「労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づき厚生労働大臣が定める化学物質による健康障害を防止するための指針」の周知について

基発1010第2号
平成24年10月10日
都道府県労働局長 殿
厚生労働省労働基準局長

「労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づき厚生労働大臣が定める化学物質による健康障害を防止する ための指針」の周知について

 労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第28条第3項において、厚生労働大臣は、がんその他の重度の健
康障害を労働者に生ずるおそれのある化学物質で厚生労働大臣が定めるものを製造し、又は取り扱う事業
者が、当該化学物質による健康障害を防止するための指針を公表することとされており、これまでにアン
トラセン等26物質が定められ、これらの物質に係る指針が公表されている。
 今般、日本バイオアッセイ研究センターにおける哺乳動物を用いた長期毒性試験の結果から、2-アミノ
-4-クロロフェノール及び1-ブロモブタンが哺乳動物にがんを生じさせることが判明した。
 これらの物質の人に対するがん原性については現在確定していないが、労働者がこれらの物質に長期間
ばく露された場合に、がんを生ずる可能性が否定できないことから、厚生労働省労働基準局長が専門家を
参集して開催した「化学物質の健康障害防止措置に係る検討会」において、この観点から健康障害を防止
するための対策について検討がなされた。
 この検討結果を踏まえて、平成24年10月10日付けでこれらの2物質を「労働安全衛生法第28条第3項に基
づき厚生労働大臣が定める化学物質」(平成3年労働省告示第57号)の対象とするとともに、これらの2物質
及び前述の26物質の計28物質による労働者の健康障害を防止するための指針を別添1のとおり策定し、同
日付け官報に公示したところである(健康障害を防止するための指針公示第23号。以下「新指針」という。)。
 ついては、下記事項に留意の上、化学物質による健康障害を防止するために、各都道府県労働局におい
て新指針を閲覧に供する(指針が厚生労働省ホームページに掲載されている旨を知らせることを含む。)と
ともに事業者及び関係事業者団体等に対してその周知を図り、各事業場においてこれらの化学物質による
健康障害の防止対策が適切に行われるよう指導されたい。
 また、関係事業者団体に対しては、別添2により、新指針の周知を図るよう要請したので了知されたい。
 なお、平成23年10月28日付けで公示された26物質に係る指針は、新指針の公示により廃止されたところ
であるが、従来の指針に関する通達については、新指針により出されたものとして取り扱うこととするの
で留意されたい。
第1 新指針の全般的事項
 1 新指針の対象物質等
    新指針の対象物質は、これまで厚生労働大臣により指針が定められていたアントラセン等26物質に
  加え、哺乳動物の長期毒性試験においてがん原性が認められ、労働安全衛生法第28条第3項の規定に基
  づき厚生労働大臣が定める化学物質として追加された以下の2物質(カッコ内はCAS登録番号を示す。)
  である。
    ア 2-アミノ-4-クロロフェノール(95-85-2)
    イ 1-ブロモブタン(109-65-9)
    また、これらの2物質に適用される措置は、新指針3(3)、4(2)、5、6及び7(3)である。
    なお、N,N-ジメチルホルムアミド(68-12-2)、ヒドラジン及びその塩並びにヒドラジン一水和物
   (302-01-2、7803-57-8ほか)、2-ブテナール(123-73-9、4170-30-3及び15798-64-8)について、
   CAS登録番号の表記を改めている。

 2 新指針策定の趣旨
    労働安全衛生規則の一部を改正する省令(平成24年厚生労働省令第9号。以下「平成24年改正省令」
  という。平成24年4月1日施行。)により労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号。以下「安衛則」
  という。)第24条の14及び第24条の15の規定が新設され、危険有害化学物質等に関する容器等への表示
  等が、これらの化学物質を譲渡し、又は提供する者の努力義務とされたこと等を踏まえ、新たな指針
  を策定することとしたものである。

 3 新指針の対象となる業務等
    新指針は、原則として、厚生労働大臣が定めた28物質又はこれらを重量の1パーセントを超えて含有
  するものを製造し、又は取り扱う業務全般を対象とするが、新指針に規定する対策のうち34及び7に
  ついては、次の点に留意が必要である。なお、新指針3及び4の適用については、別紙1を参照されたい。
  (1) 新指針3(対象物質へのばく露を低減するための措置について)関係
    対象物質へのばく露を低減するための措置に関して、対象物質等の製造・取扱業務を次の3つのグ
   ループに分けて措置を規定したものである。
    ア 対象物質等のうち、労働安全衛生法施行令(昭和47年政令第318号。以下「令」という。)別表
     第6の2で規定される有機溶剤であるクロロホルム、四塩化炭素、1,4-ジオキサン、1,2-ジクロ
     ルエタン、ジクロロメタン、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラクロルエチレン及び1,1,1-ト
     リクロルエタン(新指針3の(1)で定義される「クロロホルム」)又はこれらを重量の5パーセント
     を超えて含有するもの(新指針3の(1)で定義される「クロロホルム等」)に係る有機溶剤中毒予
     防規則(昭和47年労働省令第36号。以下「有機則」という。)第1条第1項第6号に規定する有機溶
     剤業務(以下「有機溶剤業務」という。)。
    イ 対象物質等のうち、令別表第3で規定される特定化学物質であるパラ-ニトロクロルベンゼン又
     はこれを重量の5パーセントを超えて含有するもの(新指針3の(2)で規定される「パラ-ニトロク
     ロルベンゼン等」)の製造・取扱業務。
    ウ 対象物質等の製造・取扱業務のうち、上記ア及びイ以外の業務(これには、[1]クロロホルム
     等に係る有機溶剤業務以外の製造・取扱業務、[2]クロロホルムを重量の1パーセントを超え5パ
     ーセント以下含有するものの製造・取扱業務、[3]パラ-ニトロクロルベンゼンを重量の1パーセ
     ントを超え5パーセント以下含有するものの製造・取扱業務が含まれる。)。
 (2) 新指針4(作業環境測定について)関係
    作業環境測定、測定結果の評価等に関して、対象物質等の製造・取扱業務を次の2つのグループに
   分けて措置を規定したものである。
    ア 上記(1)ア及びイの業務。
    イ ア以外の業務。
      なお、当該業務のうち、2-アミノ-4-クロロフェノール、アントラセン、キノリン及びその塩、
     1,4-ジクロロ-2-ニトロベンゼン並びに1-ブロモブタン又はこれらを重量の1パーセントを超え
     て含有するものの製造・取扱業務については、作業環境測定の実施を規定しているが、結果の
     評価を行うための指標となる値を定めていないため、結果の評価については規定していない。
 (3) 新指針7(危険有害性等の表示及び譲渡提供時の文書交付について)関係
    平成24年改正省令により、安衛則第24条の14及び第24条の15の規定が新設され、危険有害化学物
   質等に関する容器等への表示及び特定危険有害化学物質等に関する文書等による通知を行うことが、
   これらの化学物質を譲渡し、又は提供する者の努力義務とされるとともに、平成24年改正省令によ
   り新設された安衛則第24条の16の規定に基づき、化学物質等の危険性又は有害性等の表示又は通知
   等の促進に関する指針(平成24年厚生労働省告示第133号。以下「表示・通知促進指針」という。平
   成24年4月1日適用。)が制定されている。
    これに伴い、新指針7では、次の3つのグループに分けて措置を規定しており、各グループに該当
   する物質は次のとおりであること。なお、「オルト-フェニレンジアミン及びその塩」及び「ヒドラ
   ジン及びその塩並びにヒドラジン一水和物」については、塩であるか否かにより異なるグループに
   分かれるので留意すること。
    ア 危険有害性等の表示、譲渡提供時の文書交付のいずれについても労働安全衛生法(以下「法」
     という。)により義務とされているもの(表示・通知対象物)。
      表示・通知対象物は、クロロホルム、四塩化炭素、1,4-ジオキサン、1,2-ジクロルエタン、
     ジクロロメタン、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラクロルエチレン、1,1,1-トリクロルエタ
     ン及びパラ-ニトロクロルベンゼンであること。
    イ 譲渡提供時の文書交付は法により義務とされているが、危険有害性等の表示については安衛
     則により努力義務とされているもの(通知対象物)。
      通知対象物は、2,3-エポキシプロパノール、塩化アリル、オルト-フェニレンジアミン、酢酸
     ビニル、1,2-ジクロロプロパン、ノルマル-ブチル-2,3-エポキシプロピルエーテル、パラ-ジク
     ロルベンゼン、ヒドラジン及びヒドラジン一水和物、ビフェニル並びに2-ブテナールであること。
    ウ 危険有害性等の表示、譲渡提供時の文書交付のいずれについても安衛則により努力義務とされ
     ているもの(表示・通知努力義務対象物)。
      表示・通知努力義務対象物は、2-アミノ-4-クロロフェノール、アントラセン、オルト-フェ
     ニレンジアミンの塩、キノリン及びその塩、1-クロロ-2-ニトロベンゼン、1,4-ジクロロ-2-ニ
     トロベンゼン、2,4-ジクロロ-1-ニトロベンゼン、パラ-ニトロアニソール、ヒドラジンの塩、
     1-ブロモ-3-クロロプロパン並びに1-ブロモブタンであること。
    また、新指針7で規定している措置には、法又は安衛則の規定に基づく表示、通知等の措置に加え、
   表示・通知促進指針の規定に基づき、労働者(危険有害化学物質等を製造し、又は輸入する事業者の
   労働者を含む。)に当該物を取り扱わせる事業者が行うべき表示、通知等の措置が含まれていること。

第2 追加された2物質に係る新指針に基づき講ずべき措置に関する留意事項
  これまでに指針が公示された26物質については、講ずべき措置に関する留意事項が関係通達により既
 に示されているので、以下では今回追加された2-アミノ-4-クロロフェノール及び1-ブロモブタン(以
 下「追加2物質」という。)に係る留意事項のみを示す。
 1 ばく露を低減するための措置について(新指針3(3)関係)
 (1) 新指針3(3)ア関係
    追加2物質への労働者のばく露の低減を図るため、事業場における追加2物質及び
   追加2物質を重量の1パーセントを超えて含有するもの(以下「追加2物質等」という。)の製造量、取
   扱量、作業の頻度、作業時間、作業の態様等を総合的に勘案し、指針3(3)アに掲げる項目の中から
   当該事業場において適切な措置を講ずることとしたものであり、新指針3(3)に掲げる全ての項目に
   ついて措置を講ずることを求める趣旨ではないこと。例えば、1日のうち、追加2物質にばく露する
   時間が極めて短時間である等の理由によって、設備の密閉化あるいは局所排気装置の設置が必ずし
   も現実的でない場合においては、作業方法の改善及び保護具の使用を効果的に行い、追加2物質への
   ばく露の低減を図る等の措置を講ずることで足りるものであること。
    なお、新指針3(3)ア「その他必要な措置」には、より有害性の少ない代替物質への変更、隔離室
   での遠隔作業等が含まれ、新指針3(3)ア(ア)[1]「使用条件等の変更」には、使用温度の適正化等が、
   「局所排気装置等」には局所排気装置のほか、プッシュプル型換気装置及び全体換気装置が含まれる
   こと。
 (2) 新指針3(3)ア(イ)[3]関係
    追加2物質それぞれに対応する保護具を取りまとめ、別紙2に示したので参考とすること。
 (3) 新指針3(3)イ(ウ)関係
   追加2物質を含有する排気、排液等の処理については、事業場の汚染の防止についてはもちろん、
   付近一帯の汚染の防止についても配慮すること。
 (4) 新指針3(3)エ関係
    設備、装置等の操作及び点検、異常な事態が発生した場合の措置、保護具の使用等についての作
   業基準を作成し、これを労働者に遵守させることによって、より効果的にばく露の低減化を図るこ
   とを目的としたものであること。

 2 作業環境測定について(新指針4(2)関係)
  (1) 新指針4(2)ア関係
     追加2物質等を製造し、又は取り扱う業務の作業環境測定の方法等については、作業環境測定基準
   (昭和51年労働省告示第46号)の規定に準じ、次のように行うこと。
     ア 追加2物質の試料の採取方法及び分析方法は、別紙3に掲げるもの又はこれと同等以上の性能を
     有するものによること。
     イ 測定点は、単位作業場所(当該作業場の区域のうち、労働者の作業中の行動範囲、有害物の分
     布等の状況等に基づき定められる作業環境測定のための区域をいう。以下同じ。)の床面上に6
     メートル以下の等間隔で引いた縦の線と横の線との交点の床上50センチメートル以上150センチ
     メートル以下の位置(設備等があって測定が著しく困難な位置を除く。)とすること。
      ただし、単位作業場所における空気中の測定対象物の濃度がほぼ均一であることが明らかなと
     きは、測定点に係る交点は、当該単位作業場所の床面上に6メートルを超える等間隔で引いた縦
     の線と横の線との交点とすることができること。
    ウ 上記イの規定にかかわらず、上記イの規定により測定点が5に満たないこととなる場合にあっ
     ても、測定点は、単位場所について5以上とすること。
      ただし、単位作業場所が著しく狭い場合であって、当該単位作業場所における測定対象物の
     濃度がほぼ均一であることが明らかな場合は、この限りでないこと。
    エ 測定は、作業が定常的に行われている時間に行うこと。
    オ 追加2物質の蒸気又は粉じんの発散源に近接する場所において作業が行われる単位作業場所に
     あっては、上記イからエによる測定のほか、当該作業が行われる時間のうち、空気中の測定対象
     物の濃度が最も高くなると思われる時間に、当該作業が行われる位置において測定を行うこと。
    カ 1の測定点における試料空気の採取時間は、10分以上の継続した時間とすること。
  (2) 新指針4(2)イ関係
    追加2物質については、新指針4(2)アにより作業環境測定の実施を規定しているが、現段階では結
   果の評価を行うための指標となる値を定めることが困難であるため、作業環境測定の結果の評価につ
   いては規定していないものであること。ただし、追加2物質について、作業場の気中濃度を可能な限
   り低いレベルにとどめる等労働者のばく露の機会を極力減少させることを基本として管理するよう
   努めること。
 (3) 新指針4(2)ウ関係
    がん等の遅発性の健康障害はそのばく露状況を長期間にわたって把握する必要があることを考慮
   し、特化則の特別管理物質に係る作業の記録の保存の規定にならって、作業環境測定の結果の記録
   を30年間保存するものとしたこと。

 3 労働衛生教育について(新指針5関係)
   追加2物質等を製造し、又は取り扱う業務に従事している労働者及び当該業務に従事することとなっ
  た労働者に対して、追加2物質の有害性等に着目した労働衛生教育を行うこととしたこと。

 4 労働者の把握について(新指針6関係)
   労働者の氏名等の記録を保存することとしたのは、上記2(3)と同様の趣旨であること。

 5 危険有害性等の表示及び譲渡提供時の文書交付について(新指針7関係)
   上記第1の3(3)に留意点を示していること。

 6 その他
   追加2物質それぞれについて、物理化学的性質、法令による規制の状況、国が実施したがん原性試験
  の結果概要等の情報を取りまとめ、参考情報1及び参考情報2として示したこと。

第3 作業環境測定に関する参考資料
   対象物質に関する作業環境測定の方法及び測定結果の評価に用いる指標(管理濃度等)については、
  指針公表の都度、労働基準局長通達により示してきたところであるが、関係者の利便性の向上のため、
  追加2物質を含めた計28物質について取りまとめ、参考資料3として示したこと。

第4 関係通達の改正
 1 指針の施行通達関係
   平成23年10月28日付け基発1028第4号「「労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づき厚生労働大臣
  が定める化学物質による健康障害を防止するための指針」の周知について」について、精度の高い作
  業環境測定の方法が開発されたこと等を踏まえ、別紙2及び別紙3を次のように改める。

 2 屋外作業場等における作業管理に関するガイドライン関係
   平成17年3月31日付け基発第0331017号「屋外作業場における作業環境管理に関するガイドラインに
  ついて」の一部を次のように改正する。
   別表第1中114の項を115の項とし、98の項から113の項までを1項ずつ繰り下げ、97の項の次に次のよ
  うに加える。
98 2-アミノ-4-クロロフェノール
   別表第1中備考の項の前に次のように加える。
116 1-ブロモブタン
   別表第1の(注)中、「に基づく」を「に基づき厚生労働大臣が定める化学物質による」に改め、「基
  準濃度又は」を削る。
   別表第2中26の項を27の項とし、1の項から25の項までを1項ずつ繰り下げ、2の項の前に次のように
  加える。
1 2-アミノ-4-クロロフェノール ろ過捕集方法 高速液体クロマトグラフ分析方法
   別表第2に次のように加える。
28 1-ブロモブタン 固体捕集方法 ガスクロマトグラフ質量分析方法



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別紙3PDFが開きます(PDF:104KB)
参考資料1PDFが開きます(PDF:142KB)
参考資料2PDFが開きます(PDF:141KB)
参考資料3PDFが開きます(PDF:118KB)
平成23年10月28日付け基発1028第4号の別紙2PDFが開きます(PDF:177KB)
平成23年10月28日付け基発1028第4号の別紙3PDFが開きます(PDF:282KB)
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