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空気貯槽における爆発災害の防止対策の徹底について

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                                                                            基発第331号
                                                                          平成8年5月21日

  爆発災害の防止については、かねてからその徹底を図ってきたところであるが、先般、非鉄金属製造業
において、銅合金押出プレス装置を稼働させるため、当該装置のアキュムレータ上部に設置されている手
動バルブを開く操作を行ったところ、アキュムレータに連結している圧縮空気貯槽において爆発が発生し、
労働者16名が被災する重大災害が発生し、社会的に大きな注目を集めたところである(別紙参照)。
  本爆発災害は、当該装置の油類がアキュムレータ及び圧縮空気貯槽に混入し、その油類が長期間の使用、
アキュムレータ及び圧縮空気貯槽の運転条件等により劣化し、これら設備内の爆発の危険性のある状態が
形成され、手動バルブの操作が契機となり発火、爆発したものと推定されている。
  爆発した圧縮空気貯槽は、高圧ガス取締法の適用を受ける設備であるが、ボイラー及び圧力容器安全規
則の適用を受ける空気貯槽等第二種圧力容器についても、圧縮機に使用される潤滑油により、同様の爆発
の危険性のある状態が形成され、爆発災害が発生する場合がある。
  ついては、同種災害を防止するため、圧縮機と第二種圧力容器に該当する空気貯槽とが配管で連結され
たものを設置している事業場について指導を行う場合には、下記の事項に留意の上実施されたい。
  なお、中央労働災害防止協会、(社)日本ボイラ協会及び(社)ボイラ・クレーン安全協会に対し別添
(略)により、同種災害の再発防止対策の徹底について要請したので申し添える。

記
1  運転時における安全の確保
  (1)  吐出空気配管中の仕切り弁の開閉の操作は、断熱圧縮による吐出空気の温度上昇を防ぐため、こ
      れを急激に行わないこと。
  (2)  安全弁は、最高使用圧力以下で作動するように調整すること。
2  点検・保守管理の徹底
  (1)  空気貯槽内及び吐出空気配管内における潤滑油のオイルミストやカーボンのたい積状況を定期的
      に確認し、空気貯槽内及び吐出空気配管内を清浄な状態に保つこと。
  (2)  圧縮機の潤滑油は、引火点が高く、熱安定性、酸化安定性の良好なものを使用すること。
        また、潤滑油の給油及び交換時においては、適正な給湯量を確保するとともに、潤滑油の劣化が
      認められるときは速やかに交換すること。
  (3)  圧縮機のエアフィルター及びオイルフィルターを定期的に清掃し、必要に応じ交換すること。
  (4)  各種の点検の実施者、点検項目、点検方法、点検時期等を具体的に明記した作業標準を作成し、
      その活用の徹底を図ること。
  (5)  空気貯槽については、ボイラー及び圧力容器安全規則第88条に定める本体の損傷の有無、ふたの
      締付けボルトの摩耗の有無、管及び弁の損傷の有無について定期自主検査を確実に実施すること。

別紙

三菱マテリアル(株)桶川製作所における爆発災害の概要

1  発生日時  平成7年7月31日(月)  午前8時27分頃
2  発生場所  埼玉県北本市下石戸下字二ツ家191
    (三菱マテリアル(株)桶川製作所内  銅合金課押出工場)
3  事業場名  三菱マテリアル(株)桶川製作所
4  労働者数  男655名  女  175名  計830名
5  被害状況  死亡1名(労働者1名)
    負傷19名(労働者15名、その他4名)
6  発生状況
    銅合金課押出工場において、円筒状のニッケル合金をパイプに加工するために設置されていた押出し
  プレスの準備作業のため、同プレスの油圧を得るため付設されているアキュムレータの手動バルブを開
  いた時、アキュムレータの付属設備である圧縮空気貯槽2基が爆発し、前記の被害が発生したものであ
  る。
    なお、爆発した圧縮空気貯槽は、内容積が1.8m3、最高使用圧力210kg/cm2で、第二種圧力容器
  (高圧ガス取締法適用)に該当するものである。
7  発生原因
    発生原因は断定できないが、次のように推測される。
  [1]  アキュムレータの手動バルブを開く作業をした時、アキュムレータ内は、圧力が低下していたこ
      とによりアキュムレータに連結している圧縮空気貯槽の圧力との間に大きな差が生じており、この
      圧力差による断熱圧縮、高速気流下での固形物との摩擦熱等によりアキュムレータ内又はアキュム
      レータと手動バルブを接続する配管系内で発火、爆発したこと。
  [2]  この爆発により発生したアキュムレータ内の高温高圧ガスが、配管内のミストを含む可燃性混合
      気を燃焼させ、火炎を伝播しながら逆に圧縮空気貯槽の方へ急激に流れ、圧縮空気貯槽内に存在し
      ていた可燃性混合気及び油類に達し、爆発を引き起こしたこと。