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「化学物質等による労働者の健康障害を防止するため必要な措置に関する指針」
について(平成18年3月30日 基発第0330004号により廃止)

改正履歴
基発第212号
平成12年3月31日
都道府県労働基準局長 殿

労働省労働基準局長


「化学物質等による労働者の健康障害を防止するため必要な措置に関する指針」について

 労働安全衛生法第58条第2項の規定に基づき、「化学物質等による労働者の健康障害を防止するため必要な措置に関する指針」(以下「指針」という。)を作成し、その名称及び趣旨を、別添1(略)のとおり平成12年3月31日付け官報に公示した。
 ついては、別添2(略)のとおり指針(全文)を送付するので、下記事項に留意の上、あらゆる機会をとらえて事業者及び関係事業者団体等に対して本指針の周知を図るとともに、その適切な運用が図られるよう指導されたい。
 なお、本指針は、労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第34条の22の規定により、都道府県労働基準局(4月1日から都道府県労働局)労働衛生主務課において閲覧に供することにより公表するものであるので念のため申し添える。



1. 趣旨
 化学物質による労働者の健康障害防止に関しては、事業者において、各種法令等に基づく措置及び自主的措置を講じることとしているところであるが、化学物質による労働者の職業性疾病は依然として相当数発生している状況にある。
 こうした状況を踏まえ、平成11年5月の労働安全衛生法改正では、化学物質等による労働者の健康障害の防止を図ることを目的として、通知対象物を譲渡し、又は提供する者は、その有害性等の情報が文書等により譲渡・提供先に通知されるようにするとともに、指針を労働大臣が公表し、化学物質等による労働者の健康障害を防止するため必要な措置に関して、その適切かつ有効な実施を図ることとされたところである。
 化学物質の管理については、ILO(国際労働機関)、OECD(経済協力開発機構)等の国際機関においても様々な活動が行われており、リスクマネジメント等の考え方が一般化しつつある。また、国際的に労働安全衛生マネジメントシステムヘの関心が高まったこと等を背景に、各国で労働安全衛生マネジメントシステムが制度化され、我が国においても平成11年4月に「労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針」(平成11年4月30日労働省告示第53号)が公表された。
 一方、化学工業界においては、これらの動向に加えて、「レスポンシブル・ケア」と呼ばれる「化学物質の開発、製造から廃棄に至る全過程にわたって『環境・安全』を確保する」ための自主管理活動が進められている。
 指針は、こうした化学物質管理についての最近の国際的な考え方を盛り込むとともに、化学工業界の動向も踏まえて策定されたものである。
 したがって、指針で定める措置は、従来からの労働衛生管理に基づく措置に止まるものではなく、化学物質管理計画の策定、リスクアセスメントの実施等を含むものであること。
 また、労働者の健康障害防止のため必要な措置の実施に当たっては、指針に定める措置を基本とし、各事業場の実態を勘案の上、取り組むことが必要であること。
 さらに、指針は、事業場において通常行っている本来の業務のみを対象としたものではなく、非定常作業をも対象としたものであること。
 なお、いうまでもなく、事業者におかれては、労働安全衛生関係法令で定められた措置を講じた上で、指針で定める自主的措置を講じるべきものであること。

2. 化学物質管理計画の策定等
(1) 化学物質管理計画は、事業者の責任で策定し、労働者の健康障害を防止するため、事業場で化学物質等を適切に管理するために定めた具体的実施事項を記録するものであり、これの策定に当たっては、労働者の意見を反映させたものでなければならないこと。この時、リスクアセスメント、作業規程等についての労働者の意見にも留意すること。
 また、同計画を策定する前提として、化学物質等の管理に関する基本方針を事業揚ごとに明らかにしておくことが望ましいこと。
(2) 化学物質管理計画を策定する対象事業者は、労働者に健康障害を生ずるおそれのある化学物質等を製造、輸入又は使用するすべての事業者であり、当該化学物質等を販売する事業者も含まれること。ただし、当該化学物質等が容器に密封されている等労働者がばく露するおそれのない形態でのみ取り扱われる揚合は、化学物質管理計画の策定を要しないこと。
(3) 事業者は、下請事業者等関連する事業者に対して、化学物質管理計画の策定等について指導するとともに、必要な情報を提供するよう努めること。
(4) 化学物質管理計画は、実施事項の担当都署、必要な予算、計画の達成時期等も含めて作成することが望ましいこと。
(5) 化学物質管理計画は、期間を1年(年間計画又は年度計画)とし、1年ごとに見直し又は更新を行うことが望ましいが、これに限らないこと。
(6) 指針の2の(2)のイの「化学物質管理計画等」の「等」には、指針の4の(2)のイの(ホ)の「作業規程」、その他事業場で作成された規程類が含まれること。
(7) 指針の2の(2)のニの「設備」には、配管が含まれること。
(8) 指針の2の(2)のホの「健康影響の把握」の方法としては、健康診断結果、労働者による自己申告があること。
(9) 指針の2の(2)のへの「その他化学物質等による労働者の健康障害の防止に関すること」には、監査等の実施結果の検討が含まれること。
(10) 指針の2の(3)の「衛生委員会の活用等」とは、労働安全衛生法により衛生委員会の設置が義務付けられている事業者にあっては、当該委員会(安全衛生委員会を含む。)の場を通じて労働者の意見を反映する趣旨であること。また、同委員会の設置が義務付けられていない事業者にあっては、労働者の意見を聴くための機会を設けて労働者の意見を反映する趣旨であること。

3. 有害性等の特定及びリスクアセスメント
(1) 「有害性等の特定」とは有害性の種類及び程度を特定することであり、その際、指針の3の(2)で定める「化学物質等安全データシート」のみならず、平成4年7月1日付け労働省告示第60号「化学物質等の危険有害
性等の表示に関する指針」で定める「化学物質等安全データシート」、その他の化学物質の有害性に関する書籍、学術論文等を参考にすること。
(2) リスクアセスメントを実施する際考慮すべき事項には、以下のものが含まれること。
・化学物質等の有害性、物理的及び化学的性質、人体に及ぼす作用、貯蔵又は取扱い上の注意等の情報
・化学物質等の製造又は取扱い方法(製造又は取扱い場所、製造工程等を含む。)
・化学物質等の製造又は取扱い量
・化学物質等へのばく露経路
・化学物質等のばく露の程度を推定する方法
・化学物質等を取り扱う労働者の数、健康状態等労働者に関する情報
・化学物質等のばく露を防止するための措置(化学物質等の発散を抑制するための設備、呼吸用保護具等)
(3) リスクアセスメントの対象となる化学物質等は、譲渡又は提供される化学物質等のみならず、製造過程で生成される中間体等も含まれること。
(4) 指針の3の(1)の「化学物質管理者」は、事業場で製造し、又は取り扱う化学物質等、作業方法、設備等事業場の実態に精通していることが必要であるため、当該事業場に所属する労働者等から指名されることが望ましいこと。
(5) 指針の3の(2)は、化学物質等の有害性等に関する情報のみならず、当該化学物質等による労働者の健康障害を防止するための幅広い情報を積極的に入手する趣旨であること。
(6) 指針の3の(3)に関し、化学物質等の情報で不明確な事項、疑間のある事項等について、外部の専門家への照会等により解明した場合は、化学物質等を譲渡し、又は提供した者に当該情報の提供を行うよう努めるとともに、関係労働者等に対し、新たに得られた情報を周知すること。
(7) 指針の3の(4)の「化学物質等安全データシート作成者」は、化学物質等の有害性等の情報を熟知している必要があるが、必ずしも当該事業場の実態に精通している必要はないため、労働衛生コンサルタント等事業場の外部の専門家であってもよいこと。

4. 実施事項
(1) 指針の4の(2)のイは、化学物質等のばく露を防止し、又は低減するための措置を具体的に列挙したものであるが、原則として、作業環境管理が作業管理より優先されること。
(2) 指針の4の(2)のイの(イ)のaの「使用条件等の変更」には、有害性がより低い化学物質への代替、有害性を有する化学物質の使用量の削減が含まれるこしなお、使用量を削減するためには、使用量を定期的に記録する
ことが望ましいこと。
(3) 指針の4の(2)のイの(ハ)の目の「有効に稼働させる」とは、局所排気装置にあっては、一定以上の制御風速を保持するか、フードの外側における化学物質の濃度を一定以下とするよう稼働させることをいうこと。
(4) 指針の4の(2)のハの「必要な措置」には、施錠した保管庫等に保管すること、監視人を置くことが含まれること(平成10年10月30日基安発第28号「化学物質の適切な管理の徹底について」参照)。
(5) 指針の4の(2)のニは、事業場外へ廃棄又は排出された化学物質等が事業場を汚染し、当該事業場で働く労働者に健康障害を及ぼすことを防止することを目的としているものであること。また、化学物質等の事業場外への廃棄又は排出により一般環境が汚染されるおそれもあることから、当該汚染の防止についても配慮するよう事業者に求める趣旨であること。

5. 監査等
(1) 「監査」は年1〜2回以上、「パトロール」はそれ以上の頻度で行うことが望ましいこと。また、監査等の実施方法の決定等に当たっては、衛生委員会の一活用等により労働者の意見を反映することが望ましいこと。
(2) 指針の5の(2)の「その他必要があると認めるとき」には、取り扱う化学物質等を原因とする職業性疾病が発生した場合、化学物質等やこれを取り扱う設備等が新規に導入された場合が含まれること。

6. 記録
 記録の方法としては、文書のみならず、電子媒体による方法でもよいこと。また、保管の期間について定めておくことが望ましいこと。

7. 人材の養成
 化学物質管理者は、化学物質等の管理に係る十分な知識を有していることが必要であることから、事業者は、化学物質等の適切な管理に関する研修として、別表に定める「化学物質管理者研修」を受講させる等によりその人材の養成に努めること。
 また、化学物質等安全データシート作成者についても、化学物質等の有害性等の情報について熟知している必要があることから、化学物質等安全データシートを作成すべき事業者は、化学物質等安全データシートの適切な作成に関する研修として、別表に定める「化学物質等安全データシート作成者研修」を受講させる等により、その人材の養成に努めること。
 これらの揚合、既に化学物質等の管理、化学物質等の有害性等について、一定の知識及び経験を有する者については、別表に定める研修の一部を省略して差し支えないこと。

8. その他
 平成11年労働省告示第53号に定める「労働安全衛生マネジメントシステム」を導入している事業場であって、化学物質等を製造し、又は取り扱う事業場は、本指針の内容を当該システムの一環として運用しても差し支えないこと。