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インジウム・スズ酸化物等取扱い作業における当面のばく露防止対策について
(平成22年12月24日事務連絡により廃止)

改正履歴


                                     基安化発第0713001号
                                       平成16年7月13日

各都道府県労働局労働基準部
     労働衛生主務課長 殿


                               厚生労働省労働基準局安全衛生部
                                      化学物質対策課長



  インジウム・スズ酸化物等取扱い作業における当面のばく露防止対策について


 近年、テレビ受像機や携帯電話の画面への液晶の利用が進むことにより、液晶ディスプレイの透明電極
等の材料に用いられるインジウム化合物の需要が急激に伸びているところであるが、このような状況下で
酸化インジウムと酸化スズの混合物(以下「インジウム・スズ酸化物」という。)の焼結体の切削・研ま作
業に従事していた労働者が重篤な肺疾患に罹患する労働災害が発生した。この災害は当該労働者がインジ
ウム・スズ酸化物の粉じんを吸入したことによって引き起こされたものであるとの可能性が指摘されてい
る。
 インジウム・スズ酸化物による健康に対する影響については、今後さらなる知見の集積が必要であるが、
予防的観点から、当面のインジウム・スズ酸化物に対するばく露防止対策を下記のとおりとりまとめたと
ころである。
 ついては、管内の酸化インジウム又はインジウム・スズ酸化物(以下「インジウム・スズ酸化物等」と
いう。)を製造し、又は取り扱う事業場の把握に努めるとともに、関係事業場に対し、下記事項を講じる
よう指導されたい。
 なお、インジウム・スズ酸化物等は労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第57条の2の規定に基づき化
学物質等安全データシート(MSDS)の交付を要する化学物質であることを申し添える。


                      記


1 作業環境管理及び作業管理
  事業者は、屋内作業場においてインジウム・スズ酸化物等を製造し、又は取り扱う場所での作業(以
 下「インジウム・スズ酸化物等取扱い作業」という。)に従事する労働者がインジウム・スズ酸化物等
 にばく露することを防止するため、次の措置を講じること。
(1) 設備に係る措置
   次のいずれかの措置を講じること。
 ア 遠隔操作の導入又は工程の自動化
 イ 粉じんの発散源を密閉する設備の設置
 ウ 局所排気装置の設置
 エ プッシュプル型換気装置の設置
 オ 湿潤な状態に保つための設備の設置
(2) 作業環境測定等
 ア 測定及び測定結果の評価
   インジウム・スズ酸化物等取扱い作業が行われる屋内作業場(遠隔操作又は工程の自動化等により
  当該作業場所に労働者が通常立ち入らない場合を除く。)においては、6月以内ごとに1回、別紙の1に
  示す方法により、空気中のインジウムの濃度を測定するとともに、その測定結果について別紙の2に
  示す方法により評価し、単位作業場所の管理区分を決定すること。
   なお、別紙の2の空気中のインジウム及びその化合物の管理すべき濃度基準は、当面、米国産業衛
  生専門家会議(ACGIH)等がばく露限界濃度として提唱している0.1mg/m3(インジウムとして)と
  すること。
 イ 評価の結果に基づく措置
   事業者は、空気中のインジウムの濃度の測定結果の評価が第2管理区分又は第3管理区分に区分され
  た場所については、速やかに次に掲げる作業環境を改善するため必要な措置を講じ、第1管理区分と
  なるよう努めること。なお、第1管理区分に区分された場所についても、次に掲げる作業環境を改善
  するため必要な措置を講じ、できる限り空気中のインジウムの濃度を低減させることが望ましいこと。
  (ア) 設備の密閉化の促進
  (イ) 局所排気装置等の性能の強化
  (ウ) 労働者のばく露を低減させる作業工程又は作業方法への変更
(3) 呼吸用保護具の使用等
  上記(1)の措置を講じた場合であっても、手持ち式の動力工具を用いて行う研ま作業のように、作業
 の態様等から作業環境中の粉じん濃度にかかわらず個人ばく露濃度が高いと推定される作業については、
 労働者に有効な呼吸用保護具を使用させること。
  なお、呼吸用保護具として防じんマスクを用いる場合、粉じんにオイルミスト等が混在しない場合に
 は、防じんマスクの規格(昭和63年労働省告示第19号)第1条第3項に規定するRS二、RS三、DS二、DS三、
 RL二、RL三、DL二又はDL三を使用し、粉じんにオイルミスト等が混在する場合には、RL二、RL三、DL二
 又はDL三を使用すること。
  また、空気中のインジウムの濃度の測定結果の評価が第1管理区分の場合であっても、作業の態様等
 に応じ、有効な呼吸用保護具を使用させ、又はばく露される作業時間の短縮に努めること。
(4) 清掃等
  インジウム・スズ酸化物等取扱い作業により床等に飛散した粉状のインジウム・スズ酸化物等につい
 ては、二次発じんの防止のため定期的に清掃を行うこと(遠隔操作の導入又は工程の自動化を行った場
 合を含む。)。また、インジウム・スズ酸化物等の清掃又は装置等の内部に付着した当該物質の回収に
 従事する労働者には、有効な呼吸用保護具を使用させること。

2 労働衛生教育
  事業者は、MSDS等により得られた情報を基に、関係労働者に対して次の事項について労働衛生教
 育を実施すること。
(1) インジウム・スズ酸化物等の物理化学的性質
(2) インジウム・スズ酸化物等の有害作用、ばく露することによって生じる症状・障害及びACGIH
 等から提唱されているばく露限界濃度の内容
(3) 作業規程に基づく作業方法
(4) 呼吸用保護具の使用方法
(5) その他健康障害を防止するために必要な事項


別紙
  空気中のインジウム・スズ酸化物等の濃度の測定方法及び評価方法について

1 測定方法
  作業環境における空気中のインジウム・スズ酸化物等の濃度測定は、作業環境測定基準(昭和51年労
 働省告示第46号)に準じた次の方法により行うこと。
(1) 測定の位置及び時間帯
 ア 測定点は、単位作業場所の床面上に6メートル以下の間隔で引いた縦の線と横の線との交点の床上5
  0センチメートル以上150センチメートル以下の位置とし、測定点の数は、単位作業場所について5点
  以上とすること。また、測定は、インジウム・スズ酸化物等取扱い作業が定常的に行われている時間
  に行うこと。(以下「A測定に準じた測定」という。)
 イ インジウム・スズ酸化物等の粉じんの発散源に近接する場所において作業が行われる場合には、ア
  による測定のほか、空気中のインジウム・スズ酸化物等の濃度が最も高くなると思われる時間に、当
  該作業が行われる位置において測定を行うこと。(以下「B測定に準じた測定」という。)
(2) 濃度測定
  各測定点において、次のいずれかの方法により、インジウム・スズ酸化物等に含まれる酸化インジウ
 ムをインジウムとして測定すること。
 ア ろ過捕集方法によりインジウム・スズ酸化物等の粉じんを捕集し、誘導結合高周波プラズマ質量分
  析装置(ICP−MS)によりインジウムの濃度を測定する。
   なお、サンプリングの時間は、各測定点につき10分間以上とする。
 イ アと同等以上の性能を有する測定方法
2 評価方法
  空気中のインジウムの濃度の評価は、作業環境評価基準(昭和63年労働省告示第79号)に準じて、単位
 作業場所ごとに次に掲げるところにより、第1管理区分から第3管理区分までに区分することにより行う
 こと。
  なお、第1評価値及び第2評価値とは、作業環境評価基準第3条に準じて計算した評価値をいうもので
 あること。
(1)第1管理区分
  第1評価値及びB測定に準じた測定の測定値が管理すべき濃度基準に満たない場合
(2)第2管理区分
  第2評価値が管理すべき濃度基準以下であり、かつ、B測定に準じた測定の測定値が管理すべき濃度基
 準の1.5倍以下である場合
(3)第3管理区分
  第2評価値が管理すべき濃度基準を超える場合又はB測定に準じた測定の測定値が管理すべき濃度基準
 の1.5倍を超える場合


<注1>
  誘導結合高周波プラズマ質量分析装置(ICP−MS)は、高感度、高性能の溶液中無機元素分析装置
 であり、プラズマにより金属をイオン化するICP部とそのイオンを分離、定量する質量分析部から構成
 される。検出感度が高く、インジウムについて微量分析が可能な分析装置である。

<注2>
  現在のところ、今回問題となっている肺疾患を防止しうるばく露限界濃度は明らかとなっていないが、
 現在米国産業衛生専門家会議(ACGIH)等がインジウム及びその化合物のばく露限界濃度として
 0.1mg/m3(インジウムとして)を提唱しているので、当面はこれを参考として作業環境管理を行うことと
 し、「管理すべき濃度基準」として示すものである。
  したがって、空気中のインジウムの濃度を0.1mg/m3に管理すれば労働者の健康に対する影響が生じな
 いというものではないため、第1管理区分に区分された場所についても、できる限り空気中のインジウ
 ムの濃度を低減させることが望ましいこと。

 参考1
 参考2