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(別添)

心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が構ずべき措置に関する指針

 労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第66条の10第7項の規定に基づき、心理的な負担の程度を把握す
るための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針を次の
とおり公表する。                                       

1 趣旨
  近年、仕事や職業生活に関して強い不安、悩み又はストレスを感じている労働者が5割を超える状況
 にある中、事業場において、より積極的に心の健康の保持増進を図るため、「労働者の心の健康の保持
 増進のための指針」(平成18年3月31日付け健康保持増進のための指針公示第3号。以下「メンタルヘル
 ス指針」という。)を公表し、事業場における労働者の心の健康の保持増進のための措置(以下「メンタ
 ルヘルスケア」という。)の実施を促進してきたところである。
  しかし、仕事による強いストレスが原因で精神障害を発病し、労災認定される労働者が、平成18年度
 以降も増加傾向にあり、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止することが益々重要な課題となって
 いる。
  こうした背景を踏まえ、平成26年6月25日に公布された「労働安全衛生法の一部を改正する法律」(平
 成26年法律第82号)においては、心理的な負担の程度を把握するための検査(以下「ストレスチェック」
 という。)及びその結果に基づく面接指導の実施を事業者に義務付けること等を内容としたストレスチ
 ェック制度が新たに創設された。
  また、この新たな制度の実施に当たっては、個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)の趣
 旨を踏まえ、特に労働者の健康に関する個人情報(以下「健康情報」という。)の適正な取扱いの確保を
 図る必要がある。
  本指針は、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号。以下「法」という。)第66条の10第7項の規定に基
 づき、ストレスチェック及び面接指導の結果に基づき事業者が講ずべき措置が適切かつ有効に実施され
 るため、ストレスチェック及び面接指導の具体的な実施方法又は面接指導の結果についての医師からの
 意見の聴取、就業上の措置の決定、健康情報の適正な取扱い並びに労働者に対する不利益な取扱いの禁
 止等について定めたものである。

2 ストレスチェック制度の基本的な考え方
  事業場における事業者による労働者のメンタルヘルスケアは、取組の段階ごとに、労働者自身のスト
 レスへの気付き及び対処の支援並びに職場環境の改善を通じて、メンタルヘルス不調となることを未然
 に防止する「一次予防」、メンタルヘルス不調を早期に発見し、適切な対応を行う「二次予防」及びメ
 ンタルヘルス不調となった労働者の職場復帰を支援する「三次予防」に分けられる。
  新たに創設されたストレスチェック制度は、これらの取組のうち、特にメンタルヘルス不調の未然防
 止の段階である一次予防を強化するため、定期的に労働者のストレスの状況について検査を行い、本人
 にその結果を通知して自らのストレスの状況について気付きを促し、個々の労働者のストレスを低減さ
 せるとともに、検査結果を集団ごとに集計・分析し、職場におけるストレス要因を評価し、職場環境の
 改善につなげることで、ストレスの要因そのものを低減するよう努めることを事業者に求めるものであ
 る。さらにその中で、ストレスの高い者を早期に発見し、医師による面接指導につなげることで、労働
 者のメンタルヘルス不調を未然に防止することを目的としている。
  事業者は、メンタルヘルス指針に基づき各事業場の実態に即して実施される二次予防及び三次予防も
 含めた労働者のメンタルヘルスケアの総合的な取組の中に本制度を位置付け、メンタルヘルスケアに関
 する取組方針の決定、計画の作成、計画に基づく取組の実施、取組結果の評価及び評価結果に基づく改
 善の一連の取組を継続的かつ計画的に進めることが望ましい。
  また、事業者は、ストレスチェック制度が、メンタルヘルス不調の未然防止だけでなく、従業員のス
 トレス状況の改善及び働きやすい職場の実現を通じて生産性の向上にもつながるものであることに留意
 し、事業経営の一環として、積極的に本制度の活用を進めていくことが望ましい。

3 ストレスチェック制度の実施に当たっての留意事項
  ストレスチェック制度を円滑に実施するためには、事業者、労働者及び産業保健スタッフ等の関係者
 が、次に掲げる事項を含め、制度の趣旨を正しく理解した上で、本指針に定める内容を踏まえ、衛生委
 員会又は安全衛生委員会(以下「衛生委員会等」という。)の場を活用し、互いに協力・連携しつつ、ス
 トレスチェック制度をより効果的なものにするよう努力していくことが重要である。
 ① ストレスチェックに関して、労働者に対して受検を義務付ける規定が置かれていないのは、メンタ
  ルヘルス不調で治療中のため受検の負担が大きい等の特別の理由がある労働者にまで受検を強要する
  必要はないためであり、本制度を効果的なものとするためにも、全ての労働者がストレスチェックを
  受検することが望ましい。
 ② 面接指導は、ストレスチェックの結果、高ストレス者として選定され、面接指導を受ける必要があ
  ると実施者が認めた労働者に対して、医師が面接を行い、ストレスその他の心身及び勤務の状況等を
  確認することにより、当該労働者のメンタルヘルス不調のリスクを評価し、本人に指導を行うととも
  に、必要に応じて、事業者による適切な措置につなげるためのものである。このため、面接指導を受
  ける必要があると認められた労働者は、できるだけ申出を行い、医師による面接指導を受けることが
  望ましい。
 ③ ストレスチェック結果の集団ごとの集計・分析及びその結果を踏まえた必要な措置は、労働安全衛
  生規則(昭和47年労働省令第32号。以下「規則」という。)第52条の14の規定に基づく努力義務である
  が、事業者は、職場環境におけるストレスの有無及びその原因を把握し、必要に応じて、職場環境の
  改善を行うことの重要性に留意し、できるだけ実施することが望ましい。

4 ストレスチェック制度の手順
  ストレスチェック制度に基づく取組は、次に掲げる手順で実施するものとする。
 ア 基本方針の表明
   事業者は、法、規則及び本指針に基づき、ストレスチェック制度に関する基本方針を表明する。
 イ ストレスチェック及び面接指導
  ① 衛生委員会等において、ストレスチェック制度の実施方法等について調査審議を行い、その結果
   を踏まえ、事業者がその事業場におけるストレスチェック制度の実施方法等を規程として定める。
  ② 事業者は、労働者に対して、医師、保健師又は厚生労働大臣が定める研修を修了した看護師若し
   くは精神保健福祉士(以下「医師等」という。)によるストレスチェックを行う。
  ③ 事業者は、ストレスチェックを受けた労働者に対して、当該ストレスチェックを実施した医師等
   (以下「実施者」という。)から、その結果を直接本人に通知させる。
  ④ ストレスチェック結果の通知を受けた労働者のうち、高ストレス者として選定され、面接指導を
   受ける必要があると実施者が認めた労働者から申出があった場合は、事業者は、当該労働者に対し
   て、医師による面接指導を実施する。
  ⑤ 事業者は、面接指導を実施した医師から、就業上の措置に関する意見を聴取する。
  ⑥ 事業者は、医師の意見を勘案し、必要に応じて、適切な措置を講じる。
 ウ 集団ごとの集計・分析
  ① 事業者は、実施者に、ストレスチェック結果を一定規模の集団ごとに集計・分析させる。
  ② 事業者は、集団ごとの集計・分析の結果を勘案し、必要に応じて、適切な措置を講じる。

5 衛生委員会等における調査審議
 (1) 衛生委員会等における調査審議の意義
   ストレスチェック制度を円滑に実施するためには、事業者、労働者及び産業保健スタッフ等の関係
  者が、制度の趣旨を正しく理解した上で、本指針に定める内容を踏まえ、互いに協力・連携しつつ、
  事業場の実態に即した取組を行っていくことが重要である。このためにも、事業者は、ストレスチェ
  ック制度に関する基本方針を表明した上で、事業の実施を統括管理する者、労働者、産業医及び衛生
  管理者等で構成される衛生委員会等において、ストレスチェック制度の実施方法及び実施状況並びに
  それを踏まえた実施方法の改善等について調査審議を行わせることが必要である。
 (2) 衛生委員会等において調査審議すべき事項
   規則第22条において、衛生委員会等の付議事項として「労働者の精神的健康の保持増進を図るため
  の対策の樹立に関すること」が規定されており、当該事項の調査審議に当たっては、ストレスチェッ
  ク制度に関し、次に掲げる事項を含めるものとする。また、事業者は、当該調査審議の結果を踏まえ、
  法令に則った上で、当該事業場におけるストレスチェック制度の実施に関する規程を定め、これをあ
  らかじめ労働者に対して周知するものとする。
  ① ストレスチェック制度の目的に係る周知方法
   ・ ストレスチェック制度は、労働者自身のストレスへの気付き及びその対処の支援並びに職場環
    境の改善を通じて、メンタルヘルス不調となることを未然に防止する一次予防を目的としており、
    メンタルヘルス不調者の発見を一義的な目的とはしないという趣旨を事業場内で周知する方法。
  ② ストレスチェック制度の実施体制
   ・ ストレスチェックの実施者及びその他の実施事務従事者の選任等ストレスチェック制度の実施
    体制。
     実施者が複数いる場合は、共同実施者及び実施代表者を明示すること。この場合において、当
    該事業場の産業医等が実施者に含まれるときは、当該産業医等を実施代表者とすることが望まし
    い。
     なお、外部機関にストレスチェックの実施の全部を委託する場合は、当該委託契約の中で委託
    先の実施者、共同実施者及び実施代表者並びにその他の実施事務従事者を明示させること(結果
    の集計業務等の補助的な業務のみを外部機関に委託する場合にあっては、当該委託契約の中で委
    託先の実施事務従事者を明示させること)。
  ③ ストレスチェック制度の実施方法
   ・ ストレスチェックに使用する調査票及びその媒体。
   ・ 調査票に基づくストレスの程度の評価方法及び面接指導の対象とする高ストレス者を選定する
    基準。
   ・ ストレスチェックの実施頻度、実施時期及び対象者。
   ・ 面接指導の申出の方法。
   ・ 面接指導の実施場所等の実施方法。
  ④ ストレスチェック結果に基づく集団ごとの集計・分析の方法
   ・ 集団ごとの集計・分析の手法。
   ・ 集団ごとの集計・分析の対象とする集団の規模。
  ⑤ ストレスチェックの受検の有無の情報の取扱い
   ・ 事業者による労働者のストレスチェックの受検の有無の把握方法。
   ・ ストレスチェックの受検の勧奨の方法。
  ⑥ ストレスチェック結果の記録の保存方法
   ・ ストレスチェック結果の記録を保存する実施事務従事者の選任。
   ・ ストレスチェック結果の記録の保存場所及び保存期間。
   ・ 実施者及びその他の実施事務従事者以外の者によりストレスチェック結果が閲覧されないため
    のセキュリティの確保等の情報管理の方法。
  ⑦ ストレスチェック、面接指導及び集団ごとの集計・分析の結果の利用目的及び利用方法
   ・ ストレスチェック結果の本人への通知方法。
   ・ ストレスチェックの実施者による面接指導の申出の勧奨方法。
   ・ ストレスチェック結果、集団ごとの集計・分析結果及び面接指導結果の共有方法及び共有範囲。
   ・ ストレスチェック結果を事業者へ提供するに当たっての本人の同意の取得方法。
   ・ 本人の同意を取得した上で実施者から事業者に提供するストレスチェック結果に関する情報の
    範囲。
   ・ 集団ごとの集計・分析結果の活用方法。
  ⑧ ストレスチェック、面接指導及び集団ごとの集計・分析に関する情報の開示、訂正、追加及び削
   除の方法
   ・ 情報の開示等の手続き。
   ・ 情報の開示等の業務に従事する者による秘密の保持の方法。
  ⑨ ストレスチェック、面接指導及び集団ごとの集計・分析に関する情報の取扱いに関する苦情の処
   理方法
   ・ 苦情の処理窓口を外部機関に設ける場合の取扱い。
     なお、苦情の処理窓口を外部機関に設ける場合は、当該外部機関において労働者からの苦情又
    は相談に対し適切に対応することができるよう、当該窓口のスタッフが、企業内の産業保健スタ
    ッフと連携を図ることができる体制を整備しておくことが望ましい。
  ⑩ 労働者がストレスチェックを受けないことを選択できること
   ・ 労働者にストレスチェックを受検する義務はないが、ストレスチェック制度を効果的なものと
    するためにも、全ての労働者がストレスチェックを受検することが望ましいという制度の趣旨を
    事業場内で周知する方法。
  ⑪ 労働者に対する不利益な取扱いの防止
   ・ ストレスチェック制度に係る労働者に対する不利益な取扱いとして禁止される行為を事業場内
    で周知する方法。

6 ストレスチェック制度の実施体制の整備
  ストレスチェック制度は事業者の責任において実施するものであり、事業者は、実施に当たって、実
 施計画の策定、当該事業場の産業医等の実施者又は委託先の外部機関との連絡調整及び実施計画に基づ
 く実施の管理等の実務を担当する者を指名する等、実施体制を整備することが望ましい。当該実務担当
 者には、衛生管理者又はメンタルヘルス指針に規定する事業場内メンタルヘルス推進担当者を指名する
 ことが望ましいが、ストレスチェックの実施そのものを担当する実施者及びその他の実施事務従事者と
 異なり、ストレスチェック結果等の個人情報を取り扱わないため、労働者の解雇等に関して直接の権限
 を持つ監督的地位にある者を指名することもできる。

7 ストレスチェックの実施方法等
 (1) 実施方法
  ア ストレスチェックの定義
    法第66条の10第1項の規定によるストレスチェックは、調査票を用いて、規則第52条の9第1項第1
   号から第3号までに規定する次の3つの領域に関する項目により検査を行い、労働者のストレスの程
   度を点数化して評価するとともに、その評価結果を踏まえて高ストレス者を選定し、医師による面
   接指導の要否を確認するものをいう。
   ① 職場における当該労働者の心理的な負担の原因に関する項目
   ② 心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目
   ③ 職場における他の労働者による当該労働者への支援に関する項目
  イ ストレスチェックの調査票
    事業者がストレスチェックに用いる調査票は、規則第52条の9第1項第1号から第3号までに規定す
   る3つの領域に関する項目が含まれているものであれば、実施者の意見及び衛生委員会等での調査
   審議を踏まえて、事業者の判断により選択することができるものとする。
    なお、事業者がストレスチェックに用いる調査票としては、別添の「職業性ストレス簡易調査票」
   を用いることが望ましい。
  ウ ストレスの程度の評価方法及び高ストレス者の選定方法・基準
   (ア) 個人のストレスの程度の評価方法
     事業者は、ストレスチェックに基づくストレスの程度の評価を実施者に行わせるに当たっては、
    点数化した評価結果を数値で示すだけでなく、ストレスの状況をレーダーチャート等の図表で分
    かりやすく示す方法により行わせることが望ましい。
   (イ) 高ストレス者の選定方法
     次の①又は②のいずれかの要件を満たす者を高ストレス者として選定するものとする。この場
    合において、具体的な選定基準は、実施者の意見及び衛生委員会等での調査審議を踏まえて、事
    業者が決定するものとする。
    ① 調査票のうち、「心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目」の評価点数の合計が高
     い者
    ② 調査票のうち、「心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目」の評価点数の合計が一
     定以上の者であって、かつ、「職場における当該労働者の心理的な負担の原因に関する項目」
     及び「職場における他の労働者による当該労働者への支援に関する項目」の評価点数の合計が
     著しく高い者
     実施者による具体的な高ストレス者の選定は、上記の選定基準のみで選定する方法のほか、選
    定基準に加えて補足的に実施者又は実施者の指名及び指示のもとにその他の医師、保健師、看護
    師若しくは精神保健福祉士又は産業カウンセラー若しくは臨床心理士等の心理職が労働者に面談
    を行いその結果を参考として選定する方法も考えられる。この場合、当該面談は、法第66条の10
    第1項の規定によるストレスチェックの実施の一環として位置付けられる。
  エ 健康診断と同時に実施する場合の留意事項
    事業者は、ストレスチェック及び法第66条第1項の規定による健康診断の自覚症状及び他覚症状
   の有無の検査(以下「問診」という。)を同時に実施することができるものとする。ただし、この場
   合において、事業者は、ストレスチェックの調査票及び健康診断の問診票を区別する等、労働者が
   受検・受診義務の有無及び結果の取扱いがそれぞれ異なることを認識できるよう必要な措置を講じ
   なければならないものとする。
 (2) 実施者の役割
   実施者は、ストレスチェックの実施に当たって、当該事業場におけるストレスチェックの調査票の
  選定並びに当該調査票に基づくストレスの程度の評価方法及び高ストレス者の選定基準の決定につい
  て事業者に対して専門的な見地から意見を述べるとともに、ストレスチェックの結果に基づき、当該
  労働者が医師による面接指導を受ける必要があるか否かを確認しなければならないものとする。
   なお、調査票の回収、集計若しくは入力又は受検者との連絡調整等の実施の事務については、必ず
  しも実施者が直接行う必要はなく、実施事務従事者に行わせることができる。事業者は、実施の事務
  が円滑に行われるよう、実施事務従事者の選任等必要な措置を講じるものとする。
 (3) 受検の勧奨
   自らのストレスの状況について気付きを促すとともに、必要に応じ面接指導等の対応につなげるこ
  とで、労働者がメンタルヘルス不調となることを未然に防止するためには、全ての労働者がストレス
  チェックを受けることが望ましいことから、事業者は、実施者からストレスチェックを受けた労働者
  のリストを入手する等の方法により、労働者の受検の有無を把握し、ストレスチェックを受けていな
  い労働者に対して、ストレスチェックの受検を勧奨することができるものとする。なお、この場合に
  おいて、実施者は、ストレスチェックを受けた労働者のリスト等労働者の受検の有無の情報を事業者
  に提供するに当たって、労働者の同意を得る必要はないものとする。
 (4) ストレスチェック結果の通知及び通知後の対応
  ア 労働者本人に対するストレスチェック結果の通知方法
    事業者は、規則第52条の12の規定に基づき、ストレスチェック結果が実施者から、遅滞なく労働
   者に直接通知されるようにしなければならない。この場合において、事業者は、ストレスチェック
   結果のほか、次に掲げる事項を通知させることが望ましい。
   ① 労働者によるセルフケアに関する助言・指導
   ② 面接指導の対象者にあっては、事業者への面接指導の申出窓口及び申出方法
   ③ 面接指導の申出窓口以外のストレスチェック結果について相談できる窓口に関する情報提供
  イ ストレスチェック結果の通知後の対応
   (ア) 面接指導の申出の勧奨
     ストレスチェックの結果、高ストレス者として選定され、面接指導を受ける必要があると実施
    者が認めた労働者のうち、面接指導の申出を行わない労働者に対しては、規則第52条の16第3項
    の規定に基づき、実施者が、申出の勧奨を行うことが望ましい。
   (イ) 相談対応
     事業者は、ストレスチェック結果の通知を受けた労働者に対して、相談の窓口を広げ、相談し
    やすい環境を作ることで、高ストレスの状態で放置されないようにする等適切な対応を行う観点
    から、日常的な活動の中で当該事業場の産業医等が相談対応を行うほか、産業医等と連携しつつ、
    保健師、看護師若しくは精神保健福祉士又は産業カウンセラー若しくは臨床心理士等の心理職が
    相談対応を行う体制を整備することが望ましい。
 (5) ストレスチェック結果の記録及び保存
   ストレスチェック結果の事業者への提供について、労働者から同意を得て、実施者からその結果の
  提供を受けた場合は、規則第52条の13第2項の規定に基づき、事業者は、当該ストレスチェック結果
  の記録を作成して、これを5年間保存しなければならない。
   労働者の同意が得られていない場合には、規則第52条の11の規定に基づき、事業者は、実施者によ
  るストレスチェック結果の記録の作成及び当該実施者を含む実施事務従事者による当該記録の保存が
  適切に行われるよう、記録の保存場所の指定、保存期間の設定及びセキュリティの確保等必要な措置
  を講じなければならない。この場合において、ストレスチェック結果の記録の保存については、実施
  者がこれを行うことが望ましく、実施者が行うことが困難な場合には、事業者は、実施者以外の実施
  事務従事者の中から記録の保存事務の担当者を指名するものとする。
   実施者又は実施者以外の実施事務従事者が記録の保存を行うに当たっては、5年間保存することが
  望ましい。
   なお、ストレスチェック結果の記録の保存方法には、書面による保存及び電磁的記録による保存が
  あり、電磁的記録による保存を行う場合は、厚生労働省の所管する法令の規定に基づく民間事業者等
  が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する省令(平成17年厚生労働省令第44号)に基
  づき適切な保存を行う必要がある。また、ストレスチェック結果の記録は「医療情報システムの安全
  管理に関するガイドライン」の直接の対象ではないが、事業者は安全管理措置等について本ガイドラ
  インを参照することが望ましい。

8 面接指導の実施方法等
 (1) 面接指導の対象労働者の要件
   規則第52条の15の規定に基づき、事業者は、上記7(1)ウ(イ)に掲げる方法により高ストレス者とし
  て選定された者であって、面接指導を受ける必要があると実施者が認めた者に対して、労働者からの
  申出に応じて医師による面接指導を実施しなければならない。
 (2) 対象労働者の要件の確認方法
   事業者は、労働者から面接指導の申出があったときは、当該労働者が面接指導の対象となる者かど
  うかを確認するため、当該労働者からストレスチェック結果を提出させる方法のほか、実施者に当該
  労働者の要件への該当の有無を確認する方法によることができるものとする。
 (3) 実施方法
   面接指導を実施する医師は、規則第52条の17の規定に基づき、面接指導において次に掲げる事項に
  ついて確認するものとする。
  ① 当該労働者の勤務の状況(職場における当該労働者の心理的な負担の原因及び職場における他の
   労働者による当該労働者への支援の状況を含む。)
  ② 当該労働者の心理的な負担の状況
  ③ ②のほか、当該労働者の心身の状況
   なお、事業者は、当該労働者の勤務の状況及び職場環境等を勘案した適切な面接指導が行われるよ
  う、あらかじめ、面接指導を実施する医師に対して当該労働者に関する労働時間、労働密度、深夜業
  の回数及び時間数、作業態様並びに作業負荷の状況等の勤務の状況並びに職場環境等に関する情報を
  提供するものとする。
 (4) 面接指導の結果についての医師からの意見の聴取
   法第66条の10第5項の規定に基づき、事業者が医師から必要な措置についての意見を聴くに当たっ
  ては、面接指導実施後遅滞なく、就業上の措置の必要性の有無及び講ずべき措置の内容その他の必要
  な措置に関する意見を聴くものとする。具体的には、次に掲げる事項を含むものとする。
  ア 下表に基づく就業区分及びその内容に関する医師の判断
就業区分 就業上の措置の内容
区分 内容
通常勤務 通常の勤務でよいもの
就業制限 勤務に制限を加える必要のあるもの メンタルヘルス不調を未然に防止するため、労働時間の短縮、出張の制限、時間外労働の制限、労働負荷の制限、作業の転換、就業場所の変更、深夜業の回数の減少又は昼間勤務への転換等の措置を講じる。
要休業 勤務を休む必要のあるもの 療養等のため、休暇又は休職等により一定期間勤務させない措置を講じる。
  イ 必要に応じ、職場環境の改善に関する意見
 (5) 就業上の措置の決定及び実施
   法第66条の10第6項の規定に基づき、事業者が労働者に対して面接指導の結果に基づく就業上の措
  置を決定する場合には、あらかじめ当該労働者の意見を聴き、十分な話し合いを通じてその労働者の
  了解が得られるよう努めるとともに、労働者に対する不利益な取扱いにつながらないように留意しな
  ければならないものとする。なお、労働者の意見を聴くに当たっては、必要に応じて、当該事業場の
  産業医等の同席の下に行うことが適当である。
   事業者は、就業上の措置を実施し、又は当該措置の変更若しくは解除をしようとするに当たっては、
  当該事業場の産業医等と他の産業保健スタッフとの連携はもちろんのこと、当該事業場の健康管理部
  門及び人事労務管理部門の連携にも十分留意する必要がある。また、就業上の措置の実施に当たって
  は、特に労働者の勤務する職場の管理監督者の理解を得ることが不可欠であることから、事業者は、
  プライバシーに配慮しつつ、当該管理監督者に対し、就業上の措置の目的及び内容等について理解が
  得られるよう必要な説明を行うことが適当である。
   また、就業上の措置を講じた後、ストレス状態の改善が見られた場合には、当該事業場の産業医等
  の意見を聴いた上で、通常の勤務に戻す等適切な措置を講ずる必要がある。
 (6) 結果の記録及び保存
   規則第52条の18第2項の規定に基づき、事業者は、面接指導の結果に基づき、次に掲げる事項を記
  載した記録を作成し、これを5年間保存しなければならない。なお、面接指導結果の記録の保存につ
  いて、電磁的記録による保存を行う場合は、7(5)の電磁的記録による保存を行う場合の取扱いと同様
  とする。
  ① 面接指導の実施年月日
  ② 当該労働者の氏名
  ③ 面接指導を行った医師の氏名
  ④ 当該労働者の勤務の状況
  ⑤ 当該労働者の心理的な負担の状況
  ⑥ その他の当該労働者の心身の状況
  ⑦ 当該労働者の健康を保持するために必要な措置についての医師の意見

9 ストレスチェック結果に基づく集団ごとの集計・分析及び職場環境の改善
 (1) 集団ごとの集計・分析の実施
   事業者は、規則第52条の14の規定に基づき、実施者に、ストレスチェック結果を一定規模の集団ご
  とに集計・分析させ、その結果を勘案し、必要に応じて、当該集団の労働者の実情を考慮して、当該
  集団の労働者の心理的な負担を軽減するための適切な措置を講じるよう努めなければならない。この
  ほか、集団ごとの集計・分析の結果は、当該集団の管理者等に不利益が生じないようその取扱いに留
  意しつつ、管理監督者向け研修の実施又は衛生委員会等における職場環境の改善方法の検討等に活用
  することが望ましい。
   また、集団ごとの集計・分析を行った場合には、その結果に基づき、記録を作成し、これを5年間
  保存することが望ましい。
 (2) 集団ごとの集計・分析結果に基づく職場環境の改善
   事業者は、ストレスチェック結果の集団ごとの集計・分析結果に基づき適切な措置を講ずるに当た
  って、実施者又は実施者と連携したその他の医師、保健師、看護師若しくは精神保健福祉士又は産業
  カウンセラー若しくは臨床心理士等の心理職から、措置に関する意見を聴き、又は助言を受けること
  が望ましい。
   また、事業者が措置の内容を検討するに当たっては、ストレスチェック結果を集団ごとに集計・分
  析した結果だけではなく、管理監督者による日常の職場管理で得られた情報、労働者からの意見聴取
  で得られた情報及び産業保健スタッフによる職場巡視で得られた情報等も勘案して職場環境を評価す
  るとともに、勤務形態又は職場組織の見直し等の様々な観点から職場環境を改善するための必要な措
  置を講ずることが望ましい。このため、事業者は、次に掲げる事項に留意することが望ましい。
  ① 産業保健スタッフから管理監督者に対し職場環境を改善するための助言を行わせ、産業保健スタ
   ッフ及び管理監督者が協力しながら改善を図らせること。
  ② 管理監督者に、労働者の勤務状況を日常的に把握させ、個々の労働者に過度な長時間労働、疲労、
   ストレス又は責任等が生じないようにする等、労働者の能力、適性及び職務内容に合わせた配慮を
   行わせること。

10 労働者に対する不利益な取扱いの防止
  事業者が、ストレスチェック及び面接指導において把握した労働者の健康情報等に基づき、当該労働
 者の健康の確保に必要な範囲を超えて、当該労働者に対して不利益な取扱いを行うことはあってはなら
 ない。このため、事業者は、次に定めるところにより、労働者の不利益な取扱いを防止しなければなら
 ないものとする。
 (1) 法の規定により禁止されている不利益な取扱い
   法第66条の10第3項の規定に基づき、事業者は、労働者が面接指導の申出をしたことを理由とした
  不利益な取扱いをしてはならず、また、労働者が面接指導を受けていない時点においてストレスチェ
  ック結果のみで就業上の措置の要否及び内容を判断することはできないことから、事業者は、当然に、
  ストレスチェック結果のみを理由とした不利益な取扱いについても、これを行ってはならない。
 (2) 禁止されるべき不利益な取扱い
   次に掲げる事業者による不利益な取扱いについては、一般的に合理的なものとはいえないため、事
  業者はこれらを行ってはならないものとする。なお、不利益な取扱いの理由がそれぞれに掲げる理由
  以外のものであったとしても、実質的にこれらに該当するとみなされる場合には、当該不利益な取扱
  いについても、行ってはならないものとする。
  ア 労働者が受検しないこと等を理由とした不利益な取扱い
   ① ストレスチェックを受けない労働者に対して、これを理由とした不利益な取扱いを行うこと。
    例えば、就業規則においてストレスチェックの受検を義務付け、受検しない労働者に対して懲戒
    処分を行うことは、労働者に受検を義務付けていない法の趣旨に照らして行ってはならないこと。
   ② ストレスチェック結果を事業者に提供することに同意しない労働者に対して、これを理由とし
    た不利益な取扱いを行うこと。
   ③ 面接指導の要件を満たしているにもかかわらず、面接指導の申出を行わない労働者に対して、
    これを理由とした不利益な取扱いを行うこと。
  イ 面接指導結果を理由とした不利益な取扱い
   ① 措置の実施に当たり、医師による面接指導を行うこと又は面接指導結果に基づく必要な措置に
    ついて医師の意見を聴取すること等の法令上求められる手順に従わず、不利益な取扱いを行うこ
    と。
   ② 面接指導結果に基づく措置の実施に当たり、医師の意見とはその内容・程度が著しく異なる等
    医師の意見を勘案し必要と認められる範囲内となっていないもの又は労働者の実情が考慮されて
    いないもの等の法令上求められる要件を満たさない内容の不利益な取扱いを行うこと。
   ③ 面接指導の結果を理由として、次に掲げる措置を行うこと。
    (a) 解雇すること。
    (b) 期間を定めて雇用される者について契約の更新をしないこと。
    (c) 退職勧奨を行うこと。
    (d) 不当な動機・目的をもってなされたと判断されるような配置転換又は職位(役職)の変更を命
     じること。
    (e) その他の労働契約法等の労働関係法令に違反する措置を講じること。

11 ストレスチェック制度に関する労働者の健康情報の保護
  ストレスチェック制度において、実施者が労働者のストレスの状況を正確に把握し、メンタルヘルス
 不調の防止及び職場環境の改善につなげるためには、事業場において、ストレスチェック制度に関する
 労働者の健康情報の保護が適切に行われることが極めて重要であり、事業者がストレスチェック制度に
 関する労働者の秘密を不正に入手するようなことがあってはならない。このため、法第66条の10第2項
 ただし書の規定において、労働者の同意なくストレスチェック結果が事業者には提供されない仕組みと
 されている。このほか、事業者は、次に定めるところにより、労働者の健康情報の保護を適切に行わな
 ければならないものとする。
 (1) 実施事務従事者の範囲と留意事項
   規則第52条の10第2項の規定に基づき、ストレスチェックを受ける労働者について解雇、昇進又は
  異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者は、ストレスチェックの実施の事務に従事しては
  ならない。
   なお、事業者が、労働者の解雇、昇進又は異動の人事を担当する職員(当該労働者の解雇、昇進又
  は異動に直接の権限を持つ監督的地位にある者を除く。)をストレスチェックの実施の事務に従事さ
  せる場合には、次に掲げる事項を当該職員に周知させなければならないものとする。
  ① ストレスチェックの実施事務従事者には法第104条の規定に基づき秘密の保持義務が課されるこ
   と。
  ② ストレスチェックの実施の事務は実施者の指示により行うものであり、実施の事務に関与してい
   ない所属部署の上司等の指示を受けてストレスチェックの実施の事務に従事することによって知り
   得た労働者の秘密を漏らしたりしてはならないこと。
  ③ ストレスチェックの実施の事務に従事したことによって知り得た労働者の秘密を、自らの所属部
   署の業務等のうちストレスチェックの実施の事務とは関係しない業務に利用してはならないこと。
 (2) ストレスチェック結果の労働者への通知に当たっての留意事項
   規則第52条の12の規定に基づき、事業者は、実施者にストレスチェック結果を労働者に通知させる
  に当たっては、封書又は電子メール等で当該労働者に直接通知させる等、結果を当該労働者以外が把
  握できない方法で通知させなければならないものとする。
 (3) ストレスチェック結果の事業者への提供に当たっての留意事項
  ア 労働者の同意の取得方法
    ストレスチェック結果が当該労働者に知らされていない時点でストレスチェック結果の事業者へ
   の提供についての労働者の同意を取得することは不適当であるため、事業者は、ストレスチェック
   の実施前又は実施時に労働者の同意を取得してはならないこととし、同意を取得する場合は次に掲
   げるいずれかの方法によらなければならないものとする。ただし、事業者は、労働者に対して同意
   を強要する行為又は強要しているとみなされるような行為を行ってはならないことに留意すること。
   ① ストレスチェックを受けた労働者に対して当該ストレスチェックの結果を通知した後に、事業
    者、実施者又はその他の実施事務従事者が、ストレスチェックを受けた労働者に対して、個別に
    同意の有無を確認する方法。
   ② ストレスチェックを受けた労働者に対して当該ストレスチェックの結果を通知した後に、実施
    者又はその他の実施事務従事者が、高ストレス者として選定され、面接指導を受ける必要がある
    と実施者が認めた労働者に対して、当該労働者が面接指導の対象であることを他の労働者に把握
    されないような方法で、個別に同意の有無を確認する方法。
    なお、ストレスチェックを受けた労働者が、事業者に対して面接指導の申出を行った場合には、
   その申出をもってストレスチェック結果の事業者への提供に同意がなされたものとみなして差し支
   えないものとする。
  イ 事業者に提供する情報の範囲
    事業者へのストレスチェック結果の提供について労働者の同意が得られた場合には、実施者は、
   事業者に対して当該労働者に通知する情報と同じ範囲内の情報についてストレスチェック結果を提
   供することができるものとする。
    なお、衛生委員会等で調査審議した上で、当該事業場における事業者へのストレスチェック結果
   の提供方法として、ストレスチェック結果そのものではなく、当該労働者が高ストレス者として選
   定され、面接指導を受ける必要があると実施者が認めた旨の情報のみを事業者に提供する方法も考
   えられる。ただし、この方法による場合も、実施者が事業者に当該情報を提供するに当たっては、
   上記アの①又は②のいずれかの方法により、労働者の同意を取得しなければならないことに留意す
   る。
  ウ 外部機関との情報共有
    事業者が外部機関にストレスチェックの実施の全部を委託する場合(当該事業場の産業医等が共
   同実施者とならない場合に限る。)には、当該外部機関の実施者及びその他の実施事務従事者以外
   の者は、当該労働者の同意なく、ストレスチェック結果を把握してはならない。なお、当該外部機
   関の実施者が、ストレスチェック結果を委託元の事業者の事業場の産業医等に限定して提供するこ
   とも考えられるが、この場合にも、緊急に対応を要する場合等特別の事情がない限り、当該労働者
   の同意を取得しなければならないものとする。
  エ 事業場におけるストレスチェック結果の共有範囲の制限
    事業者は、本人の同意により事業者に提供されたストレスチェック結果を、当該労働者の健康確
   保のための就業上の措置に必要な範囲を超えて、当該労働者の上司又は同僚等に共有してはならな
   いものとする。
 (4) 集団ごとの集計・分析の結果の事業者への提供に当たっての留意事項
  ア 集団ごとの集計・分析の最小単位
    集団ごとの集計・分析を実施した実施者は、集団ごとの集計・分析の結果を事業者に提供するに
   当たっては、当該結果はストレスチェック結果を把握できるものではないことから、当該集団の労
   働者個人の同意を取得する必要はない。ただし、集計・分析の単位が少人数である場合には、当該
   集団の個々の労働者が特定され、当該労働者個人のストレスチェック結果を把握することが可能と
   なるおそれがあることから、集計・分析の単位が10人を下回る場合には、集団ごとの集計・分析を
   実施した実施者は、集計・分析の対象となる全ての労働者の同意を取得しない限り、事業者に集計
   ・分析の結果を提供してはならないものとする。ただし、個々の労働者が特定されるおそれのない
   方法で集計・分析を実施した場合はこの限りでないが、集計・分析の手法及び対象とする集団の規
   模について、あらかじめ衛生委員会等で調査審議を行わせる必要があることに留意すること。
  イ 集団ごとの集計・分析の結果の共有範囲の制限
    集団ごとの集計・分析の結果は、集計・分析の対象となった集団の管理者等にとっては、その当
   該事業場内における評価等につながり得る情報であり、無制限にこれを共有した場合、当該管理者
   等に不利益が生じるおそれもあることから、事業者は、当該結果を事業場内で制限なく共有しては
   ならないものとする。
 (5) 面接指導結果の事業者への提供に当たっての留意事項
   面接指導を実施した医師は、規則第52条の18第2項に規定する面接指導結果に関する情報を事業者
  に提供するに当たっては、必要に応じて情報を適切に加工することにより、当該労働者の健康を確保
  するための就業上の措置を実施するため必要な情報に限定して提供しなければならないこととし、診
  断名、検査値若しくは具体的な愁訴の内容等の生データ又は詳細な医学的情報は事業者に提供しては
  ならないものとする。
   なお、事業場の産業医等ではなく、外部の医師が面接指導を実施した場合、当該医師は、当該労働
  者の健康を確保するために必要な範囲で、当該労働者の同意を取得した上で、当該事業場の産業医等
  に対して生データ又は詳細な医学的情報を提供することができるものとする。

12 その他の留意事項等
 (1) 産業医等の役割
  ア ストレスチェック制度における産業医等の位置付け
    産業医は、法第13条並びに規則第13条第14条及び第15条の規定に基づき、事業場における労働
   者の健康管理等の職務を行う者であり、そのための専門的知識を有する者である。また、規則第15
   条の規定に基づき、事業者は、産業医に対し、労働者の健康障害を防止するための必要な措置を講
   じる権限を与えなければならないこととされている。このように、産業医は、事業場における労働
   者の健康管理等の取組の中心的役割を果たすことが法令上想定されている。
    このため、産業医がストレスチェック及び面接指導を実施する等、産業医が中心的役割を担うこ
   とが適当であり、ストレスチェック制度の実施責任を負う事業者は、産業医の役割についてイのと
   おり取り扱うことが望ましい。
    なお、事業場によっては、複数の医師が当該事業場における労働者の健康管理等の業務に従事し
   ており、その中で、産業医以外の精神科医又は心療内科医等が労働者のメンタルヘルスケアに関す
   る業務を担当している場合等も考えられるが、こうした場合においては、ストレスチェック制度に
   関して、当該精神科医又は心療内科医等が中心的役割を担うことも考えられる。
  イ 産業医等の具体的な役割
   @ ストレスチェックの実施
     ストレスチェックは当該事業場の産業医等が実施することが望ましい。なお、ストレスチェッ
    クの実施の全部を外部に委託する場合にも、当該事業場の産業医等が共同実施者となり、中心的
    役割を果たすことが望ましい。
   A 面接指導の実施
     面接指導は当該事業場の産業医等が実施することが望ましい。
   B 事業者による医師の意見聴取
     事業者は、法第66条の10第5項の規定に基づき、医師から必要な措置についての意見を聴くに
    当たって、面接指導を実施した医師が、事業場外の精神科医又は心療内科医等である場合等当該
    事業場の産業医等以外の者であるときは、当該事業者の事業場の産業医等からも面接指導を実施
    した医師の意見を踏まえた意見を聴くことが望ましい。
 (2) 派遣労働者に関する留意事項
  ア 派遣元事業者と派遣先事業者の役割
    派遣労働者に対するストレスチェック及び面接指導については、法第66条の10第1項から第6項
   までの規定に基づき、派遣元事業者がこれらを実施することとされている。
    一方、努力義務となっている集団ごとの集計・分析については、職場単位で実施することが重要
   であることから、派遣先事業者においては、派遣先事業場における派遣労働者も含めた一定規模の
   集団ごとにストレスチェック結果を集計・分析するとともに、その結果に基づく措置を実施するこ
   とが望ましい。
  イ 派遣労働者に対する就業上の措置に関する留意点
    派遣元事業者が、派遣労働者に対する面接指導の結果に基づき、医師の意見を勘案して、就業上
   の措置を講じるに当たっては、労働者派遣契約の変更が必要となること等も考えられることから、
   必要に応じて派遣先事業者と連携し、適切に対応することが望ましい。
 (3) 外部機関にストレスチェック等を委託する場合の体制の確認に関する留意事項
   ストレスチェック又は面接指導は、事業場の状況を日頃から把握している当該事業場の産業医等が
  実施することが望ましいが、事業者は、必要に応じてストレスチェック又は面接指導の全部又は一部
  を外部機関に委託することも可能である。この場合には、当該委託先において、ストレスチェック又
  は面接指導を適切に実施できる体制及び情報管理が適切に行われる体制が整備されているか等につい
  て、事前に確認することが望ましい。
 (4) 労働者数50人未満の事業場における留意事項
   常時使用する労働者数が50人未満の小規模事業場においては、当分の間、ストレスチェックの実施
  は努力義務とされている。これらの小規模事業場では、産業医及び衛生管理者の選任並びに衛生委員
  会等の設置が義務付けられていないため、ストレスチェック及び面接指導を実施する場合は、産業保
  健スタッフが事業場内で確保できないことも考えられることから、産業保健総合支援センターの地域
  窓口(地域産業保健センター)等を活用して取り組むことができる。

13 定義
  本指針において、次に掲げる用語の意味は、それぞれ次に定めるところによる。
 ① ストレスチェック制度
   法第66条の10に係る制度全体をいう。
 ② 調査票
   ストレスチェックの実施に用いる紙媒体又は電磁的な媒体による自記式の質問票をいう。
 ③ 共同実施者・実施代表者
   事業場の産業医等及び外部機関の医師が共同でストレスチェックを実施する場合等、実施者が複数
  名いる場合の実施者を「共同実施者」という。この場合の複数名の実施者を代表する者を「実施代表
  者」という。
 ④ 実施事務従事者
   実施者のほか、実施者の指示により、ストレスチェックの実施の事務(個人の調査票のデータ入力、
  結果の出力又は記録の保存(事業者に指名された場合に限る。)等を含む。)に携わる者をいう。
 ⑤ ストレスチェック結果
   調査票に記入又は入力した内容に基づいて出力される個人の結果であって、次に掲げる内容が含ま
  れるものをいう。
  ・ 職場における当該労働者の心理的な負担の原因に関する項目、心理的な負担による心身の自覚症
   状に関する項目及び職場における他の労働者による当該労働者への支援に関する項目について、個
   人ごとのストレスの特徴及び傾向を数値又は図表等で示したもの
  ・ 個人ごとのストレスの程度を示したものであって、高ストレスに該当するかどうかを示した結果
  ・ 医師による面接指導の要否
 ⑥ 集団ごとの集計・分析
   ストレスチェック結果を事業場内の一定規模の集団(部又は課等)ごとに集計して、当該集団のスト
  レスの特徴及び傾向を分析することをいう。
 ⑦ 産業医等
   産業医その他労働者の健康管理等を行うのに必要な知識を有する医師をいう。
 ⑧ 産業保健スタッフ
   事業場において労働者の健康管理等の業務に従事している産業医等、保健師、看護師、心理職又は
  衛生管理者等をいう。
 ⑨ メンタルヘルス不調
   精神及び行動の障害に分類される精神障害及び自殺のみならず、ストレス、強い悩み及び不安等、
  労働者の心身の健康、社会生活及び生活の質に影響を与える可能性のある精神的及び行動上の問題を
  幅広く含むものをいう。



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