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改正じん肺法の施行について

基発第250号
昭和53年4月28日
各都道府県労働基準局長 殿
労働省労働基準局長

改正じん肺法の施行について

 労働安全衛生法及びじん肺法の一部を改正する法律(昭和五二年法律第七六号)のじん肺法関係の施行に
ついては、昭和五三年四月二八日付け労働省発基第四七号により労働事務次官から通達されたところであ
るが、その細部の取扱いについて下記のとおり定めたので、これが円滑な実施を図るよう配意されたい。
 また、労働安全衛生法及びじん肺法の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置及び関係政令の
整備に関する政令(以上「政令」という。)は、昭和五三年三月一〇日政令第三三号として、じん肺法施行
規則の一部を改正する省令は、五三年三月二八日労働省令第九号としてそれぞれ公布され、ともに昭和五
三年三月三一日から施行されたが、左記の事項に留意して、その運用に遺憾のないようにされたい。
 なお、改正前のじん肺法(以下「旧法」という。)に関する通達(粉じん作業に係るものを除く。)は、こ
の通達に統合することとし、以下の通達は廃止する。
  昭和三五年四月二五日付け基発第三三一号(記の第一の四及び五を除く。)、昭和三七年九月八日付け
 基発第九七八号、昭和三八年四月一三日付け基発第四二八号、昭和三九年一〇月一六日付け基発第一二
 〇二号、昭和四〇年六月二二日付け基発第七〇三号、昭和四二年五月四日付け労働衛生課長名内翰、昭
 和四三年六月一三日付け安発第九五号、昭和四三年九月二〇日付け基収第三八二七号、昭和四七年一月
 一七日付け基発第一八号(記の一に限る。)、昭和五一年二月二四日付け基発第二二三号及び昭和五一年
 九月二八日付け基発第六九一号
第一 法律関係
 一 定義(第二条関係)
  (一) 第一項第一号の「じん肺」とは、粉じんの吸入によつて肺に生じた線維増殖性変化を主体とし、
   これに気道の慢性炎症性変化、気腫性変化を伴つた疾病をいい、一般に不可逆性のものであること。
    なお、じん肺有所見者にみられる肺気腫及び肺性心は、一般に、これらのじん肺病変が高度に進
   展した結果出現するものであること。
  (二) 第一項第一号の「粉じん」とは、空気中に含まれる非生物体の固体粒子をいい、ヒユームも含
   まれるものであること。
  (三) 第一項第二号の「合併症」とは、じん肺の病変を素地として、それに外因が加わること等によ
   り高頻度に発症する疾病等のじん肺と密接な関連をもつ疾病であり、増悪期に適切な治療を加えれ
   ば症状を改善し得るものであり、一般に可逆性のものであること。
 二 じん肺健康診断(第三条関係)
  (一) 今回の改正により、胸部に関する臨床検査及び肺機能検査を有機的に行うようにするとともに、
   新たに肺結核以外の合併症に関する検査を加えたものであること。
  (二) じん肺健康診断は、次ののような流れで実施されるものであること。
  (三) じん肺健康診断の具体的実施手法及び判定については、別途発行される「じん肺診査ハンドブ
   ツク」に記載された内容を基本として行うこととするので、事業者及びじん肺健康診断を行う医療
   機関に対し、この旨を指導されたいこと。
  (四) 第一項第一号の「直接撮影による胸部全域のエツクス線写真」とは、背腹位の胸部写真をいう
   ものであつて、側位、斜位等の多方向撮影、断層撮影等によるものは含まれないものであること。
  (五) 第二項の「じん肺の所見がないと診断された者以外の者」とは、じん肺の所見があり、又はじ
   ん肺にかかつている疑いがあると診断された者をいうこと。
  (六) エツクス線写真に一側の肺野の三分の一を超える大きさの大陰影があると認められる者につい
   ては、肺機能検査、結核精密検査及び肺結核以外の合併症に関する検査を除外することとしたこと。
    旧法の一側の肺野の二分の一を三分の一に改めたのは、一側の肺野の三分の一を超える大陰影が
    ある者は一般に肺機能等の障害が強いことが明らかにされており、かつ、ILOの分類でも大陰影
    の区分の基準に三分の一が採用されていることに基づいたものであり、これらの者はじん肺管理
    区分が管理四としてそれのみで療養を要することとなるからであること。
 三 エツクス線写真の像及びじん肺管理区分(第四条関係)
  (一) 改正後のじん肺法(以下「新法」という。)に基づくエツクス線写真像の区分の判定は、別途発
   行される「じん肺標準エツクス線フイルム」(昭和五三年)及び「じん肺標準エツクス線写真集」
   (平成二三年三月)を用いて行うこととするので、じん肺健康診断を行う医療機関に対し、この旨を
   指導されたいこと。
  (二) 第一項の「粒状影」とは、肺に生じたじん肺による結節の影像をいい、多くの場合小円形に見
   えるもので、その直径が約一〇ミリメートルまでのものをいうこと。けい肺、その他多くのじん肺
   はこの粒状影を示すものであること。
  (三) 第一項の「不整形陰影」とは、旧法で異常線状影といわれていたものを含めたものであり、主
   に線状、細網状、線維状、網目状、峰窩状、斑状の影をいうこと。不整形陰影は石綿肺に特徴的で
   あるが、その他のじん肺の場合にも見られることがあること。
  (四) 第一項の「粒状影又は不整形陰影が……あり」とは、粒状影のみがある場合、不整形陰影のみ
   がある場合及び粒状影と不整形陰影の両方が同時にある場合をいうこと。
  (五) 第一項の「大陰影」とは、じん肺による融合陰影や塊状陰影で、その長径が一〇ミリメートル
   を超える陰影をいうこと。
  (六) 第二項の「じん肺管理区分」は、じん肺そのものについての管理区分を定めたものであり、旧
   法の「健康管理の区分」とは、その趣旨を異にするものであること。また、旧法の管理一には、無
   所見者のほかに軽度のじん肺にかかつているが他の所見等のない者(管理一の二)も含まれていたが、
   今回の改正では、管理一は無所見者のみとし、有所見者は、管理二以上に位置づけることとしたこ
   と。
  (七) 第二項の「じん肺の所見がない」とは、エツクス線写真の像が第一型以上に該当しないものを
   いう。
  (八) 第二項の「大陰影の大きさ」とは、一つの大陰影がある場合にはそのもの自体の面積をいい、
   二以上の大陰影がある場合にはそれらの面積の和をいうものであること。
    また、管理四に該当する大陰影の大きさについて改めたのは、前記二の(六)に掲げた理由による
   ものであること。
 四 予防(第五条関係)
  (一) 本条のじん肺の予防に関する努力義務について、新たに粉じんの発散の防止に関することを加
   えるとともに、予防及び教育に関する規定を第一章の総則に移したこと。
  (二) じん肺の予防に関しては、粉じん障害防止規則(仮称)を近く制定する予定であること。
 五 教育(第六条関係)
  (一) 本条は、じん肺の予防及び健康管理に十分な効果をあげるためには、常時、労働者に対し、そ
   れらに関して必要な知識を得させる必要があることから設けられているものであること。したがつ
   て、事業者は、単に雇入れ時に限らず、労働者に必要な知識を付与するよう措置する義務を負うも
   のであるが、「必要な教育」の内容、時期、回数等は、医学及び衛生工学の進歩、技術の変革、更
   には事業場の実情等に応じてそれぞれ異なるべきものであり、これを一律化することは必ずしも適
   当ではないので、この運用に当たつては、各事業場の実情に即して最も効果的な方法により行うよ
   う指導されたいこと。
  (二) 「常時粉じん作業に従事する」とは、労働者が業務の常態として粉じん作業に引き続いて従事
   することをいうが、必ずしも労働日の全部について粉じん作業に従事することを要件とするもので
   はないこと。
 六 就業時健康診断(第七条関係)
  (一) 就業時健康診断の目的は、業務の常態として粉じん作業に引き続いて従事することとなつた労
   働者について、当該作業に新たに就こうとするときに、あらかじめ、じん肺のり患の有無及びその
   程度を確認し、それによつて当該労働者に対する適切な健康管理を行うことにあること。
  (二) 就業時健康診断の実施を除外しうる労働者について、旧法では、じん肺のり患の有無及び肺結
   核のり患の有無が明らかな者に限り除外するため、就業前三カ月以内は労働安全衛生法等による健
   康診断を受けた場合には除外することとしていたが、今回の改正で肺結核はじん肺管理区分の決定
   の要素ではなくなつたため、このような要件は除くこととしたこと。
  (三) 「新たに常時粉じん作業に従事する」とは、雇入れの際に限定されるものではなく、当該事業
   場における配置替えの場合も含むものであること。
  (四) 「就業の際」とは、雇入れ又は配置替えの日の前後おおむね三カ月程度までの期間をいうもの
   であること。
 七 定期健康診断(第八条関係)
  (一) 定期健康診断について旧法と異なるのは、次の点であること。
   イ 常時粉じん作業に従事する労働者のうち、軽度のじん肺にかかつているが他の所見等のない者
    (旧法の管理一の二)に対する定期健康診断の実施は、従来三年以内ごとに一回であつたが、今回
    の改正によりこのような者は管理二又は管理三に位置づけられたことから、一年以内ごとに一回
    となつたこと。
   ロ 粉じん作業から作業転換した者に対する定期健康診断の実施は、従来、都道府県労働基準局長
    の勧告を受けて作業転換した旧法の管理三の者に限られていたが、今回の改正により、勧告の有
    無にかかわらず、一般的に管理二の者は三年以内ごとに一回、管理三の者は一年以内ごとに一回
    となつたこと。
  (二)
   イ 第一項第三号及び第四号の「常時粉じん作業に従事させたことのある労働者」には、じん肺法
    施行前(労働基準法施行前も含む。)に常時粉じん作業に従事していた者が含まれるものであるこ
    と。
   ロ 第一項第三号及び第四号の「常時粉じん作業に従事させたことのある労働者で、現に粉じん作
    業以外の作業に常時従事しているもの」には、常時粉じん作業に従事していた労働者で、その作
    業が作業環境、作業方法の改善等によつて粉じん作業に該当しなくなつた後もなお引き続きその
    作業に常時従事しているものも含まれるものであること。
  (三) 第一項第三号及び第四号の「労働省令で定める労働者」は、当面定める予定がないこと。
 八 定期外健康診断(第九条関係)
  (一) 第一号は、じん肺の所見がない粉じん作業従事労働者の定期健康診断が三年以内ごとに一回で
   あることに鑑み、労働安全衛生法に基づく健康診断でじん肺にかかつている疑いがあると診断され
   たとき等に速やかに定期外健康診断を行うこととし、じん肺の早期発見に資することとしたもので
   あること。
    なお、労働安全衛生法に基づく健康診断を行う場合において胸部エツクス線検査を間接撮影によ
   り行うときは、できる限りミラーカメラによつて行うよう、事業者及び医療機関に対し指導された
   いこと。
  (二) 第二号は、合併症により一年を超えて療養のため休業した労働者は、その間定期健康診断を受
   けておらず、また、合併症の療養過程においてじん肺そのものが進展しているおそれがあるので、
   その就業の際に定期外健康診断を行い、じん肺管理区分の見直しを行うこととしたものであること。
 九 離職時健康診断(第九条の二関係)
  (一) 本条は、一定の期間を超えてじん肺健康診断を受けていない労働者について、離職後の健康管
    理を適切に行うための指標を与えるため、新たに規定したものであること。
    なお、離職時健康診断を労働者の請求にかからしめたのは、じん肺の経過は通常定期健康診断に
   より的確には握しうるものであり、医学的には必ずしも離職時健康診断を必要とするものではなく、
   また、放射線に被ばくする機会を極力少なくする等の点を考慮したからであること。
  (二) 離職時健康診断制度を新法第六条に規定する教育の内容とし、対象労働者への周知に努めると
   ともに、定年退職者等相当期間前に離職の時期が明らかである者については、離職時健康診断の受
   診の希望の有無をあらかじめ聴取する等の措置を講ずるよう、事業者に対し指導されたいこと。
    また、離職時健康診断は、対象労働者に便宜を供与するため離職の前に実施することが望ましい
   ので、この旨事業者に対し指導されたいこと。
  (三) 第一項第三号の「常時粉じん作業に従事させたことのある労働者で、現に粉じん作業以外の作
   業に常時従事しているもの」については、前記七の(二)と同様であること。
  (四) 第一項第三号の「労働省令で定める労働者」は、当面定める予定がないこと。
 一〇 労働安全衛生法の健康診断との関係(第一〇条関係)
  (一) 「じん肺健康診断を行つた場合」とは、必ずしも新法第七条から第九条の二までの規定による
   じん肺健康診断を行つた場合に限定されるものでなく、新法第一六条の規定による随時申請を行う
   ためのじん肺健康診断その他事業者が任意にじん肺健康診断を行つた場合も含むものであること。
  (二) 「その限度において」とは、例えば、エツクス線検査を行つた場合はエツクス線検査、胸部に
   関する臨床検査を行つた場合は胸部に関する臨床医学的検査、結核精密検査を行つた場合はかくた
   ん検査を行わなくてもよいということ等のようにじん肺健康診断の検査に相当する検査を行わなく
   てもよいという趣旨であること。
 一一 受診義務(第一一条関係)
  (一) 「正当な理由がある場合」とは、疾病、忌引等社会通念上労働者に受診を強要することができ
   ない場合をいうものであること。
  (二) ただし書の「労働省令で定める書面」は、当面定める予定がないこと。
 一二 事業者によるエツクス線写真等の提出(第一二条関係)
   「労働省令で定める書面」は、当面定める予定がないこと。
 一三 じん肺管理区分の決定手続等(第一三条関係)
  (一) 第二項の「地方じん肺診査医の診断又は審査により」とは、都道府県労働基準局長の決定が地
   方じん肺診査医の診断又は審査の結果に拘束され、それと異なる内容の決定を行うことはできない
   趣旨であること。
    なお、「診断」とは、労働者について直接に臨床的診察を加えて判断する場合をいい、「審査」
   とは、専ら提出されたエツクス線写真、じん肺健康診断の結果を証明する書面等の資料によつて判
   断する場合をいうこと。
  (二) 第三項の都道府県労働基準局長の検査命令の対象となる労働者について、旧法の「じん肺が相
   当に進行している疑いがある」という要件を除くとともに、検査命令のほかに、都道府県労働基準
   局長の指定する物件を提出すべきことを命ずることができることとしたこと。
    したがつて、じん肺の読影に不適なエツクス線写真について再撮影を命ずる等適正なじん肺管理
   区分の決定のため、この制度を積極的に活用されたいこと。
  (三) 第三項の「指定する物件」には、例えば、胸部臨床検査の際に用いた問診票、肺機能検査にお
   けるフローボリユーム曲線の記録等じん肺健康診断の検査に係る物件、作業環境測定結果、前回の
   じん肺健康診断で撮影したエツクス線写真等が含まれるものであること。
  (四) 第四項の「当該検査に係る物件」とは、例えば、胸部臨床検査の際に用いた問診票、肺機能検
   査におけるフローボリユーム曲線の記録、結核精密検査における塗沫標本、心電計による検査にお
   ける心電図等が含まれるものであること。
  (五) 以上(一)から(四)によるほか、じん肺管理区分の決定等に関する細目については、別紙「じん
   肺管理区分の決定等に関する事務取扱要領」によること。
 一四 通知(第一四条)
  (一) 第二項の事業者の通知義務は、都道府県労働基準局長からじん肺管理区分の決定の通知を受け
   たときに限られているが、じん肺健康診断の結果じん肺の所見がないと診断された労働者に対して
   も、じん肺管理区分が管理一である旨の通知をするよう、事業者に対し指導されたいこと。
  (二) 第三項は、第二項の通知に係る書面を作成して三年間保存することを義務づけることによつて、
   当該通知が確実に行われるよう、新たに規定したものであること。
 一五 随時申請(第一五条関係)
  (一) 第一項の「常時粉じん作業に従事する労働者であつた者」については、前記七の(二)のイに掲
   げる者が含まれるものであること。
  (二) 第二項の「労働省令で定める書面」は、当面定める予定がないこと。
 一六 エツクス線写真等の提出命令(第一六条の二関係)
  (一) 本条は、新法第一二条の規定による事業者のエツクス線写真等の提出がない場合でも、適正な
   じん肺管理区分を決定するため必要があると認めるときに都道府県労働基準局長がエツクス線写真
   等の提出を命じ、その命令によつて提出されたエツクス線写真等に基づいてじん肺管理区分を決定
   し得ることとした趣旨のものであること。
    したがつて、従来新法第一二条の規定によりエツクス線写真等の提出が行われていた事業者から
   提出が合理的理由がなくとだえた場合、その事業場における粉じんの発散の程度、同一事業、同一
   規模の他の事業場との比較等からじん肺有所見者が適正なじん肺管理区分の決定を受けていないお
   それがある場合等に提出命令がなされるべきものであること。
  (二) 第一項の「労働省令で定める書面」は、当面定める予定がないこと。
 一七 記録の作成及び保存等(第一七条関係)
  (一) 第二項の保存期間について、旧法では五年間とされていたが、じん肺の病像の的確な判定及び
   健康管理対策の基礎資料として少なくとも前二回分のじん肺健康診断の記録及びじん肺健康診断に
   係るエツクス線写真を確保する必要があるため、じん肺の所見のない者の定期健康診断の間隔(三
   年以内ごとに一回)を考慮して七年間に改めたものであること。
 一八 事業者の責務(第二〇条の二関係)
  (一) 本条は、新法第二章第三節の「健康管理のための措置」の一般的通則として、じん肺健康診断
   の結果に基づく事業者の責務を定めたものであること。
  (二) 「保健指導」とは、個々の労働者の健康状態に応じて事業場内及び事業場外における生活全般
   にわたる指導をいうものであり、健康増進、疾病予防、受診勧奨等が含まれるものであること。
 一九 粉じんにさらされる程度を低減させるための措置(第二〇条の三関係)
  (一) 本条は、じん肺管理区分が管理二又は管理三イである労働者について相対的に粉じんばく露の
   低減を図ろうとする趣旨のものであり、その実施に当たつては、一律的な基準によることなく、作
   業環境及び当該労働者の粉じんばく露量の的確な評価、当該労働者の粉じん作業に係る作業時間の
   は握等を十分行い、当該労働者の作業方法、賃金、健康状態、本人の意志等に十分留意して弾力的
   な取扱いがなされるべきであること。
  (二) 有所見者が出たことを契機として、作業環境の改善措置がより強力に行われ、又は、このよう
   な改善措置を行うことが困難である場合等であつても、防じんマスクの着用の徹底が図られ、これ
   らの結果当該粉じん作業場に働く全労働者の粉じん暴露量が効果的に低減されていると客観的に認
   められるような場合も、この規定の趣旨に該当するものであること。
  (三) 「就業場所の変更」とは、粉じん濃度のより低い場所へ就業場所を変更することをいうこと。
 二〇 作業の転換(第二一条関係)
   本条は、じん肺管理区分が管理三である労働者の粉じん作業からの作業転換を推進するため、管理
  三イの者に係る勧奨、管理三ロの者に係る一般的作業転換の努力義務及び管理三ロの者に係る指示の
  三段階に分けて規定したものであること。
   なお、作業転換が労働者に及ぼす影響の重大性に鑑み、その実施に当たつては、画一的にならぬよ
  う、あくまで個々の労働者の具体的条件に即して当該労働者と十分話合いの上行うべきものであるこ
  と。
   また、作業転換に当たつて転換すべき作業を選択する際には、新法で「粉じん作業」として定めら
  れている以外の作業であつても粉じんの発散している作業、亜硫酸ガス等の呼吸器に対して障害を起
  こすことが知られている物質又は因子(がん原性物質又はがん原性工程を含む。)に暴露される作業、
  心・呼吸器の強度の負荷がかかる作業等を避けることが望ましいものであること。
 二一 転換手当(第二二条関係)
  (一) 本条の転換手当は、作業の転換を要する労働者が粉じん作業から転換することを促進するため
   の措置であるとともに、他面永年親しんできた職場を離れることに伴う見舞い金としての意味合い
   を併せて持つものであること。
  (二) 「常時粉じん作業に従事しなくなつたとき」とは、作業転換した場合のみでなく、離職した場
   合も含むものであるが、労働者の種々の離職要因のうち転換手当の性格からその趣旨に合わないこ
   とが客観的に明らかであるもの(例えば労働契約の期間満了による離職)については、事業者の転換
   手当の支払義務を免除することとしたものであること。
  (三) 転換手当に係る平均賃金の算定に当たつては、当該労働者が常時粉じん作業に従事しなくなつ
   た日をもつて、労働基準法第一二条の「算定すべき事由の発生した日」とすべきものであること。
  (四) ただし書の「労働省令で別段の定め」は、当面定める予定がないこと。
 二二 削除
 二三 療養(第二三条関係)
  (一) 本条は、じん肺管理区分が管理四と決定された者及び合併症にかかつていると認められる者は、
   一般的に療養を要する健康状態にあることを明らかにしたものであること。
  (二) 「療養」とは、必ずしも休養を伴うものだけでなく、就業しながらの治療も含まれるものであ
   り、これらの選択は医師の判断に基づいて行われるべきものであること。
 二四 粉じん対策指導委員(第三三条関係)
   粉じん対策指導委員は、じん肺の予防を図るためには、各事業場の個々のケースについて具体的、
  技術的、かつ、専門的指導を行う必要があるところから設けられているものであること。
 二五 職業紹介及び職業訓練(第三四条関係)
   本条は、職業安定法第三条の均等待遇の原則の例外を定めるものではないが、その原則の枠内にお
  いて職業紹介及び職業訓練につき適切な措置を講ずべき政府の心構えを規定したものであるから、都
  道府県労働主管部と密接な連絡をとり、適職の紹介その他適切な措置を講ずるよう配慮されたいこと。
 二六 じん肺診査医の権限(第四〇条関係)
   本条に規定するじん肺診査医の立入検査等の権限は、専らじん肺の診断又は審査のために必要な限
  度において認められたものであるから、この権限の行使については、濫用にわたることのないよう慎
  重を期せられたいこと。
 二七 その他
   その他、今回の改正により、新たに法令の周知(第三五条の二)、じん肺健康診断に関する秘密の
  保持(第三五条の三)及び労働者の申告(第四三条の二)に関する規定を設けるとともに、罰金の額(第
  四五条)の引上げを行つたこと。
第二 政令関係
 一 じん肺健康診断に関する経過措置(第一条関係)
  (一) 本条により、旧法の規定により行われたじん肺健康診断は、新法の相当規定により行われたじ
   ん肺健康診断とみなされることとなるので、新法の施行の日(以下「施行日」という。)の直前に旧
   法の規定によるじん肺健康診断を行つた事業者又はこれを受けた労働者(労働者であつた者を含む。)
   は、あらためて新法の規定によるじん肺健康診断を行わなくても又はそれを受けなくても施行日以
   後、旧法の規定によるじん肺健康診断の結果によつて新法第一二条の規定によるエツクス線写真等
   の提出又は新法第一五条第一項若しくは第一六条第一項の規定による随時申請を行うことができる
   ものであること。
  (二) 旧法第一二条の規定により行われたエツクス線写真等の提出又は旧法第一五条第一項若しくは
   第一六条第一項の規定により行われた申請で施行日前に旧法の規定による健康管理の区分の決定が
   なかつたものについては、施行日以後すべて新法の規定に基づいてじん肺管理区分を決定すべきも
   のであること。
  (三) (一)又は(二)の場合に新法のじん肺管理区分を決定するに当たり、肺機能検査の方法等が改め
   られたことから、特にじん肺による肺機能の障害の判定については、次のように取り扱われたいこ
   と。
   イ 旧法の方法によるじん肺健康診断の結果でおおむね判定しうるものについては、それによりじ
    ん肺管理区分を決定すること。
   ロ 旧法の方法によるじん肺健康診断の結果のみでは、的確な判定ができないときは、新法第一三
    条第三項の規定に基づき所要の追加検査を命ずること。
  (四) 施行日以後最初に行うべき新法第八条の定期健康診断は、旧法第八条の規定によりじん肺健康
   診断を行つた日から起算して新法第八条第一項各号に掲げる期間以内に行わなければならない(政
   令第三条の場合を除く。)ものであること。
 二 じん肺管理区分に関する経過措置(第二条関係)
  (一) 本条は、旧法の規定による健康管理の区分の決定について、新法の規定により新たにじん肺管
   理区分の決定を受けるまでの間の経過措置を定めたものであること。
  (二) 本条により、旧法の健康管理の区分が管理四と決定された者は、新法のじん肺管理区分の決定
   が管理四とみなされることとなるが、旧法の管理四には肺結核にかかつている者も含まれているこ
   とから、これらの者が肺結核の治ゆにより療養を要しなくなつたと診断された場合には、旧法第九
   条第三号の規定の趣旨に沿つて適正なじん肺管理区分の決定を受け得るようにするため、その時点
   でじん肺健康診断を行い、かつ、新法第一五条第一項又は第一六条第一項の規定による申請を行う
   よう労働者若しくは労働者であつた者又は事業者に対し指導されたいこと。
 三 定期健康診断に関する経過措置(第三条関係)
  (一) 本条は、旧法の健康管理の区分が管理一の二の者については政令第二条の規定によりじん肺管
   理区分の決定が管理二とみなされることから、定期健康診断の間隔が従来の三年以内ごとに一回か
   ら一年以内ごとに一回に変更されるので、施行日以後最初に行うべき定期健康診断の時期を明確に
   したものであること。
  (二) 新法によつて新たに規定された粉じん作業から作業転換した労働者についての定期健康診断に
   ついては、施行日から起算してじん肺管理区分が管理二の者については三年以内、管理三(旧法第
   八条第三号に該当する者を除く。)の者については一年以内に行えば足りるものであるが、新法に
   よるじん肺に関する健康管理をより適正に行うため、早期に実施することが望ましいこと。
 四 作業転換の勧告に関する経過措置(第四条関係)
   本条により、旧法第二一条第一項の勧告を受けて新法の施行の際なお常時粉じん作業に従事してい
  る労働者については、引き続き事業者に作業転換の努力義務が生じ、かつ、当該労働者が常時粉じん
  作業に従事しなくなつたときは転換手当の支払い義務が生ずるものであること。
第三 施行規則関係
 一 合併症(第一条関係)
  (一) 本条の合併症とは、じん肺管理区分が管理二又は管理三と決定された者がり患したものをいう
   ものであること。したがつて、じん肺管理区分の決定を受けていない者又はじん肺管理区分が管理
   一若しくは管理四である者が本条各号に掲げる疾病にかかつても、新法上「合併症」に該当しない
   ものであること。
  (二) 第一号の「肺結核」とは、結核の病変のあるもののうち医学的に治療を要すると判断されるも
   のをいい、肺結核の分類方法が異なるため旧法における肺結核の分類と必ずしも並行しないが、旧
   法でいう「病勢の進行のおそれがある不活動性の肺結核」(tb±)も不安定な病巣を有する場合には
   一般的にこれに含まれるものであること。
  (三) 第三号の「続発性気管支炎」とは、一年のうち三カ月以上毎日のようにせきとたんがあり、か
   つ、たんの量が多く、たんが膿性であることをその判定の基準とするものであること。
  (四) 本条に規定する「合併症」に該当するか否かの判定は、別途発行される「じん肺診査ハンドブ
   ツク」に記載された判定の基準により行うこと。
 二 肺機能検査(第五条関係)
  (一) 今回の改正により肺機能検査の方法が大幅に改められたことから、早急にこの実施体制を整
   備(検査機器の購入、講習の受講等)する必要があるので、じん肺健康診断を行う医療機関に対して
   十分な指導を行われたいこと。
    なお、肺機能検査のための機器の購入については、労働安全衛生融資(健康診断機関等整備促進
   資金)の対象となるので、公益法人たる健康診断機関に対してはその活用方も併せて指導されたい
   こと。
    また、当面、動脈血ガスを分析する検査については、健康診断機関等での実施体制が整備されて
   いない場合は、実施体制の整つている地域の中核的な医療機関で行うよう指導されたいこと。
  (二) エツクス線写真像にブラ(気腫性のう胞)が認められる者等自覚症状、他覚所見等からスパイロ
   メトリー及びフローボリユーム曲線による検査の実施が困難と診断された者については、これらの
   検査を省略し、動脈血ガスを分析する検査を行つても差し支えないこと。
  (三) 第一項第二号の「動脈血ガスを分析する検査」は、原則として、上腕動脈又は股動脈の動脈血
   を用いて酸素分圧及び炭酸ガス分圧を測定することとするが、耳朶血を用いて酸素分圧を測定する
   検査で著しい肺機能の障害がないことが明らかな場合は、上腕動脈又は股動脈の動脈血による検査
   を省略して差し支えないこと。
 三 肺機能検査の免除(第八条関係)
   合併症にかかつている者は、それにより療養の対象となるものであり、また、じん肺による肺機能
  障害を合併症によるものと区別して評価することが難しいため、肺機能検査を免除することとしたも
  のであること。この場合においては、従前のじん肺の経過等を参考にしてエツクス線写真像の区分に
  より慎重にじん肺管理区分の決定を行うこと。
 四 就業時健康診断の免除(第九条関係)
  (一) 就業時健康診断の免除に当たつてのじん肺管理区分の決定の確認は、じん肺管理区分等通知
   書(様式第五号)、じん肺管理区分決定通知書(様式第四号)等の書面により確実に行うこと。
  (二) 第一号の「常時粉じん作業に従事すべき職業に従事したことがない労働者」は、一般にじん肺
   にり患していないことが明らかであることから就業時健康診断を免除することとしたが、このよう
   な者についても、就業時における身体の状態を確認し、以後の健康管理に資するため就業時健康診
   断を行うことは差し支えないこと。
 五 じん肺健康診断の一部省略(第一〇条関係)
   本条は、じん肺健康診断相互間又はじん肺健康診断と他の健康診断等との間の調整を図るため、じ
  ん肺健康診断を行う日前三カ月以内に当該じん肺健康診断の一部と同一の検査を事業者が行い、又は
  労働者が受けたときには、その検査に相当するじん肺健康診断の一部を省略することができることと
  したものであること。
 六 定期外健康診断の実施(第一一条関係)
   本条は、合併症により就業しながら治療を受けているとき、又は療養のため休業をした後、就業し
  ながら治療を続けているときは、新法第八条の定期健康診断を実施すべき対象とはなつているがじん
  肺法施行規則(以下「規則」という。)第八条の規定によりこれらの労働者に対しては肺機能検査が免
  除されていることから、その治療が終了したときに、定期外健康診断を行うべきこととしたものであ
  ること。
   なお、療養のため休業をした後就業治療を続けている場合は、新法第九条第一項第二号の規定によ
  り休業を要しなくなつたときに定期外健康診断を行い、その後療養を要しなくなつたときに再び定期
  外健康診断を行うべきこととなるが、この間が三カ月以内であるときは、規則第一〇条の規定により、
  じん肺健康診断の一部を省略して行うことができるものであること。
 七 事業者によるエツクス線写真等の提出手続(第一三条関係)
   規則様式第三号の「じん肺健康診断の結果を証明する書面」は、過去のじん肺健康診断の結果も参
  考にし得るよう数回のじん肺健康診断の結果を記載できる用紙を用いることが望ましいこと。
 八 都道府県労働基準局長等の命ずる検査の範囲(第一五条関係)
  (一) 都道府県労働基準局長等が命ずることができる検査の範囲に、じん肺健康診断の検査のほかに、
   主に著しい肺機能障害の有無を判定するための検査を新たに加えたこと。
  (二) 第二号の「肺気量測定検査」には、規則第五条第一項第一号に掲げるスパイロメトリーにより
   得られる肺気量のほかに、機能的残気量の測定等の検査があること。
  (三) 第三号の「換気力学検査」には、呼吸抵抗測定、肺コンプライアンス測定等の検査があること。
  (四) 第四号の「ガス交換機能検査」には、一酸化炭素拡散能力測定等の検査があること。
  (五) これらの検査の方法及び判定については、別途発行される「じん肺診査ハンドブツク」に記載
   された内容を基本に行うよう指導されたいこと。
 九 じん肺管理区分の決定の通知(第一六条関係)
   都道府県労働基準局長からじん肺管理区分の決定通知を受けた事業者が労働者に対して行うべき通
  知は、一定の様式による書面で行わなければならないこととしたこと。
 一〇 通知の対象となる労働者であつた者(第一八条関係)
   本条の「労働者であつた者」には、離職の後の所在の知れない者は含まれないものであること。
 一一 通知の事実を記載した書面の作成(第一九条関係)
  (一) 本条の対象となるのは、在職労働者であり、離職者は含まれないこと。
  (二) 本条の書面は、じん肺管理区分等通知書(様式第五号)の事業者用の控えに当該労働者の署名又
   は記名押印を受けたものとするよう指導されたいこと。
 一二 随時申請の手続(第二〇条関係)
   随時申請を行う場合の申請先について、事業場の所在地を管轄する都道府県労働基準局長を原則と
  するが、常時粉じん作業に従事する労働者であつた者(当該事業場で作業転換した労働者を除く。)に
  ついては、その者の住所を管轄する都道府県労働基準局長としたこと。
 一三 記録の作成及び保存等(第二二条関係)
  (一) 第一項の「当該じん肺健康診断に関する記録」には、規則第一〇条の規定によりじん肺健康診
   断の一部を省略した場合におけるその省略したじん肺健康診断の一部に相当する検査の結果を証明
   する書面も含まれるものであること。
  (二) 第二項の「当該じん肺健康診断に係るエツクス線写真」には、規則第一〇条の規定によりじん
   肺健康診断の一部を省略した場合におけるその省略したじん肺健康診断の一部に相当する検査に係
   るエツクス線写真も含まれるものであること。
  (三) 第二項のただし書により、病院、診療所又は医師がエツクス線写真を保存している場合は事業
   者の保存義務は除外されることとなるが、病院、診療所又は医師がこれらのエツクス線写真を廃棄
   しようとする場合には、事業者は、これを譲り受け、じん肺健康診断の実施の日から七年に達する
   までの間保存するよう指導されたいこと。
 一四 転換手当の免除(第二九条関係)
  (一) 第一号及び第二号は、当該事業場で粉じん作業に従事した期間がごく短期間であり、当該労働
   者のじん肺管理区分が管理三であることについては当該事業者の責任はないと考えられることから、
   転換手当の支払義務を除外したものであること。
  (二) 第一号の「遅滞なく」とは、事業者が都道府県労働基準局長からじん肺管理区分の決定の通知
   を受けた日からおおむね一カ月程度の期間をいうこと。
  (三) 第三号の「その事由がやんだ後に従前の作業に従事することが予定されている事由」には、景
   気変動による一時帰休、ストライキによる休業、労働組合専従のための休職等が含まれること。
    なお、このような事由により休業した後、従前の作業に復帰することなく粉じん作業以外の作業
   に常時従事することとなつたとき、又は離職したときは、その時点で転換手当が支払われるべきも
   のであること。
  (四) 第四号の「天災地変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつたこと。」及
   び第五号の「労働者の責に帰すべき事由」の解釈は、労働基準法第二〇条第一項ただし書の解釈と
   同一であること。
  (五) 第六号の「労働契約を自動的に終了させる事由」には、休職期間の満了等が含まれること。
 一五 報告(第三七条関係)
   事業者が毎年都道府県労働基準局長に報告すべき事項について、従来のじん肺健康診断の実施状況
  のほかに、じん肺管理区分別内訳等を含め、じん肺に関する健康管理の実施状況を報告することとし
  たこと。
   なお、粉じん作業を行う事業に係る事業者で、当該年にじん肺健康診断を実施しなかつた事業者も、
  第一項の報告を行う必要があること。
第四 災害補償関係
 一 業務上疾病の範囲
  (一) 新法第四条第二項によるじん肺管理区分が管理四と決定された者に係るじん肺及び新法第二条
   第一項第二号のじん肺の合併症(以下「合併症」という。)は、労働基準法施行規則(昭和二二年厚
   生省令第二三号)別表第一の二第五号(昭和五三年四月一日前においては同規則第三五条第七号)に
   掲げる業務上の疾病として取り扱うこと。
  (二) じん肺管理区分が管理四と決定された者及び合併症にかかつていると認められる者が、じん肺
   若しくは合併症に係る療養中にじん肺若しくは合併症が原因となつて合併症に該当する疾病を併発
   し、若しくは付加した場合又は当該合併症に該当する疾病が原因となつて死亡した場合には、前記
   (一)により取り扱うこととするが、じん肺又は合併症が原因となつて、合併症に該当しない他の疾
   病を併発した場合であつても当該疾病がじん肺又は合併症との相当因果関係が認められるものにつ
   いては、従前の通り、業務上の疾病として取り扱うこと。
 二 じん肺及び合併症の認定の手続き
  (一) 新法第一二条若しくは第一六条の二に基づく提出又は新法第一五条第一項若しくは第一六条第
   一項に基づく申請の結果、じん肺管理区分が管理四と決定された者又はじん肺管理区分が管理二若
   しくは管理三と決定された者で合併症にかかつていると認められたものから労災保険給付の請求が
   あつた場合は、じん肺管理区分決定通知書(様式第四号)又はその写し、粉じん職歴、管理区分、決
   定の根拠となつたじん肺、健康診断結果等を確認のうえ、その健康診断を行つた日(当該決定の根
   拠となつた資料がエツクス線写真であるときはその撮影の日、肺機能検査の結果であるときはその
   検査実施日若しくは両方で確認できるものについてはそのうちいずれか前の日又は結核精密検査若
   しくは肺結核以外の合併症に関する検査の結果であるときはその検査実施日)に発病したものとみ
   なして所定の事務処理を行うこと。
  (二) 既にじん肺管理区分が管理二又は管理三と決定された者から合併症に係る労災保険給付の請求
   があつた場合は当該じん肺管理区分の決定に係るじん肺管理区分決定通知書(様式第四号)又はその
   写し、粉じん職歴、その最終の管理区分決定の根拠となつたじん肺健康診断結果等を確認のうえ、
   合併症に係る審査を行い、合併症にかかつていると認められる場合は、当該合併症の症状確認(医
   師による診断確認)の日に発病したものとして所定の事務処理を行うこと。
  (三) じん肺管理区分が管理四以外の者からじん肺に係る労災保険給付の請求があつた場合又はじん
   肺管理区分が管理一の者若しくはじん肺管理区分の決定を受けていない者から合併症に係る労災保
   険給付の請求があつた場合は、新法第一五条第一項によるじん肺管理区分決定の申請を行うべきこ
   とを指導し、当該申請によるじん肺管理区分の決定をまつて、前記(一)又は(二)による所定の事務
   処理を行うこと。なお、この場合において、当該労働者が死亡し、又は重篤な疾病にかかつている
   等随時申請を行うことが不可能又は著しく困難な事情があると認められるときは、収集可能な範囲
   でじん肺の進行程度の判断に必要な資料等の収集を図り、地方じん肺診査医の意見に基づき、じん
   肺管理区分に相当するじん肺の進行度の判断を行つて差し支えない。
 三 経過措置
  (一) 施行日前に旧法第一二条第一項の規定により行つた健康診断の結果を証明する書面等の提出及
   び旧法第一五条第一項又は第一六条第一項の規定により行つた申請であつて旧法第一三条第二項
   (旧法第一五条第三項及び第一六条第二項において準用する場合を含む。以下同じ。)の規定による
   決定がなかつたものは、施行日以後新法によるじん肺管理区分が決定されることになるが、これに
   よりじん肺管理区分が管理四と決定された者から労災保険給付の請求があつた場合は、当該じん肺
   管理区分決定の根拠となつたじん肺健康診断を行つた日(当該決定の根拠となつた資料がエツクス
   線写真であるときはその撮影の日、肺機能検査の結果であるときはその検査実施日若しくは両方で
   確認できるものについてはそのうちいずれか前の日又は結核精密検査若しくは肺結核以外の合併症
   に関する検査の結果であるときはその検査実施日)から施行日の前日までの間は、旧法による健康
   管理の区分が管理四であつた者とみなし、施行日以後は新法によるじん肺管理区分が管理四である
   者として、所定の事務処理を行うこと。
  (二) 旧法第四条第二項の規定による健康管理の区分が管理一(じん肺にかかつていない者を除く。)、
   管理二又は管理三であつた者が施行日の前日までに活動性の肺結核にかかつた場合であつて旧法第
   一二条第二項、第一五条第一項若しくは第一六条第一項の規定による手続き又はこれらによる健康
   管理の区分の変更の決定がなかつた者から施行日前の期間に係る労災保険給付の請求があつた場合
   は、当該肺結核の診断があつた日から施行日の前日までの間は、前記(一)と同様に旧法による健康
   管理の区分が管理四であつた者とみなすこととし、施行日以後の期間に係るものは新法第二条第一
   項第二号の規定による合併症として取り扱うこと。
  (三) 施行日前に旧法第一三条第二項の規定により行つた健康管理の区分の決定は、新法第一三条第
   二項の規定によるじん肺管理区分の決定とみなされるので、施行日の前日において旧法による健康
   管理の区分が管理四である者は、新法によるじん肺管理区分の管理四として、引き続き所定の労災
   保険給付を行うこと。
    なお、活動性の肺結核があると認められたことにより、施行日の前日において旧法による健康管
   理の区分が管理四である者が、施行日以後医師により当該肺結核についての療養を要しなくなつた
   と診断され、かつ、肺結核以外の合併症がないと認められる場合は、労働者災害補償保険法の規定
   による療養補償給付及び休業補償給付の支給要件を満たされないこととなる。この場合、健康管理
   上の取扱いとしては、政令第二条の規定によつてみなされたじん肺管理区分の管理四の決定が当然
   には変更されないので、当該労働者若しくは労働者であつた者又は事業者に対して可能な限り新法
   第一五条第一項又は第一六条第一項の規定による申請を行うよう指導することが望ましい。なお、
   これに該当し、随時申請を行うために受けたじん肺健康診断は、治療のために必要な検査とみなし
   て差し支えないこと。