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別添
基発第477号
昭和51年6月23日
別添の2に掲げる関係業界団体の長 殿
労働省労働基準局長

エポキシ樹脂の硬化剤による健康障害の防止について

 最近、エポキシ樹脂の硬化剤を製造し、又は取り扱う作業に従事する労働者の間に汎発性強皮症と思われる健康障害及び接触性の皮ふ炎等が発生しております。御承知のとおり、エポキシ樹脂は広く使用され、かつ、その生産量は大幅に伸びておりますので、今後、同種の健康障害の多発が危具されているところであります。
 つきましては、・関係労働者の硬化剤による健康障害を防止するため、今般、下記の基準を定めましたので、貴会傘下の関係事業場に対し、その周知徹底を図るとともに、所要の指導及び援助を行われるよう要請します。
 なお、上記に関してとられた措置について、ご報告下さるようあわせて要講します。
エポキシ樹脂の硬化剤による健康障害の防止のための基準
1 有害性の低い硬化剤への代替
硬化剤として用いられる脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン及び脂環式ポリアミンは、有害性が高いので、できる限り酸無水物、変性脂肪族ポリアミン等で比較的有害性の低いものに代替すること。

2 作業環境の改善
(1) 硬化剤を製造し、又は取り扱う作業(エポキシ樹脂と硬化剤との混合物(硬化したものを除く。)を取り扱う作業を含む。以下「関係作業」という。)を行う作業場所(以下「作業場所」という。)ぱ、これ以外の作業の場所と区画すること。
(2) 関係作業は、できる限り自動化すること。なお、混合工程、加熱工程等関係設備の密閉化が可能なものについては、密閉構造のものとすること。
(3) 混合工程、注入工程、塗布工程、接着工程、加熱工程等における硬化剤の蒸気の発散源には、制御風速0.5m/秒以上の局所排気装置を設け、関係作業中は有功に稼動させること。
 なお、加熱工程の蒸気の発散源には、ブース式フード又は囲い式フードによる局所排気装置を設けること。

3 作業方法の改善
 硬化剤又はエポキシ樹脂と硬化剤との混合物(以下「硬化剤等」という。)を直接手で取り扱うような作業方法は、避けること。

4 保護具の装着等
関係作業に従事する労働者には、次により保護具等を使用させること。
(1) ゴム製等不浸透性の手袋、前掛等を使用すること。
 なお、手袋の着用に当たっては、手の皮ふからの発汗により皮ふ組織が膨張するため、極く微量の硬化剤等が手袋の中に入った場合でも皮ふ障害を起こすおそれがあるので、あらかじめ手袋の下に木綿の薄い手袋を着用すること。また、硬化剤等によって汚染された手袋で顔、首等に触わらないようにすること。
(2) 手、腕等硬化剤等及び蒸気に接触するおそれのある身休の部分には、保護クリームを塗布することが望ましいこと。

5 作業場所の清掃等
(1) 硬化剤等を取り扱う作業台には、紙製等のテーブルカバーを敷き、硬化剤等で汚染された場合には新しいものと取り替えること。
(2) 作業場所については、作業終了後清掃を行い、当該清掃に用いたぼろ布等は廃棄すること。なお、作業場等に付着した硬化剤等を除去する場合には、できる限り有機溶剤を使用しないこと。おって清掃を行う場合には、前記4の措置を講ずること。
(3) 上記(1)及び(2)に用いたテーブルーカバー、ぼろ布等は、不侵透性の袋の中に入れ、かつ、関係作業中はふたのある容器に保管しておき、作業終了後に当該袋を焼却すること。

6 清潔の保持
(1) 作業衣が硬化剤等で汚染された場合には、速かに汚染を除去し、かつ、関係作業の終了後十分に洗うこと。
 なお、作業衣は、硬化剤等で汚染された箇所がわかるよう明るい色のものを使用すること。
(2) 保護具は、常に清潔なものを使用すること。なお、硬化剤等で汚染した手袋を素手で洗うことにより、当該手袋に付着している硬化剤等が手、腕等の皮ふに付着するおそれがあるので、手袋は、作業終了後に着用したままで石けん及び温水に用いて洗うこと。
(3) 作業中に硬化剤等で皮ふが汚染された場合には、中性石けんを用いて洗うこと。なお、昼食、休憩、用便等のため作業を中断する際及び作業終了後も同様とすること。

7 教育
 新たに関係作業につかせるとき、又は使用する硬化剤の成分を変更するときは、あらかじめ次の事項について関係労働者に対して教育を行うこと。
(1) 硬化剤の有害性
(2) 適切な作業方法及び作業手順
(3) 保護具の装着方法、作業場所の清掃及び清潔の保持

8 取扱い責任者の選任
 関係作業を行う場合は、硬化剤等の有害性及び安全な作業方法について十分な知識を有する者を取扱い責任者に選任し、その者に次の事項を行わせること。
(1) 関係作業中、1日1回以上、作業場所を巡回して作業の実施方法、作業場所の汚染の状態及び保護具の使用状況を監祝し、適切な指示を行うこと。
(2) 前記2の(3)の局所排気装置の点検を行うこと。
9 皮ふ障害等の有無の調査
 作業を開始するとき及び作業終了後に関係労働者の皮ふ障害の有無及び関節痛等の自覚症状の有無を調査すること。

10 表示等
 硬化剤を製造する者又は輸入する者は、含有する主な成分(別添の1に掲げる区分)及び取扱い上の注意事項を容器等に表示するとともに、その有害性及び詳細な取扱い上の注意事項に関する資料を作成配布して、関係ユーザー等に対し適切な指導を行うこと。

11 その他
(1) 硬化剤等による健康障害が発生した場合には、すみやかに所轄労働基準監督署に届け出ること。
(2) 関係作業に有機溶剤を用いる場合には、当該有機溶剤による関係労働者の健康障害を防止するため、有機溶剤中毒予防規則に基づく措置を講ずること。