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別添
基安発1007第3号
平成28年10月7日
全国防水工事業協会会長 殿
建設業労働災害防止協会会長 殿
厚生労働省労働基準局安全衛生部長

3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MOCA)による
健康障害の防止対策について

 今般、化成品等の製造事業場で、複数の労働者及び退職者に膀胱がんの病歴又は所見があることが明ら
かになりました(別紙1)。
 独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所の協力も得て作業実態や発生原因について調 査を行ったところ、これらの労働者及び退職者のうち多くは、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジ フェニルメタン(以下「MOCA」という。)を取り扱う作業に従事していたことが判明しました。
 MOCAは、特定化学物質障害予防規則(昭和47年労働省令第39号。以下「特化則」という。)の特定第二類 物質かつ特別管理物質として規制が行われている物質ですが、特化則に基づくMOCAの特殊健康診断の項目 に膀胱がんに関する項目が含まれていないこと等から、厚生労働省では、現在、専門家からなる検討会に おいて特殊健康診断の項目の見直しのための検討を行っており、MOCAについてもその結論を踏まえて必要 な措置を講じる予定としております。
 これらのことを踏まえ、厚生労働省においては、引き続き原因究明のための調査を実施しておりますが、 MOCAによる健康障害を防止するため、下記1のとおり法令等の改めての徹底、下記2及び3のとおり緊急の 措置の実施を要請したく、貴会の会員事業場等に対して周知いただきますようお願いします。
1 特化則に基づくばく露防止措置等の徹底(現在取扱事業場)
  MOCAを含有するウレタン樹脂防水材(注)を使用して防水工事を施工する事業においては、特化則に基
 づくばく露防止措置が徹底されているか確認すること。
  特に、不浸透性の保護手袋の着用や作業終了後の付着物の除去状況など、経皮ばく露や経口ばく露の
 おそれがないかについても点検いただきたいこと。

2 労働者等に対する膀胱がんに関する検査の実施等(現在及び過去取扱事業場)
  現在、専門家からなる検討会において特殊健康診断の項目の見直しのための検討を行っており、MOCA
 についてもその結論を踏まえて必要な措置を講じる予定としているが、それまでの間、緊急の措置とし
 て、現にこの物質を取り扱っている労働者及び過去に取り扱ったことのある労働者であって現在も雇用
 している者に対して、できる限り特化則にある膀胱がんに関する健康診断項目(別紙2)の検査を実施する
 ことが望ましいこと。また、この物質を取り扱ったことのある労働者であって既に退職している者に対
 して、同検査の受検を勧奨することが望ましいこと。

3 特化則に基づく記録の保存期間の延長(現在及び過去取扱事業場)
  本通知の冒頭で述べた事案において、現時点までの調査では、膀胱がんが発見されたのが、MOCAへの
 ばく露から30年以上経過していると考えられる者も確認された。
  原因は引き続き調査中であるが、MOCAの製造・取扱いを現在又は過去に行ったことのある事業場にお
 いては、特化則に基づくMOCAに関する作業の記録、作業環境測定の評価の記録、特殊健康診断の結果の
 記録について、当面の間、法令上の保存期間(30年間)を経過後も、引き続き、保存していただきたいこ
 と。

4 所轄の労働基準監督署への報告(現在及び過去取扱事業場)
  膀胱がんに関する検査の実施予定や状況、過去からの取扱状況と現在のばく露防止対策等の実施状況
 についてご報告いただきたく、労働基準監督署から様式をお送りしますので、お手数ですが、所轄の労
 働基準監督署にお電話等ご連絡いただきたいこと。
 
 
 (注) ウレタン樹脂防水材には、2成分形の主剤にトリレンジイソシアネート(TDI)、硬化剤にMOCAが使
   用されているものがある。TDI、MOCAはそれぞれ特化則の対象物質であり、それぞれの含有量が重
   量の1%を超える防水材については、特定化学物質作業主任者の選任、特殊健康診断の実施、不浸透
   性の保護衣等の備付け等の措置を講じなければならないものであること。
    また、特化則の適用がない場合であっても、労働安全衛生法に基づき、作業の状況等に応じて保
   護衣の着用など必要な措置の実施に努めなければならないこと。