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チエンソーの防振対策について

改正履歴

  標記について、林野庁から関係機関に対して通達された「チェンソーの防振対策について」通達(写)
を別添1、2、3のとおり送付するから業務の参考とされたい。
  なお、別添2の記のうち4の(2)(3)(4)については、林野庁において、目下指導要綱を検討中であるの
で念のため申し添える。

別添1

41林野組第224号
昭和41年6月2日
(写)
知  事  殿
林野庁長官

チエンソーの防振対策について

  林業の機械化を進めることは、労働生産性の向上および労働強度の軽減等の見地から今後ますますその
重要性をますことと考えられるが、御承知のとおりチェンソー使用者等の一部にレイノー現象等の振動障
害の発生をみるに至っている。
  林野庁においては、従前からチェンソー等林業機械使用者の障害防止に関する研究を行なってきたとこ
ろであり、抜本的な対策を究明するため、労働省とも十分連絡のうえさらに研究を進めつつあるが、当面
の措置として、チェンソーに防振装置を取り付けることが有効と考えられるので、貴職におかれても、下
記により、適切な指導をお願いする。
記
1  国および都道府県の助成に係るチェンソーについては、必ず防振措置を取りつけたものとするよう、
  補助対象者およびチェンソー納入業者に対して指導願いたい。
    なお、上記以外のチェンソーについても、この取扱いに準じた指導を願いたい。
2  現在使用中のチェンソーで防振装置のついていないものについては、すみやかに防振装置を取りつけ
  るよう、林業関係事業主、チェンソー使用者等に対して指導願いたい。
3  チェンソーの適切な使用方法については、別紙を御参照のうえ関係者を指導願いたい。
    なお、この指導に当たっては、都道府県労働基準局、労働基準監督署等の関係行政機関とも十分連絡
  のうえ遺かんのないようにされたい。

別添2
40−328
昭和40年10月14日
(写)
営林局事業部長  殿
林野庁業務課長

チエンソーの防振対策について

  チェンソーの防振対策については現在なお総合的に検討中であるが、このほど防振効果の高い改良ハン
ドルの研究がすすみ、林業試験場等でテストを行なった結果、防振効果が十分認められた。今後もひきつ
づき改良をすすめてゆくが、関係チェンソーメーカーに対し、改良防振ハンドルを説明し、その作成を依
頼したので、各局はとりあえず管内数署をえらび、メーカーと連絡のうえ、在来機のハンドルを改良ハン
ドルにつけ替え、この実用化するためのテストを早急に実施し、その結果の意見を連絡されたい。
記

チエンソーの改良ハンドルについて

  チェンソーの振動はエンジン自体の回転より生じる不平衡と鋸断時におけるチェンソーよりの衝撃が原
因となって振動が発生するものである。チェンソーより発生する振動は機種によって多少の差異はあるが、
前部ハンドルバーより生ずるものと後部ピストルグリップより発生するものに二分され、人体に伝播され
る。これらの振動源と人体への伝播経路を遮断、または緩和するため、種々の検討を加えてきたが、最近
林業試験場等においてテストの結果、つぎにのべる改良ハンドルが振動除去に効果があることがわかった。
1  改良ハンドルの防振方法
    振動の経路がハンドルバーとピストルグリップより人体に伝播するので、防振の方法としてこれらに
  緩衡体を装着し、改造したものである。
    ハンドルバーには圧縮形の防振ゴムを取付け、ピストルグリップにはラバーを被覆する等の方法によ
  って防振効果をあげるものである。
    また、あるものは、ハンドルを独特の防振設計としたものがある。
2  改良ハンドル等の防振効果
    これらの改良ハンドルの防振効果を在来ハンドルと比較すると、別図のとおりである。
  (1)  振動の強さは在来機は約10g(ジー)以上あるが、改良ハンドルでは最高でも約3gで、大部分
      はそれ以下に減少する。
  (2)  在来機の振動は林業試験場の測定では約40〜30,000サイクル(別図では7,000サイクル以上は省略)
      の範囲に振動加速度の分布が及んでいるが、改良ハンドルでは約50〜500サイクルの範囲に振動加
      速度の分布が縮小され、特に高サイクルにおける振動の強さは除去されている。
3  レイノー現象との関連
    レイノー現象発生の因果関係、とくに振動との医学的解明は未知の分野が多いが、権威ある専門医の
  見解では防振された改良ハンドルは振動の強さが最高の部分で約2分の1となり、しかも3g以下であ
  ること、および高サイクル(500以上)の振動が除かれている等、大幅に振動が減少しているので、医
  学的に好結果を期待できるという意見である。
4  その他チェンソーの防振対策について
  (1)  ハンドルの改良によって防振効果をあげることができるので、さきに防振手袋を試作しテストし
      たが、これはコントロールボタン・アクセル等の操作に難点があって手からすべる危険性もあり、
      また、腕、指がつかれ易い等の欠点があるので、むしろ本来の目的である機械改良に重点をおいて
      検討することとし、防振手袋のテストは中止する。
  (2)  振動の影響を人体に少なくうける作業姿勢、初心者に多くみられる直立に近い姿勢の操作は振動
      の影響が大きいので、機械を弾力的な膝曲姿勢や機械を軽く支持し右、左手の交互操作等も研究工
      夫をすべきである。
  (3)  使用者の未熟、不注意などで調整不良の機械を運転することは振動の強さを大きくするので、各
      部が規定どおり調整されている機械を使用するように注意すること。
  (4)  チェンソーの目立てや、チェンソーの張りについて特に注意し整備すること。これは振動強度を
      ますばかりでなく、機械効率を悪化させる。
  (5)  (2)(3)(4)については、目下指導要綱を検討中である。
    (注)  国有林においては本テストの結果すでに41年度伐採事業実行にあたってはすべて改良ハンド
        ルに取りかえ実行中である。

別添3
41林野組第564号
昭和41年9月17日
(写)
都道府県知事  殿
林野庁長官
チェンソーの防振対策について
  このことについては、昭和41年6月2日付け41林野組第224号「チェンソーの防振対策について」を
もって、防振装置の取りつけ等に関して関係者の指導方をお願いしたところであるが、このほど本対策の
一環として、別冊のとおり「チェーンソーの取扱要領」を定めた。
  レイノー現象等の予防には、チェーンソーの適切な整備操作が必要であり、なかんづく、チェーンソー
の正しい取扱い方法を徹底することが極めて効果的であると考えられるので、本要領を参考のうえ、関係
者に対する指導をさらに強化されるようお願いする。
  なお、本要領は2部送付するので、1部は林業労働対策担当係用、1部は林業普及担当係用として活用
されるよう申し添える。

別  冊

チェーンソーの取扱要領(林野庁)

T  チェーン各部の名称
      チェーン各部の名称は次図のとおりである。

U  新しいチェーンの取扱い
    新しいチェーンは、取扱い方が悪いと、その寿命が20%位縮まると云われているので、充分注意する。
  1  新しいチェーンでも正規の目立てをしてから使用する。
  2  チェーンとチェーン・スプロケットのピッチを確かめる。スプロケットが特に摩耗している場合は、
    スプロケットを交換する。
  3  チェーンは、バーに取付ける前にモーター・オイルに5分間以上浸し、リベット部分をよく動かし
    て油の廻りをよくする。
  4  チェーンをバーに取付けた後、チェーンを手で動かしてバー溝やレールに充分オイルを行きわたら
    せながら、低速でチェーンを回転させ、バー、スプロケットによくなじませる。
  5  チェーンは、延びることを予想して、初めから強く張ってはいけない。
  6  作業を始める時は、まず小径機より切断し、チェーンの張りを調節しながら順次大径材に切り進む。
V  チェーンの点検
1  カッター各部の目立て角、切削角が正確に目立てされているかどうかを点検する。又、デプスゲージ
  の高さが正確に調整されているかどうかを点検する。
2  カッターの刃こぼれの有無を点検する。
3  カッター底部の摩耗、損傷状態を点検する。
    中くぼみに摩耗している場合は、チェーンの張りが強すぎるためである。
4  サイドリンクの摩耗、損傷状態を点検する。
    サイドリンクが中くぼみに摩耗している場合は、カッターの角度が鈍角なためである。
5  サイドリンクの後部が摩耗、損傷している場合は、チェーンの張りがゆるいか、締めすぎているため
  である。
6  ドライブリンクの摩耗、損傷状態を点検する。
7  一連の各カッターのデプスの深さは、バラツキのないように均等の深さに調整されていなければなら
  ない。
8  チェーンの接続を行った時は、リベットの締まり具合を点検する。
9  チェーンの各部に亀裂が生じた場合は、直ちにその部品を交換する。
W  目立て
1  良い目立てとは、次の条件を備えたものをいう。
  (1)  上刃目立て角、上刃切削角、横刃目立角を全部一定にそろえる。
  (2)  刃長を全部一定にそろえる。
  (3)  デプスの深さを全部一定にそろえる。
  (4)  デプスゲージの肩部に丸味をつける。
  (5)  ドライブリンクの足を鋭角にする。
2  上刃目立て角の基準は次のとおりである。
    針葉樹  40度〜35度    広葉樹  35度〜30度
3  横刃目立て角は、カッター底部に対して90度を基準とする。
4  上刃切削角は60度を基準とする。
5  目立てには、各々のチェーンの寸法、形状に応じて指定された正しいサイズの丸ヤスリを使用しなけ
  ればならない。
6  ヤスリを当てる方向は、右カッターに対してはカッターの左側から、左カッターに対してはカッター
  の右側から当てなければならない。
7  ヤスリかけは、チェーンの方向に対するヤスリの角度をそろえ、丸ヤスリ径の1/5〜1/10をカ
  ッターの上に出し両手で水平に保ちながら押す時にのみ目立てをする。
8  少なくても、5回に1回は、機械目立てをしなければならない。
    目立機を使用する際は、あらかじめそのくるいの有無を点検しておく。
9  目のつまったヤスリは、ワイヤー・ブラシで目づまりを直してから使用する。
    また、目の正しくないヤスリは刃を不均一にするので用いてはいけない。
10  カッターの高さをそろえる。
    カッターは刃長を一定に保つことによって高さをそろえることができる。
11  カッターのヤスリがけが終ったら、デプスゲージの調整をする。
    デプスゲージは、カッターの切り込み量を決めるもので、これが深すぎると切り込み量が多くなり、
  チェーンの故障の原因となる。
12  デプスゲージの調整が終ったら、デプスゲージ定規をあて、そろっているかどうかを確認する。
13  ドライブリンクの足を尖らせる。
    ドライブリンクは、バー溝の鋸屑をかき出す役目もするので、常に尖らせておく必要がある。
14  刃先が欠けたり、切断したために、新しいカッター・サイドリンク、ドライブリンクを取付けたなら
  ば、カッターの刃長、デプスの深さ、カッター・サイドリンクの底部、ドライブリンクの形を、もとか
  らついているカッター・サイドリンク、ドライブリンクと同じ寸法になるようにヤスリかけをする。
15  リベットカシメを行うときは、継ぎ目が堅くなるような強い打ち方をしてはいけない。
16  目立てが終ったら洗油などにより、ヤスリ粉を充分取り去る。
X  チェーンの故障と対策の早見表
(表)