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別紙

安全衛生教育等推進要綱

1.趣旨・目的
  安全衛生教育及び研修(以下「教育等」という。)は、労働者の就業に当たって必要な安全衛生に関す
 る知識等を付与するために実施されるもので、安全衛生管理体制の確立、労働安全衛生法令の遵守の徹
 底、危険有害性の調査、自主的な安全衛生活動、快適職場形成等の施策とあいまって労働災害の防止の
 実効を期す上で極めて重要な施策である。また、教育等は、企業はもとより広く社会における安全衛生
 意識の普及・定着を促すための貴重な機会であり、安全衛生に関係する様々な立場にある者に対してそ
 の機会を提供することにより、我が国の安全衛生水準の向上に大きく寄与するものと期待される。
  このため、厚生労働省では、労働安全衛生法に基づく雇入時教育、作業内容変更時教育、特別教育、
 職長等教育、危険有害業務従事者に対する教育、安全衛生業務従事者に対する能力向上教育及び健康教
 育はもとより、労働災害の防止のために必要な教育等については法定外のものであってもカリキュラム
 等を定め、企業の自主的な安全衛生活動の促進に寄与しているところである。
  本要綱は、以上のような状況を踏まえ、次のような基本的な立場に立って教育等の今後の在り方、進
 め方を示すものである。
 (1) 各種の教育等は、相関連して総合的な観点から実施されることが効果的であることから、法定及
   び法定外の教育等全般について体系化を図る。
 (2) 労働者の生涯を通じた教育等、経営トップ等・安全衛生に係る管理者・労働者等企業内における
   各層に対するそれぞれの立場に応じた教育等に留意する。
 (3) 機械設備の安全化を促進するための設計技術者等に対する教育及び事業場の安全衛生水準の向上
   のための技術面での指導援助を担当する安全衛生専門家の研修を充実する。
 (4) 教育等の種類・内容等は、技術革新、労働者の高齢化、就業形態の多様化等近年の労働環境の変
   化に対応したものとする。
 (5) 教育等の内容の具体化、教材の整備、講師の養成、教育等の実施機関の育成等を通じ、教育等の
   水準の向上を図る。
 (6) 教育等の促進のため、企業、安全衛生団体等に対する指導・援助を行う。

2.教育等の対象者
  教育等の対象者は、作業者、安全衛生に係る管理者、経営トップ等、安全衛生専門家、技術者等とし、
 それぞれ次に掲げる者とする。
 (1) 作業者
  [1] 危険有害業務に従事する者
   イ 就業制限業務に従事する者
   ロ 特別教育を必要とする危険有害業務に従事する者
   ハ その他の危険有害業務に従事する者
  [2] [1]以外の業務に従事する者
 (2) 安全衛生に係る管理者
  [1] 安全管理者、衛生管理者、安全衛生推進者、衛生推進者及び安全推進者
  [2] 作業主任者、職長及び作業指揮者
  [3] 元方安全衛生管理者、店社安全衛生管理者
  [4] 救護技術管理者
  [5] 計画参画者
  [6] 安全衛生責任者
  [7] 交通労働災害防止担当管理者
  [8] 荷役災害防止担当者
  [9] 危険性又は有害性等の調査等担当者・労働安全衛生マネジメントシステム担当者
  [10] 「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針(平成27年危険性又は有害性等
    の調査等に関する指針公示第3号)」に定める化学物質管理者
  [11] 「事業場における労働者の健康保持増進のための指針(昭和63年健康保持増進のための指針公
    示第1号)」に定める健康保持増進措置を実施するスタッフ
  [12] 「労働者の心の健康の保持増進のための指針(平成18年健康保持増進のための指針公示第3号)」
    に定める事業場内産業保健スタッフ等
 (3) 経営トップ等
  [1] 事業者
  [2] 総括安全衛生管理者
  [3] 統括安全衛生責任者及び安全衛生責任者
  [4] 管理職
 (4) 安全衛生専門家
  [1] 産業医
  [2] 労働安全コンサルタント及び労働衛生コンサルタント
  [3] 安全管理士及び衛生管理士(労働災害防止団体法第12条に定める資格者)
  [4] 作業環境測定士
 (5) 技術者等
  [1] 特定自主検査に従事する者及び定期自主検査に従事する者等
  [2] 生産・施工部門の管理者及び技術者
  [3] 機械設備及び建設物の設計技術者等
 (6) その他
  [1] 就職予定者
  [2] その他教育等を必要とする者

3.教育等の種類、実施時期及び内容
  事業者が実施しなければならない教育等の種類は、労働安全衛生法に基づく雇入時教育、作業内容変
 更時教育、特別教育、職長等教育、危険有害業務従事者に対する教育、安全衛生業務従事者に対する能
 力向上教育、健康教育、これらに準じた研修等である。また、これら法定教育以外の教育等で事業者が
 実施すべきものは次のとおりとする。
 (1) 就業制限業務又は特別教育を必要とする危険有害業務に準ずる危険有害業務に初めて従事する者
   に対する特別教育に準じた教育
 (2) 就業制限業務又は特別教育を必要とする危険有害業務に従事する者に対する危険再認識教育
 (3) 一定年齢に達した労働者に対する高齢時教育
 (4) 安全推進者、職長等に対する能力向上教育に準じた教育
 (5) 作業指揮者に対する指名時の教育
 (6) 安全衛生責任者に対する選任時及び能力向上教育に準じた教育
 (7) 交通労働災害防止担当管理者教育
 (8) 荷役災害防止担当者教育
 (9) 危険性又は有害性等の調査等担当者・労働安全衛生マネジメントシステム担当者教育
 (10) 化学物質管理者教育
 (11) 健康保持増進措置を実施するスタッフ養成専門研修
 (12) 事業場内産業保健スタッフ等に対するメンタルヘルスケアを推進するための教育研修
 (13) 特定自主検査に従事する者に対する能力向上教育に準じた教育
 (14) 生産・施工部門の管理者、設計技術者等に対する技術者教育
 (15) 経営トップ等に対する安全衛生セミナー
 (16) 管理職に対する安全衛生教育
 (17) 労働安全コンサルタント、労働衛生コンサルタント等の安全衛生専門家に対する実務向上研修
 (18) 就業予定の実業高校生に対する教育等
  なお、教育等の対象者ごとに実施する教育等の種類、実施時期及び内容は、具体的には、別表による
 こととする。また、これらの教育等の体系は、別図のとおりである。
  
4.教育等の実施体制
  教育等は、企業、安全衛生団体等及び国がそれぞれの立場で相互に連携して推進する。企業内の安全
 衛生関係者に対する教育等については、企業が自ら又は安全衛生団体等に委託して実施する。安全衛生
 団体等は、安全衛生の専門的事項に関すること等企業が自ら実施することの困難な教育、労働安全コン
 サルタント、労働衛生コンサルタント等の安全衛生専門家に対する研修等を実施するほか、教育等を担
 当する講師の養成、教材の整備等を図る。国は、必要に応じ教育等のカリキュラムを策定するほか、教
 育等を実施する企業及び安全衛生団体等に対して教育等の資料の提供等の指導・援助を行う。
  また、企業及び安全衛生団体等は、教育等の実施に当たっては、次により計画的な実施と教育等の内
 容等の充実を図る。
 (1) 実施計画等の作成
    教育等の種類ごとに、対象者、実施日、実施場所、講師及び教材等を定めた年間の実施計画を作
   成する。企業においては、労働者の職業生活を通じての継続的な教育等の実施等のため、中長期的
   な推進計画を作成することが望ましい。
 (2) 実施結果の保存等
    教育等を実施した場合には、台帳等にその結果を記録し、保存する。また、安全衛生団体等が実
   施した場合には、修了者に修了証を交付する。
 (3) 実施責任者の選任
    実施計画の作成、実施、実施結果の記録・保存等教育等に関する業務の実施責任者を選任する。
 (4) 教育等の内容の充実
    教育等の内容の充実のため、講師の養成・選定、教材の作成・選定等については次の点に留意す
   る。
   イ 講師は、法令等に基づく要件を満たし、当該業務に関する知識・経験を有する者であること。
    また、講師は、労働安全コンサルタント、労働衛生コンサルタント、安全管理士、衛生管理士等
    の、当該業務のみならず安全衛生業務に広く精通している者を活用することが望ましい。更に、
    教育等の技法に関する知識・経験を有する者や教育等の講師となる人材の養成のための研修を受
    講する等して専門的知識、教育等の技法等に関する教育訓練を受けた者であることが望ましい。
    このため、安全衛生団体等は、指導者に対する研修等の実施により講師の養成を図る。
   ロ 教材は、カリキュラムの内容を十分満足したものであることはもちろんのこと労働災害事例等
    に即した具体的な内容とする。また、視聴覚機材を有効に活用することが望ましい。
   ハ 教育等の技法は、講義方式のほか、教育等の対象者、種類等に応じ、受講者が直接参加する方
    式、例えば、事例研究、課題研究等の討議方式を採用する。
 (5) 安全衛生教育センターの活用
    国においては、教育等の水準の向上を図る観点から安全衛生教育センターを設置し、中央労働災
   害防止協会及び建設業労働災害防止協会に運営を委託しているところである。同センターにおいて
   は、教育等の講師となる人材の養成のための講座を開設しているので積極的な活用を図る。

5.教育等の推進に当たって留意すべき事項
  教育等の推進に当たっては、中小企業、第三次産業、高年齢労働者、外国人及び就業形態の多様化と
 いった労働災害防止上の課題に適切に対応していくことが重要となっている。
  また、危険感受性の低下が懸念されていることから、十分な安全を確保した上で、作業に伴う危険性
 を体感させるような教育等や日々の危険感受性を向上させる教育等も有効である。
  これらの課題に対しては、雇入時教育等の法定教育の実施を徹底することはもとより労働災害の発生
 等の実情に応じて次による教育等の推進が肝要である。
 (1) 就業形態の多様化
    パートタイム労働者、派遣労働者等就業形態は多様化しているが、労働者に対しては、就業時に
   従事する作業に関する安全衛生の知識等を付与すること、すなわち雇入時等の教育を徹底すること
   が重要である。
    また、経済の国際化に伴い急増する海外派遣労働者については、海外生活での安全衛生を確保す
   るため派遣元の企業において当該労働者の派遣前に現地での職域及び生活環境における安全衛生事
   情に関する知識を付与することが重要であり、そのための教育等の推進を図る。
 (2) 中小企業
    中小企業においては、教育等の講師、教材等の問題から自ら教育を実施することの困難な事業場
   もみられるので、親企業等による指導・援助、安全衛生団体等の活用による教育等の実施の促進を
   図る。
    また、国が中小企業の支援措置として実施している各種事業の活用も図る。
 (3) 第三次産業
    第三次産業においては、非正規労働者の増加等多様な就業形態がみられるとともに、製造業等の
   第二次産業に比べ安全衛生管理体制の整備が遅れていること等から、雇入時教育の充実・強化を図
   るとともに、経営トップ等及び安全管理者や安全推進者等の安全衛生に係る管理者の教育等を促進
   する。
 (4) 高年齢労働者
    高年齢労働者については、高年齢向けの機器の開発、職場環境の改善、適正配置とともに、高年
   齢労働者自身の安全衛生に対する意識付けが重要である。
    このため、経営トップ等に対する教育等の実施に当たっては、高年齢労働者の労働災害の現状と
   問題点、高年齢労働者の転倒災害等の労働災害防止対策、高年齢労働者の能力に応じた適正配置に
   関する事項を含めて実施する。機械設備の設計・製造を担当する者に対しては、高齢者の心身機能
   等に配慮すべき事項を含めた教育等を実施する。
    また、一定年齢に達した労働者に対しては、加齢に伴う心身機能の低下の特性、心身機能に応じ
   た安全な作業方法に関する事項についての教育等を実施する。
    なお、高年齢労働者の安全衛生教育等においては、対象者の理解度に応じて、反復学習の機会を
   与えることが望ましい。
 (5) 外国人労働者
    外国人労働者については、一般に、日本語や我が国の労働慣行に習熟していないこと等から、適
   正な安全衛生を確保することが必要である。
    このため、外国人労働者に対し安全衛生教育等を実施するに当たっては、当該外国人労働者が確
   実に理解できる方法により教育等を実施する。その際、外国人労働者が労働災害防止のための指示
   等を理解することができるように必要な日本語や基本的な合図等、事業場内における労働災害防止
   に関する標識、掲示等についても習得させるように配慮する。
 (6) その他教育等を必要とする者
    記の2(6)[2]の「その他教育等を必要とする者」とは、記の5(1)や(5)の海外派遣労働者や外国人
   労働者などが含まれること。

  (参考)  労働者の生涯を通じた安全衛生教育等の例

 ○A氏の場合
  (入社)  (就業制限業務に配置転換)     (5年経過)       (10年経過)
 雇入時教育→   免許取得     → 危険有害業務従事者教育(定期) → 危険再認識教育 →

 (職長就任)      (5年経過)      (安全衛生推進者就任)     (5年経過)
 職長等教育→ 能力向上教育に準じた教育 → 能力向上教育(初任時) → 能力向上教育(定期) →


 ○B氏の場合
  (入社)   (設計部門に配置換え)  (現場技術管理部門に配置換え)  (安全管理者就任)
 雇入時教育 → 技術者教育(随時) →   技術者教育(随時)   → 能力向上教育(初任時) →

   (5年経過)     (総括安全衛生管理者就任)
 能力向上教育(定期) → 安全衛生セミナー(随時) →

   注:全期間にわたって雇入時、定期、随時に健康教育を行う。


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