特定化学物質障害予防規則の規定に基づく厚生労働大臣が定める性能等の一部を改正する告示の適用等について

基発0930第3号
平成26年9月30日
都道府県労働局長 殿
厚生労働省労働基準局長

特定化学物質障害予防規則の規定に基づく厚生労働大臣が定める性能等の一部を改正する告示の適用等について

 特定化学物質障害予防規則の規定に基づく厚生労働大臣が定める性能等の一部を改正する告示(平成26
年厚生労働省告示第377号。以下「改正告示」という。)が、平成26年9月29日に公示され、平成26年11月
1日(一部の規定については平成26年10月1日)から適用されることとなった。その趣旨、内容等については、
下記のとおりであるので、関係者への周知徹底を図るとともに、その運用に遺漏なきを期されたい。
第1 改正の趣旨
  本改正は、「平成25年度第2回管理濃度等検討会」及び「平成26年度第1回管理濃度等検討会」におい
 て検討された結果を踏まえ、労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令(平成26年政令第288号。以下
 「改正政令」という。)により特定化学物質に追加されたジメチル−2,2−ジクロロビニルホスフェイ
 ト(別名DDVP)(以下「DDVP」という。)の試料採取方法、分析方法及び管理濃度を定めるとともに、1,
 2−ジクロロプロパンの試料採取方法及び管理濃度を改める等の改正を行ったものである。

第2 改正の要点
 1 作業環境測定基準(昭和51年労働省告示第46号。以下「測定基準」という。)の一部改正について
  (1) 試料採取方法及び分析方法について(測定基準別表関係)
   ア 作業環境測定におけるDDVPの試料採取方法を「固体捕集方法」と、分析方法を「ガスクロマト
    グラフ分析方法」と定めたこと。
   イ 1,2−ジクロロプロパンの試料採取方法を「固体捕集方法又は直接捕集方法」から「固体捕
    集方法」に改めたこと。
  (2) クロロホルム他9物質の試料採取方法及び分析方法について(測定基準第10条第1項及び別表第1
   関係)
    改正政令により有機溶剤から特定化学物質に移行したクロロホルム、四塩化炭素、1,4−ジオ
   キサン、1,2−ジクロロエタン(別名二塩化エチレン)、ジクロロメタン(別名二塩化メチレン)、
   スチレン、1,1,2,2−テトラクロロエタン(別名四塩化アセチレン)、テトラクロロエチレン
   (別名パークロルエチレン)、トリクロロエチレン及びメチルイソブチルケトン(以下「クロロホル
   ム他9物質」という。)の試料採取方法及び分析方法については、従来、別表第2に規定されていた
   ものを別表第1で規定する形式に改めたが、内容の変更はないこと。
  (3) 特別有機溶剤に係る測定の特例について(測定基準第10条第2項及び第3項関係)
   ア クロロホルム他9物質のうち、改正告示による改正前の測定基準第13条第2項において「検知管
    方式による測定機器又はこれと同等以上の性能を有する測定機器を用いる方法によることができ
    る」(ただし、妨害物質の影響を受ける場合を除く。)こととされていたクロロホルム、四塩化炭
    素、スチレン、テトラクロロエチレン(別名パークロルエチレン)及びトリクロロエチレン(以下
    これらを「検知管方式可能特別有機溶剤」という。)については、改正後も引き続き同様の取扱
    とするため、測定基準第10条第2項各号にこれらを追加したこと。(第2項関係)
   イ 検知管方式可能特別有機溶剤について、妨害物質の影響を受ける場合であっても、特定化学物
    質障害予防規則(昭和47年労働省令第39号。以下「特化則」という。)第36条の2第1項の規定に
    よる測定結果の評価が2年以上行われ、その間、当該評価の結果、第1管理区分に区分されること
    が継続した単位作業場については、所轄労働基準監督署長の許可を受けたときは、検知管方式等
    によることを認めたこと。なお、この場合であっても、1以上の測定点において測定基準の別表
    に掲げる方法による測定を同時に行う必要があること。(第3項関係)
   ウ また、特別有機溶剤のうち検知管方式可能物質以外の物質(エチルベンゼン、1,4−ジオキ
    サン、1,2−ジクロロエタン(別名二塩化アセチレン)、ジクロロメタン(別名二塩化メチレン)、
    1,2−ジクロロプロパン、1,1,2,2−テトラクロロエタン(別名四塩化アセチレン)及び
    メチルイソブチルケトン)についても、検知管方式可能特別有機溶剤を主成分とする混合物とし
    て製造され、又は取り扱われる場合であって、かつ、イの条件を満たす場合に、イと同様の特例
    が認められること。(第3項関係)
  (4) 特定有機溶剤混合物中の特別有機溶剤の測定について(測定基準第13条第1項関係)
    特化則第36条の5において準用する有機溶剤中毒予防規則(昭和47年労働省令第36号。以下「有機
   則」という。)第28条第2項の規定による測定における特定有機溶剤混合物(特化則第36条の5に規定
   する特定有機溶剤混合物をいう。以下同じ。)中の特別有機溶剤の測定については、測定基準第13
   条第1項に定めるところにより行うこととしたこと。
  (5) 特定有機溶剤混合物に係る測定の特例について(測定基準第13条第2項及び第3項関係)
   ア 検知管方式可能特別有機溶剤については、特化則第36条の5において準用する有機則第28条第2
    項の規定による測定においても、測定基準第13条第2項の対象とし、(3)ア及びイと同様の特例を
    設けることとしたこと。(第2項及び第3項関係)
   イ 測定基準第13条第2項の規定により検知管方式等によることが認められていない有機溶剤(労働
    安全衛生法施行令(昭和47年政令第318号)別表第6の2第2号、第6号から第10号まで、第17号、第
    20号から第22号まで、第24号、第34号、第39号、第40号、第42号、第44号、第45号及び第47号
    に掲げる物)については、測定基準第13条第2項各号に掲げる有機溶剤又は検知管方式可能特別有
    機溶剤を主成分とする混合物として製造され、又は取り扱われる場合であって、かつ、(3)イの
    条件を満たす場合に、(3)イと同様の特例が認められること。(第3項関係)
   ウ また、特別有機溶剤のうち検知管方式可能物質以外の物質についても、特化則第36条の5にお
    いて準用する有機則第28条第2項の規定による測定において、測定基準第13条第2項各号に掲げる
    有機溶剤又は検知管方式可能特別有機溶剤を主成分とする混合物として製造され、又は取り扱わ
    れる場合であって、かつ、(3)イの条件を満たす場合に、(3)イと同様の特例が認められること。
    (第3項関係)

 2 作業環境評価基準(昭和63年労働省告示第79号。以下「評価基準」という。)の一部改正について
  (1) 管理濃度の設定について(評価基準別表関係)
   ア DDVPの管理濃度を0.1mg/m3と定めたこと。
   イ 1,2−ジクロロプロパンの管理濃度を10ppmから1ppmに引き下げたこと。
  (2) クロロホルム他9物質の測定結果の評価について(評価基準別表関係)
    改正政令によりクロロホルム他9物質が有機溶剤から特定化学物質に移行したため、これらの物
   質の別表中の規定位置を変更したこと。なお、クロロホルム他9物質の管理濃度については、従来
   と変更がないこと。
  (3) 特定有機溶剤混合物に係る評価方法について(評価基準第2条第4項関係)
    特化則第36条の5において準用する有機則第28条の2第1項の規定による特定有機溶剤混合物に係
   る作業環境測定結果の評価方法については、混合有機溶剤に係る評価方法と同様、評価基準第2条
   第4項に示されている計算式により測定点ごとに換算値を求め、管理濃度に相当する値は1として評
   価することとしたこと。

 3 特定化学物質障害予防規則の規定に基づく厚生労働大臣が定める性能(昭和50年労働省告示第75号。
  以下「性能要件告示」という。)の一部改正について
  (1) DDVPについて、特化則の規定に基づき作業場に設ける局所排気装置のフードの外側における濃度
   (以下「抑制濃度」という。)を0.1mg/m3に定めたこと。
  (2) 3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタンについて、抑制濃度を0.005mg/m3
   と定めるとともに、制御風速を削除したこと。
  (3) ベータ−プロピオラクトンについて、抑制濃度を0.5cm3/m3と定めるとともに、制御風速を削除
   したこと。
  (4) アクリルアミドの抑制濃度を0.3mg/m3から0.1mg/m3に引き下げたこと。
  (5) アルキル水銀化合物(アルキル基がメチル基又はエチル基であるものに限る。)、カドミウム及び
   その化合物、コールタール並びにペンタクロルフェノール(別名PCP)及びそのナトリウム塩の抑制
   濃度の値の表現を正確に規定にしたこと。

 4 特定化学物質障害予防規則第八条第一項の厚生労働大臣が定める要件(平成15年厚生労働省告示第3
  78号。以下「稼働要件告示」という。)の一部改正について
   DDVP、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン及びベータ−プロピオラクトン
  について、抑制濃度を超えないよう局所排気装置を稼働すべき物質に追加したこと。

 5 その他
   改正政令により、クロロホルム他9物質が、労働安全衛生法施行令別表第6の2に掲げる有機溶剤か
  ら、同令別表第3に掲げる特定化学物質に移行したことによる所要の措置等を行ったこと。

 6 適用期日
   改正告示は、平成26年11月1日から適用することとしたこと。
   なお、1(1)イ及び2(1)イに係る改正(1,2−ジクロロプロパンの試料採取方法及び管理濃度に係
  る改正)については、平成26年10月1日から適用する。

第3 細部事項
 1 測定基準関係
  (1) 特別有機溶剤の測定方法の明確化について(測定基準第10条及び第13条関係)
    特別有機溶剤に係る作業環境測定のうち、特化則第36条の規定に基づき行う測定については、そ
   の方法を測定基準第10条第1項から第3項までに規定し、特化則第36条の5による有機則第28条の準
   用により行う測定(特定有機溶剤混合物に係る測定)については、その方法を測定基準第13条第1項
   から第3項までに規定したこと。
    なお、特化則第2条第1項第3号の3に規定する特別有機溶剤等(特化則別表第1第37号に掲げる物を
   除く。以下「特別有機溶剤等」という。)に該当し、かつ、特定有機溶剤混合物にも該当する物に
   関する空気中の特別有機溶剤の濃度の測定は、第10条及び第13条の両方が適用されることとなるが、
   同一の物について第10条に基づく測定と第13条に基づく測定を重ねて行う必要はないこと。
  (2) 特別有機溶剤等及び特定有機溶剤混合物に係る測定の特例について(測定基準第10条第3項及び第
   13条第3項関係)
    改正政令により、特別有機溶剤等及び特定有機溶剤混合物に係る作業環境測定は平成26年11月1
   日から実施が義務付けられ、改正告示による改正後の測定基準第10条第3項又は第13条第3項は同日
   から適用されるが、測定基準第10条第3項又は第13条第3項における「測定結果の評価」には、次の
   ものが含まれること。
    したがって、改正告示による改正後の測定基準第10条第3項及び第13条第3項の所轄労働基準監督
   署長の許可の申請は、改正告示の適用日である平成26年11月1日から可能となるものであること。
   ア 改正告示の公示日から平成26年10月31日までの間に、改正告示による改正後の測定基準及び評
    価基準に定める方法により行った特別有機溶剤等及び特定有機溶剤混合物に係る作業環境測定の
    結果の評価。
   イ 平成26年10月31日までに改正告示による改正前の測定基準及び評価基準に定める方法により行
    った有機溶剤等(改正特化則に規定する特別有機溶剤等又は特定有機溶剤混合物に該当する物に
    限る。)に係る作業環境測定の結果の評価。
     ただし、測定基準第10条第3項に基づき特別有機溶剤等について特例許可を受けようとする場
    合には、「測定結果の評価」は、改正前の測定基準に基づく混合有機溶剤としての総合的な評価
    ではなく、改正告示に基づいて特別有機溶剤ごとに評価を行ったものを指す。
  (3) 現に測定の特例許可を受けている事業者の手続について(測定基準第10条第3項及び第13条第3項
   関係)
    平成26年10月31日までに改正前の測定基準第13条第3項の規定による測定の特例許可を受けてい
   る事業者のうち、許可対象である有機溶剤等が改正特化則に規定する特別有機溶剤等にも該当する
   ものにおいては、許可時の要件に変更がない場合は、引き続き測定基準第13条第3項の規定による
   特例を受けられるものとするとともに、改めて測定基準第10条第3項の規定による特例の許可を受
   ける必要はないこと。
    なお、この場合、測定基準第10条第7項(第13条第5項で準用する場合を含む。)において、特例の
   許可を受けている単位作業場所に係るその後の測定の結果の評価により当該単位作業場所が第1管
   理区分でなくなったときは、遅滞なく、その旨を所轄労働基準監督署長に報告しなければならない
   こととされており、また、測定基準第10条第8項(第13条第5項で準用する場合を含む。)において、
   当該報告があった場合等において、所轄労働基準監督署長は、特例許可に係る単位作業場所につい
   て第1管理区分を維持していないと認めたとき又は維持することが困難であると認めたときは、当
   該特例許可を取り消すことがあることに留意すること。
  (4) 1,2−ジクロロプロパンの試料採取方法の改正について(測定基準別表第1関係)
    1,2−ジクロロプロパンの試料採取方法は、平成25年10月1日付けの測定基準の改正により、
   「固体捕集方法又は直接捕集方法」と定めたところである。
    しかしながら、今回の評価基準の改正により、1,2−ジクロロプロパンの管理濃度が10ppmか
   ら1ppmに引き下げられることに伴い、直接捕集方法では正確に測定できない場合があり得るため、
   専門家の意見も踏まえ、1,2−ジクロロプロパンの試料採取方法を固体捕集方法に限定したもの
   であること。

 2 評価基準関係
  (1) 特別有機溶剤等及び特定有機溶剤混合物に該当する物の測定結果の評価について(評価基準第2条
   第1項及び第4項)
    特別有機溶剤等に該当し、かつ、特定有機溶剤混合物にも該当する物ついては、評価基準第2条
   第1項の規定に基づき含有量が重量の1パーセントを超える特別有機溶剤について当該特別有機溶剤
   ごとの測定結果の評価を行うとともに、評価基準第2条第4項の規定に基づき混合有機溶剤としての
   測定結果の評価も行わなければならないこと。
   
 3 作業環境測定士規程(昭和51年労働省告示第16号。以下「測定士規程」という。)関係
  (1) 試験科目について(測定士規程第2条及び第3条関係)今般の改正告示において測定士規程は改正さ
   れていないが、改正政令により、DDVPが特定化学物質に追加され、また、クロロホルム他9物質が
   有機溶剤から特定化学物質に移行したことに伴い、次のように内容が変更されること。
   ア 別表第3号の作業場関係
     作業環境測定士試験の「別表第3号の作業場の作業環境について行う分析の技術」の科目の範
    囲及び作業環境測定士となるための講習の「別表第3号の作業場の作業環境について行う分析の
    実務」の科目の範囲に、それぞれDDVP及びクロロホルム他9物質の分析に関する理論及び方法並
    びにこれらの物質の分析が追加されたこと。
   イ 別表第5号の作業場関係
     作業環境測定士試験の「別表第5号の作業場の作業環境について行う分析の技術」の科目の範
    囲及び作業環境測定士となるための講習の「別表第5号の作業場の作業環境について行う分析の
    実務」から、それぞれクロロホルム他9物質の分析に関する理論及び方法並びにこれらの物質の
    分析が除外されたこと。

第4 関係通達の一部改正
 1 平成17年3月31日付け基発第0331017号通達の一部改正
  (1) 平成17年3月31日付け基発第0331017号「屋外作業場等における作業環境管理に関するガイドラ
   インについて」の一部を次のように改正する。
    本文を次のように改める。
    3(4)中「エチルベンゼン塗装業務」を「特別有機溶剤業務」に改め、「エチルベンゼン有機溶剤
   混合物」を「特定有機溶剤混合物」に改める。
    6(1)イ(イ)中「8」を「8、11の2」に改め、「、19、19の2」を「、18の2から18の4まで、19か
   ら19の5まで、22の2から22の5まで」に改め、「若しくは32」を「、32若しくは33の2」に改める。
    6(2)イ(イ)中「6まで」を「6まで、11の2」に改め、「、19、19の2」を「、18の2から18の4ま
   で、19から19の5まで、22の2から22の5まで」に改め、「若しくは31の2」を「、31の2若しくは33
   の2」に改める。
    別表第1別添のとおり改める。
    別表第2中「15 1,2−ジクロロプロパン」の項中「固体捕集方法又は直接捕集方法」を「固
   体捕集方法」に改める。
  (2) 改正通達の適用期日は次のとおりとする。
   ア 別表第1の1,2−ジクロロプロパンの管理濃度等を10ppmから1ppmに改める改正及び別表第2
    の1,2−ジクロロプロパンの試料採取方法を改める改正については、平成26年10月1日から適
    用する。
   イ ア以外については、平成26年11月1日から適用する。





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