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レーザー光線による障害の防止対策について
改正履歴
  レーザー光線は、高密度のエネルギーとして切断、開孔、溶接等各種材料の加工に、また均質な電磁波
として計測、通信、情報処理等に、さらに医療等にも利用されており、今後においてもその利用分野は一
層拡大していくものと予想されるが、特に、レーザー加工等の分野においては、レーザー光線は、大量の
エネルギーを小さな面積に集中させて高密度のエネルギーを利用するものであるため、レーザー光線に対
する労働衛生上の配慮が十分でないと、眼障害、皮膚障害等の発生が懸念される状況となってきたところ
である。
  今般、労働省においては、レーザー光線の使用実態、各種調査研究結果等を踏まえ、レーザー光線にさ
らされるおそれのある業務における障害を防止するため、別紙のとおり「レーザー光線による障害防止対
策要綱」を策定したので、これにより関係事業者等を指導されたい。
  なお、レーザー光線の利用に関する技術が急速に進展している状況にあることに鑑み、本要綱に従って
指導する際に疑義が生じた場合には、その旨を本省あて報告されたい。
  おって、わが国におけるレーザー光線の主要な応用技術一覧(参考1)、レーザー光線の人体に与える
影響(参考2)及びレーザー光線の安全衛生基準に関する各国の動向(参考3)を添付するので、業務の
参考とされたい。



別表I   クラス1のレーザー機器に関する被ばく放出限界  (表)

別表II  クラス2のレーザー機器に関する被ばく放出限界  (表)

別表III クラス3Aのレーザー機器に関する被ばく放出限界  (表)

別表IV  クラス3Bのレーザー機器に関する被ばく放出限界  (表)

(備  考)
1.  別表I〜IVに使われている単位は、次の通りである。
      放射束;放射パワー(W)
        放射の形態で放出、伝送又は受信されるパワー。
      放射エネルギー(J)
        放射の形態で放出、伝送又は受信されるエネルギー。
      放射輝度(W/m2sr)
        放射面の単位面積当り、放出の単位立体角当りの放射パワー。
      積分放射輝度(Jm2sr)
        与えられた露光時間にわたっての放射輝度積分量で、放出の単位立体角当りで、放射面の単位面
      積当りの放射エネルギーとして表わす。
      放射照度(W/m2sr)
        面の1点において、その1点を含んだ素面に入射する放射束を、その素面の面積で割った商。
      放射露光(J/m2)
        素面に入射した放射エネルギーを、その素面の面積で割った商。
2.  別表I〜IVに用いられている補正係数C1〜C4と折点T1及びT2は、次の式で表わされる。
(表)

(参考1)
レーザー光線の主要な応用技術一覧 (図)

エネルギー的利用装置のマーケット  (表)

レーザー加工が使われている産業分野  (表)
  
(参考2)
レーザー光線の人体に与えられる影響
1.有害作用
    レーザー光線が身体局所に照射されると熱作用による蛋白の変性、細胞組織との光化学反応及び衝撃
  波(プラズマ流及びそれに伴う圧力波)による組織破壊が起こる。
    このような生体影響は、レーザー光線の波長、出力、出力波形(連続波又はパルス波)等によって異
  なるが、一般に皮膚よりも眼の方が重篤で不可逆的な変化を生じやすい。
    なお、レーザー光線の直接的な生体作用のほかに、レーザー光線が被加工物や装置周辺の他の物体を
  照射して起こる有害物の発散等による二次的障害にも留意する必要がある。
  (1)  眼の障害(表1及び参照)
    イ  連続波又は長パルスレーザーを放射するアルゴンレーザー、YAGレーザー、CO2レーザー等で
      は、熱作用又は光化学作用により次に掲げる障害が起こる。
      [1]  視覚焦点域外の波長(紫外部(200〜400nm)及び赤外部の一部(1,400〜106nm))をもつレ
          ーザー光線は、角膜、水晶体等の組織に吸収されて角膜火傷、視力低下を伴う白内障等を起こ
          す。
      [2]  視覚焦点域内の波長(可視部(400〜780nm)及び赤外部の一部(780〜1,400nm))をもつレ
          ーザー光線は、眼の光学系(角膜、水晶体)により網膜上に集光されて密度が概ね105倍大き
          くなるため、以下に掲げるような障害をもたらす。
          i)網膜(中心か付近)に吸収される連続波レーザー光線は、主として熱作用により網膜火傷
            を起こす。
          ii)波長が概ね430nm 付近の可視光レーザー(網膜視細胞の視感色素に吸収される。)は、主
            として光化学作用により網膜障害を起こす。
    ロ  短パルスの高いピークパワーのレーザーを放射するYAG(Q−スイッチ)レーザー、CO2レー
      ザー等では、衝撃波により網膜火傷、眼底出血等が起こり、しばしば高度の視力低下を伴う。
  (2)  皮膚の障害
        高出力のレーザー光線に対する過度のばく露を受けると軽度の紅斑から水泡形成、熱凝固、炭化
      までの変化が起こる。

2.わが国における災害事例(表2参照)
    わが国において発生したレーザー光線による災害事例としては、表2に掲げるような眼の障害がみら
  れている。


(参考3)
レーザー安全基準に関する動向〔各国の基準について〕
1.国際電気標準会議(IEC)
    IEC/TC76がレーザー装置に関する国際標準化を担当しており、第1回会議は1974年6月(バー
  デンバーデン)、その後1975年9月(ハーグ)、1974年6月(モスコー)、1983年2月(チューリッヒ)
  と開催されている。モスコー会議の結果、6か月規則投票を行うことが決定され、76.(C.O.)4
  〔レーザー装置の電気的安全〕が1978年4月76.(C.O.)6〔レーザー機器の放射安全、機器の分類、
  要求事項及び使用者への指針〕が1980年4月それぞれ加盟各国へ賛否投票のため回付された。
  それぞれ投票結果報告文書76.(C.O.)5及び76.(C.O.)7によると、多量の各国意見が提出され、
  また、相互に食い違う見解が多く提出されたため、意見調整の難しい項目は今後の審議とし、幹事で一
  部修正の上、IEC作業用一般指令(6.1.5b)項によって、賛成国の増加を計るため更に2か月手
  続きによる投票に付すこととし、76.(C.O.)4に対する76.(C.O.)9は1982年9月、76.(C.O.)
  6に対応する76.(C.O.)8は、1982年7月それぞれ各国へ回付された。その投票結果報告文書は76.
  (C.O.)12及び76.(C.O.)11で、記述上の修正を加えてIEC Pub 1.825(1984)となった。
2.国際標準化機構(ISO)
    ISO6161−1981〔人間の眼の保護具・レーザー放射に対するフィルター及び眼の保護具〕
3.世界保健機構(WHO)
    環境保健基準  No.2:レーザー及び光学放射
4.各国のレーザー安全に関する規格、法規及びガイドライン
  (1)  オーストラリア
        オーストラリア規格協会
      ・AS−2211−1981〔レーザー安全〕
      ・AS−2397−1980〔建設産業におけるレーザー安全使用に対するガイド〕
        この外、Wesrern Australia の「レーザー使用のガイドライン」、Tasmaniaの「レーザー放射管
      理規則」などがある。
  (2)  デンマーク
        Arbejdstilsynet においてIEC/76の原案を基礎にして、レーザー作業における安全措置につ
      いての指示が1971年2月23日暫定的に規定されていたが、最近のIEC案によって規格化作業を行
      っている。この外、レーザー製品に対する取締りが別途暫定的に制定されており、輸入品に対して
      適用されている(とくにラベル)。
  (3)  カナダ
        Sante et Bien-etre social(健康保健省)
        Direction generale de la protection de Sante(健康予防局)
      ・Radiation Emitting Devices Act, Chapter 34
        この中にレーザーに関しては、Radiation Emitting Devices RegulationがPartIから規定されて
      おり、PartVII〔レーザー・スキャナ〕、PartVIII〔実演用レーザー〕がある。
        Canada Gazetteにおいて修正、追加がすべて公示される。最近のものとして、
        PC−1977−3123〔レーザー・スキャナ〕−1977.11.3
        PC−1977−3127〔実演用レーザー〕
      ・この外に健康保健局からILNo.574 で、1979年12月13日付で「レーザーライトショー安全使用及
      び操作指針」が公布されている。
        カナダにおいては、Radiological Healthの取締法の中に、レーザー製品の条項を入れる作業に
      入っている。その草案では、後出の米国の21CERの内容とおなじものがとり込まれている。
  (4)  フランス
        国家安全協会
      ・レーザー安全取扱注意文書
        フランス電気協会(UTE)
      ・C74−310(1973.3.29)〔最大電圧5KV以下のパルスレーザー光凝固装置〕
      ・レーザー放射安全規則〔IECに準拠、1984年中に刊行〕
        厚生省
      ・医用レーザー装置〔1984年刊行〕
  (5)  西ドイツ
        ドイツ規格協会
      ・DIN  58215〔レーザービームに対する保護スクリーン及びゴーグル〕(1974.9)改正
      ・DIN  56912〔ステージで使用するレーザー安全要求事項〕(1982.6)
      ・DIN  58126−T6〔教育・学習・訓練用レーザー機器の安全要求事項〕(1981.4)
      ・DIN  57836〔レーザー装置の電気的安全仕様−VDE0836〕(1977.2.1)
      ・DIN  IEC76(C.O.)6/VDE0837〔レーザー製品の放射安全、装置の分類、要求事項
      及び使用者への指針〕(1981)
        鉱山省
      ・CWレーザーシステムの承認規則(2mW以下のヘリウムネオンレーザー)建築協会
      ・VBG−94(災害予防規則)(レーザー光線)(1973.3.29)目下改正中である。
      ・上記の施行基準と説明(1974.4)
  (6)  オランダ
        保健・環境保護省
        レーザーを含めての規則を準備中である。
  (7)  ノルウェー
        放射線衛生協会
        IEC原案を基準にして1984年中に規格を作成する予定である。
  (8)  スウェーデン
        職業安全保健局
      ・Swedish Radiation Protection Act
      ・AFS  1981:9〔レーザーに関する規則〕
        スウェーデンレーザー放射予防協会
      ・SSI  FS  1980:2〔レーザー規則〕
      ・SSI  FS  1983:3〔クラス3B及びクラス4レーザー〕
        この外にレーザー光源のパワー測定の規則を制定準備中である。
  (9)  スイス
        SUVA
        IEC原案を基準にして、1983年末までに下記の原案が出来上がっている。
      ・TM−PH−044
      ・TM−PH−045
      ・TM−PH−046
        これらは、1985年までに規格〈レーザー放射安全規格〉として、制定する予定である。
  (10)  欧州電気標準化委員会(CENLEC)
      ・HD  194〔レーザー装置の電気的安全要求事項〕(1974)
      ・レーザー操作時の公衆保健法
  (12)  英  国
        英国規格協会(BSI)
      ・BS−72/61379DCレーザー放射に対する眼の保護
      ・BS−4803(レーザー放射安全規格)は、1983年6月に第2版が出されたが、1984年に(レーザ
      ー製品の定義)、(クラス分けのための時間基礎)、(クラス1の二重限界)、(屋外及び工事用
      レーザー装置のクラス3Aレーザー製品)等に改正された。
  (13)  米  国
        米国産業衛生協議会(ACGIH)
      ・レーザー障害の管理に関するガイド(1981)
      ・作業室環境における化学的物質及び物理的試薬に関する限界値
        保健社会省(HHS)/食品医薬品局(FDA)/CDRH
      ・21CFR/Part  1040(光放出製品の施行基準)の1040.10(レーザー製品)及び1040.11(特定
      目的のレーザー製品)
        この1040.10及び1040.11は1976年8月2日発効、その後1978年11月28日43FR55387によって修
      正されている。しかしその後この基準の実施経験及び新しいレーザー製品の出現によって改正の必
      要があり、1980年11月7日45FR74374並びに1980年11月18日付のNo.1によって意見を求めていた
      が、更にそれらによる修正を行って1983年11月30日付の48FR54164 によって第2次改正を施行す
      るため意見を求め1984年4月1日で改訂予定であったが、延期されている。
      ・その他CDRH(旧BRH)より公布される通達(適用例外的措置は、いずれの連邦機関も全部
      この通達によるので、関係者は常に閲覧の要がある。)
        各州の厚生局、労働局その他関係局の法則
      ・目下17州においてはレーザーの取扱い基準又は法規が施行されている。例えばNew York州 : 
      Code Rule 50, Texas州 : Radiation Control ActのPart50,60,70 Georgia州 : Ch270−5−27
      など。
        国防省
      ・MIL−STD−1425(軍用レーザー及び付帯支援装置の安全設計要求事項)
        海軍省
      ・NAVELEX  INSTRUTION  5100.12(海軍レーザー危険予防プログラム)
        陸軍省
      ・TBMED279(レーザー放射の障害に対する保健管理)
        米国規格協会
      ・ANSI  Z87.1−1979(業務及び教育上の眼と皮膚の保護の実施要綱)
      ・ANSI  Z136.1−1980(レーザー安全使用)、1980年版は第3版であり、わが国を含め世界
      で広く、引用・参考とされている規格である。
        ANSIでは、1984年から(レーザーダイオード及び発効ダイオード光源を利用したオプティカ
      ルファイバ通信システムの安全使用)の検討が行われており、Z136.1規格とは異なった管理尺度
     (最大許容露光量、被ばく放出限界、その他要求事項等を含め)が規定されることになる。これは
      Z136.2規格になる予定である。
        さらに引続いて(医用レーザーシステムの安全使用)の審議に入ることになっている。

〔レーザー製品の放射安全基準JISについて〕
  光産業振興協会は、通商産業省工業技術院の委託をうけ、オプトエレクトロニクスの中で、光ファイバ、
光コネクタ、光能動部品、光受動部品、レーザー出力測定法、レーザー安全性、太陽電池の標準化に関す
る調査研究を行い、日本工業規格素案の作成を進めてきた。
  この標準作業は、協会内に標準化委員会及び専門委員会を組織し、昭和56年度から5年計画で進めてい
る。

〔レーザー機器導入・安全取扱い講習会〕
((財)光産業技術振興協会)テキストより抜粋