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事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関する指針

改正履歴

  労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第71条の3第1項の規定に基づき、事業者が講ずべき快適な職
場環境の形成のための措置に関する指針を次のとおり定めたので、同項の規定に基づき公表する。

            事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関する指針

  近年の技術革新の目覚ましい進展は、職場環境を大きく変えつつあり、また、経済のソフト化、サービ
ス化や企業活動の国際化の進展等は、個々の労働者に就業態様の変化や就業地域の拡大等をもたらしてい
る。最近、こうした職場をめぐる環境の変化の中で、新たに労働者の就業に伴う疲労やストレスの問題が
生じている。
  また、経済的豊かさが実現する中で、国民の意識は物質的な豊かさから心の豊かさに比重を移してきて
おり、このため、労働面においても、労働時間の短縮を求めるとともに、健康に対する関心の高まりから、
心身に負担の大きい作業についてはその軽減を求める等職場における働きやすさが重視されるようになっ
てきている。
  さらに、我が国の就業構造を見ると、労働力人口の高齢化に伴い事業場における中高年齢者の割合が高
まるとともに、多様な就業分野への女性の職場進出により女性労働者比率の高まりが見られる。このため、
このような就業構造の変化に対応し、作業方法等の改善された職場環境の形成を図る必要が生じている。
  このような変化の中で、労働者が、その生活時間の多くを過ごす職場について、疲労やストレスを感じ
ることが少ない快適な職場環境を形成していくことが、極めて重要となっている。なお、快適な職場環境
の形成を図ることは、労働者の有する能力の有効な発揮や、職場の活性化にも資するものと考えられる。
  この指針は、以上のような考え方に立脚して、事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に
関し、快適な職場環境の形成についての目標に関する事項、快適な職場環境の形成の適切かつ有効な実施
を図るために事業者が講ずべき措置の内容に関する事項及び当該措置の実施に関し考慮すべき事項を定め、
事業者の自主的な取組を促進し、もって快適な職場環境の形成に資することを目的とするものである。

第1  快適な職場環境の形成についての目標に関する事項
    快適な職場環境の形成は、次に示すところにより図られることが望まれる。
  1  作業環境の管理
      空気環境、温熱条件等の作業環境が空気の汚れ、暑さ・寒さや不十分な照度等により不適切な状態
    にある場合には、労働者の疲労やストレスを高めることから、空気環境について浮遊粉じんや臭気等
    の労働者が不快に感じる因子が適切に管理されたものとするとともに、温度、照度等が作業に従事す
    る労働者に適した状態に維持管理されるようにすること。
  2  作業方法の改善
      労働者の従事する作業は、その心身に何らかの負担を伴うものではあるが、不自然な姿勢での作業
    や大きな筋力を必要とする作業等については、労働者の心身の負担が大きいことから、このような作
    業については、労働者の心身の負担が軽減されるよう作業方法の改善を図ること。
  3  労働者の心身の疲労の回復を図るための施設・設備の設置・整備
      労働により生ずる心身の疲労については、できるだけ速やかにその回復を図る必要がある。このた
    め、休憩室等の心身の疲労の回復を図るための施設の設置・整備を図ること。
  4  その他の施設・設備の維持管理
      洗面所、トイレ等の労働者の職場生活において必要となる施設・設備については、清潔で使いやす
    い状態となるよう維持管理されていること。

第2  快適な職場環境の形成を図るために事業者が講ずべき措置の内容に関する事項
    快適な職場環境の形成を図るために、事業者が講ずべき措置は、次に示すとおりである。
  1  作業環境を快適な状態に維持管理するための措置
    (1)  空気環境
        屋内作業場では、空気環境における浮遊粉じんや臭気等について、労働者が不快と感ずることの
      ないよう維持管理されるよう必要な措置を講ずることとし、必要に応じ作業場内に喫煙場所を指定
      する等の喫煙対策を講ずること。また、浮遊粉じんや臭気等が常態的に発生している屋外作業場で
      は、これらの発散を抑制するために必要な措置を講ずることが望ましいこと。
    (2)  温熱条件
        屋内作業場においては、作業の態様、季節等に応じて温度、湿度等の温熱条件を適切な状態に保
      つこと。また、屋外作業場については、夏季及び冬季における外気温等の影響を緩和するための措
      置を講ずることが望ましいこと。
    (3)  視環境
        作業に適した照度を確保するとともに、視野内に過度な輝度対比や不快なグレアが生じないよう
      に必要な措置を講ずること。また、屋内作業場については、採光、色彩環境、光源の性質などにも
      配慮した措置を講ずることが望ましいこと。
    (4)  音環境
        事務所については、外部からの騒音を有効に遮蔽する措置を講ずるとともに、事務所内のOA機
      器等について低騒音機器の採用等により、低騒音化を図ること。また、事務所を除く屋内作業場に
      ついても、作業場内の騒音源となる機械設備について遮音材で覆うこと等により騒音の抑制を図る
      こと。
    (5)  作業空間等
        作業空間や通路等の適切な確保を図ること。
  2  労働者の従事する作業について、その方法を改善するための措置
    (1)  腰部、頚部等身体の一部又は全身に常態的に大きな負担のかかる不自然な姿勢での作業につい
      ては、機械設備の改善等により作業方法の改善を図ること。
    (2)  荷物の持ち運び等を常態的に行う作業や機械設備の取扱・操作等の作業で相当の筋力を要する
      ものについては、助力装置の導入等により負担の軽減を図ること。
    (3)  高温、多湿や騒音等の場所における作業については、防熱や遮音壁の設置、操作の遠隔化等に
      より負担の軽減を図ること。
    (4)  高い緊張状態の持続が要求される作業や一定の姿勢を長時間持続することを求められる作業等
      については、緊張を緩和するための機器の導入等により、負担の軽減を図ること。
    (5)  日常用いる機械設備、事務機器や什器等については、識別しやすい文字により適切な表示を行
      うとともに、作業動作の特性に適合した操作が行える等作業をしやすい配慮がなされていること。
3  作業に従事することによる労働者の疲労の回復を図るための施設・設備の設置・整備
    (1)  疲労やストレスを効果的に癒すことができるように、臥床できる設備を備えた休憩室等を確保
      すること。
    (2)  多量の発汗や身体の汚れを伴う作業がある場合には、シャワー室等の洗身施設を整備するとと
      もに、常時これを清潔にし、使いやすくしておくこと。
    (3)  職場における疲労やストレス等に関し、相談に応ずることができるよう相談室等を確保するこ
      と。
    (4)  職場内に労働者向けの運動施設を設置するとともに、敷地内に緑地を設ける等の環境整備を行
      うことが望ましいこと。
  4  その他の快適な職場環境を形成するため必要な措置
    (1)  洗面所、更衣室等の労働者の就業に際し必要となる設備を常時清潔で使いやすくしておくこと。
    (2)  食堂等の食事をすることのできるスペースを確保し、これを清潔に管理しておくこと。
    (3)  労働者の利便に供するよう給湯設備や談話室等を確保することが望ましいこと。

第3  快適な職場環境の形成のための措置の実施に関し、考慮すべき事項
    快適な職場環境の形成のために事業者が必要な措置を講ずるに当たり、次の事項を十分考慮して行う
  ことが望まれる。
  1  継続的かつ計画的な取組
      快適な職場環境を形成し、適切に維持管理するためには、必要な施設・設備を整備する等の措置を
    講ずることだけでは足りず、その後においても継続的かつ計画的な取組が不可欠である。このため、
    こうした取組を日常推進する担当者を選任する等その推進体制の整備を図るとともに、快適な職場環
    境の形成を図るための設備等について、その機能を常々有効に発揮させるため、その性能や機能の確
    保等に関するマニュアルを作成する等の措置を講ずること。また、職場における作業内容や労働者の
    年齢構成の変化、さらには快適な職場環境に係る技術の進展等にも留意して、事業場の職場環境を常
    時見直し、これに応じて必要な措置を講ずること。
  2  労働者の意見の反映
      職場環境の影響を最も受けるのは、その職場で働く労働者であることにかんがみ、快適な職場環境
    の形成のための措置の実施に関し、例えば安全衛生委員会を活用する等により、その職場で働く労働
    者の意見ができるだけ反映されるよう必要な措置を講ずること。
  3  個人差への配慮
      労働者が作業をするに当たっての温度、照明等の職場の環境条件についての感じ方や作業から受け
    る心身の負担についての感じ方等には、その労働者の年齢等による差を始めとして個人差があること
    から、そのような個人差を考慮して必要な措置を講ずること。
  4  潤いへの配慮
      職場は、仕事の場として効率性や機能性が求められることは言うまでもないが、同時に、労働者が
    一定の時間を過ごしてそこで働くものであることから、生活の場としての潤いを持たせ、緊張をほぐ
    すよう配慮すること。