東日本大震災の復旧工事における船舶の解体等作業に係る労働災害防止対策の徹底について(平成23年8月12日 基安発0812第2号により廃止)

基安発0510第2号
平成23年5月10日
都道府県労働局長 殿
厚生労働省労働基準局
安全衛生部長

東日本大震災の復旧工事における船舶の解体等作業に係る労働災害防止対策の徹底について
(平成23年8月12日 基安発0812第2号により廃止)

 東日本大震災時に、津波により多数の船舶が陸地に打ち上げられており、これらの船舶の解体・改修作
業(以下「解体等作業」という。)においては労働災害防止対策の徹底を図っていく必要がある。
 一方、石綿が使用されている船舶の解体等作業を行う際には、石綿障害予防規則(平成17年厚生労働省
令第21号。以下「石綿則」という。)に基づき、作業主任者の選任や保護具の備え付け等様々な措置が義
務付けられているが、今後船舶の解体等作業の増加が見込まれているところである。
 このため、労働災害防止に関する実施事項を下記第1に取りまとめるとともに、特に石綿関連作業に関
する実施事項を下記第2に取りまとめたので、船舶の解体等作業についての指導に当たっては遺漏なきを
期されたい。
 なお、関係事業者団体等に対し、別添のとおり、船舶の解体等作業に係る労働災害防止対策の徹底につ
いて要請したところであるので、申し添える。
第1 労働災害防止に関する実施事項
 1 作業準備段階において、危険性又は有害性等の調査を実施し、その結果に基づく措置を実施するこ
  と。
 2 高所での作業に労働者を従事させる場合
  (1) 高さが2メートル以上の箇所で作業を行う場合において、墜落により労働者に危険を及ぼすおそれ
   のあるときは、足場を組み立てる等の方法により作業床を設けること。
  (2) 足場を設置する場合には、適切な墜落防止措置及び物体の落下防止措置を講ずること。
  (3) つり足場、張り出し足場又は高さが5メートル以上の構造の足場の組立て、解体又は変更の作業を
   行う場合は、足場の組立て等作業主任者を選任し、職務を遂行させるとともに、労働者の墜落によ
   る危険を防止するための措置を講ずること。
  (4) 足場の高さが5メートル未満である等足場の組立て等作業主任者の選任を要しない場合であって、
   墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、作業を指揮する者を指名して、その者に直
   接作業を指揮させるとともに、あらかじめ作業の方法及び順序を労働者に周知させること。
 3 重機等を用いた作業に労働者を従事させる場合
  (1) 地震や津波の影響により地盤が緩んでいる等不安定な場所において作業を行う場合には、敷鉄板
   の敷設等により、移動式クレーン等の転倒防止を図ること。
  (2) 移動式クレーンの運転については、運転士免許を受けた者、技能講習を修了した者等必要な資格
   を有する者に行わせること。
 4 爆発又は火災の危険がある作業に労働者を従事させる場合
  (1) 多量の易燃性の物又は危険物が存在して爆発又は火災の危険がある船体に近接した場所において
   は、アーク溶接機等火花、アークを発する等により点火源となるおそれのある機械等又は火気を使
   用しないこと。
  (2) 重油、潤滑油等危険物以外の引火性の油類や危険物が存在するおそれのある船体部分については、
   あらかじめ、引火性の油類や危険物を除去する等爆発又は火災の防止のための措置を講じた後でな
   ければ、溶接、溶断その他火気を使用する作業や火花を発するおそれのある作業をさせないこと。
  (3) 爆発又は火災の危険がある場所には、火気の使用を禁止する旨の適当な表示をし、特に危険な場
   所には、必要でない者の立入りを禁止すること。
  (4) 喫煙所その他火気を使用する場所には、火災予防上必要な設備を設けるとともに、火気を使用し
   た者には確実に残火の始末をさせること。
  (5) 溶断等の作業に当たる場合は、作業を開始するとき及び当該作業中断時、作業箇所及びその周辺
   における引火性の物の蒸気又は可燃性ガスの濃度を測定すること。
 5 船室等の密閉された空間に入る場合には、一時的に酸素が欠乏している可能性があることから、あ
  らかじめ酸素濃度を測定し、必要に応じて換気を行う、又は空気呼吸器等を使用すること。
 6 1から5までの労働安全衛生法に基づく事項に加え、次の(1)から(3)の事項について、その適切な実
  施を図ること。
  (1) 作業の方法及び順序等が示された作業計画を作成し、その作業計画に従って作業を行うこと。
  (2) 陸地に打ち上げられた船舶を移動させずにその場で解体等作業を行う場合には、作業中に当該船
   舶が横転等しないよう、適切に固定してから作業を開始すること。
  (3) 夏場の解体等作業においては、熱中症を発症するおそれがあることから、平成21年6月19日付け基
   発第0619001号「職場における熱中症の予防について」に基づく熱中症予防対策を講じること。
 
第2 石綿関連作業に関する実施事項
 1 全ての船舶の解体等作業に係る事項
   全ての船舶の解体等作業においては次を行うこと。
  (1) 石綿等を取り扱う作業の場合
   ア 石綿作業主任者技能講習を修了した者のうちから、石綿作業主任者を選任し、その者に次の事
    項を行わせること。
   (ア) 作業に従事する労働者が石綿等の粉じんにより汚染され、又はこれらを吸入しないように、
    作業の方法を決定し、労働者を指揮すること。
   (イ) 保護具の使用状況を監視することを行わせること。
   イ 石綿等の粉じんを吸入することによる労働者の健康障害を予防するため、同時に就業する労働
    者の人数と同数以上の呼吸用保護具を備え、常時有効かつ清潔に保持すること。
   ウ 作業場には、関係者以外の者が立ち入ることを禁止し、かつ、その旨を見やすい箇所に表示す
    ること。
   エ 洗眼、洗身又はうがいの設備、更衣設備及び洗濯のための設備を設けること。
   オ 作業に使用した器具、工具、足場等について、付着した物を除去した後でなければ作業場外に
    持ち出してはならないこと。(廃棄のため容器等に梱包したものを除く。)
   カ 作業場では労働者が禁煙し、又は飲食することを禁止し、かつ、その旨を当該作業場の見やす
    い箇所に表示しなければならないこと。
   キ 作業場には、人体に及ぼす作用、取扱い上の注意事項及び使用すべき保護具について、作業に
    従事する労働者が見やすい箇所に掲示しなければならないこと。
  (2) 石綿等の切断、穿孔、研磨等の作業、石綿等を塗布し、注入し、又は張り付けた物の解体等の作
    業がある場合
   ア 労働者に呼吸用保護具を使用させること。
   イ 散水等により、石綿等を湿潤な状態のものとすること。(湿潤化が著しく困難な場合を除く。)
  (3) 石綿等を常時取り扱う作業に労働者を従事させる場合
   ア 当該作業場以外の場所に休憩室を設置すること。
   イ アで設置した休憩室の床等については、水洗する等粉じんの飛散しない方法によって、毎日一
    回以上、掃除を行うこと。
   ウ 1月を超えない期間ごとに作業の記録を作成し40年間保存すること。
   エ 労働者に対し石綿健康診断を実施し、その記録を作成し40年間保存すること。
 2 鋼製の船舶の解体等作業に係る事項
   鋼製の船舶の解体等作業を行う場合、1に加え、次の事項を行うこと。
  (1) 事前調査
    石綿等の使用の有無の調査結果を記録するとともに、調査の結果を作業に従事する労働者が見や
   すい場所に掲示すること。
  (2) 作業計画の作成
    (1)の結果、石綿等が使用されている場合、石綿等による労働者の健康障害を防止するため、あら
   かじめ、作業計画を定め、当該作業計画により作業を行うこと。
  (3) 特別教育
    作業に就かせる労働者に対し、当該業務に関する特別教育を実施すること。
  (4) 1及び2の(1)から(3)までの労働安全衛生法に基づく事項に加え、次のアからオの事項について、
   その適切な実施を図ること。
   ア 作業内容の届出
     次のいずれかの作業に該当する場合は、あらかじめ、石綿則様式第1号に規定する内容及び当
    該作業に係る船舶の概要を示す図面を、当該事業場の所在地(解体現場)を管轄する労働基準監
    督署長に届け出ること。なお、図面については、船舶の形状と作業を行う場所等を示した簡易
    なもので差し支えないこと。
   (ア) 吹き付け石綿の除去作業
   (イ) 保温材、耐火被覆材、断熱材の除去作業
   (ウ) 吹き付け石綿が損傷劣化等により粉じんを発散させ、及び労働者がその粉じんにぱく露する
     おそれがある場合の封じ込め、囲い込みの作業
   イ 隔離等
     次の場合の作業場所を、それ以外の作業を行う場所から隔離、集じん・排気装置の設置、負圧
    化、前室設置等(以下「隔離等」という。)の措置を行うこと。ただし、当該措置と同等以上の効
    果を有する措置を講じたときは、この限りではないこと。
   (ア) アの(ア)の作業
   (イ) アの(イ)の作業のうち、石綿等の切断等を伴う作業
   (ウ) アの(ウ)の作業(ただし、囲い込みの作業にあっては、石綿等の切断等の作業を伴う作業)
   ウ 石綿含有断熱材が使用されている配管や機械類の適切な廃棄
     断熱材に石綿が使われている配管や機械類(以下「配管等」という。)の廃棄においては、上記
    アの(イ)の作業のうち、上記イの隔離等の措置を要しない場合(上記イただし書きを含む。)、原
    則的に船舶上で断熱材を除去することは避け、船舶から配管等を、グローブバッグ、ビニール、
    テープ等を用いて断熱材を覆った上でそのまま外すこと。その際、適切な保護具を使用すること。
   エ 作業者以外の立入禁止等
     石綿等を切断等しない場合であっても、作業を行う労働者以外の者が作業場所に立ち入ること
    を禁止し、かつ、その旨を労働者及び周囲の住民にわかりやすい場所に掲示すること。
   オ 壁等に石綿等が吹き付けられた鋼製の船舶の解体等作業を行う場合の措置
   (ア) 電動ファン付き呼吸用保護具等の使用
      船舶内において、上記イにより隔離を行った作業場所で、吹き付けられた石綿等を除去する
     に当たっては、労働者に電動フアン付き呼吸用保護具又はこれと同等以上の性能を有する送気
     マスク等を使用させること。
   (イ) 吹き付け石綿が損傷等している場合の除去等
      改修に当たって、吹き付けられた石綿が損傷・劣化等により就業する労働者が石綿等にばく
     露するおそれがある場合、除去、封じ込め又は囲い込みを行うこと。