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労働災害防止緊急対策について

改正履歴


  一昨年以来の死亡災害の大幅な増加に対処するため、昭和63年5月27日付け基発第348号の2「労働災
害防止対策の強化について」に基づき、各局においては死亡災害の増加傾向に歯止めをかけるべく、諸対
策を強力に推進してきたところである。
  しかしながら、昭和63年における死亡者数は、建設業、土石採取業、陸上貨物運送事業及び林業を中心
に大幅な増加となっており、遺憾に堪えないところである。
  このような状況にかんがみ、死亡災害の撲滅を期すため、労働省としては、別紙1の「労働災害防止緊
急対策要綱」(以下「対策要綱」という。)を定め、別紙2の「労働災害防止緊急対策本部設置要綱」に
基づき労働大臣を本部長とする対策本部を設置(平成元年2月20日)するなど、官民一体となった、労働
災害防止活動を展開することとした。
  ついては、特に、死亡災害が増加している局にあっては、管内の労働災害発生状況を十分に踏まえつつ
下記の事項に留意し、効果的な対策の推進を図られたい。
  なお、対策要綱の2の関係事業者団体の首脳に対する労働大臣からの要請は、平成元年2月20日、別紙
3の事業者団体に対して行われ、要請の内容は別紙4のとおりであるので申し添える。

記
1  関係事業者団体に対する要請、広報等あらゆる手法により安全管理体制の確立等労働大臣の緊急要請
  の事項について徹底を図ること。
2  労働災害防止連絡協議会、報道機関等を活用し、関係事業者に対し、労働災害防止に対する労働省の
  決意を伝え、自主的労働災害防止活動を促進すること。
3  監督指導を実施、所定の措置を厳正に行うこと。

別紙1

労働災害防止緊急対策要綱

平成元年2月13日
労働省決定

  労働災害の発生件数は、関係者の努力により、昭和36年をピークとして死亡災害、休業4日以上の死傷
災害とも順調に減少してきた。
  しかしながら、死亡災害は、一昨年後半より増加傾向に転じ、これに対処するため、昨年5月、労働大
臣より事業者及び関係団体等に対して労働災害防止のための要請が行われたところである。この要請を踏
まえ、行政機関はもとより、労働災害防止団体、事業者団体等の積極的な取組みが展開されたが、一定の
成果をあげたものの死亡災害が減少に転ずるまでには至らず、建設業、土石採取業、陸上貨物運送事業及
び林業において著しく増加し、昭和63年の死亡者数は2,539人と昭和62年と比べると197人(対前年比8.4
パーセント)の大幅な増加となっている。
  このように死亡災害が増加した要因としては、生産活動の場において、建設工事量の増大、貨物取扱量
の増加等に対応した安全管理の徹底に欠ける面があったことが考えられる。
  このため、労働省としては、第七次労働災害防止計画で示した対策を引き続き推進するとともに、以下
に示す労働災害防止緊急対策を強力に推進し、死亡災害の大幅な減少を図ることとする。
1.労働災害防止緊急対策本部の設置
    最近の死亡災害の増加に対応し、労働災害防止緊急対策を積極的かつ効果的に推進するために、労働
  省幹部及び労働災害防止団体の会長を構成員とする労働災害防止緊急対策本部(本部長  労働大臣)を
  設置する。
2.関係事業者団体の首脳に対する労働大臣からの要請
    労働災害防止団体並びに昨年死亡災害が著しく増加した建設業、土石採取業、陸上貨物運送事業及び
  林業関係の事業者団体の首脳に対し、労働大臣から直接労働災害防止対策の徹底について要請する。
3.労働大臣による現場視察
    建設業における本対策の推進状況を確認するため、労働大臣による現場視察を実施する。
4.大規模な労働災害を発生させた事業者等に対する指導
    大規模な労働災害を発生させた事業者については、労働本省において、再発防止対策の徹底について
  指導を行うとともに、関係事業者団体に対しても同趣旨の要請を行う。また、これに準ずる死亡・重大
  災害については、都道府県労働基準局において対応する。
5.全国一斉監督指導の実施
    昨年死亡災害が著しく増加した建設業、土石採取業、陸上貨物運送事業及び林業に対して、それぞれ
  の事業活動の最盛期を中心に、全国一斉監督指導を実施する。
6.労働災害防止団体等における自主的労働災害防止活動の促進
    労働災害防止団体、関係事業者団体等に対し、労働災害防止のためのリーフレットの作成・配付、安
  全パトロールの実施等自主的労働災害防止活動の積極的推進を要請する。
7.能力向上教育等の安全衛生教育の推進
    労働災害防止団体、関係事業者団体等に対し、昨年死亡災害が著しく増加した建設業、土石採取業、
  陸上貨物運送事業及び林業の事業場における安全衛生の水準の向上を図るため、次の安全衛生教育の積
  極的推進を要請する。
    なお、労働省はこれらの安全衛生教育の適切かつ有効な実施を図るための指針を策定する。
  (1)  安全衛生推進者及び作業主任者(足場の組立て作業、採石のための掘削作業等)に対する能力向
      上教育
  (2)  危険有害業務従事者(移動式クレーン運転士、フォークリフト運転士等)に対する安全衛生教育
8.労働災害防止特別安全衛生診断事業の創設
    新たに「労働災害防止特別安全衛生診断事業」を創設し、労働災害が多発している業種を中心に、民
  間の専門家を活用した事業場ごとの安全衛生診断を実施する。
9.労働災害要因等の迅速な分析及び積極的な広報の実施
    労働災害の原因、対策等について迅速かつ的確な分析ができる体制の整備を図るとともに、分析結果
  等について積極的な広報活動を推進する。

別紙2

労働災害防止緊急対策本部設置要綱

1.目  的
    労働災害防止緊急対策本部(以下「対策本部」という。)は、最近の死亡災害の増加に対応し、労働
  災害防止緊急対策を積極的かつ効果的に推進するために、労働省及び労働災害防止団体が協力し、緊急
  対策の推進状況を踏まえた労働災害防止対策のあり方について検討することにより、事業者、事業者団
  体等が行う労働災害防止活動を促進し、もって死亡災害の大幅な減少を図ることを目的とする。
2.構  成
    対策本部は、次に掲げる者をもって構成する。
本部長  労働大臣
労働省労働基準局長
労働大臣官房審議官(労働基準局担当)
労働省労働基準局安全衛生部長
労働省労働基準局賃金時間部長
労働省産業安全研究所長
中央労働災害防止協会会長
建設業労働災害防止協会会長
陸上貨物運送事業労働災害防止協会会長
港湾貨物運送事業労働災害防止協会会長
林業・木材製造業労働災害防止協会会長
鉱業労働災害防止協会会長
3.実施事項
    対策本部においては、労働災害防止緊急対策に係る基本方針について検討するとともに、次の事項に
  ついて連絡協議を行う。
  (1)  事業者、事業者団体等が行う労働災害防止活動の促進に関すること。
  (2)  労働災害の動向等に関すること。
  (3)  情報・資料の収集及び提供に関すること。
  (4)  安全衛生教育の推進に関すること。
  (5)  広報に関すること。
  (6)  関係行政機関との連携に関すること。
  (7)  その他死亡災害の減少を図るため必要な事項に関すること。
4.会合の開催
    対策本部の会合は、原則として四半期に1回開催するほか、必要に応じ、随時開催する。
5.期  間
    対策本部の設置期間は、当面、平成元年中とする。
6.運  営
  (1)  対策本部に、次の幹事を置く
      労働省労働基準局監督課長
      労働省労働基準局安全衛生部計画課長
      労働省労働基準局安全衛生部安全課長
      労働省労働基準局安全衛生部労働衛生課長
      労働省労働基準局安全衛生部化学物質調査課長
      労働省労働基準局賃金時間部労働時間課長
  (2)  対策本部の庶務は労働省労働基準局安全衛生部安全課において行う。

別紙3

労働大臣要請の対象事業者団体

中央労働災害防止協会
建設業労働災害防止協会
陸上貨物運送事業労働災害防止協会
港湾貨物運送事業労働災害防止協会
林業・木材製造業労働災害防止協会
(社)全国建設業協会
(社)全国中小建設業協会
(社)日本建設業団体連合会
(社)日本電設工業協会
(社)全国中小建築工事業団体連合会
(社)日本砕石協会
(社)日本砂利協会
(社)全日本トラック協会
全国森林組合連合会
全国素材生産業協同組合連合会

別紙4

死亡災害撲滅のための緊急要請

  労働災害は、昭和36年をピークとして、死亡災害、休業災害ともに減少を続けてきたところであるが、
死亡災害については、一昨年後半より増加に転じた。これに対処するため、昨年5月、関係者に対し、労
働災害防止対策の強化について要請を行ったところであるが、それにもかかわらず、死亡災害は、その後
も減少するに至らず、建設業、陸上貨物運送事業等を中心に引き続き増加傾向にある。この結果、昭和63
年の全産業における死亡者は、2,539人(速報値)を数え、前年に比較し197人(8.4%)の増加となっ
た。このような死亡災害多発の現状は、人命尊重の立場からも、健全な産業活動の発展のためにも誠に遺
憾であり、看過し得ないところである。
  職場の安全と健康が確保されることは、労働者にとって生活を営むための大前提であり、いかなる社会
経済情勢にあっても労働災害はあってはならないものである。労働省としては、従来から労働災害の防止
を行政の最重点課題として推進しているところであるが、民間投資、公的投資とも増加するなど、内需は
引き続き拡大傾向にあり、こうした生産活動の活発化に対応し、安全管理の徹底と安全意識の高揚を図る
ことが急務となっている。このため、今般、労働災害防止緊急対策本部を設置するとともに、私自身がそ
の先頭に立ち、労働災害の撲滅にむけてまい進する決意である。
  関係各位におかれては、以上の状況を十分認識いただき、下記事項について徹底を図るとともに、各業
界における労働災害の実態を踏まえて必要な対策を講じ、災害の防止に万全を期されるよう強く要請する。
記
1.安全管理体制の確立と安全管理者等の職務の完遂
2.新規採用者、危険有害業務従事者等に対する安全衛生教育の徹底
3.適正な作業方法の確立
4.作業に適した機械設備の確保及び機械設備の点検整備の徹底
5.経営首脳による作業現場のパトロールの実施

平成元年2月20日
労働大臣  丹  羽  兵  助