1. ホーム >
  2. 法令・通達(検索) >
  3. 法令・通達

化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針(平成27年9月18日 危険性又は有害性等の調査等に関する指針公示第3号により平成28年6月1日をもって廃止)

化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針(平成27年9月18日 危険性又は有害性等の調査等に関する指針公示第3号により平成28年6月1日をもって廃止)

 労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第28条の2第2項の規定に基づき、化学物質等による危険性又は有
害性等の調査等に関する指針を次のとおり公表する。
 なお、「化学物質等による労働者の健康障害を防止するため必要な措置に関する指針」(平成12年3月31
日付け化学物質等による労働者の健康障害を防止するため必要な措置に関する指針公示第1号)は、廃止す
る。

1 趣旨等
  本指針は、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第28条の2第2項の規定に基づき、化学物質、化学物
 質を含有する製剤その他の物で労働者の危険又は健康障害を生ずるおそれのあるものによる危険性又は
 有害性等の調査(以下単に「調査」という。)を実施し、その結果に基づいて労働者の危険又は健康障害
 を防止するため必要な措置が各事業場において適切かつ有効に実施されるよう、その基本的な考え方及
 び実施事項について定め、事業者による自主的な安全衛生活動への取組を促進することを目的とするも
 のである。
  なお、本指針は、「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」(平成18年危険性又は有害性等の調
 査等に関する指針公示第1号)の詳細事項を定めるものであるが、調査を実施し、その結果に基づいて講
 ずる措置に関する基本的な考え方及び実施事項についての一覧性を確保するため、特段の詳細事項がな
 い事項についても、当該指針と同一の内容を重複して記載しているものである。
  また、本指針は、「労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針」(平成11年労働省告示第53号)
 に定める危険性又は有害性等の調査及び実施事項の特定の具体的実施事項としても位置付けられるもの
 である。

2 適用
  本指針は、製造、取扱い、貯蔵、運搬等に係る化学物質、化学物質を含有する製剤その他の物で労働
 者に危険又は健康障害を生ずるおそれのあるもの(以下単に「化学物質等」という。)による危険性又は
 有害性であって、労働者の就業に係るすべてのものを対象とする。

3 実施内容
  事業者は、調査及びその結果に基づく措置(以下「調査等」という。)として、次に掲げる事項を実施
 するものとする。
 (1)化学物質等による危険性又は有害性の特定
 (2) (1)により特定された化学物質等による危険性又は有害性によって生ずるおそれのある負傷又は疾
  病の重篤度及び発生する可能性の度合(以下「リスク」という。)の見積り
 (3) (2)の見積りに基づくリスクを低減するための優先度の設定及びリスクを低減するための措置(以
  下「リスク低減措置」という。)内容の検討
 (4) (3)の優先度に対応したリスク低減措置の実施

4 実施体制等
 (1) 事業者は、次に掲げる体制で調査等を実施するものとする。
  ア 総括安全衛生管理者等、事業の実施を統括管理する者(事業場トップ)に調査等の実施を統括管理
   させること。
  イ 事業場の安全管理者、衛生管理者等に調査等の実施を管理させること。
  ウ 化学物質等の適切な管理について必要な能力を有する者のうちから化学物質等の管理を担当する
   者(以下「化学物質管理者」という。)を指名し、この者に、安全管理者、衛生管理者等の下で調査
   等に関する技術的業務を行わせること。
  エ 安全衛生委員会等(安全衛生委員会、安全委員会又は衛生委員会をいう。)の活用等を通じ、労働
   者を参画させること。
  オ 調査等の実施に当たっては、化学物質管理者のほか、化学物質等や化学物質等に係る機械設備等
   についての専門的知識を有する者を参画させるよう努めること。調査の実施に当たっては、必要に
   応じ化学設備の特性を把握している者、生産技術者等の専門家及び化学物質等に関する専門的知識
   を有する者の参画を求めるものとする。
 (2) 事業者は、(1)で定める者に対し、調査等を実施するために必要な教育を実施するものとする。

5 実施時期
 (1) 事業者は、次のアからオに掲げる作業等の時期に調査等を行うものとする。
  ア 化学物質等に係る建設物を設置し、移転し、変更し、又は解体するとき。
  イ 化学設備等に係る設備を新規に採用し、又は変更するとき。
  ウ 化学物質等である原材料を新規に採用し、又は変更するとき。
  エ 化学設備等に係る作業方法又は作業手順を新規に採用し、又は変更するとき。
  オ その他、次に掲げる場合等、事業場におけるリスクに変化が生じ、又は生ずるおそれのあるとき。
   (ア) 化学物質等に係る労働災害が発生した場合であって、過去の調査等の内容に問題がある場合
   (イ) 化学物質等による危険性又は有害性等に係る新たな知見を得たとき。
   (ウ) 前回の調査等から一定の期間が経過し、化学物質等に係る機械設備等の経年による劣化、労
     働者の入れ替わり等に伴う労働者の安全衛生に係る知識経験の変化、新たな安全衛生に係る知
     見の集積等があった場合
 (2) 事業者は、(1)のアからエに掲げる作業を開始する前に、リスク低減措置を実施することが必要で
  あることに留意するものとする。
 (3) 事業者は、(1)のアからエに係る計画を策定するときは、その計画を策定するときにおいても調査
  等を実施することが望ましい。

6 対象の選定
  事業者は、次により調査等の実施対象を選定するものとする。
(1) 事業場におけるすべての化学物質等による危険性又は有害性等を調査等の対象とすること。
(2) 過去に化学物質等による労働災害が発生した作業、化学物質等による危険又は健康障害のおそれが
  ある事象が発生した作業等、化学物質等による危険性又は有害性による負傷又は疾病の発生が合理的
  に予見可能であるものは、調査等の対象とすること。

7 情報の入手
(1)事業者は、調査等の実施に当たり、次に掲げる資料等を入手し、その情報を活用するものとする。
  入手に当たっては、現場の実態を踏まえ、定常的な作業に係る資料等のみならず、非定常作業に係る
  資料等も含めるものとする。
  ア 化学物質等安全データシート(MSDS)、仕様書等、化学物質等、化学物質等に係る機械設備等に
   係る危険性又は有害性に関する情報
  イ 化学物質等に係る作業標準、作業手順書等
  ウ 化学物質等に係る機械設備等のレイアウト等、作業の周辺の環境に関する情報
  エ 作業環境測定結果等
  オ 混在作業における化学物質等による危険性又は有害性等、複数の事業者が同一の場所で作業を実
   施する状況に関する情報
  カ 災害事例、災害統計等
  キ その他、調査等の実施に当たり参考となる資料等
(2) 事業者は、情報の入手に当たり、次に掲げる事項に留意するものとする。
  ア 新たな化学物質等を外部から取得等しようとする場合には、当該化学物質等を譲渡し、又は提供
   する者から、当該化学物質等に係る化学物質等安全データシート(MSDS)を入手すること。
  イ 化学物質等に係る新たな機械設備等を外部から導入しようとする場合には、当該機械設備等のメ
   ーカーに対し、当該設備等の設計・製造段階において調査等を実施することを求め、その結果を入
   手すること。
  ウ 化学物質等に係る機械設備等の使用又は改造等を行おうとする場合に、自らが当該機械設備等の
   管理権原を有しないときは、管理権原を有する者等が実施した当該機械設備等に対する調査等の結
   果を入手すること。
  エ 複数の事業者が同一の場所で作業する場合には、混在作業における化学物質等による労働災害を
   防止するために元方事業者が実施した調査等の結果を入手すること。
  オ 化学物質等にばく露するおそれがある場所等、化学物質等による危険性又は有害性等がある場所
   において、複数の事業者が作業を行う場合には、元方事業者が実施した当該場所に関する調査等の
   結果を入手すること。

8 危険性又は有害性の特定
(1)事業者は、化学物質等について、作業標準等に基づき、化学物質等による危険性又は有害性を特定
  するために必要な単位で作業を洗い出した上で、国際連合から勧告として公表された「化学品の分類
  及び表示に関する世界調和システム(GHS)」(以下「GHS」という。)で示されている危険性又は有
  害性の分類等に則して、各作業における危険性又は有害性を特定するものとする。
   ただし、化学プラント等においては、工程ごとに分割する方法、又は配置ごとに分割する方法等に
  よりいくつかのブロックに分割し、ブロック内の設備ごとに調査等の対象とし、化学物質等の危険性
  又は有害性を特定するものとすることができる。
(2)事業者は、(1)の化学物質等による危険性又は有害性の特定に当たり、労働者の疲労等の危険性又
  は有害性への付加的影響を考慮するものとする。

9 リスクの見積り
(1)事業者は、リスク低減の優先度を決定するため、次に掲げる方法等により、化学物質等による危険
  性又は有害性により発生するおそれのある負傷又は疾病の重篤度及びそれらの発生の可能性の度合を
  それぞれ考慮して、リスクを見積もるものとする。
  ア 負傷又は疾病の重篤度とそれらが発生する可能性の度合を相対的に尺度化し、それらを縦軸と横
   軸とし、あらかじめ重篤度及び可能性の度合に応じてリスクが割り付けられた表を使用してリスク
   を見積もる方法
  イ 負傷又は疾病の発生する可能性とその重篤度を一定の尺度によりそれぞれ数値化し、それらを加
   算又は乗算等してリスクを見積もる方法
  ウ 負傷又は疾病の重篤度及びそれらが発生する可能性等を段階的に分岐していくことによりリスク
   を見積もる方法
(2)事業者は、化学物質等による疾病については、(1)にかかわらず、化学物質等の有害性の度合及び
  ばく露の量のそれぞれを考慮して次の手法により見積もることができる。なお、次の手法のうち、ア
  の方法を採ることが望ましい。
  ア 調査の対象とした化学物質等への労働者のばく露濃度等を測定し、測定結果を当該化学物質のば
   く露限界(日本産業衛生学会の「許容濃度」等)と比較する方法。その結果、ばく露濃度等がばく
   露限界を下回る場合は、当該リスクは、許容範囲内であるものとして差し支えないものであること。
  イ 調査の対象とした化学物質等による有害性及び当該化学物質等への労働者のばく露の程度を相対
   的に尺度化し、それらを縦軸と横軸とし、あらかじめ有害性及びばく露の程度に応じてリスクが割
   り付けられた表を使用してリスクを見積もる等の方法。
(3)事業者は、(1)の負傷若しくは疾病の発生の可能性の度合又は(2)の労働者のばく露濃度の評価
  を行うに際して次の事項を把握し、活用すること。
   ただし、ケの事項については、当該情報を有する場合に限る。
  ア 当該化学物質等の性状
  イ 当該化学物質等の製造量又は取扱量
  ウ 当該化学物質等の製造等に係る作業の内容
  エ 当該化学物質等の製造等に係る作業の条件及び関連設備の状況
  オ 当該化学物質等の製造等に係る作業への人員配置の状況
  カ 作業時間
  キ 換気設備の設置状況
  ク 保護具の使用状況
  ケ 当該化学物質等に係る既存の作業環境中の濃度若しくはばく露濃度の測定結果又は生物学的モニ
   タリング結果
(4)事業者は、事業場における化学物質等についての(1)又は(2)の見積りを、GHSで示されている危
  険性又は有害性の分類等に則して行うものとする。
   また、その際、次に掲げる事項を考慮すること。
  ア 安全装置の設置、立入禁止措置、排気・換気装置の設置その他の労働災害防止のための機能又は
   方策(以下「安全衛生機能等」という。)の信頼性及び維持能力
  イ 安全衛生機能等を無効化する又は無視する可能性
  ウ 作業手順の逸脱、操作ミスその他の予見可能な意図的・非意図的な誤使用又は危険行動の可能性
  エ 有害性が立証されていない場合でも、一定の根拠がある場合は、その根拠に基づき、有害性が存
   在すると仮定して見積もるよう努めること。
(5)事業者は、(1)の見積りに当たり、次に掲げる事項に留意するものとする。
  ア 予想される負傷又は疾病の対象者及び内容を明確に予測すること。
  イ 過去に実際に発生した負傷又は疾病の重篤度ではなく、最悪の状況を想定した最も重篤な負傷又
   は疾病の重篤度を見積もること。
  ウ 負傷又は疾病の重篤度は、傷害や疾病等の種類にかかわらず、共通の尺度を使うことが望ましい
   ことから、基本的に、負傷又は疾病による休業日数等を尺度として使用すること。

10 リスク低減措置の検討及び実施 
(1)事業者は、法令に定められた事項がある場合にはそれを必ず実施するとともに、次に掲げる優先順
  位でリスク低減措置内容を検討の上、実施するものとする。
  ア 危険性若しくは有害性が高い化学物質等の使用の中止又は危険性若しくは有害性のより低い物へ
   の代替
  イ 化学反応のプロセス等の運転条件の変更、取り扱う化学物質等の形状の変更等による、負傷が生
   ずる可能性の度合又はばく露の程度の低減
  ウ 化学物質等に係る機械設備等の防爆構造化、安全装置の二重化等の工学的対策又は化学物質等に
   係る機械設備等の密閉化、局所排気装置の設置等の衛生工学的対策
  エ マニュアルの整備等の管理的対策
  オ 個人用保護具の使用
(2)(1)の検討に当たっては、リスク低減に要する負担がリスク低減による労働災害防止効果と比較し
  て大幅に大きく、両者に著しい不均衡が発生する場合であって、措置を講ずることを求めることが著
  しく合理性を欠くと考えられるときを除き、可能な限り高い優先順位のリスク低減措置を実施する必
  要があるものとする。
(3)なお、死亡、後遺障害又は重篤な疾病をもたらすおそれのあるリスクに対して、適切なリスク低減
  措置の実施に時間を要する場合は、暫定的な措置を直ちに講ずるものとする。

11 記録 
  事業者は、次に掲げる事項を記録するものとする。
(1)調査した化学物質等
(2)洗い出した作業又は工程
(3)特定した危険性又は有害性
(4)見積もったリスク
(5)設定したリスク低減措置の優先度
(6)実施したリスク低減措置の内容