法令 安全衛生情報センター:ホームへ
ホーム > 法令・通達(検索) > 法令・通達

労働安全衛生規則及び電離放射線障害防止規則の一部を改正する省令の
施行等について

改正履歴
基発第253号
平成13年3月30日
都道府県労働局長 殿

厚生労働省労働基準局長




労働安全衛生規則及び電離放射線障害防止規則の一部を改正する省令の施行等について


 労働安全衛生規則及び電離放射線障害防止規則の一部を改正する省令(平成13年厚生労働省令第42号。以下「改正省令」という。)が、平成13年3月27日に公布され、平成13年4月1日から施行されることとなったところである。
 今回の改正は、放射線審議会の「ICRP1990年勧告(Pub.60)の国内制度等への取入れについて(意見具申)」及びその他の国際基準の取入れに対応するためのものである。
 ついては、下記に示す今回の改正の趣旨を十分に理解し、関係者への周知徹底を図るとともに、その運用に遺漏なきを期されたい。
 なお、昭和64年1月1日付け基発第3号「電離放射線障害防止規則第56条に規定する健康診断の項目の省略の可否について」及び平成2年5月22日付け基発第300号「電離放射線障害防止規則第3条第1項の規定による管理区域の設定の基準について」は、平成13年3月31日をもって廃止する。



第1 改正の要点
1 「線量当量」を「線量」に改める等の用語についての改正を行ったこと。
2 管理区域等における基準を強化したこと。(改正省令による改正後の電離放射線障害防止規則(昭和47年労働省令第41号。以下「電離則」という。)第3条、第3条の2関係)
3 放射線業務従事者の被ばく線量限度を引き下げたこと。(電離則第4条、第5条、第6条関係)
4 緊急作業時における被ばく線量限度として、実効線量以外に等価線量を定めたこと。(電離則第7条関係)
5 放射線業務従事者の線量の測定結果の記録の保存期間を30年に延長したこと。(電離則第9条関係)
6 特定エックス線装置を用いて間接撮影及び透視の作業を行う場合の受像器からの漏えい線量率等について改正したこと。(電離則第12条、第13条関係)
7 第42条第1項各号のいずれかに該当する事故が発生したときは、速やかに、その旨を所轄労働基準監督署長に報告しなければならないこととしたこと。(電離則第43条関係)
8 第44条第1項各号のいずれかに該当する労働者があるときは、速やかに、その旨を所轄労働基準監督署長に報告しなければならないこととしたこと。(電離則第44条関係)
9 放射線業務従事者の健康診断の検査項目の追加及びその省略方法等について改正したこと。(電離則第56条関係)
10 放射線業務従事者の健康診断結果の記録の保存期間を30年に延長したこと。(電離則第57条)

第2 用語の改正関係
1 改正の概要
従来用いられてきた線量等の用語について、次のとおり改正したこと。
改正前の用語 改正後の用語
組織線量当量 等価線量
実効線量当量 実効線量
線量当量(率) 線量(1センチメートル線量当量(率)又は70マイクロメートル線量当量(率)を限定的に表す場合を除く。)
照射線量(率) 自由空気中の空気カーマ(率)
被ばく線量測定用具 放射線測定器
測定器
2 電離則等で使用されている用語について
(1) 等価線量(電離則第5条、第6条、第7条、第9条、第44条、第45条、様式第1号及び第2号関係)
「等価線量」とは、放射線が人体に与える影響のうち、確定的影響(注1)を評価するための量であり、人体の特定の組織・臓器が受けた吸収線量(組織・臓器1s当たりに吸収されたエネルギー)に係数(放射線荷重係数)を乗じることにより求められる。単位は「ジュール毎キログラム」、その別称を「シーベルト」という。
なお、「等価線量」は、改正省令による改正前の電離則(以下「旧電離則」という。)における「組織線量当量」に当たる用語であるが、国際放射線防護委員会(以下「ICRP」という。)が、特定の組織・臓器における吸収線量及び放射線荷重係数の評価をより厳密に行い、より正確な用語である「等価線量」に改めることとしたことを受け、今回改めることとしたものである。
(注1)「確定的影響」とは、以前の「非確率的影響」に当たるもので、障害の発生と被ばく線量との間にしきい値が存在し、その障害の重篤度が被ばく線量に依存するような障害をもたらす放射線影響をいう。この影響には、白内障及び皮膚障害等がある。
(2) 実効線量(電離則第3条、第3条の2、第4条、第6条、第7条、第9条、第18条、第42条、第44条、第45条、第56条、様式第1号及び第2号関係)
「実効線量」とは、放射線が人体に与える影響のうち、確率的影響(注2)を評価するための量であり、人体の各組織・臓器が受けた等価線量に係数(組織荷重係数)を乗じたものを加算することにより求められ、電離則では、人体が受ける放射線の量を直接表す場合と作業環境中の放射線の量を表す場合の二通りに用いられている。単位は「ジュール毎キログラム」、その別称は「シーベルト」である。
なお、「実効線量」は、旧電離則における「実効線量当量」に当たる用語であるが、ICRPにおいて「組織線量当量」が「等価線量」に改められたこと、及び組織荷重係数も見直されて「実効線量」に改められたことを受け、今回改めることとしたものである。
(注2)「確率的影響」とは、障害の発生確率と被ばく線量との間にしきい値を持たない比例関係があり、その障害の重篤度が被ばく線量に依存しないような障害をもたらす放射線影響をいう。当該影響には、発がん及び遺伝的影響がある。
(3) 外部放射線による実効線量(電離則第3条、第3条の2、第18条関係)
「外部放射線による実効線量」は、電離則において、作業場所の空間に存在する放射線の量を、実効線量で評価する場合に用いている。
(4) 空気中の放射性物質による実効線量(電離則第3条、第3条の2関係)
「空気中の放射性物質による実効線量」は、電離則において、作業場所の空間に存在する放射性物質の量を、それを体内に取り込んだ場合に人体が受ける実効線量として評価する場合に用いている。
(5) 1センチメートル線量当量(率)(電離則第3条、第3条の2、第8条、第9条、第15条、第54条関係)
「1センチメートル線量当量」とは、外部被ばくによる実効線量の評価に用いられる測定に係る量で、放射線の種類及びエネルギーから一定の換算係数を用いて求められる。単位は「ジュール毎キログラム」、その別称は「シーベルト」である。実効線量は直接測定することができないので、このような量を近似値として使用する。
1センチメートル線量当量は、人体が受ける放射線の量を評価する場合と作業環境中の放射線の量を評価する場合とでは異なった値となり、人体が受ける放射線の量を評価する場合の「1センチメートル線量当量」は、国際放射線単位・測定委員会(以下「ICRU」という。)が導入した個人線量当量に相当し、人体の深さ1センチメートルにおける線量とみなされる量である。
一方、作業環境中の放射線の量を評価する場合の「1センチメートル線量当量」は、ICRUが導入した周辺線量当量に相当し、ICRU球(注3)の深さ1センチメートルの位置につくられる線量とみなされる量である。
なお、「1センチメートル線量当量率」とは、1時間当たりの1センチメートル線量当量であり、単位は「シーベルト毎時」である。
(注3)「ICRU球」とは、放射線を受けたときに人体の組織とほぼ等しい相互作用を示す物質からなる直径30センチメートルの均質な球をいう。
(6) 70マイクロメートル線量当量(率)(電離則第3条、第3条の2、第8条、第9条、第15条、第54条関係)
「70マイクロメートル線量当量」とは、外部被ばくによる皮膚の等価線量の評価に用いられる測定に係る量で、放射線の種類及びエネルギーから一定の換算係数を用いて求められる。単位は「ジュール毎キログラム」、その別称は「シーベルト」である。等価線量も直接測定することはできないので、このような量を近似値として使用する。
70マイクロメートル線量当量も人体が受ける放射線の量を評価する場合と作業環境中の放射線の量を評価する場合とでは、異なった値となり、人体が受ける放射線の量を評価する場合の「70マイクロメートル線量当量」は、ICRUが導入した個人線量当量に相当し、人体の深さ70マイクロメートルにおける線量とみなされる量である。一方、作業環境中の放射線の量を評価する場合の「70マイクロメートル線量当量」は、ICRUが導入した方向性線量当量に相当し、ICRU球の深さ70マイクロメートルの位置につくられる線量とみなされる量である。
なお、「70マイクロメートル線量当量率」とは、1時間当たりの70マイクロメートル線量当量であり、単位は「シーベルト毎時」である。
(7) 3ミリメートル線量当量
「3ミリメートル線量当量」とは、外部被ばくによる眼の等価線量を評価するための測定に係る量であり、旧電離則で用いられていた量であるが、1センチメートル線量当量と70マイクロメートル線量当量の測定・評価により、眼の水晶体の等価線量が限度を超えないように管理することができることができることから、3ミリメートル線量当量の測定は、今回の改正で削除することとなった。
改正後は、1センチメートル線量当量及び70マイクロメートル線量当量のうちのどちらか適切な方をもって眼の水晶体の等価線量とみなすこととなる。
(8) 線量当量(率)(電離則第8条、第45条、第54条関係)
「線量当量(率)」とは、電離則では、1センチメートル線量当量(率)及び70マイクロメートル線量当量(率)を包括的に表す用語として用いている。
(9) 線量(電離則第3条の2、第8条、第9条、第47条、第52条の3、第56条関係)
「線量」とは、電離則では、「等価線量」、「実効線量」及び「線量当量」を包括的に表す用語として用いている。
(10) 外部被ばくによる線量(電離則第8条、第9条関係)
「外部被ばくによる線量」とは、体外から照射される放射線によって被ばくする場合の線量をいう。
(11) 内部被ばくによる線量(電離則第8条関係)
「内部被ばくによる線量」とは、放射性物質の粉じん、蒸気及びガス等を吸い込むこと(吸入摂取)並びに液体又は個体の放射性物質を飲み込むこと(経口摂取)等によって、体内の放射性物質から照射される放射線によって被ばくする場合の線量をいう。
本来、「内部被ばくによる実効線量」及び「外部被ばくによる等価線量」を包括的に表現し得るが、内部被ばくの場合、実効線量を限度を超えないように管理すれば、いかなる組織・臓器にも確定的影響が生じるおそれがないため、電離則では、「外部被ばくによる等価線量」に関する規定がなく、「内部被ばくによる実効線量」のみを表す用語として用いている。
(12) 自由空気中の空気カーマ(率)(電離則第12条、第13条、第18条の4関係)
「カーマ」(kerma:Kinetic Energy Released per unit MAss)とは、ある物質1sに非荷電電離性粒子(エックス線、ガンマ線、中性子線)が照射されたときに、電離作用によって、その物質内に作られる荷電粒子(電子、プラスイオン)の運動エネルギーの合計であり、単位は「ジュール毎キログラム」、その別称は「グレイ」である。
非荷電電離性粒子が照射される物質が空気の場合のカーマを「空気カーマ」という。
なお、「自由空気」とは、壁等によって空気の運動が妨げられることのないような空間にある空気のことをいう。
今回の改正により「照射線量(率)(単位クーロン毎キログラム)」を、国際的に用いられている「自由空気中の空気カーマ(率)」に改めることとなった。
両者は、「1グレイ=2.97×10−2クーロン毎キログラム」で換算できる。
(13) 放射線測定器(労働安全衛生規則様式第27号、様式第28号、電離則第3条、第8条、第19条、第45条、第47条、第52条の3、第54条、第55条、第60条関係)
旧電離則では、個人の被ばく線量を測定する物を「被ばく線量測定用具」、作業環境中の放射線の量を測定する物を「測定器」として区別されていたが、現状において、機器の技術的進歩等に伴い、機器を測定用具と測定器とに明確に区別し難いことから、これらを包括的に表する用語として「放射線測定器」が用いられている。
ただし、個人の被ばく線量を測定するための放射線測定器と、作業環境中の線量を測定するための放射線測定器とでは、上記(8)等にあるとおり、測定データから1センチメートル線量当量に換算するための換算係数が異なっているので、測定の目的に応じて校正された放射線測定器を用い、又は換算を行う必要がある。

第3 細部事項
1 第1条関係
本条は、放射線により人体が受ける線量が電離則に定める限度以下であっても、確率的影響の可能性を否定できないので、電離則全般に通じる基本原則を訓示的に述べたものであること。
2 第2条関係
第2項ただし書の「密封されたもの」とは、放射性物質が浸透しない材料によって作られた容器に封入され、通常の取扱いによってその容器が破損したり、その容器から放射性物質がこぼれたりするおそれがない場合をいうものであって、金属性のカプセル入りの放射性物質、及び国際標準化機構(ISO)の規格に準拠したトリチウムを用いた夜光時計(分解する場合を除く。)等がこれに該当すること
3 第3条関係
(1) 第1項の「標識によって明示」とは、区画物に標識を付したり、床上を白線、黄線、黄黒の縞模様等により明確に区画したりすることをいうが、移動用の放射線装置を用いて臨時に非破壊検査業務等を行う場合で、これらの方法によることが困難な場合は、要所要所にスタンド、旗等を設け、これらを結ぶ線によって囲まれる区域が管理区域として明らかにされるような措置を講ずることとしても差し支えないこと。
(2) 第1項第1号の「3月間につき1.3ミリシーベルト」とは、特殊な状況下での公衆の年実効線量限度である「5ミリシーベルト」を3月間に割り振ったものであること。3月間に割り振ったのは、放射線業務従事者の実効線量の集計が、特別な場合を除き、3月ごとであること(第9条)、施設、装置等の使用時間が短い期間では大きな幅があり、放射線防護の観点からは、短い期間での実効線量によって管理区域の設定の必要性を評価することが必ずしも適当でないこと等によるためであること。
ただし、管理区域の外側の同一労働者が常時滞在する場所において、1年間につき1ミリシーベルトを超えることが予想される区域が存在する場合は、立入りや滞在時間の管理、遮へいの増強等の措置を講じることにより、当該労働者の1年間の実効線量が、公衆の1年間の被ばく線量限度である「1ミリシーベルト」を超えないようにすることが望ましいこと。
(3) 第1項第2号の区域については、設備等に付着した放射性物質を経口摂取することによる内部被ばくが一定量以上となるおそれがあるものとして、加えることとしたこと。
(4) 第3項において、管理区域の設定のために測定を行う場合の1週間の労働時間については、管理区域内の施設、装置等の使用時間又は滞在時間が社内規定で明文化されている場合等であれば、1週間の当該使用時間又は滞在時間をもって、当該管理区域における1週間の労働時間として差し支えないものであること。
(5) 第3項の「厚生労働大臣が定める限度」とは、1年間(週40時間×年50週)その空気にさらされたときに、放射性物質を吸入摂取することによって50ミリシーベルトの実効線量(第4条第1項に規定する1年間の実効線量に相当する。)を受けることになるような空気中の放射性物質の濃度であり、「空気中濃度限度」ということ。
(6) 放射線の照射中に労働者の身体の全部又は一部がその内部に入ることのないように遮へいされた構造の放射線装置等を使用する場合であって、放射線装置等の外側のいずれの箇所においても、実効線量が3月間につき1.3ミリシーベルトを超えないものについては、当該装置の外側には管理区域が存在しないものとして取り扱って差し支えないこと。ただし、その場合であっても、装置の内部には管理区域が存在するので、第1項の「標識によって明示」することは必要であること。
この装置の例としては、次のものがあるが、これらの装置を使用する場合であっても、労働者に対しては、安全衛生教育等において、放射線の人体への影響、及び被ばくを防止するための装置の安全な取扱い等について周知させること。
アエックス線照射ボックス付きエックス線装置であって、外側での実効線量が3月間につき1.3ミリシーベルトを超えないように遮へいされた照射ボックスの扉が閉じられた状態でなければエックス線が照射されないようなインターロックを有し、当該インターロックを労働者が容易に解除することができないような構造のもの
イ空港の手荷物検査装置であって、手荷物の出入口は、労働者の手指等が装置内に入ることがないように2重の含鉛防護カーテンで仕切られ、当該装置の外側での実効線量が3月間につき1.3ミリシーベルトを超えないように遮へいされているもの
ウ工場の製造工程で使用されている計測装置等で、製品等の出入口は、労働者の手指等が装置内に入ることがないように2重の含鉛防護カーテンで仕切られ、又は労働者の手指等が装置の内部に入った場合に放射線の照射が停止するインターロックを有し、かつ当該インターロックを労働者が容易に解除することができないような構造であり、装置の外側での実効線量が3月間につき1.3ミリシーベルトを超えないように遮へいされているもの
(7) 放射線装置を使用するに当たって、放射線装置の外に放射線を取り出すような場合は、通常は、その放射線が通過する空間の周囲に管理区域が存在するものであること。
(8) 3月間に放射線装置を放射線装置室以外の複数の異なった場所で使用する場合は、各場所ごとに管理区域を設定することになるが、同一労働者が当該3月間のうちに複数の異なった場所で作業を行うときであって、各場所ごとでは管理区域の外になるような区域での作業であっても、当該労働者にとっては管理区域内で作業を行っているのと同等の被ばくを受けるおそれがある場合は、管理区域内で作業を行う場合と同様の措置を講じるよう指導すること。
(9) 管理区域の設定に当たっては、別添1「管理区域の設定等に当たっての留意事項」を参考にすること。
(10) 第4項の「必要のある者」とは、業務上必要のある場合はもとより、下請事業者に雇用される労働者が塗装業務を行う場合等、その必要性が客観的に認められるような場合で管理区域に立ち入る者を含むものであること。
4 第3条の2関係
(1) 旧電離則第16条において、労働者が常時立ち入る場所における外部放射線による1センチメートル線量当量を1週間につき1ミリシーベルト(1年間につき50ミリシーベルト)以下にしなければならないこととされるとともに、旧電離則第24条第1項において、空気中の放射性物質の日平均濃度を厚生労働大臣が定める限度(1年間につき50ミリシーベルト相当)以下にすることとされていたが、今回の改正により、これらの規定を合わせて、「外部放射線による実効線量」と「空気中の放射性物質による実効線量」との合計で、1週間につき1ミリシーベルト(1年間の実効線量限度)以下にしなければならないこととしたこと。
(2) 第1項の「労働者が常時立ち入る場所」とは、室、施設等の内外を問わず労働者が常時作業し、又は通行するすべての場所をいうものであること。
(3) 第3項における1週間の労働時間については、上記3の(4)の場合と同様に取扱うこと。
(4) 1週間の実効線量が1ミリシーベルト以下であることの確認に当たっては、別添1「管理区域の設定等に当たっての留意事項」を参考にすること。
5 第4条関係
(1) 第1項の「5年間」とは、事業者が事業場ごとに定める日を始期とする5年間として差し支えないこと。
(2) 第1項の「1年間」とは、「5年間」の始期の日を始期とする1年間とすること。例えば、「5年間」を「平成13年4月1日から平成18年3月31日まで」等のように定める場合、「1年間」は「平成13年4月1日から平成14年3月31日まで」、「平成14年4月1日から平成15年3月31日まで」等とすること。
(3) 事業者は、「5年間」の途中に新たに自らの事業場の管理区域に立ち入ることとなった労働者について、当該「5年間」の始期より当該管理区域に立ち入るまでの被ばく線量を当該労働者が前の事業場から交付された線量の記録(労働者がこれを有していない場合は前の事業場から再交付を受けさせること。)により確認すること。
(4) 第1項において、実効線量限度が5年間につき100ミリシーベルトとされたことから、年間20ミリシーベルトを超える労働者が存在する事業場については、作業環境、作業方法、及び作業時間等の改善により当該労働者の被ばくの低減を図るよう指導すること。
(5) 第2項については、妊娠に気付かない時期の胎児の被ばくを、特殊な状況下での公衆の被ばくと同等程度以下になるようにするため、「3月間につき5ミリシーベルト」としたこと。なお、「3月間につき5ミリシーベルト」とは、「5年間につき100ミリシーベルト」を3月間に割り振ったものであること。
(6) 第2項の「3月間」の最初の「3月間」の始期は第1項の「1年間」の始期と同じ日にすること。例えば、「1年間」の始期を「4月1日」と定める場合、「3月間」の始期は「4月1日、7月1日、10月1日及び1月1日」となる。
(7) 上記(1)、(2)及び(5)の始期を放射線業務従事者に周知させること。
(8) 第2項の「妊娠する可能性がない」との医師の診断を受けた女性については、第1項の実効線量限度の適用を受けることになるが、これらの規定は、当該診断を受けた女性がその旨を事業者に申告することを義務付ける趣旨に解してはならないこと。
6 第5条関係
(1) 眼及び皮膚以外の組織・臓器については、第4条の実効線量限度を満たしていれば、確定的影響が生じるおそれがないことから、今回の改正では、等価線量限度を定めないこととしたこと。
(2) <編注:令和2年10月27日基発1027第4号により削除>
7 第6条関係
妊娠と診断された場合は、胎児の被ばくを公衆の被ばくと同等程度以下になるようにするため、より厳しい限度を適用することとしたこと。
8 第7条関係
(1) 第2項本文の「当該緊急作業に従事する間」とは、1つの事故に対する応急の作業に従事している期間をいい、1つの事故に対する応急作業に同一労働者が複数回従事する場合は、当該複数回従事している期間をいうこと。
(2) 第1項において、放射線業務従事者を緊急作業に従事させた場合は、当該緊急作業時における被ばく線量に応じて、当該緊急作業に従事した期間を含む「1年間」及び「5年間」における当該放射線業務従事者の被ばく線量の低減化を図るよう指導すること。
(3) 第2項において眼の水晶体及び皮膚の等価線量限度が設けられたのは、事故の場合であっても不均等被ばくが想定され、実効線量が100ミリシーベルトを超えなくとも眼の水晶体又は皮膚に確定的影響が生じるおそれがあるためであること。また、第2項各号の緊急作業時における被ばく限度は、第4条第1項及び第5条に定められている1年間の被ばく限度の2倍に相当する値として決められているものであること。
(4) 本条は、女性(妊娠する可能性がないと診断された者を除く。)の放射線業務従事者が緊急作業に従事することを妨げるものではないが、第2項の限度の適用はないので、第4条第2項又は第6条の限度が適用されること。
9 第8条関係
(1) 第1項の「管理区域に一時的に立ち入る労働者」とは、管理区域内で放射線業務を行わない労働者をいうこと。この例としては、放射線業務従事者との連絡、放射線業務の監督等のために業務上管理区域に一時的に立ち入る必要がある労働者で管理区域内で放射線業務を行わない者があること。
(2) 第1項の「管理区域に一時的に立ち入る労働者」については、次のア及びイのいずれにも該当する場合は、第1項に規定する線量の測定を行ったものとみなして取り扱って差し支えないこと。
ア管理区域内における当該労働者の外部被ばくによる実効線量が計算により求められ、その値が0.1ミリシーベルトを超えないことが確認できる場合又は当該労働者が管理区域内において放射線業務従事者と行動をともにする場合であって、当該放射線業務従事者の過去の被ばく状況から当該立入の間の外部被ばくによる実効線量が明らかに0.1ミリシーベルトを超えないことが確認できるとき
イ当該労働者の内部被ばくがない場合又は内部被ばくによる実効線量が空気中の放射性物質の濃度及び立入時間により算出でき、かつ、その値が0.1ミリシーベルトを超えないことが確認できる場合
(3) 第1項の「管理区域に一時的に立ち入る労働者」のうち、上記(2)により、線量の測定を行ったものとみなした労働者について、事業者は、当該労働者の管理区域への立入りの記録を次の事項について行い、これを少なくとも立入後1年間保存することが望ましいこと。
ア管理区域に立ち入った年月日及び時刻並びに当該管理区域から退出した年月日及び時刻
イ管理区域のうち立ち入った場所
ウ管理区域に立ち入った目的及び作業内容
エ管理区域内で当該労働者と行動をともにする放射線業務従事者等で線量の測定を行った者がいた場合は、当該者の氏名、所属及び職務内容
(4) <編注:令和2年10月27日基発1027第4号により削除>
(5) <編注:令和2年10月27日基発1027第4号により削除>
(6) 第3項第1号及び第2号に規定する部位に放射線測定器を装着するのは、当該部位にうけた1センチメートル線量当量、3ミリメートル線量当量及び70マイクロメートル線量当量のうち、実効線量及び等価線量の別に応じて、放射線の種類及びその有するエネルギーの値に基づき、当該外部被ばくによる線量を算定するために適切と認められるものから、実効線量、眼の水晶体の等価線量及び皮膚の等価線量を算定するためであること。
また、第3項第3号に規定する部位に放射線測定器を装着するのは、当該部位に受けた70マイクロメートル線量当量から、皮膚の等価線量を算定するためであること。
(7) 第3項ただし書の「これを測定することが著しく困難な場合」又は「これが著しく困難な場合」とは、その放射線に対する放射線測定器がまだ開発されていない場合等をいうこと。
(8) 第3項ただし書の「計算によって」とは、放射線又は放射性物質の種類及び数量、労働者の被ばくの状況等によって計算することをいうこと。
(9) 第4項の「管理区域のうち放射性物質を吸入摂取し、又は経口摂取するおそれのある場所」には、第22条に規定する放射性物質取扱作業室、核原料物質の掘採現場及び原子力施設における放射性物質により汚染されている区域等があること。
(10) 第4項において、3月以内ごとに1回の測定を行うのは、第4条第1項の1年間の実効線量を超えないように被ばく管理を適正に行うためであること。
(11) 女性(妊娠する可能性がないと診断されたものを除く。)について1月以内ごとに1回、それ以外の者は3月以内ごとに1回の測定を行うのは、それぞれの被ばく線量限度を適用する期間より短い期間で線量の算定、記録を行うことにより、当該被ばく線量限度を超えないように管理するためであること。ただし、1月間に1.7ミリシーベルトを超えるおそれのない女性については、3月で5ミリシーベルトを超えるおそれがないので、3月以内ごとに1回の測定を行えば足りること。
なお、「1月間に受ける実効線量が1.7ミリシーベルトを超えるおそれのある」ことの判断に当たっては、個人の被ばく歴並びに今後予定される業務内容、管理区域への立入りの程度及び作業環境測定の結果等から合理的に判断すれば足りるものであり、事故の想定等過大な安全率を見込むことを求める趣旨ではないこと。
10 第9条関係
(1) 第1項において、1日における1センチメートル線量当量が1ミリシーベルトを超えるおそれのある労働者について、線量の測定の結果を毎日確認するのは、このような労働者の場合、3月ごと又は1月ごとの線量の確認では、その間に第4条、第5条及び第6条に規定する被ばく限度を超えて被ばくしてしまうおそれがあるためであること。
このような労働者については、警報装置付きの放射線測定器を装着させること等により、一定限度以上の被ばくを避けるように配慮すること。
(2) 第2項本文において、記録の保存年限を「5年」から「30年」年に延長したのは、放射線による確率的影響が晩発的影響であることから、特定化学物質等障害予防規則の特別管理物質に係る記録等の保存に倣ったものであること。なお、「厚生労働大臣が指定する機関」としては財団法人放射線影響協会とする予定であること。
(3) 第2項第1号及び第3号で3月ごとの合計を算定、記録し、第2号及び第4号で女性(妊娠する可能性がないと診断されたものを除く。)について1月ごとの合計を算定、記録するのは、それぞれの被ばく線量限度を適用する期間より短い期間で線量の算定、記録を行うことにより、当該被ばく線量限度を超えないように管理するためであること。
(4) 第2項第1号において、「5年間」のうちのどの「1年間」についても実効線量が20ミリシーベルトを超えない者については、当該「5年間」の合計線量の確認、記録を要しないこととするが、「5年間」のうちのある「1年間」で20ミリシーベルトを超えた者については、それ以降は、毎年、「5年間」の初めからの累積線量の確認、記録を併せて行うことが望ましいこと。
(5) 管理区域に一時的に立ち入る労働者の管理区域内における線量の測定又は計算の結果の記録の保存は、これまでと同様、5年間とすることが望ましいこと。
11 第12条関係
(1) 第1項本文の「間接撮影」とは、被照射体の画像を直接フィルムに記録する(直接撮影)のではなく、蛍光板で受けた画像を一端転送してフィルムに記録する撮影方法をいうこと。
間接撮影は、集団健診時のように非常に頻繁にエックス線の照射が行われるため、被照射体の姿勢矯正、フィルムの巻取り等の補助作業に従事する労働者が、その都度安全な場所に退避する時間的余裕がなく、多量のエックス線を受けるおそれがあるため、本条において必要な防護措置を定めるものであること。
なお、今回の改正は、ICRPの1982年勧告及び国際電気標準会議が1994年に制定した医療用のエックス線装置の基準を取り入れたものであること。
(2) 「間接撮影の作業に従事する労働者」とは、エックス線装置の操作者のみではなく、上記の被照射体の矯正、フィルムの巻取り等の補助作業に従事する労働者を含むものであること。
(3) 第1項ただし書の「エックス線の照射中に間接撮影の作業に従事する労働者の身体の全部又は一部がその内部に入ることがないように遮へいされた構造の特定エックス線装置」には、次のものがあること。
アエックス線照射ボックス付きエックス線装置であって、照射ボックスの扉が閉じられた状態でなければエックス線が照射されないようなインターロックを有し、そのインターロックを労働者が容易に解除することができないような構造のもの
イ工場の製造工程で使用されている各種計測装置で、製品等の出入口にはいずれも2重の含鉛防護カーテン等で仕切られ、このカーテン等によって労働者の手指等が装置の内部に入らないようになっているもの又は労働者の手指等が装置の内部に入った場合に放射線の照射が停止するインターロックを有し、かつ、そのインターロックを労働者が容易に解除することができないような構造のもの
(4) 第1項第1号は、必要以上のエックス線が照射されることによる無用の被ばくを防止するため、受像面(被照射体の画像を受ける蛍光板等の面)におけるエックス線照射野(利用線錐(エックス線装置から照射されるエックス線の束)の断面)が、受像面を越えて広がらないようにする趣旨であること。
(5) 第1項第2号は、受像器(被照射体の画像を受ける装置。蛍光板、蛍光増倍管等がある。)を通り抜けるエックス線の量を一定量以下に遮へいできるような1次防護遮へい体を、受像器に取り付ける趣旨であること。
なお、「装置の接触可能表面」の「装置」とは、受像器及びそれに付設されている装置等の全体をいうこと。
(6) 第1項第3号は、被照射体に反射したエックス線による被ばくを防止する趣旨であること。
(7) 第2項第1号については、放射線装置室の外に移動して使用するエックス線装置の場合、前項第2号及び第3号の措置を講ずることが困難であるため、当該措置を講ずることを要しないこととし、第18条及び第18条の2の措置によりエックス線による被ばくを防止する趣旨であること。
(8) 第2項第2号については、「実効線量が1週間につき1ミリシーベルト以下となる場所」に容易に退避できる場合は、被照射体からの散乱エックス線による被ばくのおそれがないため、前項第3号の措置を講ずることを要しないこととしていること。
12 第13条関係
(1) 第1項本文の「透視」とは、エックス線を連続的又は周期的に照射して、被照射体の画像を観察することをいい、蛍光板上の画像を直接観察する「直接透視」と、画像を画面に転送して画面上の画像を観察する「間接透視」があるが、最近では「直接透視」は行われていない。
なお、今回の改正は、ICRPの1982年勧告及び国際電気標準会議が1994年に制定した医療用のエックス線装置の基準を取り入れたものであること。
(2) 「透視の作業に従事する労働者」とは、エックス線装置の操作者のみではなく、被照射体の矯正等の補助作業に従事する労働者、医療機関において患部を透視しながら施術を行う医師を含むものであること。
(3) 第1項ただし書の「エックス線の照射中に間接撮影の作業に従事する労働者の身体の全部又は一部がその内部に入ることがないように遮へいされた構造の特定エックス線装置」については、上記11の(3)の場合と同様に取り扱うこと。
(4) 第1項第1号については、透視の作業に従事する労働者が、透視時以外にエックス線を無用に受けることを防ぐための措置であり、透視作業位置において、しぼりの全閉等ができるような設備を設ける趣旨であること。
なお、医療機関において診療放射線技師が室外でエックス線装置を操作して患部を透視しながら、室内で医師が施術を行うような場合は、室内にも本号の設備を設ける必要があること。
(5) 第1項第2号は、過電流のインターロックについて規定したものであること。
本号の「管電流」とは、エックス線管を流れる電子がつくる電流をいい、それは照射されるエックス線の量に比例することから、本号の措置は、必要以上のエックス線が照射されることによる無用の被ばくを防止するため、必要以上に管電流が流れることを防止する趣旨であること。
(6) 第1項第3号は、上記11の(4)の場合と同様の趣旨であること。
(7) 第1項第4号は、受像器を通り抜ける「利用線錐中のエックス線」の量を一定量以下に遮へいできるようにする趣旨であること。
なお、工業用等の特定エックス線装置の場合は、旧電離則の照射線量率を自由空気中の空気カーマ率に単純換算したものであること。
(8) 第1項第5号は、受像器を通り抜ける「利用線錐からはみ出た散乱エックス線」の量を一定量以下に遮へいできるようにする趣旨であること。
エックス線管の焦点から照射されたエックス線は、照射口に取り付けられたしぼりで調整しても、利用線錐からはみ出るエックス線が生じる。そのエックス線についても一定量以下に遮へいできるようにしなければならないが、そのエックス線は大きな拡がりを持つため、すべてを受像器等で遮へいすることはできない。そのため、受像面における最大のエックス線照射野の周囲3pの部分までを通過するエックス線について、一定量以下に遮へいできるようにする趣旨であること。
(9) 第1項第6号は、被照射体に反射したエックス線による被ばくを防止する趣旨であること。
(10) 第2項第1号については、医療用の場合に、診断又は治療中に突然エックス線が途切れてしまうと患者に危険が生じるおそれがあるので、インターロックの代わりに透視時間を積算できるタイマーを設けることによって、労働者の被ばくの低減ができるようにするものであること。
(11) 第2項第2号については、放射線装置室の外に移動して使用するエックス線装置の場合、前項第4号から第6号までの措置を講ずることが困難であるため、当該措置を講ずることを要しないこととし、第18条及び第18条の2の措置によりエックス線による被ばくを防止する趣旨であること。
13 第18条関係
(1) 第1項については、エックス線装置等を放射線装置室以外の場所で使用する場合は、遮へい等の措置を十分に講じることができないため、装置から一定の距離離れることにより被ばくを低減しようとする趣旨であること。
(2) 第1項において、被照射体に反射したエックス線又はガンマ線による被ばくが無視できないため、「エックス線管の焦点又は放射線源」以外に、今回、「被照射体」から距離を取ることとしたこと。
(3) 第1項において、旧電離則では、「1センチメートル線量当量率が0.5ミリシーベルト毎時以下の場所」に立ち入ることが認められていたが、放射線装置室以外の場所で非破壊検査等を行う場合、事業場によって1週間の作業時間が区々であるため、線量当量率で規定すると、ある事業場にとっては1週間の作業時間が長くなることにより、1週間に1ミリシーベルト(1年間に50ミリシーベルト)を超える被ばくを受けるおそれも出てくる。このため、今回、立入りを認める場所を「外部放射線による実効線量が1週間につき1ミリシーベルト以下の場所」と定め、各事業場では、事業場ごとの1週間の作業時間の実態に応じて、立入が認められる場所を決定することができることとしたこと。
(4) 外部被ばくによる実効線量が1週間につき1ミリシーベルトを超える立入禁止場所の設定に当たっては、別添1「管理区域の設定等に当たっての留意事項」を参考にすること。
(5) 第1項ただし書の「線源容器内に放射線源が確実に収納され」とは、放射性物質を装備している機器のうち、線源容器内に迷路が設けられており、当該迷路内を移動させることにより放射線源を外部に取り出すものにあっては、放射線源が当該容器内の所定の位置に収納された状態をいうこと。
(6) 第1項ただし書の「その他必要な作業」には、シャッターの開閉の作業及び放射線源の位置の調整の作業は含まれないこと。
(7) 第2項について、旧電離則では、医療用のエックス線装置については、第1項で「間接撮影に使用するもの」に限ることとされていたが、今回、平成12年12月26日付け厚生省令第194号により医療法施行規則(昭和23年厚生省令第50号)が改正され、移動型及び携帯型エックス線装置及び手術中に使用するエックス線装置について、エックス線管の焦点及び患者から2メートル以上離れた位置で操作できる構造のものとすることとされたことに伴い、「撮影に使用する医療用のエックス線装置」を放射線装置室以外の場所で使用する場合は、「2メートル以内(外部被ばくによる実効線量が1週間につき1ミリシーベルト以下の場所を除く。)」を立入禁止とすることとしたこと。
なお、医療用のエックス線装置について「2メートル以内」とするのは、一般家屋等狭い場所で使用する必要があるためであること。
(8) 第4項の「標識により明示」については、ロープを張るなどの具体的かつ有効な方法でなければならないこと。
なお、同項の立入禁止場所は、第3条第1項の管理区域とは別個に設けるべきものであること。
14 第24条関係
(1) 「日平均濃度」を「週平均濃度」に改めたのは、放射線審議会の「ICRP1990年勧告(Pub.60)の国内制度等への取入れについて(意見具申)」において、人が常時立ち入る場所における空気中の放射性物質の濃度を「1週間につき1ミリシーベルトの実効線量に相当する濃度」以下とすることとされたことによるものであること。
(2) 核原料物質を坑内で掘採する作業においては、発破時にラドンガスの発生量が多くなるなど、空気中濃度の変動が激しいため、3月間の平均をとるものであること。
15 第25条関係
非密封の放射性物質を取り扱う場所である放射性物質取扱作業室及び核原料物質を掘採する坑内における空気中の放射性物質の濃度は、第3条の2第1項及び第24条において、空気中濃度限度(年50ミリシーベルトの実効線量に相当する濃度)を超えてはならないこととされているが、それら以外の場所については、空気中濃度限度の1/10(年5ミリシーベルト相当)以下にする趣旨であること。
16 第28条関係
(1) 「汚染が広がらない措置」には、その放射性物質が液状である場合には吸取り紙で吸い取るなどの措置が、また粉末である場合には飛散しないように湿らせた布で拭き取る等の措置があること。
(2) 汚染された区域における汚染の測定については、汚染されている区域のうち汚染密度(ベクレル毎平方センチメートル)が最も大きいと予想される場所を含め、できる限り多くの場所の100平方センチメートル(10センチメートル×10センチメートル)の範囲について、スミヤろ紙で拭き取りサーベイメータで測定するなどの方法により、当該100平方センチメートルの範囲で平均した汚染密度(当該100平方センチメートルの範囲の放射能を測定し、その結果を100平方センチメートルで乗じて得た値)で評価すること。
また、第29条第1項、第30条第1項、第32条第1項及び第41条に規定する汚染の検査についても、同様に100平方センチメートルの範囲で平均した表面密度で評価すること。
なお、第31条に規定する労働者の汚染の検査については、手の場合は300平方センチメートルの範囲で平均した表面密度で、その他の皮膚の場合は100平方センチメートルの範囲で平均した表面密度で評価すること。
17 第43条関係
(1) 本条については、旧電離則では、第42条第1項の区域(事故によって受ける実効線量が15ミリシーベルトを超えるおそれのある区域)が生じたときに、事業者は、その旨報告しなければならないこととなっていたが、事故の早期把握と速やかな対応を図る観点から、今回の改正で、同項各号の事故が発生したときは、速やかにその旨を報告しなければならないこととしたこと。
(2) 本条の報告は、特に書面に限られるものではないが、原則として第45条第1項各号に規定する事項について報告すべきものであること。
18 第44条関係
(1) 第1項第2号については、放射線業務従事者に限らずすべての労働者について、「5年間に100ミリシーベルト」若しくは「1年間に50ミリシーベルト」を超える実効線量を受けた場合又は「眼の水晶体につき5年間に100ミリシーベルト及び1年間に50ミリシーベルト」若しくは「皮膚につき1年間に500ミリシーベルト」を超える等価線量を受けた場合が該当すること。
また、緊急作業に従事する労働者についても、上記線量を受けた場合は、第1項第2号に該当すること。
(2) 第2項については、旧電離則では、第1項の診察の結果、放射線による障害が生じており、若しくはその疑いがあり、又は放射線による障害が生ずるおそれがあると認められる者があるときに、事業者は、その旨報告しなければならないこととなっていたが、労働者の事故等の早期把握と速やかな対応を図る観点から、第1項各号に該当する労働者があるときは、速やかに、その旨を報告しなければならないこととしたこと。
19 第45条関係
(1) 第1項及び第2項で、「眼の水晶体及び皮膚の等価線量」の記録が追加されたのは、第7条第2項において、緊急作業に従事する労働者の等価線量限度が追加されたためであること。
(2) 第2項の「外部放射線による線量当量率」及び第3項の「線量当量率」とは、「1センチメートル線量当量率」及び「70マイクロメートル線量当量率」を指すこと。
20 第46条関係
上記3(6)のアからウまでに掲げる装置に該当するエックス線装置については、その外側に管理区域が存在しないので、当該3(6)のアからウに掲げる状態を保持した上で当該装置を使用する場合は、エックス線作業主任者の選任は要しないこと。
ただし、事業者は、当該装置の適正な使用のため、必要な知識を有する者を当該装置の管理責任者として選任し、当該装置の安全装置等を有効に保持し、労働者の手指等が装置の中に入らないよう必要な措置を講じさせることが望ましいこと。
21 第54条関係
(1) 第1項の趣旨は、第53条第1項の管理区域において、外部放射線の量を測定することにより、当該管理区域において作業に従事する労働者が放射線にさらされている状況を知るためのものであること。測定の結果、放射線の量についてそれぞれの線量限度を上回るおそれがある場合は、施設の整備、作業方法の改善等の措置を講じることが重要であること。
(2) 第1項の「線量当量」とは、「1センチメートル線量当量」及び「70マイクロメートル線量当量」を指すこと。なお、今回、これらの規定が追加されたのは、第3条第1項において、管理区域の基準を3月間単位で規定することとなったことから、本項における測定においても、線量当量率を測定する放射線測定器のみならず、フィルムバッジ等積算型の放射線測定器での測定を行う場合が想定されるためであること。
(3) 第2項の「放射線測定器を用いて測定することが著しく困難なとき」には、放射線測定器を用いて測定することにより測定者に非常な危険を伴う場合が含まれること。
(4) 第3項ただし書については、皮膚の等価線量限度が実効線量限度の10倍であることから、70マイクロメートル線量当量(率)が1センチメートル線量当量(率)の10倍を超えるおそれのある場所では、実効線量が限度を超えるおそれよりも皮膚の等価線量が限度を超えるおそれの方が大きいので、当該場所では70マイクロメートル線量当量(率)を測定、確認していれば1センチメートル線量当量を測定、確認する必要はないという趣旨であること。
(5) 第4項の「見やすい場所に表示する等の方法」には、等線量当量(率)線の見取図の掲示又は管理区域の床上に等線量当量(率)線を引く等の方法があること。
22 第55条関係
本条の測定は、放射性物質取扱作業室内等の空気中の放射性物質の濃度を測定することにより、当該室内等において作業に従事する労働者が放射性物質にさらされている状況を知るためのものであること。測定の結果、その平均濃度が空気中濃度限度を上回るおそれがある場合は、施設の整備、作業方法の改善等の措置を講じることが重要であること。
23 第56条関係
(1) 本条に規定する健康診断は、放射線業務に従事する労働者の健康状態を継続的に把握することにより、当該労働者に対する労働衛生管理を進めるために行うものであること。
(2) 第1項において、旧電離則では、眼及び皮膚が局所的に被ばくする可能性が高いことから、定期の健康診断における白内障に関する眼の検査及び皮膚の検査について、3月以内ごとに1回行うこととしていたが、近年、放射線業務従事者の被ばく線量は大幅に減少してきており、眼及び皮膚に確定的影響が生じるおそれがある状況がきわめて少なくなってきたことから、今回の改正で6月以内ごとの検査としたこと。
(3) 第1項において、雇入れ又は放射線業務に配置替えの際に、放射線業務歴の有無にかかわらず原則として各号に掲げる検査を行わせることとされているのは、労働者が放射線業務に従事した後において、放射線による影響と同種の影響が生じた場合に、それが放射線業務に起因するものかどうかを判断する上で、また、当該労働者が放射線業務に従事した後において当該放射線業務に従事することによってどの程度の影響を受けたかを知る上で、必要とされることによるものであること。
(4) 第1項第1号については、放射線業務従事者の被ばく線量が大幅に減少してきていることを踏まえ、今回の改正で、第3項及び第4項において被ばく線量に応じて医師が必要でないと認めるときは、同項第2号から第5号までに規定する検査の一部又は全部を省略でき、又は行うことを要しないとされたところであるが、その省略等の可否を適切に判断できるように、放射線業務従事者の「自覚症状の有無」を新たに調査項目として加えることとしたこと。なお、「その評価」を加えたのは、本号の項目によって、同項第2号から第5号までに規定する検査の省略等の可否を判断するものであることを明確にしたものであること。
(5) 第2項において、雇入れ又は放射線業務に配置替えの際の健康診断において、使用する線源の種類等に応じて眼の検査を省略することができることとしたのは、白内障が生じるおそれがある線源の種類等が限定されているためであること。その線源の種類等には、中性子線源(中性子線が発生する装置を含む。)及び眼に大量のエックス線又はガンマ線を受けるおそれがある状況下でのこれら放射線の発生装置があること。それ以外の場合は、事故等による場合を除き、白内障が生じるおそれはほとんどなく、仮に事故等が起こっても、放射線による白内障が遅発性の障害であることにかんがみ、事故等が起こった時点で医師の診察を受ければ、その診察が上記(3)の役割を十分に果たすことができること。
なお、本項の眼の検査の省略の可否は線源の種類等で決定されることから、事業者が判断すれば足りるが、「被ばく歴の有無の調査及びその評価」の結果、医師が眼の検査の実施が必要と認めた場合には、実施すべきものであること。
(6) 第3項については、第1項の定期健康診断では管理区域内で常時放射線業務を行うすべての労働者に対して第1項第1号から第2号までの検査について原則実施する必要があるが、第1項第1号の検査の結果、第1項第2号から第5号までの検査の一部又は全部について医師が実施する必要がないと認めた労働者については、事業者は、当該検査を省略することができること。
(7) 第4項については、定期健康診断日の属する年の前年「1年間」(事業者が事業場ごとに定める日を始期とする1年間)に受けた実効線量が5ミリシーベルトを超えず、当該定期健康診断日の属する「1年間」に5ミリシーベルトを超えるおそれのない労働者に対しては、定期健康診断は原則第1項第1号のみを行えばよく、第1項第1号の検査の結果、第1項第2号から第5号までの検査の一部又は全部について医師が必要と認めるときに限り当該検査を実施すれば足りるものであること。なお、定期健康診断日の前年「1年間」が平成13年4月1日以前の時期を含む場合は、当該時期の実効線量当量については実効線量とみなして差し支えないこと。
(8) 第4項の「5ミリシーベルトを超えるおそれのない」ことの判断に当たっては、個人の被ばく歴及び今後予定される業務内容、管理区域への立入りの程度、作業環境測定の結果等から合理的に判断すれば足りるものであり、事故の想定等過大な安全率を見込むことを求める趣旨ではないこと。
(9) 第1項第1号の調査項目、第2項から第4項までの健康診断の省略等の可否の判断については、別途示す基準を参考にすること。
(10) 第5項の「前回の健康診断後に受けた線量」について、前回の健康診断が平成13年4月1日以前の時期に行われた場合は、当該時期から平成13年3月31日までに受けた実効線量当量又は組織線量当量は、それぞれ実効線量又は等価線量とみなして差し支えないこと。
(11) 第5項の「これを計算によっても算出することができない場合」とは、事故が発生し、第45条第2項の規定による線量の計算ができない場合等をいうこと。このような場合は、事故の状況、事故現場に労働者がとどまっていた時間等を医師に示す必要があること。
24 第57条関係
記録の保存期間の延長等については、10の(2)と同様であること。
25 様式第1号関係
(1) 今回の改正では、用語の変更のほか、眼及び皮膚について事故等による線量の記載欄を設け、「白血球百分率」として「異型リンパ球」の欄を設け、そして眼及び皮膚の定期健康診断が6月以内ごとに1回となったことを踏まえた欄の変更等を行ったこと。
(2) 「放射線業務の経歴(他の事業におけるものを含む。)」の欄については、過去の放射線業務の経歴について記載すること。
(3) 「前回の健康診断後に受けた線量」については、上記23の(10)と同様であること。
26 様式第2号関係
(1) 本様式(表面)において、用語の変更のほか、「実効線量による区分」を、第3条第1項の管理区域の設定基準及び第4条第1項の実効線量限度の改正を踏まえて見直したこと。
(2) 本様式(裏面)の備考12について、線量による区分が、今回の健康診断を行った日の属する年の前年1年間に受けた線量によって行うことになっていることに留意すること。

第4 経過措置
1 改正省令の施行の際、現に放射線業務を行っている事業者に対する電離則第3条及び第3条の2の規定の適用については、平成15年3月31日までの間は、なお従前の例によること。
2 改正省令の施行の際、現にエックス線装置に係る労働安全衛生法第88条第1項(第2項において準用する場合を含む。)の届出を行っている事業者に対する電離則第12条及び第13条の規定の適用については、なお従前の例によること。
3 改正省令の施行前から保存を開始し、改正省令の施行の際、現に保存されている電離則第9条第1項及び第57条の記録については、改正省令による改正後の第9条第1項及び第57条の規定を適用すること。この場合において、平成13年4月1日以降の残りの保存期間は、30年から、平成13年4月1日時点ですでに経過している期間を差し引いた期間となること。
第5 関係通達の一部改正について
1 昭和64年1月1日付け基発第1号「電離放射線障害防止規則の一部を改正する省令の施行について」を、平成13年3月31日をもって次のとおり改正すること。
(1) 記の第2のT、U、Vの1から6まで及び8から11まで、Wの1、2、5、6、9、11、21、24、36、39及び40を削除すること。
(2) 記の第2のWの12の(2)中「しゃへい」を「遮へい」に改めること。
(3) 記の第2のWの14の(1)中「照射線量率」を「自由空気中の空気カーマ率」に改めること。
(4) 記の第2のWの21中「第2項は、」を削除すること。
(5) 記の第2のWの24の(2)中「測定器」を「放射線測定器」に改めること。
(6) 記の第2のWの41の(3)中「線量当量」を「線量」に改めること。
(7) 記の第2のWの42中「つど」を「都度」に、「測定器」を「放射線測定器」に改めること。
2 平成12年9月19日付け基発第581号「原子力施設における放射線業務に係る安全衛生管理対策の強化について」を、平成13年3月31日をもって次のとおり改正する。
(1) 記の4の(2)及び(4)並びに様式第1号中「線量当量(「線量当量率」を除く。)」を「実効線量」に改めること。
(2) 様式第1号中「放射線測定用具」を「放射線測定器」に改めること。
(3) 様式第3号中「実効線量当量」を「実効線量」に、「線量当量」を「実効線量」に改めること。
(4) 様式第4号について、別添2のとおり改めること。