済団体等と共同あるいは連携して、創業支援についての広報、相談、援助を行う。また、都道府県労働局が中心となって、関係団体との連携協力を図り、雇用関係助成金の一体的な周知、積極的な活用を図る。
(イ) 中小企業における雇用機会の積極的な創出
創業・異業種進出を行う中小企業が経営基盤の強化に資する人材を雇い入れる場合の助成等を行う独立行政法人雇用・能力開発機構と連携するなど、雇用機会の創出の担い手である中小企業の人材確保・育成、魅力ある職場づくりを推進する。
(ロ) 雇用保険受給資格者の創業に対する支援
雇用保険の受給資格者の創業に係る助成を行うことを通じ、その自立を促進する。
(ハ) 地域雇用受皿事業特別奨励金(再掲)
地域に貢献する事業を行う法人の設立を支援する地域雇用受皿事業特別奨励金について、都道府県や事業主団体等に対し、広報誌等への掲載や創業イベントにおける資料の配付等による周知・協力を依頼するとともに、連携体制の強化や創業イベントの共同開催等を行い、その活用を図ることにより、地域における雇用機会の創出を推進する。
(ニ) 高年齢者等の共同による創業に対する支援
高年齢者等共同就業機会創出助成金を活用し、45歳以上の高年齢者等が共同して事業を開始し、継続的な雇用就業機会を創出した場合、当該事業主を支援する。
(ホ) 地域雇用開発促進助成金
同意雇用機会増大促進地域等において事業所を設置・整備し、求職者を雇い入れた事業主又は同意高度技能活用雇用安定地域において高度技能労働者を受け入れた事業主に対し、当該設置・整備、雇入れ等に係る費用の一部を助成する地域雇用開発促進助成金を支給することにより、これら地域の雇用構造の改善を図る。
 雇用の維持確保に対する支援
雇用調整助成金の活用を通じ、景気の変動等、経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされ一時的に休業等又は出向を行うことにより雇用の維持確保を図る事業主を支援する。
(4) 不良債権処理の加速に対応した対策
 雇用再生集中支援事業の実施
不良債権処理の加速に伴う雇用面への影響について管内状況の的確な把握に努め、不良債権処理の影響により雇用調整を行う事業主に対して、雇用調整方針の作成・届出を積極的に働きかけるとともに、雇用調整方針対象者に対しては求職活動に対する個別のニーズを把握し、財団法人産業雇用安定センター等関係機関との連携の下、不良債権処理就業支援特別奨励金の活用、実践的教育訓練の実施、民間再就職支援事業による民間委託等により、体系的な再就職支援策の円滑かつ適切な実施を図る。
(5) 雇用保険制度の安定的運営の確保等
 適正な業務の運営
雇用のセーフティネットとしての雇用保険制度の安定的運営を確保しつつ、その十分な機能発揮を図るため、平成14年9月より実施している「失業認定の在り方の見直し」を踏まえ、求職活動実績に基づく失業の認定、給付制限の一層的確な運用を行う。
 確実な適用、不正受給の防止等
私立学校教員等及び国立大学法人の教職員に対する確実な適用を図るとともに、基本手当、教育訓練給付等の不正受給の防止・厳格な対処等を進める。
(6) 若年者雇用対策の推進(「若者自立・挑戦プラン」の推進)
「若者自立・挑戦プラン」に掲げられた当面3年間で若年失業者等の増加傾向を転換するとの目標を踏まえるとともに、新規高卒者の内定率について平成15年度以上の水準を確保することを目指して、若年者雇用対策を推進する。
 在学中からの職業体験機会の充実
(イ) 高校生のジュニアインターンシップ等の推進
職業意識形成を支援するため、学校等と連携して「総合的な学習の時間」などを活用したジュニアインターンシップを推進する。
また、企業人等働く者を講師として学校に派遣し、職業や産業の実態、働くことの意義、職業生活等に関して生徒に理解させ自ら考えさせるキャリア探索プログラムを積極的に実施し、参加生徒数を25万人程度とすることを目指す。
さらに、公共職業安定所に高校生を受け入れ、就職活動の実態や公共職業安定所の利用の仕方等を体験させるハローワーク体験ツアーを実施する。
(ロ) 大学生に対する職業意識啓発事業の実施
適職選択のための自己理解等を促進するため、大学等と連携し、学生に対する各種セミナーや適職相談を実施するとともに、インターンシップ受入企業開拓事業を経済団体に委託して実施する。
 新規学卒者に対する就職支援策の推進
(イ) 新規高卒者に対する就職支援策の実施
就職機会の拡大を図るため、求人開拓、就職面接会及び応募前の職場見学を推進するとともに、若年者ジョブサポーターにより、在学中の早い段階から就職後の職場定着までの各段階を通じてマンツーマンによる一貫した就職支援を実施する。若年者ジョブサポーターによる延べ相談件数を17万件程度とすることを目指す。
また、就職希望者に対し、就職活動に必要な知識や基本的な実務能力を付与するための就職ガイダンスを民間教育訓練機関に委託して実施する。
さらに、高校の進路指導担当者を対象に公共職業安定所での実地研修を行うほか、地域の状況を踏まえた円滑な職業紹介を推進するため、就職慣行の見直し等を都道府県高等学校就職問題検討会議において引き続き検討する。
(ロ) 新規大卒者に対する就職支援策の実施
大学等新卒者に対して、学生職業センター等において職業指導及び職業相談を実施するとともに、就職面接会を開催する。
(ハ) 未就職卒業者に対する就職支援策の実施
未就職卒業者の就職促進を図るため、職業講習及び職業訓練を実施するとともに、若年者試行雇用の活用を図る。
 若年失業者対策の強化
(イ) 若年者試行雇用の推進
学卒未就職卒業者等の若年失業者に実践的な能力を取得させて常用雇用を推進するため、短期間の試行雇用事業を実施する。試行雇用の開始者数を5万1千人、常用雇用移行率を少なくとも8割程度確保することを目指す。
(ロ) ヤングワークプラザにおける就職支援の実施
若年失業者の就職を支援するため、東京、神奈川、愛知、大阪及び兵庫に設置しているヤングワークプラザにおいて、専門的な相談、職業紹介等の就職支援を実施する。
 地域との連携及び協力による若年者就職支援対策の展開
若年者のためのワンストップサービスセンター(通称ジョブ・カフェ)や地域の経済団体等に対し、企業説明会や職場見学会等の事業を委託するとともに、都道府県の要請に応じワンストップサービスセンターに公共職業安定所を併設し、地域との連携及び協力による効果的な若年者の就職支援対策を推進する。
(7) 高齢者雇用対策の推進
 高年齢者雇用安定法の改正
少子高齢化の急速な進展等を踏まえ、少なくとも65歳までは働き続けることができるようにするため、定年の引上げ、継続雇用制度の導入等による65歳までの雇用機会の確保、高年齢者等の再就職援助の強化等所要の措置を講ずること等を内容とする高年齢者雇用安定法の改正を含め必要な対応を行うこととしており、その円滑かつ適切な施行を図る。
なお、施行に当たっては、十分な周知・啓発を行う。
 知識・経験を活用した65歳までの雇用の確保
(イ) 高年齢者雇用アドバイザーとの連携による事業主に対する指導・援助の推進
高年齢者雇用状況報告に基づき、事業主に対するきめ細かな指導・援助等を引き続き行い、高年齢者雇用確保措置の円滑な実施を図る。
また、都道府県高年齢者雇用開発協会と連携して、高年齢者雇用アドバイザーによるフォローアップを重点とした相談・助言及び継続雇用定着促進助成金等の活用を通じて、定年の引上げ、継続雇用制度導入等を行う事業主を支援する。
(ロ) 65歳継続雇用達成事業の確実な推進
地域の経済団体との連携の下、選定された事業主団体において策定された65歳継続雇用達成方針に基づき、そのすべての傘下企業を対象として集団的に指導、助言を行い、65歳までの継続雇用制度の導入比率の上昇を図る。
また、傘下企業の制度導入の支援を図るため、高年齢者雇用アドバイザーとの連携を図る。
 中高年齢者の再就職の援助・促進
(イ) 中高年齢者試行雇用事業の推進
世帯主など特に再就職の緊急性が高い中高年齢求職者について、試行雇用を通じて常用雇用への移行を図ることにより、再就職を促進する。
(ロ) 再就職援助計画制度の普及、活用の促進及び再就職支援コンサルタントとの連携
事業主に対し、定年、解雇等により離職する高年齢離職予定者に再就職援助措置を講じるよう努力する義務があることについて周知・啓発を行う。
また、必要に応じて、事業主に対して再就職援助計画の作成を要請するとともに、都道府県高年齢者雇用開発協会に設置されている再就職支援コンサルタントと連携を図り、再就職援助計画等の作成方法や離職予定者の再就職援助に向けた援助措置の内容等について相談・援助を実施する。
さらに、中高年齢労働者の職業生活設計及びキャリアの棚卸しに関する支援を行うため、高齢期雇用就業支援コーナーとの連携を図る。
 年齢にかかわりなく働ける社会の実現に向けた取組
年齢にかかわりなく働ける社会の実現に向けた基盤づくり事業の実施に当たる高年齢者雇用アドバイザーとの連携を図りつつ、募集・採用時の年齢制限是正等に係る相談・援助等の支援を行う。
 高齢者の多様な就業・社会参加の促進
(イ) シルバー人材センター事業の推進
市区町村等との連携の下に高齢者のニーズに対応した就業機会を確保・提供し、地域に密着した事業運営体制を確立することにより、子育て支援事業を拡充するなどシルバー人材センター事業を引き続き推進する。
また、シルバー人材センター連合が実施する技能講習と合同面接会等を一体的に行うシニアワークプログラム事業に連携・協力する。
(ロ) 高年齢者等の共同による創業に対する支援(再掲)
高年齢者等共同就業機会創出助成金を活用し、45歳以上の高年齢者等が共同して事業を開始し、継続的な雇用就業機会を創出した場合、当該事業主を支援する。
(8) 障害者雇用対策の推進
 障害者をめぐる厳しい雇用情勢に対応するための雇用対策の強化
「障害者基本計画」、「重点施策実施5か年計画」及び「障害者雇用対策基本方針」に基づき、障害者雇用に関する施策を推進する。 
重点施策実施5か年計画において明記されている平成19年度までに公共職業安定所の年間障害者就職件数を3万人、平成20年度の障害者雇用実態調査において雇用障害者数60万人との目標を踏まえ、平成16年度においては、15年度を上回る就職件数を確保することを目指す。
(イ) 法定雇用率達成指導の徹底
平成16年4月1日より、一般の民間企業に設定されている除外率をすべての業種において一律10%ポイント引き下げるとともに、国及び地方公共団体における除外職員制度を原則廃止し、除外率を設定しており、この周知と適正な実施を図る。
身体障害者及び知的障害者の実雇用率が低いことや法定雇用率未達成企業の割合が高いことを踏まえ、民間企業に対する法定雇用率達成指導において、障害者雇入れ計画作成命令、厚生労働大臣の勧告に従わない企業に対する企業名の公表を前提とした特別指導を指導基準に基づき厳正に実施する。また、市町村に対して適切な法定雇用率達成指導を実施する。
なお、本省においては、各労働局の指導結果に基づき、6月に企業名の公表を実施する。
(ロ) 障害者個々人に応じた就職支援の推進
「緊急障害者就職支援プロジェクト」を継続して実施する。特に障害の種類及び程度等障害者個々人の状況に応じたきめ細かな職業相談・職業紹介の実施、求人開拓の強力な推進、集団面接会の積極的な実施を図ること等により、障害者雇用対策を強化する。
 障害者の雇用機会の拡大
(イ) 障害者試行雇用事業(トライアル雇用事業)の拡充
障害者を短期の試行雇用の形で受け入れ、常用雇用への移行を促進する障害者雇用試行事業を拡充して実施する。試行雇用の開始者数を4,200人、常用雇用移行率を少なくとも8割程度確保することを目指す。
(ロ) 職場適応援助者(ジョブコーチ)による事業の推進
社会福祉法人等の協力機関とも連携しながら、地域障害者職業センターが中心になり、職場への適応が困難な障害者の働く職場にジョブコーチを派遣し、職業的自立に向け、実際の職場の状況に応じた支援を行う。その際、公共職業安定所は、支援ニーズの把握や個別の事業所開拓等を実施する。
(ハ) 障害者求職者情報のインターネットによる提供の実施
公共職業安定所の障害者求職情報をハローワークインターネットサービスにおいて公開し、企業が求職者情報を入手することを可能とし、企業の採用活動を支援する。
 雇用と福祉の連携による障害者の自立支援
(イ) 職場適応援助者(ジョブコーチ)による事業の推進(再掲)
社会福祉法人等の協力機関とも連携しながら、地域障害者職業センターが中心になり職場適応援助者事業を推進する。公共職業安定所においては、支援ニーズの把握や個別の事業所開拓等を実施する。
(ロ) 障害者就業・生活支援センター事業の拡充
障害者の身近な地域において雇用、保健福祉、教育等の関係機関が連携し、就業及びそれに伴う日常生活の相談・支援を一体的に行う障害者就業・生活支援センター事業の拡充を図る。都道府県労働局及び公共職業安定所においては、同センターの業務の円滑かつ効果的な運営のための協力を行う。
 精神障害者の雇用・就業施策の推進
(イ) 就職に必要な基本的な労働習慣等を体得する障害者準備支援事業の実施
地域障害者職業センターにおいて、就職に必要な基本的な労働習慣等を体得するため、障害者個々人に応じたカリキュラムにより体系的な訓練を実施する。その際、公共職業安定所においては、支援対象者の把握や訓練修了者のうち一般雇用が可能な者について職業相談、職業紹介等を実施する。
(ロ) 医療機関等と連携した精神障害者のジョブガイダンス事業の実施
医療機関等の利用者で、就職意欲は高いものの就職するための準備が十分に整っていない精神障害者を就職に結びつけるため、公共職業安定所から医療機関等に積極的に出向き、就職活動に関する知識や方法を実践的なガイダンスにより示す。
また、公共職業安定所は医療機関等との連携を深め、医療支援から就職支援まで含めた支援活動を展開できる環境整備に努める。
(ハ) 精神障害者の職場復帰支援事業の創設
休職中の在職精神障害者の円滑な職場復帰に向け、地域障害者職業センターにおいて、在職精神障害者及び雇用事業所への支援を行う「精神障害者職場復帰支援事業」(リワーク支援事業)を創設する。公共職業安定所においては、事業の周知等について地域障害者職業センターとの連携を図る。
(9) 外国人雇用対策の推進
 外国人労働者の就労環境の一層の整備
(イ) 外国人求職者の職業紹介機能の強化
現下の厳しい雇用失業情勢の下、増加する外国人来所者に適切に対応するため、「外国人雇用サービスコーナー」の体制の強化により外国人求職者等に対する職業相談・紹介の充実を図るほか、本省においても、求職者向けパンフレットを英語・中国語・ポルトガル語等で作成・配布する。
(ロ) 日系人の適正な就労の推進のための情報提供の拡充
「外国人雇用サービスコーナー」や「日系人雇用サービスセンター」を拠点として、職業相談・紹介を行う。
日系人が集住している地域に設置している「日系人職業生活相談室」において、職業選択、求職活動、労働条件等に関する日系人等に対する相談・情報提供を行うとともに、職業紹介あるいは事業主指導等の窓口との連携により、日系人の雇用の安定と適正な雇用管理の確保を図る。
また、日系人が多く集住している地域においては、日系人失業者等に対する職業ガイダンスや地元日系人コミュニティへの訪問相談等を実施する。 さらに、「日伯雇用サービスセンター(ブラジル国サンパウロ市)」を拠点として現地日系人団体とも連携して、来日を希望する日系人に対して適切な情報を提供し、日系人の適正な就労を図る。
 専門的、技術的分野の外国人労働者の受入れ・定着の促進
専門的、技術的分野の外国人労働者の受入れを積極的に推進することとする政府の基本方針に沿って、「外国人雇用サービスセンター」が主体となって、各都道府県労働局・公共職業安定所の実情に応じて連携を図りつつ、専門的、技術的分野の外国人に対する職業相談・紹介を行うほか、卒業後の就職を希望する留学生に対しては、大学等教育機関や経済団体等の関係機関と連携して就職支援を行う。
 事業主等に対する指導・援助等の推進
外国人雇用状況報告によって外国人労働者の雇用状況を把握するとともに、「外国人労働者の雇用・労働条件に関する指針」に基づく事業主への指導・援助、外国人雇用管理アドバイザーによる援助及び外国人雇用管理セミナーの開催により、外国人労働者の雇用管理の改善を図る。
また、「外国人労働者問題啓発月間」を中心として、外国人労働者の適正な雇用及び労働条件の確保等に関する周知啓発に努める。
 適正就労の推進等
警察庁、法務省等関係行政機関との連携を図りつつ、事業主等への啓発・指導による不法就労の防止並びに事業主への是正指導及び必要に応じた関係行政機関への情報提供による不法就労の解消に努める。
(10) 安心して働ける雇用環境の整備
 ホームレスの雇用対策の推進
(イ) 自立支援事業職業相談員の配置
関係地方公共団体が行うホームレス自立支援事業との連携の下で、公共職業安定所の職業相談員によるきめ細かな職業相談等を行うことにより、就業機会の確保を図る。
(ロ) ホームレス就業開拓推進員の配置
ホームレス就業開拓推進員を配置し、ホームレスの就業ニーズに応じた求人開拓や地方公共団体等と連携を図りながら求人情報等の収集・提供を行うほか、事業主に対する啓発活動を行うことにより、就業機会の確保を図る。
(ハ) 技能講習事業の促進
自立支援センターに入所しているホームレス等に対して、職場で必要とされる資格・免許の取得等を目的とした技能講習を実施することにより、就業機会の確保を図る。
(ニ) 試行雇用事業の促進
自立支援センターに入所しているホームレス等に対して、一定期間の試行雇用により、円滑に新たな職場への適応を進め、常用雇用への移行を図る。
 母子家庭の母等の雇用対策の推進
児童等を扶養する母子家庭の母等について、公共職業安定所に職業相談員(寡婦担当)を配置し、家庭環境等に配慮した職業相談・紹介の実施、特定求職者雇用開発助成金や訓練手当、試行雇用事業の活用等により、その早期就職の促進を図る。
 駐留軍関係離職者対策の推進
駐留軍関係離職者については、駐留軍関係離職者等臨時措置法等に基づき、公共職業安定所において職業相談・紹介、職業訓練の推進と職業転換給付金の活用等により、離職を余儀なくされた者の生活の安定と早期再就職の促進を図る。
 漁業離職者対策の推進
国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法に基づき、国際環境の変化に伴い発生する漁業離職者について、漁業離職者求職手帳の発給、必要な就職指導の実施、職業転換給付金の支給等により、その求職者の生活の安定、再就職の促進を図る。
 多様な状況に応じた各種雇用対策の推進
(イ) 沖縄県における雇用対策の推進
沖縄県の雇用失業情勢は依然として厳しい状況にあり、沖縄県の雇用失業情勢の改善を図る観点から、「沖縄振興特別措置法」に基づく政府全体の沖縄振興策等と連携しつつ、沖縄県内の特別の対策を実施する。
(ロ) 炭鉱離職者対策の推進
引き続き機動的な職業訓練の実施、きめ細かな職業指導及び職業転換給付金の活用等により、池島炭鉱及び大平洋炭礦の炭鉱離職者の早期の再就職の促進を図る。
(ハ) 日雇労働者対策の推進
求人の開拓を積極的に行うことにより、日雇労働者の就業機会の確保を図る。
さらに、東京、神奈川、愛知、大阪などの日雇労働者が集中する特別地区の日雇労働者に対して、技能講習を実施し日雇労働者の就業機会の確保を図るとともに、試行雇用事業の実施を通じ、常用雇用への移行を図る。
(ニ) 失業対策諸事業の適正な運営
特定地域開発就労事業については、平成15年7月の「特定地域開発就労事業のあり方に関する調査研究報告」を踏まえ、適正な運営を図る。
(ホ) アイヌ地区住民の雇用対策の推進
アイヌ地区住民については、各種就職援護措置の活用を図るとともに、職業相談員経験交流会議を開催し、この成果を職業相談に役立て、きめ細やかな職業指導、職業相談を実施するとともに、事業主説明会を開催し、地域住民の雇用の安定を図る。
(ヘ) 中国残留邦人等永住帰国者の雇用対策の推進
中国残留邦人等永住帰国者について、公共職業安定所において、職業相談・紹介の実施及び職業転換給付金制度の活用等により、雇用の促進を図る。
また、職業相談等の一部の業務については、財団法人中国残留孤児援護基金に委託し、中国帰国者定着促進センター等において実施する。
(ト) インドシナ難民等の雇用対策の推進
国際救援センター入所のインドシナ難民及び条約難民については、職業相談・紹介、職場適応訓練その他就職を促進するための各種援護措置の実施に係る業務を財団法人アジア福祉教育財団に委託して実施し、その雇用の促進を図る。
また、公共職業安定所においては、難民に係る求人の取り次ぎ、求人開拓、職場定着指導等の業務について、同財団と綿密な連携をとりながら協力する。
(チ) 在日韓国・朝鮮人の就職の機会均等の確保対策の推進
在日韓国・朝鮮人については、就職の機会均等が確保されるよう、事業主等啓発説明会、ポスター等の広報活動、不適正事象への指導等により、事業主等に対し積極的な指導・啓発を行う。
(リ) 北朝鮮帰国被害者等に対する雇用対策の推進
帰国した被害者及び帰国し、又は入国した被害者の配偶者等の雇用の機会の確保を図るため、職業訓練の実施、就職のあっ旋等により、その早期就職の促進を図る。
(ヌ) 本州四国連絡橋建設に伴う雇用対策の推進
本州四国連絡橋の供用に伴って、事業規模が縮小されること等により離職を余儀なくされる労働者に対して、本州四国連絡橋の建設に伴う一般旅客定期航路事業等に関する特別措置法等に基づき、公共職業安定所における求職手帳の発給、職業相談・就職指導の実施、職業訓練の推進と職業転換給付金の支給等により、その早期再就職の促進を図る。
(ル) 公正な採用選考の推進
公正な採用選考システムの確立に係る指導、啓発については、「人権教育のための国連10年」に関する国内行動計画や「人権教育・啓発に関する基本計画」においても指摘されているところである。これらを踏まえつつ、就職の機会均等を保障することが同和問題などの人権問題の中心的課題であるとの認識に立って、公正採用選考人権啓発推進員未設置事業所に対する設置勧奨及び同推進員制度が効果的に機能するような制度・運営面での充実や、企業トップクラスに対する研修会の充実に努めるとともに、小規模事業所に対する啓発・指導を実施する。
また、全国高等学校統一応募用紙等の適正な応募書類の周知徹底と公正な採用選考についての各種啓発資料の作成・配付等により、雇用主に対する啓発・指導を実施する。
 就職困難者に対する雇用対策の推進 就職が特に困難な者を継続して雇用する労働者として雇い入れる事業主に対して支給される特定求職者雇用開発助成金等を活用し、これら就職困難者の雇用の促進を図る。 ト 多様な雇用管理改善対策の推進
(イ) 建設労働対策の推進
建設労働者の雇用の改善等に関する法律及び平成13年度から平成17年度までを対象とする第6次建設雇用改善計画に基づき、雇用の近代化のさらなる促進等建設労働者の雇用の改善等のための施策を推進する。
(ロ) 港湾労働対策の推進
(1)  改正港湾労働法の施行状況を踏まえた制度検討の結果に基づく改正後の制度の円滑な施行等
改正港湾労働法の施行状況を踏まえた制度検討の結果に基づく改正後の制度について、制度改正の趣旨及び内容の周知徹底等により円滑な施行を図る。
(2)  新たな港湾雇用安定等計画に基づく施策の推進
平成16年度から平成20年度までを対象とする新たな港湾雇用安定等計画に基づき、港湾労働者派遣制度の有効活用の促進等による雇用秩序維持対策の一層の推進等港湾労働者の雇用の安定及び福祉の増進のための施策を推進する。
(ハ) 季節労働者対策の推進
季節労働者の雇用の安定を図るため、通年雇用安定給付金制度の活用により通年雇用の促進に努める。
なお、本給付金制度については(1)通年雇用化の促進、(2)雇用対策としての位置付けの明確化、(3)特に、冬期技能講習を効率的かつ実効性の高いものとするとの観点からの見直しを行うとともに、冬期雇用安定奨励金及び冬期技能講習助成給付金については暫定措置として平成16年度から3年を限り実施する。
(ニ) 林業労働者対策の推進
我が国林業を取り巻く環境の変化に対応するため、林業労働力の確保の促進に関する法律に基づき、林野庁等との連携の下、雇用管理の改善を実施するとともに、林業労働者の高齢化の進行等に伴い必要となる新たな労働力の確保のために、林業雇用改善推進事業を活用して求職者と求人とのマッチングの促進及び雇用管理改善の促進を図る。また、林業振動障害軽快者の再就職促進対策を実施する。
(ホ) 出稼労働者対策の推進
やむを得ず出稼ぎに出る人々に対して、主な送出地及び受入地に相談員を配置し就職相談及び指導、安全就労推進集会等を実施するとともに、主な送出地を管轄する都道府県労働局が出稼労働者援護事業を行う道県と連携し、安定就労対策を実施する。
(11) 職業安定行政の効果的な展開のための対応
 民間需給調整関係業務の都道府県労働局への集中化による指導・監督体制の整備
民間需給調整関係業務については、許可・届出及び指導監督等を原則として労働局に集中化させる。また、公共職業安定所においては、引き続き派遣労働者や求職者等からの苦情、相談への適切な対応等に努める。
 行政情報化等への対応
総合的雇用情報システムの更改(全国移行)に伴い、更改安定所等の導入に伴う事前工事、新機器導入及び新システムの機能拡充等を順次行う。
また、職業安定行政システムの運用を引き続き行うとともに、端末の増設等を行い、電子申請への効率的な対応及び一般事務の電子化の推進を図る。

3  雇用均等行政の重点施策
(1) 職業生活と家庭生活の両立支援対策の推進
 次世代法の円滑な施行のための取組
次世代法に基づく次世代育成支援対策の推進に当たっては、事業主による一般事業主行動計画の策定・実施を通じた、仕事と子育ての両立支援の推進が重要な柱であることを踏まえ、一般事業主行動計画の策定を促し、平成17年4月1日以降、速やかに計画を策定した旨の届出が行われるようにするための周知徹底を図る。具体的には、平成16年度の前半においては、別途指示するところにより、特に常時雇用する労働者が300人を超える事業主に対し、一般事業主行動計画の策定、計画を策定した旨の届出及び認定等についての周知を集中的に行うとともに、一般事業主行動計画の策定及び実施に関し雇用環境の整備に関する相談に対応する業務等を担う次世代育成支援対策推進センターとの連携を図る。
 育児・介護休業法の施行
育児・介護休業法の円滑な施行を図るため、集団指導を中心とした計画的、効果的な行政指導を実施する。
その際、「次世代育成支援に関する当面の取組方針(以下「当面の取組方針」という。)に掲げられた男女別育児休業取得率等の目標値の達成へ向けて、男女労働者ともに育児休業を取得しやすい環境の整備並びに子の看護のための休暇制度及び子の養育のための勤務時間短縮等の措置の導入が図られるよう指導する。
また、育児休業の申出又は取得を理由とした不利益な取扱いなど、育児・介護休業法に基づく労働者の権利が侵害されている事案について、労働者からの相談があった場合は、的確に対応し、法違反がある場合その他必要な場合には事業主に対する適切な指導を行う。
 改正育児・介護休業法の周知
育児・介護休業法の改正法案を今通常国会に提出しているところであり、その成立後においては、事業主、労働者をはじめ関係者に対し、改正法の周知徹底を図ることが必要となるが、その具体的内容については、改正法案の成立後、別途指示することとする。
 職業生活と家庭生活との両立の推進に関する周知啓発活動の実施
「仕事と家庭を考える月間」(10月)はもとより、あらゆる機会をとらえ、次世代法の趣旨及び内容並びに当面の取組方針において設定された男女別育児休業取得率等の目標値等に関する周知啓発活動を効果的に実施する。
なお、事業主等に対する職業生活と家庭生活との両立の推進に関する効果的な啓発を図るため、子育てしやすい職場づくり推進協力員の活用を積極的に図る。
 ファミリー・フレンドリー企業の普及促進
企業における「仕事と家庭の両立のしやすさ」を示す両立指標について、インターネット上でその進展度を診断できるファミリー・フレンドリー・サイトの利用等による活用を進め、ファミリー・フレンドリー企業に向けた自主的な取組を促進するとともに、ファミリー・フレンドリー企業表彰の実施により、その一層の普及促進を図る。
(2) 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保対策の推進
 適切な行政指導の実施及び個別紛争解決の援助
(イ) 均等取扱いのための行政指導等
男女雇用機会均等法第25条に基づく報告徴収により、雇用管理の実態及びポジティブ・アクションの実施状況を把握するとともに、行政指導を積極的に実施し、企業における実質的な男女均等取扱いの確保を図る。男女差別的な取扱いを実施している企業に対しては厳正に対処し、都道府県労働局長の助言、指導、勧告により、また、企業名公表制度についても説明しつつ、法違反を是正させる。
男女労働者の間で採用、配置、昇進等において、事実上の格差が大きい企業に対しては、ポジティブ・アクションの取組の好事例を提供しつつ、当該企業が自社の問題点を踏まえ、女性の採用拡大、職域拡大及び管理職への登用等に向け、積極的かつ具体的な取組を行うよう助言する。
コース等で区分した雇用管理制度を導入している企業に対し、「コース等で区分した雇用管理についての留意事項」の周知徹底及び法違反企業に対する是正指導を行う。
また、実質的な男女の均等確保のため、引き続き本省において、男女双方に対する差別の禁止の問題やいわゆる間接差別等についての検討を行う。
(ロ) 均等取扱いに関する個別紛争解決の援助
結婚、妊娠・出産を理由とする解雇等均等取扱いに関する紛争については、労働局長による助言、指導、勧告及び機会均等調停会議による調停を積極的に運用することにより、円滑かつ迅速な解決を図る。
また、個別紛争解決援助の事例等を紹介し、個別紛争解決援助に係る都道府県労働局や機会均等調停会議の役割や機能について、女性労働者等に積極的に周知する。
(ハ) 男女雇用機会均等法の周知徹底
ポジティブ・アクションの推進を重点として、労使を始め関係者に対し、「男女雇用機会均等月間」(6月)を中心に効果的な広報啓発活動を実施する。
(ニ) 女子学生等の就職に関する均等な機会の確保
女子学生の就職に関する均等な機会の確保を図るため、企業の採用担当者等を対象に、男女雇用機会均等法に沿った男女均等な選考ルールを徹底させるとともに、採用実績について男女差の大きい企業に対し、同法第25条に基づく報告徴収を行い、法違反企業に対しては助言、指導等を実施する。
女子学生、女子生徒等が的確な職業選択を行えるよう、ガイドブック等の情報提供により意識啓発を図る。また、女子生徒等の意識啓発に当たっては、職業安定行政が実施する高校における職業意識形成支援との連携を積極的に図る。
(ホ) 男女間賃金格差解消のために労使が自主的に取り組むためのガイドラインの普及
男女間の賃金格差解消のために労使が自主的に取り組むための賃金管理及び雇用管理の改善方策に係るガイドラインを、使用者団体を通じる等により企業に対し周知徹底を図るとともに、労働団体に対しても周知する。
 女性の能力発揮のためのポジティブ・アクションの推進
(イ) 企業に対する啓発指導
本省において、経営者団体と連携し協議会を開催するとともに、都道府県労働局においても、管内の経営者団体等との連携の下に女性の活躍推進協議会を開催し、ポジティブ・アクションのより一層の推進を図る。
また、各企業における女性労働者の活躍状況、ポジティブ・アクションの取組状況を企業自らが自主点検を行うよう促す。
さらに(財)21世紀職業財団(以下「財団」という。)が実施するベンチマーク(自社の状況を測ることのできるものさしとなる値)を活用した中小企業女性の能力発揮診断事業に係る情報提供を行う。
(ロ) 「均等推進企業」表彰の実施
ポジティブ・アクションを推進している企業に対し、その取組を讃えるとともに、これを広く国民に周知し、女性労働者の能力発揮促進を図るため、「均等推進企業」を公募し、表彰を行う。
 職場におけるセクシュアルハラスメント防止対策の推進
(イ) 実効ある防止対策が行われるための行政指導等の徹底
企業において実効ある防止対策が講じられるよう徹底を図るとともに、セクシュアルハラスメントが生じている企業に対し、適切な事後の対応及び再発防止のための取組について指導を行う。
また、女性労働者等からのセクシュアルハラスメントの相談の多い業種、防止対策に遅れがみられる中小企業に対して、業種別使用者団体や中小企業団体等との連携を図り、防止対策について自主点検を促す等効果的な取組の促進を図る。
(ロ) セクシュアルハラスメントカウンセラーの活用
職場におけるセクシュアルハラスメントによって精神的苦痛を受けた女性労働者からの相談に対しては、セクシュアルハラスメントカウンセラーを活用し、適切に対応する。
 母性健康管理対策の推進
母性保護及び母性健康管理の必要性について、周知徹底及び適切な指導等を行うとともに、「母性健康管理指導事項連絡カード」の活用を促進する。
(3) パートタイム労働対策の推進
 パートタイム労働法及びパートタイム労働指針の一層の定着のための取組
パートタイム労働法及び改正後のパートタイム労働指針について、広報活動、集団説明会の実施、各種団体が主催する会合の活用等により周知徹底を図る。
さらに、短時間労働援助センター等の収集する企業の取組に関する好事例を紹介するなどにより、パートタイム労働指針の基本的考え方において示された通常の労働者との均衡を考慮した処遇の考え方及び事業主が講ずべき措置として追加された事項について浸透・定着を図る。
併せて、短時間労働者雇用管理改善等助成金にかかる指定等の業務を的確に実施し、同助成金の効果的な活用を図る。
また、パートタイム労働者が労働関係法令等関係諸制度に関し必要な知識を得られるよう、短時間労働援助センターの活用とともにパートタイム労働者に対する情報提供を行う。
 短時間雇用管理者による雇用管理改善の推進
パートタイム労働法第10条に基づき、短時間雇用管理者の選任等について事業主に対する助言等を行う。また、事業主及び事業主団体の会合の機会の活用等により短時間雇用管理者の選任の促進を図る。さらに、短時間雇用管理者に対しては講習会を行う。これらにより、事業所における自主的な取組体制の整備を図り、短時間雇用管理者によるパートタイム労働者の雇用管理改善を進める。
(4) 家内労働及び在宅ワーク対策の推進
 家内労働対策の推進
(イ) 最低工賃の新設・改正の計画的推進及び周知の徹底
今年度から新たに始まる「第8次最低工賃新設・改正計画」に基づき計画的に最低工賃の改正等を行うとともに、決定した最低工賃については、委託者、家内労働者、関係団体等に対して周知徹底に努める。
(ロ) 家内労働法の適正な施行
委託条件の明確化、工賃支払いの適正化を図るため、家内労働手帳の交付の徹底等必要な指導を行うとともに、家内労働安全衛生指導員を活用しつつ、特殊健康診断の受診の勧奨及び家内労働者の労災保険特別加入制度の周知徹底等により家内労働者の安全及び衛生の確保を図る。
また、いわゆる「インチキ内職」の被害防止に向けた意識啓発に努める。
 在宅ワーク対策の推進
在宅ワークの健全な発展に向けて、契約条件の文書明示やその適正化等を図るため、発注者、仲介業者及び在宅ワーカー等に対し「在宅ワークの適正な実施のためのガイドライン」等の周知徹底を図る。
(5) 雇用均等行政の効果的な運営のための対応
 総合的・計画的・効率的な行政指導の実施
男女雇用機会均等法第25条及び育児・介護休業法第56条に基づく事業場訪問による行政指導については、年度当初に総合的な年間事業場訪問計画を策定するなど、計画的に実施する。特に、男女雇用機会均等法に基づく行政指導を強力に推進する。
訪問による報告徴収の実施に当たっては、効率的な行政運営の観点に留意しつつ、均等取扱いの他必要な事項について把握を行うとともに、一般事業主行動計画策定に向けた取組を促すこととする。
なお、育児・介護休業法の施行について、平成16年度末までの指導計画に基づき実施している集団指導については、次世代法に係る周知の実施を踏まえ、計画の見直しを含めた効果的な実施を図る。
 雇用均等行政情報システムの積極的活用
雇用均等行政情報システムの積極的活用により、本省と都道府県労働局間の連絡調整、本省報告のシステム化を図り、各種情報の効率的把握を行うとともに、事業場台帳管理システムの活用等により業務の効率化、簡素化を図る。
 調査の実施
平成16年度においても女性雇用管理基本調査を実施し、労働基準法の母性保護措置並びに男女雇用機会均等法の妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置の実施状況等について、把握を行う。

4  労働保険適用徴収業務等の重点施策
(1) 労働保険の適用促進
労働保険の適用促進については、未手続事業の解消を図るため、未手続事業をこれまで以上に的確に把握し、加入勧奨等の徹底を行う。そのため、都道府県労働局、労働基準監督署及び公共職業安定所の連携、適用促進月間(10月)など、時期を限定した集中的な適用促進、適用徴収担当部署以外の部署との連携による未手続事業の把握・指導、労働保険の適用促進に係る委託業務についての社団法人全国労働保険事務組合連合会都道府県会との連携については計画的に確実に実施する。
(2) 労働保険料の適正徴収
労働保険料の適正徴収のためには、事業主が制度内容を理解した上で、正しく申告し、適正に納付されることが重要であり、そのため以下について適正に業務を実施する。
 年度更新の的確かつ円滑な実施
年度更新の実施に当たっては、「平成16年度の年度更新業務について」を踏まえるほか、労働保険徴収主務課室、労働基準部及び職業安定部の連携を密にし、都道府県労働局全体として、実施計画の策定、事務説明会の開催等のための実施体制の整備を図る。
 効率的な算定基礎調査の実施
労働保険料算定基礎調査(以下「算調」という。)については、適正な業務量の投入に配慮しつつ、効率的な算調実施計画を策定し、未手続事業場で保険事故が発生した場合などにも随時対応する体制を整備し、適正かつ実効ある実施を図る。
 実効ある滞納整理の実施
労働保険料の滞納整理については、効果的な滞納整理実施計画を策定して取り組むこととし、とりわけ多額の滞納事業主及び多年度にわたり滞納を繰り返している事業主に対し、重点的に滞納整理を実施する。
 社会保険及び労働保険に係る徴収事務の一元化への適切な取組
事業所説明会、算調及び滞納整理については、徴収事務の一元化に当たって社会保険・労働保険徴収事務センターとして実施する事務でもあることから、連絡協議会等の場で調整の上、適切に実施する。
(3) 事務組合の一層の活用、育成、指導等
労働保険事務組合制度は、中小零細事業における労働保険事務について大きな役割を果たしていることにかんがみ、その一層の活用を図る。また、労働保険事務組合(以下「事務組合」という。)の育成を行うに当たっては、その母体団体の性格、事務処理能力等を考慮し、委託事業数の増大を通じ事務組合の自立が図られるよう努める。
また、事務組合が適正に業務運営を行えるよう、事務組合への定期的な監督・指導等に努める。

5  個別労働紛争解決制度の積極的な運用
個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律(以下「個別労働紛争解決促進法」という。)の施行に伴い、労働局長による助言・指導及び紛争調整委員会によるあっせん等の個別労働紛争解決制度がスタートし、2年余りが経過した中で、依然として増加し続ける個別労働関係紛争の実情に即した迅速かつ適正な解決に向け、当該制度の積極的な運用を行う。
このため、都道府県労働局においては、個別労働紛争解決制度の持つ意義を再確認の上、各局の現状を分析し、的確な当該制度の運用に努める。
(1) 個別労働紛争解決制度の周知徹底
管内の運用状況を踏まえ、紛争自主解決支援セミナーや市町村広報紙(誌)の活用等あらゆる機会を捉えた積極的な個別労働紛争解決制度の周知・広報に取り組む。
(2) 総合労働相談コーナー等における相談対応
総合労働相談コーナー(以下「コーナー」という。)において、労働問題に関するあらゆる分野の相談に適切に対応するとともに、その過程において個別労働関係紛争を把握した場合には、個別労働紛争解決制度を教示する等的確に対応する。
また、コーナーの設置されていない労働基準監督署、公共職業安定所等においても、当該制度の積極的な説明を行うことによりその活用促進を図る。
これらのため、総合労働相談員、さらには、必要に応じて関係職員に対し、当該制度のみならず労働行政全般について幅広い知識を付与する等の積極的かつ効果的な研修等を実施し、資質の向上に努める。
(3) 助言・指導及びあっせんに係る事務処理
個別労働紛争解決促進法第4条に基づく都道府県労働局長の助言・指導及び同法第5条に基づくあっせんについて、各々紛争の実情に即した迅速・適正な解決に向けた適切な事務処理を行う。
特に、あっせんについては、総合労働相談員や、各局の実情に応じて新たに配置する紛争事案実情調査員の活用に留意する。
(4) 関係機関との協力体制の確立
管内における個別労働関係紛争解決のための取組を効果的に機能させるため、個別労働紛争解決制度関係機関連絡協議会の開催等を通じ、都道府県労働主管部局、地方労働委員会をはじめ紛争解決に係る取組を行う関係機関・団体との緊密な連携を図る。

6  各行政間の連携の下に推進する重点施策 
(1) 労働条件の確保、雇用の安定を図るための総合的施策の実施
都道府県労働局、労働基準監督署及び公共職業安定所の連携の下、企業倒産、雇用調整等に係る情報収集を積極的に行うとともに、地域に影響を及ぼす企業倒産、雇用調整が発生した場合、離職を余儀なくされた労働者を対象に、賃金不払、解雇手続、解雇についての男女差別、失業等給付の受給資格決定、職業紹介等に係る相談援助などの一連の手続き等について総合的かつ機動的な対応を図る。
また、情報の共有化の観点から、総合労働相談コーナーに対しても情報の提供を行う。
(2) 各分野ごとの連携した対策の推進
 ワークシェアリングの推進
各都道府県労働局ワークシェアリング推進本部を中心とし、都道府県労働局が一体となって、地方公共団体、労使団体などとも連携を図りつつ、ワークシェアリングの導入促進のための支援等に取り組む。
 次世代育成支援対策の推進
次世代法に基づく一般事業主行動計画の策定・実施を通じ、労働者の仕事と子育ての両立支援や、全ての労働者の働き方の見直しに資する多様な労働条件の整備など、事業主による実効性のある次世代育成支援対策が進められるよう、別途指示するところにより、都道府県労働局雇用均等室が中心となり、労働局内各部が連携しつつ、事業主等に対する次世代法の趣旨及び内容等の積極的な周知を行う。
 男女雇用機会均等確保対策の推進
男女雇用機会均等法及び同法に基づく指針の内容について、労働基準監督署における就業規則の受理時及び公共職業安定所における求人の受理時等に、その周知を図る。
なお、均等取扱いの個別紛争等に関する相談や、法違反事業所に係る情報を労働基準監督署又は公共職業安定所で把握した場合には、都道府県労働局雇用均等室へ提供等を行うことにより連携を図る。
併せて、女子生徒等の意識啓発について、都道府県労働局雇用均等室が実施する取組みと職業安定部が実施する高校における職業意識形成支援との連携を図る。
 育児・介護休業法に基づく事業主指導に関する連携の推進
育児・介護休業法及び同法に基づく指針の内容の周知並びに個別相談への対応について、都道府県労働局雇用均等室は労働基準監督署及び公共職業安定所との連携を密にして取り組む。
また、育児・介護休業法に関して、労働基準監督署又は公共職業安定所において把握した法違反の疑いのある事業所等に係る情報の都道府県労働局雇用均等室への提供等の連携に努める。
 パートタイム労働対策の推進
各都道府県労働局の実情に応じ、パートタイム労働者を雇用する事業主に対する説明会・相談会の開催等により、雇用均等行政のみならず労働基準行政及び職業安定行政を含め、関係行政間で十分連携して、労働局が一体となって改正後のパートタイム労働指針の周知等の業務を推進し、そこに示された均衡を考慮した処遇の考え方の浸透・定着を図る。
 派遣労働者の保護及び就業条件の確保対策等の推進
派遣対象業務の物の製造の業務への拡大に伴い、特に請負と労働者派遣の混在が予想される製造現場について、指導監督に万全を期す必要がある。このため、違反事案があった場合は相互に情報提供するなど職業安定行政と労働基準行政との連携を一層強化する。また、派遣元事業主、請負事業者、派遣先等の事業主に対して法令の遵守の徹底を図るため、必要に応じ、労働者派遣法に係る説明会等において、都道府県労働局の労働基準部、雇用均等室等の職員による説明の機会を確保するなど、引き続き各行政間で適切な連携を図る。
 外国人労働者対策の推進
外国人労働者の適正な雇用・労働条件の確保と不法就労の防止を図るため、労働基準行政及び職業安定行政は、外国人労働者等からの相談等への対応及びこれらの者に対する支援や、「外国人労働者の雇用・労働条件に関する指針」等に基づく事業主等に対する啓発指導、個別指導等に当たって、必要に応じて相互に連携して行うとともに、「外国人労働者問題啓発月間」(6月)においても、必要に応じて両行政が連携し、外国人労働者問題について周知・啓発を行う。
 障害者の労働条件確保・雇用対策の推進
障害者である労働者の法定労働条件の履行確保、雇用管理の改善等を図るため、職業安定行政は、障害者雇用連絡会議などの開催を通じ、労働基準行政及び福祉行政を始め関係行政との連携の下、これら労働者を使用する事業主に対する啓発・指導を推進するとともに、的確な情報の把握及び提供等を行い、問題事案の発生の防止及び早期是正に努める。
また、障害者雇用に関し、都道府県労働局が都道府県の関係部局との連携を図るとともに、必要に応じ関係団体等と連絡・調整を行うための障害者雇用連絡協議会を開催する。
 個人情報保護法の周知
雇用管理に関する個人情報を含む個人情報を取り扱う事業者の遵守すべき義務等を定める「個人情報の保護に関する法律」(平成15年法律第57号)について、平成17年4月1日の全面施行に向け、その円滑な実施の準備を行うとともに、法の内容及び趣旨の周知に努める。
(3) 職業能力開発行政との連携
 職業訓練の効果的な活用
公共職業訓練(離職者訓練)は、多様な内容・レベルの人材ニーズに対応するため、公共職業能力開発施設での訓練に加え、専修学校、大学・大学院、NPO、求人事業主等の多様な民間教育訓練資源を活用した委託訓練を推進しているところであるが、離職者の早期再就職支援を効果的に推進するためには、能力のミスマッチを解消するために職業訓練を有効に活用するなど、職業能力開発機関との密接な連携を図っていく必要がある。
このため、未充足求人の分析や求職者の訓練ニーズの把握等を通じて、具体的な訓練コース設定・見直しに資する情報提供・提案・協力等を実施する。
特に、求人開拓や求人受理に当たって、求人セット型訓練の受託について積極的に勧奨する。また、現在、雇用・能力開発機構都道府県センター及び主要な公共職業安定所に配置している能力要件明確化アドバイザーを活用し、当該事業所の求める能力要件を明確化し、効果的な訓練コースの設定等を実施しているので、協力する。
 早期かつ的確な受講あっせんの実施と連携体制の構築
公共職業安定所は、受講あっせんをできるだけ求職活動中の早期に行うよう努めるとともに、受講あっせんに当たっては、能力開発支援アドバイザーを活用してキャリア・コンサルティングを実施し、これを踏まえ、求職者の意思を尊重しつつも、求職者の適性・能力・職業経験、各訓練コ-スの内容・水準、地域の労働力需給動向等を総合的に勘案し、当該求職者にとって再就職に結びつく可能性が最も高いコ-スを選定する。
なお、資格取得等を目的とし、複数の同等のコースがある場合には、具体的なコースの選定は求職者の選択に委ねるとともに、適切な公共職業訓練コースがない場合には、求職者自らが民間教育訓練機関の講座を探索し、これを委託訓練コースとして認定するなど、より一層、個人の選択を機能させた訓練コースを設定することとしており、公共職業安定所においては、受講あっせんに当たって、留意する。
また、訓練受講修了者については、キャリア・コンサルティング等を踏まえ、必要な者については複数受講指示等を行う。
さらに、都道府県労働局においては、公共職業安定所における受講あっせんを始めとした職業能力開発業務及び職業能力開発行政との連携業務が的確に行われるよう、適切な指導を行い得る体制を構築する。
 求職から就職に至るまでの一貫した支援システムの展開
効果的な職業訓練を実施するほか、求職者の早期再就職を促進するためには、求職から、相談、訓練受講、職業紹介、就職に至るまでの一貫した支援を実施する必要がある。
具体的には、
(イ)  公共職業安定所において、職業能力開発機関の協力により、職業能力開発に関するワンストップ的な情報提供・相談援助を実施する。
(ロ)  巡回就職支援指導員を活用し、委託訓練の受講者に対する就職支援を実施する。
(ハ)  受講者情報のインターネットによる提供、個別求人開拓の実施、合同就職面接会等を行い訓練受講者や修了者に対する就職促進策を講ずる。
 創業に向けた職業能力開発支援の推進
再就職支援に加え、離職者の創業を支援することは雇用情勢の改善や離職者の生活の安定のために重要である。
職業能力開発施策としては、平成13年度から東京都に「創業サポートセンター」を、平成15年度からは大阪市に「関西創業サポートセンター」を開設し、創業や新分野展開に関する相談、訓練の実施及び開業に向けた教育訓練機関での座学の訓練や開業希望分野の事業所に委託した実習形式の職業訓練を実施しているところである。
都道府県労働局及び公共職業安定所においては、これら施策の周知に努めるとともに、職業安定機関で実施している助成金、産業政策として実施されている開業支援施策等と相まって効果的かつ総合的な支援が図られるよう配慮する。
 障害者の職業能力開発の推進
障害者の雇用の促進に当たって、地域ニーズに即した技能の習得は極めて有効であることから、就職を希望する障害者の増大に対応し、障害者が身近な地域で職業訓練を受講することができるよう、次のとおり障害者に対する職業訓練機会を拡充することとしている。
(イ) 公共職業能力開発施設における障害者訓練の拡充
障害者職業能力開発校が設置されていない地域において、一般の都道府県立職業能力開発校を活用し、知的障害者等を対象とした訓練コースを設定して地域ニーズに対応した障害者訓練を促進する。
(ロ) 事業主や社会福祉法人等の民間を活用した実践的な就業訓練の拡充等
特例子会社、重度障害者多数雇用事業所、社会福祉法人等の多様な委託先を開拓し、個々の障害者に対応した内容で実施する委託訓練を大幅に拡充する。 また、遠隔教育実施機関を活用して、重度身体障害者等に対して、IT技能を付与する訓練機会の提供を図る。
このため、都道府県労働局及び公共職業安定所においては、都道府県職業能力開発主管課及び公共職業能力開発施設と連携して、求職障害者に対するこれらの周知を図り、積極的かつ効果的な受講あっせん等に努める。
 若年者の職業能力開発の推進
若年者については、「若者自立・挑戦プラン」を踏まえ、施策を強化して取り組む。具体的には、在学中から職業に対する意識を啓発するため、中高生が自ら職業情報の収集等の取材活動や職業体験等を行うとともに、その活動を取りまとめ、同世代の中高生にその情報を発信する「中高生仕事ふれあい活動」支援事業を雇用・能力開発機構に委託し実施することとしているが、本事業は職業安定行政のジュニアインターンシップや職業ガイダンスと併せて実施することとなるので、都道府県労働局及び公共職業安定所においては、雇用・能力開発機構都道府県センターと密接な連携を図り、事業の円滑な運営について積極的に協力するよう努める。
また、学卒未就職者や近年急増しているフリーターを主な対象として、企業と教育機関をコーディネートし、企業実習と一体となった教育訓練を行うこと等により一人前の職業人を育成する新たな人材育成システムである日本版デュアルシステムを導入することとしているが、都道府県労働局及び公共職業安定所においては、都道府県能力開発主管課及び雇用・能力開発機構都道府県センターと密接な連携を図り、対象となる若年者への周知、積極的な受講あっせんに努める。なお、15年度まで実施していた学卒未就職者の職業訓練、学卒早期離職者やフリーターを対象とする職業訓練は、16年度以降、日本版デュアルシステムの一環として実施する。
学卒早期離職者やフリーター等については、雇用・能力開発機構都道府県センターにおいて、安定就労や訓練受講への意欲喚起、社会人の基礎的マナーを習得するためのセミナー、グループカウンセリングの実施や、民間教育訓練機関等における職業訓練や企業実習を実施することとしているので、対象者に対する周知や積極的な受講あっせんに努める。
さらに、雇用・能力開発機構はフリーター等若年者が多い大都市部などに「ヤングジョブスポット」を開設し、フリーター等若年者に対し、職業意識を高めるためのキャリア・コンサルティングを実施するとともに、フリーター同士による情報交換や職業体験等のグループ活動を支援しているところであるが、都道府県労働局及び公共職業安定所においては、対象者への周知や利用勧奨を行うとともに、同所において職業意識を高め、公共職業安定所での求職活動や訓練受講に誘導するので、同所との連携体制の構築を推進する。
 「私のしごと館」の活用
若年者を対象としたキャリア形成を総合的に支援する中核的な拠点として「私のしごと館」が、関西文化学術研究都市(京都府精華・西木津地区)において平成15年10月4日に本格的に稼働を開始したところである。
同館は、(1)展示・体験設備等による職業体験機会の提供、(2)総合的な職業情報の提供(インターネットによる館外への提供を含む)、(3)キャリア形成に関する相談・援助、(4)キャリア形成に関する研修・セミナー、(5)若年者のキャリア形成支援に関するプログラム・ツールの開発といった事業を実施しているところである。
都道府県労働局及び公共職業安定所においては、同館を若年者に対する職業相談や求人説明会、集団面接会等各種イベントの場として活用するほか、若年者を支援する立場にある教師、家庭、企業の雇用管理担当者及び関係行政機関の担当者等に対してその利用について積極的に勧奨を行う。
 キャリア・コンサルタントの活用
キャリア・コンサルタントについては、労働者の主体的なキャリア形成の促進や求人・求職の的確な結合を図るため、平成14年度以降、民間機関と公的機関をあわせ、5年間で5万人を目標として養成を推進しているところである。また、平成16年度以降は、若年者向けのキャリア・コンサルタントの養成を開始することとしている。
キャリア・コンサルタントについては、平成16年度も公共職業安定所等に能力開発支援アドバイザーの配置を行うこととしており、その活用を推進する。
キャリア・コンサルティングの技法については、就職支援等に有効な知識・技能であることから、職員や相談員が積極的にキャリア・コンサルティング養成講座を受講及び指定試験を受験することを奨励するとともに、相談員等の採用に際しては、指定試験の合格者について配慮する。
 人材育成地域協議会との連携
労働者が多様な教育訓練を受けることができるシステム等を構築していくために中央に「人材育成会議」を設置し、総合的な教育システムの整備等に向けた取組を推進しているところである。また、都道府県毎に「人材育成地域協議会」を設置(事務局は雇用・能力開発機構の各都道府県センター)し、若年者雇用問題検討会議との合同開催の下、地域の教育・訓練の資源を社会人の能力開発に総合的に活用するための具体的な協議を行っているところであり、今後とも人材育成と雇用の促進に努める。
 勤労青少年福祉対策の推進
勤労青少年福祉行政については、国、都道府県及び市町村の連携の下で在職青少年を対象に有意義な職業生活の実現のための余暇活動の充実に重点を置いた施策を推進してきたが、地域の実情に応じた若年者対策を実施することが重要となってきているため、勤労青少年ホーム設置市町村をはじめとする地域のニーズを把握しつつ、必要な場合には当該市町村事業への協力を行うなど適切な行政の推進に努める。

第4  地方労働行政展開に当たっての基本的対応
1  計画的・総合的な行政運営
(1) 計画的な行政運営
都道府県労働局、労働基準監督署及び公共職業安定所における行政運営に当たって、各行政分野ごとの課題及び分野横断的な課題について的確に対応していくため、各地域の実情を踏まえた重点施策を盛り込んだ行政運営方針を策定し、これに基づいて計画的な行政運営に努める。 また、行政運営方針等に基づき、業務運営の進捗状況を定期的に分析し、当初の目標に沿った実施状況となっているかフォローアップを行うよう努める。
(2) 各行政の連携と一体性の確保
複数の行政分野による対応が求められている課題について、都道府県労働局内関係部室の連携、労働基準監督署内又は公共職業安定所内の関係部門間の連携を図り、局署、局所又は局署所一体となって機動的かつ的確な対応を図る。
また、それぞれの重点課題への対応に当たっては、他の行政分野において実施される集団指導、説明会など事業主や労働者が一堂に会する場を積極的に活用し、合同開催とするなど効率的・効果的な方策を講ずるものとする。
こうした取組を推進するため、都道府県労働局内の各部室並びに管内の労働基準監督署及び公共職業安定所で実施を予定している行事等についての情報を相互に共有し活用するとともに、部局内の会議について、創意工夫をこらした業務展開の在り方、行政間連携方策等を検討する場として機能するよう活用する。

2  効率的な行政運営
(1) 事務の簡素合理化と業務運営の重点化
国の行政組織等の簡素・効率化については、中央省庁等改革以来の行政の構造改革を着実に推進することが求められており、地方労働行政もこうした趣旨を踏まえて、行政事務の簡素合理化や行政需要の変化に対応した業務運営の見直しを図り、国民の理解と信頼を得ていくことが求められている。このため、
第一に、都道府県労働局、労働基準監督署及び公共職業安定所において、これまでにも増して独自の工夫を凝らして事務の簡素合理化を進める。
第二に、経済社会の構造的な変化に伴い、労働行政における課題が増大するとともに複雑困難化する中で、都道府県労働局を中心として時々の地方労働行政における重要かつ困難な課題へ対応するため、限りある行政資源を集中的に投入するなどそれぞれの行政分野に応じて業務運営の重点化を強力に推進する。
第三に、庶務関係業務等の都道府県労働局への集中化について着実に推進することにより、事務の効率化を図る。
(2)  既存の業務執行体制の在り方の見直し
都道府県労働局において、地域経済の動向も分析した上で、行政需要の変化を具体的な指標に基づいて把握し、その結果を踏まえて署所も含めた業務の運営方法や職員の配置等の業務執行体制について積極的に見直しを進めることはもとより、行政需要に的確に対応するための行政体制のあるべき姿についても検討し、可能なものから逐次実施する。
同時に、国民から信頼される行政を実現するため、利用者の立場に立った親切でわかりやすい窓口対応、事務処理の迅速化等行政サービスの向上に努める。
(3) 行政情報化への対応
都道府県労働局の情報化については、労働基準行政情報システム、職業安定行政システム、雇用均等行政情報システム及び平成16年10月稼働予定の労働局総務情報システム等を積極的に活用して行政事務の情報化を推進する。
また、官庁会計事務データ通信システム(ADAMS)及び平成16年度から導入される電子入札システムを活用して、会計事務及び入・開札事務の適正化、効率化を図るとともに、労働局総務情報システムのサブシステムとして平成16年度中に稼働予定のりん議・決裁システム及び電子公文書発行システムの活用により、都道府県労働局の行政事務の一層の効率化を図る。
国民等と行政との間の申請・届出等手続の電子化への対応に関しては、平成15年10月より労働保険適用徴収システムによる電子申請が稼働したほか、平成16年3月以降、都道府県労働局が所掌する申請・届出等手続について、一部インターネット等を利用してオンラインで行えることとされたことを踏まえ、その的確な受付審査の実施により、国民の利便性・サービスの向上を図る。
情報セキュリティに関しては、厚生労働省情報セキュリティポリシーに基づき、本省システム及び各都道府県労働局独自システムの各情報セキュリティ実施手順等に従って、情報セキュリティの確保の徹底を図る。

3  地域に密着した行政の展開
(1) 地域の経済社会の実情の的確な把握
地方労働行政を取り巻く情勢及び課題を適切に踏まえた施策を企画、実施し、地域における行政ニーズに的確に応えていくため、都道府県労働局においては、関係行政機関及び関係団体等との連携を密にしつつ、地域経済情勢、地域における主要産業・企業の動向等を逐次、綿密に把握し、その的確な分析の上に立って適切な行政課題を設定し、それに対し、的確な行政運営に努める。
(2) 地方公共団体等との連携
雇用施策を始めとする労働施策について、国と地方公共団体はそれぞれが行う施策が密接な連携の下に円滑かつ効果的に実施されるよう相互に連絡・協力することが重要である。このため、「緊急地域雇用創出特別交付金」等業務執行面で恒常的に窓口同士の接触が不可欠となる業務の円滑化を一層進めるとともに、労働関係連絡会議の開催等都道府県労働局長と知事等都道府県幹部が労働施策全般にわたり、実のある意見交換を行う場を通じて、相互の連携基盤を強化する。
また、地域の実情に即した雇用施策の推進に係る具体的な連絡調整、情報交換等を行う場として、引き続き、雇用対策連絡調整会議を開催する。 
さらに、市町村、他の地方支分部局等との連携にも十分配意する。
(3) 労使団体等関係団体との連携
地域における行政ニーズに即応した地方労働行政を展開するためには、労使団体の要望を適切に把握し、これを業務運営に適切に反映するとともに、都道府県労働局から労使団体に対して必要な働きかけを適時適切に行っていくことが必要である。このため、都道府県労働局長以下局の幹部が地域を代表する労使団体の幹部から労働行政全般にわたって率直な意見や要望を聞くとともに、幅広い闊達な意見交換を行う場である地域産業労働懇談会の開催や日常的な意見交換を通じて、労使団体との連携を図る。
また、地域の実情に応じた施策の効果的な推進を図るため、地方労働審議会において、公労使の意見をきめ細かく把握し、行政運営に的確に反映するよう努めるとともに、関係団体、有識者及び調査研究機関等とも緊密な連携を図る。
(4) 積極的な広報の実施
広報活動は、労使はもとより国民全体の労働行政に対する理解と信頼を高めるために重要であることから、適切な時期・手段により、必要に応じ関係団体等との連携を図りつつ、創意工夫を凝らした広報活動を積極的に推進する。
特に、都道府県労働局において、局幹部とマスコミ関係者との定期的な懇談の場を設けるとともに、各行政における重要施策、法制度の改正等の動向及び主要な統計資料等を分かりやすく適時適切に提供すること等を通じて、マスコミとの日常的な接触に努める。
また、重要施策等の周知に当たっては、都道府県・市町村や労使団体の広報誌等を活用し、幅広くかつ効果的な広報活動を推進する。
(5) 情報公開制度等の適切かつ円滑な実施
都道府県労働局における情報公開制度の実施に当たっては、総務部企画室を中心として国民からの開示請求に対して適切に対応するとともに、「情報公開事務処理の手引」に基づく的確な処理に努めることにより、情報公開法の適正かつ円滑な運用を図る。
また、情報公開制度を適正かつ円滑に運用するために、各都道府県労働局の文書管理規程に基づく適正な文書管理に努めることにより、行政文書の保存期間内の保存を徹底するとともに、定期的に行政文書ファイル管理簿の適正な見直し及び整備を図ることにより、行政文書ファイル管理簿に記載する行政文書の一層の適正化を図る。
さらに、平成17年4月1日の行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律の施行に向けて、都道府県労働局等の保有する個人情報が記載された行政文書の整備及び個人情報ファイル簿の作成等所要の準備を進める。

4  職員の資質向上と綱紀の保持
(1) 研修の充実
労働行政を取り巻く情勢の変化及び行政課題の複雑困難化に適切に対応し、業務を的確かつ円滑に遂行するため、厚生労働省研修実施要綱に基づき、労働大学校で実施する研修及び地方で実施する研修において、職員の資質及び職務遂行能力の向上に資する研修の充実に努める。
特に、第一線業務におけるより実践的な能力の向上を図る研修の実施に努めるとともに、3行政一体の総合的労働行政を推進するため、各行政分野の専門的な科目以外に、他行政のカリキュラムも積極的に取り入れ、又は共通の研修を実施するよう努める。
(2) 綱紀の保持
労働行政は、労使を始め国民全体の信頼を得て初めて業務が円滑に施行されるものであり、その有する権限も大きいことから、国民の信頼と期待を裏切ることがないよう、管理者はもとよりすべての職員が綱紀の厳正な保持と徹底を図るよう、特に以下の点に万全を期する。
 国家公務員倫理法及び国家公務員倫理規程等を踏まえ、一層の綱紀の保持に努める。
 会計経理事務等金銭に関わる業務については、定められた事務処理手順の徹底、責任体制の明確化、職員相互の内部牽制体制の確立等による適正な事務処理の徹底を図る。
 官用車事故を始めとする交通事故等の防止に万全を期するため、交通法規の遵守はもとより自動車の安全運転の一層の徹底を図る。
 職員の利益を保護するとともに、職員がその能率を十分に発揮できるような勤務環境を確保するため、セクシュアルハラスメントの防止と排除の徹底を図る。
 不祥事案が生じた場合には、必要な再発防止措置を迅速かつ適切に講じる。
(3) 女性職員の採用・登用拡大
「都道府県労働局女性職員採用・登用拡大のための取組指針」に沿った具体的な取組を実施し、女性職員の採用及び登用等について実情に応じた計画の積極的な推進に努める。
(4) 職員の安全衛生確保等
窓口業務等における来庁者等からの暴力行為等に対する職員の安全確保等職員の業務執行に伴う安全衛生の確保に配慮することはもとより、業務が複雑・多様化する中で職員のメンタルヘルス対策を推進するため、署所のラインの管理者等を含めた管理監督者研修の充実を図る等により、心身両面にわたる健康の保持増進に努める。