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移動式クレーン構造規格
   第二章  加工(第十七条−第三十七条)

移動式クレーン構造規格 目次

第一節  ブレーキ等

(下部走行体のブレーキ等)
第十七条  移動式クレーンを走行させるための原動機、動力伝達装置、ブレーキ、操縦装置その他の装置
  は、次に定めるところによるものでなければならない。
  一  使用の目的に適応した必要な強度を有すること。
  二  著しい損傷、摩耗、変形又は腐食がないこと。

(移動式クレーンのブレーキ)
第十八条  移動式クレーンは、その走行を制動し、及び停止の状態を保持するために必要な独立に作用す
    る二系統以上のブレーキを備えるものでなければならない。
2  前項の規定にかかわらず、クローラクレーン、被けん引式の移動式クレーン又は走行するための動力
  として水圧若しくは油圧を用いる移動式クレーンで当該水圧回路中若しくは油圧回路中にブレーキバル
  ブを備えるものにあっては、走行を制動するために必要なブレーキを備えないことができる。
3  第一項のブレーキのうち走行を制動するために必要なブレーキは、次の表の上欄に掲げる移動式クレ
  ーンの最高走行速度に応じて、それぞれ、同表の中欄に掲げる制動初速度において同表の下欄に掲げる
  停止距離以内で当該移動式クレーンを停止させることができる性能を有するものでなければならない。(表)
4  第一項のブレーキのうち停止の状態を保持するために必要なブレーキは、五分の一のこう配の床面で
  無負荷状態の移動式クレーンの停止の状態を保持することができる性能を有するものでなければならな
  い。

(つり上げ装置等のブレーキ)
第十九条  つり上げ装置、起伏装置及び伸縮装置は、荷又はジブの降下を制動するために必要なブレーキ
  を備えるものでなければならない。ただし、水圧シリンダ、油圧シリンダ又は蒸気圧シリンダを用いる
  つり上げ装置、起伏装置又は伸縮装置については、この限りでない。
2  前項のブレーキは、次に定めるところによるものでなければならない。
  一  制動トルクの値(つり上げ装置、起伏装置又は伸縮装置に二以上のブレーキが備えられている場合
    には、それぞれのブレーキの制動トルクの値を合計した値)は、移動式クレーンに定格荷重に相当す
    る荷重の荷をつった場合における当該移動式クレーンのつり上げ装置、起伏装置又は伸縮装置のトル
    クの値(当該トルクの値が二以上ある場合にあっては、それらの値のうち最大の値)の一・五倍以上
    であること。
  二  人力によるものにあっては、次に定めるところによること。
    イ  ストロークの値は、足踏み式のものにあっては三十センチメートル以下、手動式のものにあって
      は六十センチメートル以下であること。
    ロ  足踏み式のものにあっては三百ニュートン以下、手動式のものにあっては二百ニュートン以下の
      力量で作動するものであること。
    ハ  歯止め装置又は止め金を備えているものであること。
  三  人力によるもの以外のものにあっては、移動式クレーンの動力(走行のための動力を除く。)が遮
    断された場合に自動的に作動するものであること。
3  前項第一号のつり上げ装置、起伏装置又は伸縮装置のトルクの値は、つり上げ装置、起伏装置又は伸
  縮装置の抵抗がないものとして計算するものとする。ただし、当該つり上げ装置、起伏装置又は伸縮装
  置に七十五パーセント以下の効率のウォーム・ウォーム歯車機構が用いられている場合には、当該歯車
  機構の抵抗により生ずるトルクの値の二分の一のトルクに相当する抵抗があるものとして計算すること
  ができる。

第二節  ドラム等

(ドラム等の直径)
第二十条  ワイヤロープにより荷のつり上げ又はジブの起伏若しくは伸縮の作動をする装置(以下この節
  において「つり上げ装置等」という。)のドラムのピッチ円の直径と当該ドラムに巻き込まれるワイヤ
  ロープの直径との比の値、つり上げ装置等のシーブのピッチ円の直径と当該シーブを通るワイヤロープ
  の直径との比の値又はつり上げ装置等のエコライザシーブのピッチ円の直径と当該エコライザシーブを
  通るワイヤロープの直径との比の値は、次の表の上欄に掲げるワイヤロープの種類及び同表の中欄に掲
  げるドラム等の区分に応じて、それぞれ同表の下欄に掲げる値以上でなければならない。ただし、つり
  上げ装置等に備えられる過負荷を防止するための装置のシーブのピッチ円の直径と当該シーブを通るワ
  イヤロープの直径との比の値は五以上とすることができる。(表)

(ワイヤロープのドラムへの巻込み)
第二十一条  つり上げ装置等の溝付きドラムの溝にワイヤロープが巻き込まれる方向と当該溝に巻き込ま
  れるときの当該ワイヤロープの方向との角度は、四度以内でなければならない。
2  つり上げ装置等の溝付きドラム以外のドラムに係るフリートアングルの値は、二度以内でなければな
  らない。

(ワイヤロープとドラム等との緊結)
第二十二条  ワイヤロープとドラム、ジブ、フックブロック等との連結は、合金詰めソケット止め、クラ
  ンプ止め、コッタ止め等の方法により緊結することにより行わなければならない

(ドラムの強度等)
第二十三条  つり上げ装置等を構成するドラム、シャフト、ピンその他の部品は、十分な強度を有し、か
  つ、つり上げ装置等の作動に支障となる摩耗、変形、割れ等がないものでなければならない。

第三節  安全装置等

(巻過防止装置等)
第二十四条  ワイヤロープ又はつりチェーンを用いるつり上げ装置、起伏装置及び伸縮装置は、巻過防止
  装置又は巻過ぎを防止するための警報装置を備えるものでなければならない。

(巻過防止装置等)
第二十五条  前条の巻過防止装置は、次に定めるところによるものでなければならない。
  一  巻過ぎを防止するため、自動的に動力を遮断し、及び作動を制動する機能を有するものであること。
  二  フック、グラブバケット等のつり具の上面(当該つり具の巻上げ用シーブの上面を含む。)とジブ
    の先端のシーブその他当該上面が接触するおそれがある物(ジブを除く。)の下面との間隔が〇・二
    五メートル以上(直働式の巻過防止装置にあっては、〇・〇五メートル以上)となるように調整でき
    る構造とすること。
  三  容易に点検を行うことができる構造とすること。
2  前条の巻過防止装置のうち電気式のものにあっては、前項に定めるところによるほか、次に定めると
  ころによるものでなければならない。
  一  接点、端子、巻線その他電気を通ずる部分(以下この項において「通電部分」という。)の外被は、
    鋼板その他堅固なものであり、かつ、水、粉じん等により機能に障害を生ずるおそれがない構造のも
    のであること。
  二  通電部分と前号の外被との間は、耐電圧試験において、日本工業規格C八二〇一−四−一(低圧開
  閉装置及び制御装置−第四部:接触器及びモータスタータ−第一節:電気機械式接触器及びモータス
  タータ)に定める基準に適合する絶縁効力を有する構造とすること。
  三  第一号の外被の見やすい箇所に、定格電圧及び定格電流を記載した銘板が取り付けられていること。
  四  接点が開放されることにより巻過ぎが防止される構造とすること。
  五  動力回路を直接遮断する構造のものにあっては、通電部分は、温度試験において、日本工業規格C
  八二〇一−四−一(低圧開閉装置及び制御装置−第四部:接触器及びモータスタータ−第一節:電気
  機械式接触器及びモータスタータ)に定める基準に適合するものであること。

(警報装置)
第二十六条  第二十四条の巻過ぎを防止するための警報装置は、次に定めるところによるものでなければ
  ならない。
  一  フック、グラブバケット等のつり具の上面(当該つり具の巻上げ用シーブの上面を含む。)とジブ
    の先端のシーブその他当該上面が接触するおそれがある物(ジブを除く。)の下面との間隔が当該移
    動式クレーンの最高つり上げ速度(単位  メートル毎秒)の一・五倍(つり具の巻上げ又はジブの伸
    長が一操作で停止する移動式クレーンにあっては、一・〇倍)に等しい値の長さ(単位  メートル)
    に達するまでに確実に作動する構造とすること。
  二  水、粉じん等により機能に障害を生ずるおそれがない構造とすること。
  三  容易に点検を行うことができる構造とすること。
  四  警音を発する方式とすること。

(過負荷防止装置)
第二十七条  移動式クレーンは、過負荷防止装置を備えるものでなければならない。ただし、次に掲げる
  移動式クレーンで過負荷防止装置以外の過負荷を防止するための装置(次条第一項に規定する安全弁及
 び荷重計を除く。)を備えるものにあっては、この限りでない。
  一  つり上げ荷重が三トン未満の移動式クレーン
  二  ジブの傾斜角及び長さが一定である移動式クレーン

(安全弁等)
第二十八条  水圧、油圧又は蒸気圧を動力として用いるつり上げ装置、起伏装置及び伸縮装置は、水圧、
  油圧又は蒸気圧の過度の上昇を防止するための安全弁を備えるものでなければならない。
2  前項のつり上げ装置、起伏装置及び伸縮装置は、水圧、油圧又は蒸気圧の異常低下によるつり具等の
  急激な降下を防止するための逆止め弁を備えるものでなければならない。ただし、第十九条第二項第一
  号及び第三号に適合するブレーキ(人力によるブレーキを除く。)を備えるものにあっては、この限り
  でない。

(回転部分の防護)
第二十九条  歯車、軸、軸継手等の回転部分で労働者に危険を及ぼすおそれがある箇所には、覆い、囲い
  等を備えなければならない。

(警報装置)
第三十条  移動式クレーンは、電鈴、ブザー等の警報装置を備えるものでなければならない。

(傾斜角指示装置)
第三十一条  移動式クレーンでジブが起伏するものは、運転者の見やすい位置に、当該ジブの傾斜角の度
  合いを示す装置を備えるものでなければならない。

(外れ止め装置)
第三十二条  フックは、玉掛け用ワイヤロープ等が当該フックから外れることを防止するための装置を備
  えるものでなければならない。

(前照燈等)
第三十三条  移動式クレーン(クローラクレーン及び被けん引式の移動式クレーンを除く。)は、次に掲
  げる装置を備えるものでなければならない。ただし、最高走行速度が三十五キロメートル毎時未満の移
  動式クレーン(最高走行速度が二十キロメートル毎時以上の移動式クレーンにあっては、原動機回転計
  を備えるものに限る。)にあっては、速度計を備えないことができる。
  一  白色又は淡黄色の燈光の前照燈
  二  赤色の燈光の尾燈
  三  赤色の燈光の制動燈
  四  白色又は淡黄色の燈光の後退燈
  五  方向指示器
  六  警音器
  七  後写鏡
  八  移動式クレーンの直前にある障害物を確認することができる鏡
  九  速度計

(操作回路)
第三十四条  電磁接触器等の操作回路であって、地絡した場合に電磁接触器等が閉路されるおそれがある
  ものは、次に定めるところによるものでなければならない。
  一  コイルの一端を電路の接地側の電線に接続すること。
  二  コイルと電路の接地側の電線との間に開閉器がないこと。

第四節  操作部分等

(つり上げ装置等の操作部分)
第三十五条  つり上げ装置、起伏装置、伸縮装置、旋回装置、ブレーキ、警報装置等の操作部分は、運転
  のために必要な視野を確保することができ、かつ、運転者が容易に操作することができる位置に設けら
  れていなければならない。
2  つり上げ装置、起伏装置、伸縮装置又は旋回装置の操作部分には、運転者の見やすい箇所に、当該操
  作部分が制御する移動式クレーンの作動の種別及び方向並びに作動を停止する位置が表示されているも
  のでなければならない。ただし、運転者が当該操作部分から手を放した場合に、自動的に当該操作部分
  が移動式クレーンの作動を停止させる位置に戻り、かつ、当該移動式クレーンの作動を停止させる構造
  の移動式クレーンにあっては、当該位置を表示しないことができる。

(運転室)
第三十六条  走行のための運転室は、次に定めるところによるものでなければならない。
  一  運転者が安全な運転を行うことができる視野を確保することができる構造とすること。
  二  走行中の振動、衝撃、動揺等により運転者が転落しない構造とすること。
  三  前面ガラスは、安全ガラスとすること。
  四  前面ガラスには、前方の視野を確保することができる自動式の窓ふき器を備えること。

(伸縮装置)
第三十七条  伸縮装置は、ジブの各段に係る長さが当該段の先端側に隣接する段に係る長さよりも短くな
  ることのないように伸縮させるものでなければならない。ただし、自動的にジブの各段に係る長さを検
  出し、つり上げる荷の荷重が定格荷重を超えた場合に直ちに移動式クレーンの作動を停止させる機能を
  有する過負荷防止装置を備える移動式クレーンにあっては、この限りでない。