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米杉等による気管支ぜん息等の予防について

改正履歴

  最近、栃木、秋田、東京等の各局管内において、米杉等の製材、加工の作業に従事する労働者の中から
気管支ぜん息又は気管支炎の患者が別添資料1のとおり発生している。
  しかも、気管支ぜん息等の発生原因となりうる米杉等の輸入は、別添資料2のとおり近年著しく増加し、
かつ、陸揚げ港も多数にわたっているため今後発生数の増加が予想される。
  ついては、これが予防に必要な事項を下記のとおりまとめたので、管内の米杉等の使用状況を的確には
あくするとともに、製材業、家具製造業、建具製造業の事業場及び同業種組合を指導するにあたっては、
これを参考として適切な対策を講ずるようはかられたい。

記
T  気管支ぜん息等の発生原因
  1  気管支ぜん息等の原因
      一般に粉じんは、これを大量に吸入すると、気管支炎を発生させるものであり、木材粉じんも慢性
    気管支炎を発生させる。
      さらに、特殊な体質(素因)をもつ者にあっては、木材に含まれる少量の物質によっても気管支ぜ
    ん息を発生する。
      米杉、ネズコ等の木材には特異な成分(例えば、nezukone)が含まれており、これらの吸入をくり
    かえすと、気管支炎のみにとどまらず、気管支ぜん息を発生する。
  2  気管支ぜん息等を発生させるおそれのある木材の種類
      米杉、ネズコ、リョウブ、ラワン
  3  気管支ぜん息等を発生させるおそれのある作業
      2の木材について行なう次の作業
    (1)  製材作業
    (2)  製材された材(板材)についての仕わけ、結束又は運搬の作業
    (3)  製材された材(板材)についてのかんなかけ、穴あけ、ミゾ堀りホゾとり等の加工の作業
  4  作業場内の清掃又は木材くず等の整理の作業

U  気管支ぜん息等の予防
  1  局所排気装置の設備
      Iの3の(1)の作業に使用する製材機及びIの3の(3)の作業に使用する木工機械から発生する粉じ
    んを捕集し排気するため、別添資料3(第1図第2図第3図第4図第5図)を参考として局
    所排気装置を設けること。
      なお、フードの型式は、製材機又は木工機械による粉じん等が、機械切削部の高速回転により一定
    方向に飛散するので、その方向の汚染気流を捕集するため、レシーバ式又はブース式を採用すること。
  2  製材された材又は加工する材は、できるだけ屋外に集積すること。屋内に集積する場合は、換気良
    好な場所を選定すること。
  3  マスクの活用
    (1)  気管支ぜん息等の素因のある労働者に、Iの3の作業を行なわせるときは、防じんマスク(防じ
        んマスクが効果ないときは防毒マスク)を着用させること。
    (2)  作業開始前、作業終了後及び定期に防じんマスク(又は防毒マスク)を点検し、有効に保持す
        ること。
  4  健康診断
    (1)  就業時に行なう健康診断
          Iの3の作業に就業させるため新たに労働者を雇い入れる場合又は配置換えにより新たに労働
        者をIの3の作業に就業させる場合には、ぜん息又はぜん息様発作の病歴及び家族歴(2親等)
        の調査のほか、(2)のイの(イ)の項目についての検診を行なうこと。また、必要に応じて第2次
        健康診断もあわせて行なうこと。
    (2)  定期に行なう健康診断
          Iの3の作業に常時従時する労働者については、労働安全衛生規則第49条(現行=第44条、46
        条)に規定する健康診断のほか秋季及び冬季にそれぞれ次に掲げる健康診断を行なうこと。
      イ  第1次健康診断
        (イ)  咽頭痛、咽頭部違和感、咳嗽、喀痰、喘鳴、息切れ、夜間における呼吸困難等の自覚症状
            についての問視診
        (ロ)  前回の健康診断(就業時の健康診断を含む。)又は診察以後における気管支ぜん息様発作
            の発生状況についての問視診
        (ハ)  眼、鼻、咽喉の粘膜のアレルギー性炎症等についての問視診
        (ニ)  胸部の聴打診
        (ホ)  接触性皮ふ炎、湿疹による皮ふの変化についての問視診
      ロ  第2次健康診断
          第1次健康診断の結果、医師が異常があると認めた者については、職歴及び作業実態の調査の
        ほか、次に掲げる第2次の健康診断を行なうこと。ただし、既存の検査成績がある等の理由によ
        り医師が省略してさし支えないと認めた項目については、この限りでない。
        (イ)  胸部エックス線直接撮影
        (ロ)  肺換気機能檢査
        (ハ)  喀痰及び血液中の好酸球数の検査
        (ニ)  木材エキスによる皮内反応検査
    (3)  診  察
          Iの3の作業に従事する労働者が気管支ぜん息様症状を訴えた場合は、医師の診察を受けさせ
        ること。
  5  健康診断結果に基づく措置
    (1)  4の(1)の健康診断の結果、気管支ぜん息を発生する素因があると診断された労働者について
        は、例えば医師をして説得させるなどの方法によりIの3の作業以外の作業に就業させること。
    (2)  4の(2)の健康診断又は4の(3)の診察の結果、次に掲げる事項に該当すると診断された労働
        者については1と同様医師をして説得させるなどの方法により作業の転換を行なわせること。
      イ  気管支ぜん息にかかっているもの
      ロ  慢性閉塞性呼吸器疾患(慢性気管支炎、肺気腫等)にかかっているもの。

資料1  木材による気管支ぜん息等の発生状況(昭和44年12月1日現在)(表) 

資料2
(1)  米杉の輸入量(表)

(2)  南洋材(ラワンを含む)の輸入量(表)

(3)  米杉の港別、陸揚げ量 (昭和43年)(表)

資料3

第1図
第2図
第3図
第4図
第5図