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別添1
                              土止め先行工法に関するガイドライン


第1 目的
    本ガイドラインは、労働安全衛生関係法令と相まって、土止め先行工法による適切な土止め支保工
   等を設けることにより、地山の崩壊又は土石の落下を防止し、もって小規模な溝掘削作業又は溝内作
   業を伴う上下水道等工事における労働災害の防止を図ることを目的とする。

第2 適用対象
  本ガイドラインは、管きょの敷設等のために小規模な溝掘削作業を伴う上下水道等工事に適用する。

第3 用語の定義
    本ガイドラインで使用する主要な用語の定義は、労働安全衛生関係法令において規定されているも
   ののほか、次による。
 1 上下水道等工事
    上水道、下水道、電気通信施設、ガス供給施設等の建設工事をいう。
 2 小規模な溝掘削作業
     掘削深さが概ね1.5メートル以上4メートル以下で、掘削幅がおおむね3メートル以下の溝をほぼ鉛直
   に掘削する作業をいい、掘削方法は機械掘削又は手掘りのいずれも含む。
  3 溝内作業
     管きょの敷設、測量、点検、締固め等溝内に立ち入って行う作業(掘削作業を除く。)をいう。
 4 土止め支保工等
    土止め支保工に加え、矢板工法による腹おこしや切りばり等の支保を有しない自立した土止め壁等を
  含めたものをいう。
  5 土止め先行工法
    上下水道等工事において、溝掘削作業及び溝内作業を行うに当たって、労働者が溝内に立ち入る前に
   適切な土止め支保工等を先行して設置する工法であり、かつ、土止め支保工等の組立て又は解体の作業
   も原則として労働者が溝内に立ち入らずに行うことが可能な工法をいう。
  6 土止め支保工等の組立て又は解体の作業
     土止め支保工の切りばり又は腹おこしの取付け又は取りはずしの作業に加え、矢板の建込み又は引き
   抜き作業等土止め支保工等に係るすべての部材の取付け又は取りはずしの作業を含めたものをいう。
  7 土砂崩壊災害
     地山の崩壊又は土石の落下による労働災害をいう。

第4 事業者等の責務
     上下水道等工事を行う事業者は、労働安全衛生関係法令を遵守するとともに、本ガイドラインに基づ
   き土止め先行工法による適切な土止め支保工等を設置することにより、上下水道等工事における労働災
   害の防止に努めるものとする。
     上下水道等工事に従事する労働者は、労働安全衛生関係法令に定める労働者が守るべき事項を遵守す
   るとともに、事業者が本ガイドラインに基づいて行う措置に協力することにより、上下水道等工事にお
   ける労働災害の防止に努めるものとする。

第5 講ずべき内容
 1 土止め先行工法に係る施工計画の策定
   事業者は、小規模な溝掘削作業を伴う上下水道等工事を行う場合は、次により、溝掘削を行う作業箇
  所等に係る事前調査を行うとともに、土止め計画、作業計画、仮設備計画、安全衛生管理計画及び工程
  表を作成することにより、土止め先行工法に係る施工計画を策定し、関係労働者に周知すること。
   (1)  事前調査
   ア 地山の調査
         溝掘削を行う作業箇所及びその周辺の地山等に関する次の事項について、現地踏査、過去の工
       事履歴の収集、地中埋設物の所有者への確認、ボーリング等の方法により調査を行い、これらの
       状態を把握すること。
      (ア)形状、地質及び地層の状態
     (イ)き裂、含水、湧水及び凍結・凍上の有無及び状態
     (ウ)埋設物等の有無及び状態
     (エ)高温のガス及び蒸気の有無及び状態
   イ 周囲の調査
         作業箇所周辺の道路、建築物、架空電線等溝掘削及び土止め支保工等の組立て又は解体の作業
       により影響を及ぼすおそれのあるものに関して、また、作業箇所周辺の交通量、交通規制等施工
       に影響を及ぼすおそれのあるものに関して、現地踏査等の方法により調査を行い、これらの状態
       を把握すること。
   ウ 計画への適応
         (2)以下の計画の作成に当たっては、ア及びイの調査結果に適応したものとすること。
   (2)  土止め計画
      ア 土止め支保工等の選定
         本ガイドラインの「別紙」を参考にして、(1)の事前調査の結果に適応した土止め支保工等の
       工法を選定し、当該工法に応じた土止め計画を作成すること。
   イ 構造
         土止め支保工等は、地山の形状、地質、地層、き裂、降水による地表面からの水の流入、含水、
       湧水、凍結・凍上及び埋設物等の状態に応じた堅固な構造となるよう計画すること。
   ウ 設計
          土止め支保工等の設計に当たっては、土止め支保工等に作用する土圧、水圧のほか、機械、掘
        削土砂等の上載荷重、支保工部材の自重、地震荷重等を計算等により適切に設定すること。
   エ 部材等の確保
         土止め支保工等の構造に応じた使用部材の種類と量を確認するとともに、土止め支保工等の組
       立て又は解体の作業に必要な機械等を確認し、必要となる時期までに確保できるよう計画するこ
       と。
   オ 機械の使用
         土止め支保工等の組立て又は解体の作業に移動式クレーン、車両系建設機械等を使用する場合
       は、それらの機械による作業方法、運行経路等が明らかになるよう計画すること。
   カ 埋設物等の防護
         埋設物等について防護し、又は移設を行う等の必要がある場合は、その方法、時期等を土止め
       計画に示すこと。
   キ 組立図
         土止め支保工等の各部材の配置、寸法及び材質並びに取付けの時期及び順序が明記された組立
       図を作成すること。
  ク 点検
       土止め支保工等の点検及び補修に関して、その方法、時期等を土止め計画に示すこと。
        なお、点検項目は次の事項を含むものとすること。
   (ア)部材の損傷、変形、変位及び脱落の有無及び状態
   (イ)切りばりの緊圧の度合
   (ウ)部材の接続部、取付け部及び交さ部の状態
   (3)  作業計画
   ア 溝掘削作業
         (1)の事前調査結果及び(2)により選定した土止め支保工等の工法に適応した溝掘削の作業方法
       を決定し、次の事項を明らかにした溝掘削に係る作業計画を作成すること。
        (ア)溝掘削を行うための機械の種類、能力及び必要台数
        (イ)(ア)の機械の搬出入経路、設置場所及び運行経路の詳細
        (ウ)機械掘削と同時に手掘りを行う場合のそれぞれの作業範囲と作業方法
        (エ)(ア)の機械の運転中に立入禁止措置等を行う場合の方法
        (オ)溝掘削作業と土止め支保工等の組立て又は解体の作業及び溝内作業の関連
     イ 土止め支保工等の組立て又は解体の作業
         (2)の土止め計画に基づいた土止め支保工等の組立て又は解体の作業と溝掘削作業及び溝内作業
       の関連を明らかにした作業計画を作成すること。
   ウ 溝内作業
          溝内作業について、次の事項を明らかにした作業計画を作成すること。
        (ア)溝内作業の種類及び内容
        (イ)溝内作業の種類ごとに労働者が溝内に立ち入る時期及び作業位置
        (ウ)溝内作業の種類ごとに使用する機械の種類、能力及び必要台数
        (エ)(ウ)の機械の搬出入経路、設置場所及び運行経路の詳細
        (オ)(ウ)の機械の運転中に立入禁止措置等を行う場合の方法
        (カ)溝内作業と溝掘削作業及び土止め支保工等の組立て又は解体の作業の関連
   (4)  仮設備計画
       溝掘削作業、土止め支保工等の組立て又は解体の作業及び溝内作業において次の事項に関する仮
     設備を設置するときは、それぞれの作業との関連を明らかにした仮設備計画を作成すること。
   ア 安全に昇降するための設備
   イ 溝内への墜落を防止するための設備
   ウ 作業箇所へ通ずるための通路
   エ 路面を覆工するための設備
   オ 分電盤、配線等電源を確保するための設備
   カ その他必要な仮設備
   (5)  安全衛生管理計画
       溝掘削作業、土止め支保工等の組立て又は解体の作業及び溝内作業の各工程に応じた労働災害防
     止対策及び次の事項を明らかにした安全衛生管理計画を作成すること。
   ア 安全衛生管理体制
   イ 安全衛生教育
   ウ 安全衛生点検及び安全衛生活動
   (6) 工程表
    溝掘削作業、土止め支保工等の組立て又は解体の作業及び溝内作業において次の事項を明らかに
   した工程表を作成すること。
   ア 各作業の順序、開始時期及び終了時期
   イ 各作業間の関連
   ウ 安全衛生管理に関する工程
 2 土止め先行工法に係る施工計画の実施及び変更
   事業者は、1で策定した土止め先行工法に係る施工計画に基づき、土止め先行工法による一連の作業
  を適切に実施すること。
    また、同施工計画を変更する必要が生じた場合は、事前に関係者と十分検討を行った後に変更を行い、
  変更した同施工計画は関係労働者へ確実に周知すること。

第6 土止め先行工法の実施に係る留意事項
  1 土止め支保工等の組立て又は解体の作業における留意事項
    事業者は、土止め先行工法による土止め支保工等の組立て又は解体の作業を行うときは、第5の1の(2)
  により作成した土止め計画に基づいて作業を行うとともに、次の事項に留意すること。
   (1)  部材
       土止め支保工等の部材は、適切に経年管理されたものを使用し、著しい損傷、変形又は腐食があ
     るものは使用しないこと。
   (2)  組立て
   ア 組立図による組立て
          土止め支保工等は、第5の1の(2)のキの組立図により組み立てること。
   イ 部材の取付け
         切りばり、腹おこし等の部材は、脱落を防止するため、矢板等に確実に取り付けること。
   ウ 矢板の設置
         矢板は、掘削深さ、土圧、降水による地表面からの水の流入、湧水、地質等を考慮して、軽量
       鋼矢板、縦ばりプレート等材質及び形状、寸法等を決定し、すき間のない壁面構造とするととも
       に、溝側への転倒及び変位を防止するための措置を講ずること。
   エ 腹おこしの設置
         腹おこしは、矢板に作用する土圧、作業性等を考慮して、材質、寸法等を決定し、矢板に密着
       させ、かつ、水平に設置すること。
   オ 切りばりの設置
         切りばりは、矢板及び腹おこしに作用する土圧、作業性等を考慮して、材質、寸法等及び水圧
       ジャッキ、油圧ジャッキ、切りばりサポート等の方式を決定し、腹おこしに対し直角、かつ、水
       平に設置すること。
   (3)  解体
   ア 切りばり及び腹おこしの取りはずし
         切りばり及び腹おこしを取りはずすときは、それらが取り付けられている位置まで埋め戻しが
       完了した後に行うこと。
   イ 矢板の引き抜き
         矢板を引き抜くときは、埋め戻しが完了した高さだけ引き抜くこと。
   (4)  作業全般
   ア 土止め支保工作業主任者の選任
         土止め支保工等の組立て又は解体の作業を行うときは、土止め支保工作業主任者を選任し、そ
       の者に作業を直接指揮させること。
   イ 溝内への立入禁止
          土止め支保工等の組立て又は解体の作業を行うときは、土砂崩壊災害を防止する専用の作業台
        等を使用する場合以外は、労働者を溝内に立ち入らせてはならないこと。
   ウ 関係労働者以外の立入禁止措置
         土止め支保工等の組立て又は解体の作業を行う箇所には、関係労働者以外の者が立ち入ること
       を禁止する措置を講ずること。
   エ 点検
         土止め支保工等を組み立てたときは、第5の1の(2)のクで定めた点検の方法等に基づき、点検を
       行い、異常を認めたときは、直ちに補修すること。
          また、点検の際には、土止め先行工法特有の部材、部品及び器具の状態について特に留意するこ
        と。
  2 溝掘削作業及び溝内作業における留意事項
    事業者は、溝掘削作業又は溝内作業を行うときは、第5の1の(3)により作成した作業計画に基づいて作
   業を行うとともに、次の事項に留意すること。
   (1)  溝掘削作業
     ア 地山の掘削作業主任者の選任
         溝掘削作業を行うときは、地山の掘削作業主任者を選任し、その者に作業を直接指揮させること。
   イ 手堀り作業
       (ア)手堀り作業の開始
          床均し、コーナー部の掘削等溝内での手堀り作業は、土止め支保工等を設置した後でなけれ
        ば行ってはならないこと。
       (イ)つり綱等の使用
          材料、器具等を上げ、又は下ろすときは、つり綱、つり袋等を労働者に使用させること。
       (ウ)昇降設備
          昇降するときは、第5の1の(4)により作成した仮設備計画に基づいて設置した昇降設備を使用
        させること。
   ウ 地山の点検
         溝掘削作業を行うときは、作業を開始する前及び作業を終了した後に、作業箇所及びその周辺の
       地山について、浮石及びき裂の有無及び状態並びに降水時の地表面の水の流れ、含水、湧水及び凍
       結・凍上の状態の変化を点検するとともに、次に示す地山の崩壊の兆候の有無及び状態について点
       検を行い、必要に応じて監視を継続すること。
    (ア)溝の肩の曲がり及び動き
     (イ)溝の背後地盤のき裂の発生及び広がり
      (ウ)岩地盤の新たなき裂の発生及び音の発生
      (エ)掘削側面の膨らみ及びせり出し
      (オ)掘削底面の隆起及び溝の背後地盤の沈下
      (カ)掘削底面への水と砂の湧き出し
     (キ)湧水量の増加及び湧水の濁り変化
      (ク)オーバーハング状態の発生
   エ 埋設物等
         埋設物等又はコンクリートブロック塀等の建設物に近接する場所での溝掘削作業は、第5の1の
       (2)により作成した土止め計画に基づいて防護等の対策を講じた後でなければ作業を行ってはなら
       ないこと。
   オ 保護帽
         溝掘削作業に従事する労働者に保護帽を着用させること。
   カ 照明
         溝掘削作業を行う場所について、照明施設を設置する等により必要な照度を保持すること。
   キ 排水
         溝掘削作業を行う場所に湧水がある場合は、集水のための釜場を設け、ポンプ等で排水を行うこ
       と。
   (2)  溝内作業
   ア 溝内作業の開始
         溝内作業は、土止め支保工等を設けた後でなければ行ってはならないこと。
   イ つり綱等の使用
         材料、器具等を上げ、又は下ろすときは、つり綱、つり袋等を労働者に使用させること。
   ウ 保護帽
         溝内作業に従事する労働者に保護帽を着用させること。
   エ 昇降設備
         昇降するときは、第5の1の(4)により作成した仮設備計画に基づいて設置した昇降設備を使用さ
        せること。
  3 機械の使用における留意事項
    事業者は、溝掘削作業、土止め支保工等の組立て又は解体の作業及び溝内作業において、移動式クレ
  ーン、車両系建設機械等の機械を使用する場合は、第5の1の(2)による土止め計画及び第5の1の(3)によ
  る作業計画で定めた運行経路及び作業方法等に基づいて適切に使用するとともに、次の点に留意するこ
  と。
   (1)  合図
       移動式クレーン、車両系建設機械等を使用するときは、一定の合図を定め、合図を行う者を指名し、
      その者に合図を行わせること。
   (2)  立入禁止措置
       移動式クレーンの旋回範囲内及び車両系建設機械等と接触するおそれのある箇所への立入禁止措置
      を講ずること。
   (3)  矢板等の引き抜き
       移動式クレーンを使用して、矢板等を引き抜く場合は、矢板等の引き抜き抵抗を考慮して、移動
      式クレーンの能力及び設置位置等を決定するとともに、昭和60年10月15日付け基発第595号「移動式
      クレーンを使用して行うくい抜き作業における安全対策について」に留意すること。
   (4)  矢板等の打込み
       ドラグ・ショベルを使用して、矢板等を打ち込む場合は、バケットによる押し込みで行い、バケッ
      トによる打撃は行わないこと。
   (5)  主たる用途以外の使用の制限
        土止め支保工等の組立て又は解体の作業及び溝内作業において、ドラグ・ショベルによる荷のつり
      上げ作業等車両系建設機械の主たる用途以外の使用に当たっては、労働安全衛生規則(昭和47年労働
      省令第32号)第164条によるほか、平成4年10月1日付け基発第542号「車両系建設機械を用いて行う荷
      のつり上げの作業時等における安全の確保について」に留意すること。