安全衛生情報センター
電離放射線障害防止規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令(平成17年厚生労働省令第98号。 以下「改正省令」という。)が本日、公布され、施行されたところである。 今回の改正は、放射線審議会において示された「規制免除について(国際基本安全基準における規制免 除レベルの国内法令への取り入れ検討結果)」等に対応するため、電離放射線障害防止規則(昭和47年労働 省令第41号)に規定する放射性物質の定義として国際原子力機関等の国際機関が提唱した放射性同位元素 の種類ごとの数量及び濃度の数値基準(以下「国際免除レベル」という。)を採用する等所要の整備を行 うものである。 ついては、下記に示す今回の改正の趣旨を十分に理解し、関係者への周知徹底を図るとともに、その運 用に遺漏なきを期されたい。
第1 改正の要点 1 電離放射線障害防止規則の一部改正関係 (1) 放射性物質の定義に国際免除レベルを採用することとしたこと。(第2条関係) (2) 放射性同位元素等の規制に関する法律(昭和32年法律第167号。旧「放射性同位元素等による放 射線障害の防止に関する法律」。以下「RI法」という。)に規定する表示付認証機器又は表示付特 定認証機器(以下「表示付認証機器等」という。)について、掲示しなければならない事項を「機器 の種類並びに装備している放射性物質に含まれた放射性同位元素の種類及び数量(単位ベクレル)」 に限ることとしたこと。(第14条関係) (3) 自動警報装置及びインターロックの設置に係る基準を改めたこと。(第17条関係) (4) 第二種放射線取扱主任者免状(一般)を第二種放射線取扱主任者免状に改めたこと。(第51条及び 第52条の4関係) 2 労働安全衛生規則の一部改正関係 表示付認証機器等について、労働安全衛生法第88条第1項又は第2項の規定に基づく計画の届出の対 象となる機械等から除外したこと。(別表第7の21の項関係) 第2 細部事項 1 電離放射線障害防止規則の一部改正関係 (1) 第2条関係 ア 電離放射線障害防止規則で規定する放射性物質(以下「放射性物質」という。)の定義として国 際免除レベルを採用することとした放射性同位元素等を別表第1に掲げることとしたこと。また、 トリウム、ウラン及びプルトニウムの定義については、国際免除レベルの採用について検討が進 められている段階であることから、国際免除レベルを採用せず、従前通りの取扱いとすることと し、別表第2に掲げることとしたこと。 イ 第1項第1号は、別表第1に掲げる放射性同位元素が1種類の場合においては、その放射性同位元 素が固体のものか密封されたものかどうかにかかわりなく、その種類に応じて、同表に掲げる数 量及び濃度を超えるものに該当するときは放射性物質となることを明らかにするものであること。 ウ 第1項第2号は、別表第2に掲げる放射性同位元素が1種類の場合においては、その放射性同位元 素が従前の定義に該当するときは、引き続き放射性物質となることを明らかにするものであるこ と。 エ 第1項第3号は、別表第1に掲げる放射性同位元素のみが2種類以上ある集合体の場合においては、 その放射性同位元素が固体のものか密封されたものかどうかにかかわりなく、その集合体の放射 性同位元素のそれぞれの数量及び濃度の同表第2欄に掲げる数量及び第3欄に掲げる濃度に対する 割合の和が1を超えるものに該当するときに放射性物質となることを明らかにするものであること。 オ 第1項第4号は、別表第2に掲げる放射性同位元素のみが2種類以上ある集合体の場合又は別表第1 に掲げる放射性同位元素と別表第2に掲げる放射性同位元素が併せて2種類以上ある集合体の場合 においては、従前通り、その集合体の放射性同位元素のそれぞれの数量の別表第1又は別表第2の 第2欄に掲げる数量に対する割合の和が1を超えるものに該当するときに放射性物質となることを 明らかにするものであること。 ただし、その濃度が74ベクレル毎グラム以下の固体のもの及び密封されたものでその数量が3.7 メガベクレル以下のものは放射性物質には該当しないこと。 (2)第14条関係 ア 放射性物質の定義として国際免除レベルを採用することとしたことにより、新たに放射性物質 を装備している機器に該当することとなるものがあるが、これらの機器の中には、装備される放 射性同位元素の数量等からみて放射線障害のおそれが極めて少ないと認められるものがある。表 示付認証機器等はこのような機器に該当することから、現在の放射性物質を装備している機器に 義務付けられている標識の掲示について、その掲示事項を「機器の種類並びに装備している放射 性物質に含まれた放射性同位元素の種類及び数量(単位ベクレル)」のみに限ることとしたもので あること。ただし、表示付認証機器等であっても、それに使用する放射線源を交換し、又は洗浄 するものについては、放射線源の紛失等を防止する観点から、従前どおりの標識の掲示を行わな ければならないこと。 イ 表示付認証機器等とは、RI法に基づき、原子力規制委員会又は登録認証機関が、機器の設計、 使用条件及び品質管理の方法について審査し、通常の使用方法であれば、特別な管理を要するこ となく安全性を十分に担保できることを認証したものであることを表示している機器であること。 また、当該機器には設計認証印又は特定設計認証印(別図参照)、「原子力規制委員会」の文字 (登録認証機関が認証を行った場合は、当該登録認証機関の名称又は当該登録認証機関を特定で きる文字若しくは記号)及び設計認証又は特定設計認証に係る認証番号が表示されるものである こと。 なお、表示付認証機器としては、ガスクロマトグラフ等が、表示付特定認証機器としては煙感 知器、レーダー受信部切替放電管等が想定されていること。 ウ 表中の「交換」には、機器を使用する都度行う当該機器への放射線源の着脱は含まないもので あること。このような使用の都度放射線源の着脱を要する機器としては、液面レベル計があるこ と。 また、「洗浄」には、ガスクロマトグラフに使用されるエレクトロン・キャップチャ・ディテ クタ(Ni-63等を使用)の洗浄があること。 (3) 第17条関係 ア 第2項において、放射性物質を装備している機器を放射線装置室内で使用する場合であって自 動警報装置の設置が義務付けられることのない機器となる基準について、その数量が370ギガベ クレルを超えるから400ギガベクレル以上に改めたものであること。 イ 第7項は、放射性物質を装備している機器を使用する場合であってインターロックの設置が義 務付けられることとなる機器の基準について、111テラベクレルを超えるから100テラベクレル以 上に改めたものであること。 (4) 第51条及び第52条の4関係 ア 放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律の一部を改正する法律(平成16年法律 第69号。以下「改正放射線障害防止法」という。)に基づき、第二種放射線取扱主任者免状(一般) が第二種放射線取扱主任者免状という名称に改められたことに伴い、規定を整備するものである こと。 イ 改正放射線障害防止法附則第8条の規定により、第二種放射線取扱主任者免状(一般)は第二種 放射線取扱主任者免状とみなされることから、第二種放射線取扱主任者免状(一般)については、 第二種放射線取扱主任者免状として、従前通りの取扱いを行うこと。 (5) 別表第1関係 ア 第1欄の化学形等の欄中の「サマリウム中の147Smの天然の組成を人為的に変えていないもの」 に該当するものとしては、サマリウム磁石及びサマリウムセラミックスがあること。 イ 第1欄の核種の欄中の「その他の放射性同位元素」とは、現段階では国際免除レベルが示され ていないものであり、これについては、アルファ線を放出するもの又はアルファ線を放出しない ものに分類し、それぞれ第2欄の数量及び第3欄の濃度を超えるものが放射性物質に該当すること となること。 ウ 備考の2の表の子孫核種の欄中に掲げられている括弧内の数値は、当該子孫核種に崩壊の経路が 二以上ある場合における一の経路の崩壊の全体の崩壊に対する割合(分岐比)をいうものであるこ と。 2 労働安全衛生規則の一部改正関係 表示付認証機器等について、労働安全衛生法第88条第1項又は第2項の規定に基づく計画の届出の対 象となる機械等から除外することとしたものであること。 なお、この改正は、1の(2)のアと同趣旨であること。 第3 施行期日等 1 施行期日 改正省令は、平成17年6月1日から施行するものであること。 2 経過措置 (1) 改正省令により新たに放射性物質に該当するもののみを装備している機器又は新たに放射性物質 と該当するもののみが密封されたもので、改正省令の施行日前に製造され、又は輸入されたもの及 びこれらのものと同一の型式のものであって平成19年3月31日までに製造され、又は輸入されたも のは、改正省令による改正後の電離放射線障害防止規則(以下「新電離則」という。)の規定は適用 しないこと。 なお、新たに放射性物質に該当するものを装備している機器としては、煙感知器、レーダー受信 部切換放電管があること。 (2) 改正省令の施行の際現に存する放射性物質を装備している機器を使用する放射線装置室の出入口 で人が通常出入りするものに対する新電離則第17条第2項の規定の適用については、なお従前の例 によること。 ただし、RI法第10条第2項の変更の許可の申請が行われるような変更(※)が放射性物質を装備す る機器を使用する放射線装置室の出入口で人が通常出入りするものになされる場合には、インター ロックを設置しなければならないものであること。 ※ 下記の事項に係る変更をいうこと。 @ 放射性同位元素の種類、密封の有無及び数量又は放射線発生装置の種類、台数及び性能 A 使用の目的及び方法 B 使用の場所 C 放射性同位元素又は放射線発生装置の使用をする施設の位置、構造及び設備 D 放射性同位元素を貯蔵する施設の位置、構造、設備及び貯蔵能力 E 放射性同位元素及び放射性同位元素によって汚染された物を廃棄する施設の位置、構造及び設 備 別図 (放射性同位元素等の規制に関する法律施行規則(昭和35年総理府令第56号)別図と同じ)
注 1 三葉マークは、日本産業規格による放射能標識の形状とすること。 2は、0.2センチメートル以上とすること。 3 放射性同位元素装備機器に直接表示することが著しく困難な場合にあってはその容器の見やすい 箇所に付すこと。