労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律の施行について

基発第162号
平成12年3月24日
都道府県労働基準局長 殿
労働省労働基準局長

労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律の施行について

 労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(平成11年法律第45号。以下「改正法」とい
う。)の施行については、平成11年5月21日付け労働省発基第54号により労働事務次官から通達されたとこ
ろであり、本日、労働安全衛生法施行令等の一部を改正する政令(平成12年政令第93号。以下「改正政令」
という。)及び労働安全衛生規則等の一部を改正する省令(平成12年労働省令第7号。以下「改正省令」と
いう。)が公布され、改正法の施行に伴う所要の規定の整備が図られたところである。
 改正法による改正後の労働安全衛生法(以下「法」という。)改正政令による改正後の労働安全衛生法
施行令(以下「令」という。)及び改正省令による改正後の労働安全衛生規則(以下「則」という。)の内容
等は、下記のとおりであるので、平成12年4月1日からのこれらの施行に遺漏のないようにされたい。
 T 労働安全衛生法関係
第1  化学物質等の有害性等の情報の通知(法第57条の2関係)
 1  化学物質による労働災害は依然として多く発生しており、これを防止するためには、労働現場に
  おいて化学物質等の有害性等の情報を確実に伝達し、この情報を基に労働現場において健康障害防
  止のための措置を適切に講じていくことが重要である。
   このため、化学物質等による労働者の健康障害の防止に資するよう、化学物質等を譲渡し、又は
  提供するときに、その有害性等に関する事項が譲渡し、又は提供する相手方に通知されるよう義務
  付けるものである。
 2  通知は、譲渡し、又は提供する物ごとに行うこと。ただし、譲渡し、又は提供する物が混合物の場
  合、その中に成分として1%を超えて含まれているすべての通知対象物個々について法第57条の2第1
  項第3号から第6号までの事項を通知し、全体について同項第1号、第2号及び第7号の事項を通知する
  ことにより、当該物に係る通知が行われたものとして取り扱ってよいこと。
 3  本条ただし書の「主として一般消費者の用に供される製品」には、以下のものが含まれるものであ
  ること。
   イ 薬事法(昭和35年法律第145号)に定められている医薬品、医薬部外品及び化粧品
   ロ 農薬取締法(昭和23年法律第125号)に定められている農薬
   ハ 労働者による取扱いの過程において固体以外の状態にならず、かつ、粉状又は粒状にならない
    製品
   ニ 通知対象物が密封された状態で取り扱われる製品
 4  第1号の「名称」については、製品名の記載でも差し支えないこと。
第2  化学物質等による労働者の健康障害を防止するため必要な措置に関する指針の公表(法第58条第2項
  及び第3項関係)
   化学物質等による労働者の健康障害を防止するために事業者が講ずべき措置に関する指針を労働大
  臣が公表するとともに、必要な指導、援助等を行うこととするものである。
第3  深夜業に従事する労働者の自発的健康診断の趣旨(法第66条の2から法第66条の7まで関係)
   自発的健康診断制度は、深夜業に従事する労働者(以下「深夜業従事者」という。)の健康管理の充
  実を図るため、自己の健康に不安を有する深夜業従事者であって事業者の実施する次回の特定業務従
  事者の健康診断(以下「特定業務健診」という。)の実施を待てない者が自らの判断で受診した健康
  診断(以下「自発的健康診断」という。)の結果を事業者に提出した場合に、事業者が、特定業務健診
  の場合と同様の事後措置等を講ずることを義務付けるものである。
第4  化学物質等の有害性等の事項の労働者への周知(法第101条第2項関係)
   労働者が取り扱う物質の成分、その有害性、取扱い上注意すべき点等を事前に承知していなかった
  ために生ずる労働災害を防止するため、法第57条の2に基づき通知された有害性等に関する事項を、
  労働者に周知させることを義務付けるものである。
 U 労働安全衛生法施行令関係
第5  改正の要点
 1  化学物質等の有害性等の情報の通知を行うべき通知対象物のうち、法第56条第1項の物以外の物を
  定めること。
 2  「酢酸ブチル」、「ジクロロエタン」等の名称は、すべての異性体の総称とすること。これに伴い、
  令第18条等の「酢酸ブチル」等については、単一物質であることを明確に表現するため、「酢酸ノル
  マル-ブチル」等とすること。
   なお、これにより令第18条等の各号の適用範囲を変更するものではないこと。(令第18条令別表
  第1及び別表第6の2関係)
第6  細部事項
 1  令第18条の2関係
   政令に定める通知対象物については、法第57条に基づく表示の対象となっている化学物質並びに日
  本産業衛生学会又は米国労働衛生専門家会議(American Conference of Governmental Industrial
   Hygienists,Inc)において許容濃度等が勧告された物質及び労働災害の原因となった物質から選定
  を行ったものであること。
 2  令別表第9関係
  (1) 第29号の「アリル水銀化合物」とは、芳香族環を有する有機水銀化合物をいうこと。
  (2) 第37号の「水溶性」とは、当該物質を1グラムを溶かすのに必要な水の量が100ミリリットル未
   満であるものをいうこと(以下、第138号、第336号、第351号、第435号、第447号、第485号におい
   て同じ。)。
  (3) 第53号の「一酸化窒素」には、当該物質が水と反応してできる「亜硝酸」は含まれないものであ
   ること。
  (4) 第61号の「ウレタン」とは、「カルバミン酸エチル」をいうこと。
  (5) 第166号の「けつ岩油」とは、油けつ岩の乾留によって得られる油状物質をいうこと。
  (6) 第168号の「ゲルマン」とは、モノゲルマン(GeH4)をいうこと。
  (7) 第171号の「固形パラフィン」には、炭素数が20〜32の飽和炭化水素が含まれるものであること。
  (8) 第197号の「三酸化二ほう素」には、当該物質が水と反応してできる「オルトほう酸」(H3BO3)
   及び「メタほう酸」(HBO2)は含まれないものであること。
  (9) 第200号の「三弗化二ほう素」には、当該物質が水と反応してできるフルオロヒドロキシほう酸
   類は含まれないものであること。
  (10) 第310号の「シラン」とは、モノシラン(SiH4)をいうこと。
  (11) 第313号の「人造鉱物繊維」には、ガラス長繊維は含まれないものであること。
  (12) 第379号の「灯油」とは、日本工業規格K2203に該当するものをいうこと。
  (13) 第630号の「ロジン」とは、天然松等の油状抽出成分をいうこと。
 V 労働安全衛生規則関係
第7  改正の要点
 1  深夜業従事者の健康管理の充実関係
  (1) 衛生委員会の付議事項に、自発的健康診断の結果及びその結果に対する対策の樹立に関すること
   を加えるものとすること。(則第22条関係)
  (2) 自発的健康診断の結果を証明する書面を事業者に提出することができる労働者は、常時使用され
   る労働者であって、当該健康診断を受けた日前6月間を平均して1月当たり4回以上深夜業に従事し
   たものとすること。(則第50条の2関係)
  (3) (2)の労働者は、既往歴及び業務歴の調査等の項目の全部又は一部について、自ら受けた医師に
   よる健康診断の結果を証明する書面を事業者に提出することができるものとすること。ただし、当
   該健康診断を受けた日から3月を経過したときは、この限りでないものとすること。(則第50条の3
   関係)
  (4) 自発的健康診断の結果を証明する書面は、当該労働者の受けた健康診断の項目ごとに、その結果
   を記載したものでなければならないものとすること。(則第50条の4関係)
  (5) 事業者は、自発的健康診断の結果に基づき、健康診断個人票を作成して、これを5年間保存しな
   ければならないものとすること。(則第51条関係)
  (6) 自発的健康診断の結果に基づく医師からの意見聴取は、当該労働者が健康診断の結果を証明する
   書面を事業者に提出した日から2月以内に行わなければならないものとすること。(則第51条の2関
   係)
 2  化学物質等による労働者の健康障害を防止するための措置の充実関係
  (1) 令別表第9の第632号で定める通知対象物は、同表第1号から第631号までに掲げる物を1%を超え
   て含有する製剤その他の物とすること。(則第34条の2の2関係)
  (2) 名称等を通知する方法としては、文書の交付の他、情報化の推進に伴い、磁気ディスクの交付、
   ファクシミリ装置を用いた送信その他の方法で相手方が承諾した方法とすること。(則第34条の2
   の3関係)
  (3) 通知しなければならない事項として、法第57条の2第1項第1号から第6号までに定める事項のほか、
   通知義務者等を特定するため、通知を行う者の氏名(法人にあっては、その名称)及び住所とするも
   のであること。(則第34条の2の4関係)
  (4) 通知を行う時期として、事前に情報を得て、措置を講ずる必要があることから、通知対象物を譲
   渡し、又は提供する時までに行わなければならないこととすること。
    なお、同一の者に対し、同一の物を継続的に又は反復して譲渡し、又は提供する場合は、一度通
   知を行えば、同一の内容の通知を再度行う必要はないこと。(則第34条の2の5関係)
  (5) 成分の含有量の表記の方法は、現行の表示制度と同様に、各成分を重量パーセント(ベンゼンに
   あっては、容量パーセント)で表示することとし、範囲は、10パーセント未満の端数を切り捨てた
   数値と当該端数を切り上げた数値との範囲で行うことができること。(則第34条の2の6関係)
  (6) 労働者への周知の方法については、見やすい場所に常時掲示し、又は備え付けほか、書面を労働
   者に交付すること、情報化の進展に対応し、磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずるもの
   に記録し、かつ、労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置することによることができ
   ること。(則第98条の2関係)
第8  細部事項
 1  深夜業従事者の健康管理の充実関係
  (1) 衛生委員会の付議事項(則第22条関係)
    第5号は衛生委員会の付議事項として法定の健康診断等の結果及び対策の樹立を規定したもので
   あり、これに自発的健康診断の結果について含めることを規定したものであること。
    なお、昭和47年9月18日付け基発第601号の1記のTの第2の17と同様に、自発的健康診断の結果に
   ついては、職場の健康管理対策に資することができる内容のものであればよく、受診者個々の健康
   診断結果を付議する趣旨ではないこと。
  (2) 自発的健康診断の対象者(則第50条の2関係)
    自発的健康診断の結果を証明する書面を事業者に提出できる労働者の要件を定めたものであるこ
   と。
  (3) 自発的健康診断項目等(則第50条の3関係)
    自発的健康診断項目については、「深夜業に従事する労働者の健康診断の在り方等に係る検討会」
   における検討経過、定期健康診断項目や事後措置が充実された経緯、自発的健康診断制度の趣旨等
   を踏まえ、現行の定期健康診断項目と同一とされたこと。
    また、自発的健康診断を受診してから提出するまでの期間については、自発的健康診断の結果へ
   の対応は、特に迅速に行う必要性があるものと考えられるため、その根拠となる自発的健康診断結
   果の提出についても、できるだけ早期に受診者から事業者に提出がなされるべきものであることに
   かんがみ、3月以内とすることとしたものであること。
 2  化学物質等による労働者の健康障害を防止するための措置の充実関係
  (1) 通知の方法(則第34条の2の3関係)
   イ 「その他の方法」には、インターネットで閲覧できるホームページが含まれるものであるこ
    と。
     なお、ホームページにより通知する場合においては、当該ホームページは、譲渡し、又は提供
    する者の管理下にあるものであること。また、通知に際しては、相手方の承諾を得るとともに、
    当該ホームページのアドレスを通知すること。
   ロ 譲渡し、又は提供する者は、文書の交付以外の方法により情報の通知を行った場合は、相手方
    が情報を受け取ったことを確認することが望ましいこと。
  (2) 成分の含有量の通知の方法(則第34条の2の6関係)
    重量パーセント(ベンゼンにあっては、容量パーセント)以外の表記による含有量の表記がなされ
   ているものについては、重量パーセント(ベンゼンにあっては、容量パーセント)への換算方法を明
   記していれば重量パーセント(ベンゼンにあっては、容量パーセント)による表記を行ったものと見
   なすこと。
 W その他
 1  深夜業従事者に対する特定業務健診の徹底について
   深夜業従事者の健康管理の基本はあくまでも特定業務健診及びその事後措置を確実に実施すること
  にあることから、深夜業に係る特定業務健診及びその事後措置の徹底を図ること。
 2  問診の充実について
   深夜業については人間の有する一日単位のリズムに反して働くというその特性から健康への影響を
  及ぼす可能性が指摘されていることから、医師による問診に当たっては、特に自他覚症状について注
  意深く行うことが望ましいこと。
 3  健康診断項目の省略について
   定期健康診断の項目の省略については、平成10年6月24日付け基発第396号(第2の3(7))により「年
  齢等により機械的に決定するのではなく、個々の労働者について、医師が健康診断時点の健康状態、
  日常生活状況、作業態様、過去の健康診断の結果、労働者本人の希望等を十分考慮して総合的に判断
  するべきものである」とされているところであり、深夜業に係る特定業務健診についてもこの趣旨の
  徹底を図ること。
   特に、自発的健康診断については、深夜業従事者の労働負荷や深夜就労という特殊性に加え、労働
  者の不安を払拭するために労働者の自主的判断によって受診できるものであることを踏まえ、できる
  限り健康診断項目を省略しないよう、関係者に対し指導すること。
 4  健康相談体制の整備等について
   事業者は、深夜業従事者が産業医、保健婦(士)、衛生管理者等に気軽に相談できる環境や体制を整
  備するとともに、労働者の自主的な健康管理を促進するために深夜業の特性に対応した健康教育を実
  施するよう努めることが望ましいこと。



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