地下駐車場等に使用される二酸化炭素消火設備の点検作業等における労働災害の防止について

基安労発0416第1号
令和3年4月16日
都道府県労働局労働基準部長 殿
厚生労働省労働基準局安全衛生部
労働衛生課長

地下駐車場等に使用される二酸化炭素消火設備
の点検作業等における労働災害の防止について

 令和3年4月15日に東京都新宿区のマンションの地下駐車場において、二酸化炭素を消火剤とする不活性
ガス消火設備(以下「二酸化炭素消火設備」という。)から二酸化炭素が放出され、地下駐車場内に充満し
たことにより、死亡者4名を含む6名が被災する災害が発生したところである。
 本件災害の発生原因については調査中であり、現時点では明らかとなっていないが、昨年12月には愛知
県名古屋市、本年1月には東京都港区においても同種の労働災害が発生しているところであり、類似の二
酸化炭素消火設備が設置された建築物における同種災害の防止を図る必要がある。
 このような状況を踏まえ、令和3年4月15日付けにて消防庁予防課長から各都道府県消防防災主幹部長及
び東京消防庁・各指定都市消防長あて別添1のとおり注意喚起がなされたところであるが、二酸化炭素消
火設備の点検作業等に伴う労働災害の防止に当たっては、適切な安全衛生管理体制のもと、想定されるリ
スクに応じた対策を講ずることが必要であることから、点検作業等に関係する者が留意すべき事項を下記
のとおり定めたので、別添1に加え、下記に留意の上、二酸化炭素消火設備の点検作業等における労働災
害防止に万全を期すよう、管内の関係団体及び事業者に対する周知に遺漏なきを期されたい。
 なお、関係業界団体に対しては、本日付で別添2により要請を行っているので了知されたい。
1 二酸化炭素消火設備の点検に当たっての基本的な考え方
  マンションの地下駐車場等の消火設備として使用される二酸化炭素消火設備については、火災が発生
 した区域をシャッター等により外気と遮断し、短時間で内部を二酸化炭素等の不活性ガス(以下「二酸
 化炭素等」という。)で充満させることにより、火災の消火を図ることを目的としているため、一般に
 二酸化炭素等が高圧な状態で使用されている。
  このため、点検作業等の際の誤作動や誤操作により、二酸化炭素等が放出された場合、高濃度の二酸
 化炭素には毒性(麻酔性)があるほか、作業場所の酸素濃度が急激に低下するおそれがあるため、点検作
 業時の有資格者の立会や二酸化炭素消火設備の適切な取扱いなど、消防関係法令等に基づく措置に加え、
 以下に掲げる事項に留意の上、適切な安全衛生管理体制のもと、定められた手順に沿った作業を実施す
 ることが重要である。

2 関係事業者等の責務
 (1) 共通事項
  ア 二酸化炭素消火設備の点検作業等の発注者となる駐車場等の施設管理者、点検作業等を請け負う
   元方事業者、点検作業等を直接担当する関係請負人それぞれが役割に応じ、労働安全衛生関係法令
   を遵守するとともに、作業に応じた具体的な労働災害防止措置、緊急事態発生時の適切な対応等を
   行うこと。
  イ 一般に二酸化炭素消火設備の点検作業等は作業期間が短期間であることから、発注者(施設管理
   者)、元方事業者及び各関係請負人それぞれの役割を明確にするとともに、作業の目的、内容、手
   順等を作業に当たる者に予め十分理解させた上で作業を行わせること。
 (2) 発注者(施設管理者)が実施すべき事項
  ア 点検作業等の対象施設や設備の構造、取扱上の留意点に関する情報について、下記3により元方
   事業者に対して共有すること。
  イ 発注に当たっては、安全で衛生的な作業の遂行を損なうおそれのある条件を付さないよう配慮す
   ること。
 (3) 元方事業者が実施すべき事項
  ア 労働災害防止上必要な安全衛生管理体制の確保や労働者の負傷や健康障害を防止するために必要
   な措置の実施など、労働災害を防止するための事業者責任を全うする能力を有する事業者に仕事を
   請け負わせること。
  イ 発注者(施設管理者)から提供を受けた上記(2)アの情報について、下記3により関係請負人に漏れ
   なく共有すること。
  ウ 上記イの情報等を踏まえ、点検作業等において想定される労働災害を防止するための措置も含め
   た作業計画を策定し、当該作業計画に基づき作業を行うこと。一般に点検作業等は作業期間が短期
   間であることから、作業計画の策定に当たっては、必要に応じ、関係請負人と役割分担のもと行う
   こと。
  エ 作業開始前の打合せ等の場を活用し、関係請負人との間及び関係請負人相互間における作業間の
   連絡・調整を確実に行うこと。
  オ 点検作業等を実施する作業場所において、作業を統括する者を選任し、上記エの連絡・調整を行
   わせること。
  カ 発注者(施設管理者)と連携の上、点検作業中に二酸化炭素消火設備又はその付近に関係者以外の
   者が立ち入ることがないような措置を講ずること。
  キ 仕事の一部を他の事業者に請け負わせる場合には、安全で衛生的な作業の遂行を損なうおそれの
   ある条件を付さないように配慮すること。
 (4) 関係請負人が実施すべき事項
  ア 上記(3)イにより共有された情報等を踏まえ、必要に応じ、元方事業者と役割分担のもと、点検
   作業等において想定される労働災害を防止するための措置も含めた作業計画を策定するとともに、
   具体的な作業手順を定め、当該作業計画や作業手順に基づき作業を行うこと。
  イ 元方事業者による作業間の連絡・調整の措置のうち、当該請負人に関する事項について、関係者
   に周知させ、これを確実に実施すること。
  ウ 点検作業等を実施する作業場所において、作業を統括する者との連絡・調整を担当する者を選任
   し、上記イの連絡・調整を行わせること。
  エ 請け負った仕事の一部を他の事業者に請け負わせる場合には、上記(3)アに留意の上、安全で衛
   生的な作業の遂行を損なうおそれのある条件を付さないように配慮するとともに、上記(3)イの情
   報について下記3により、仕事を請け負わせた関係請負人に漏れなく共有すること。

3 作業を安全に実施するための必要な情報の共有
 (1) 安全衛生教育や作業開始前のミーティングなどの機会を捉え、二酸化炭素の人体に対する危険性や
  二酸化炭素消火設備の適正な取扱方法、作業手順、緊急事態発生時の避難方法など、点検作業等の実
  施に当たって必要な情報を関係事業者及びその労働者に周知しておくこと。
 (2) 点検作業等の対象施設や設備の構造、取扱上の留意点に関する情報について、作業依頼書や作業指
  示書等に明示するなどにより、関係請負人の作業者まで漏れなく共有すること。

4 点検作業等の際の連絡方法の確立
  一般に二酸化炭素消火設備は、消火装置の操作を行う場所と二酸化炭素等の容器が設置されている場
 所が離れている場合が多いため、点検作業及び点検後の動作確認を安全に実施することができるような
 連絡方法を確立の上、作業に当たる者に周知しておくこと。

5 緊急時の対応
  二酸化炭素消火設備の誤作動や点検作業中の誤操作等により、二酸化炭素等が放出された場合の対応
 (避難経路、救護方法、保護具、救急連絡体制等)について、予め関係者が協議の上定め、点検作業等に
 当たる者に周知しておくこと。



参考

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