労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行について

基発0803第6号
平成29年8月3日
都道府県労働局長 殿
厚生労働省労働基準局長

労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行について

 労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令(平成29年政令第218号。以下「改正政令」という。)及び
労働安全衛生規則の一部を改正する省令(平成29年厚生労働省令第89号。以下「改正省令」という。)が
平成29年8月3日に公布され、平成30年7月1日から施行(シリカ及び結晶質シリカに係る改正については公
布日施行)することとされたところであるが、その改正の趣旨、要点等については、下記のとおりである
ので、その施行に遺漏なきを期されたい。 併せて、本通達については、別添のとおり、関係事業者等団
体の長宛て傘下会員事業者への周知等を依頼したので了知されたい。
第1 改正の趣旨
 1 改正政令の趣旨
   本改正は、「平成28年度化学物質のリスク評価に係る企画検討会報告書」(平成29年2月21日公表)
  を踏まえ、一定の有害性が明らかになった物(別紙に示す結晶質シリカ以外の10物質。以下「追加対
  象物質」という。)を以下の(1)から(3)までの措置の対象となる物質(以下「対象物質」という。)
  として追加するとともに、シリカのうち非晶質のものを対象物質から除外するため、必要な改正を行
  うものである。
  (1) 労働安全衛生法(昭和47年法律第57号。以下「法」という。)第57条第1項の規定による化学物質
   等の名称等の表示(ラベル表示)
  (2) 法第57条の2第1項の規定による化学物質等の名称等の通知(安全データシート(SDS)の交付)
  (3) 法第57条の3第1項の規定による化学物質等の危険性又は有害性等の調査等(リスクアセスメントの
   実施等)
 
 2 改正省令の趣旨
   本改正は、GHS(化学品の分類および表示に関する世界調和システム)に基づく分類を踏まえ、追加
  対象物質を含有する製剤その他の物に係る裾切値(当該物質の含有量がその値未満の場合、名称等の
  表示義務等の対象としない)を設定するとともに、シリカのうち非晶質のものを対象物質から除外す
  ることに伴い、「シリカ」の裾切値を削除し、「結晶質シリカ」の裾切値を設定するものである。

第2 改正の要点
 1 施行期日及び経過措置
  (1) 追加対象物質に係る改正について
   施行期日は平成30年7月1日としたこと。ただし、改正政令の施行の際 現に存在する追加対象物質に
  ついては、名称等の表示義務に係る法第57条第1項の規定は、平成30年12月31日まで適用しないことと
  したこと。
  (2) シリカ及び結晶質シリカに係る改正について
   施行期日は公布の日としたこと。ただし、改正政令の施行前にした行為に対する罰則の適用につい
  ては、なお従前の例によるとしたこと。

 2 改正政令関係
  (1) 基本的事項
   ア 改正の基本的な内容
     改正政令の内容は、以下のとおりであること。
    (ア) 労働安全衛生法施行令(昭和47年政令第318号。以下「令」という。)別表第9に追加対象物質
     を追加すること。
      追加対象物質は、日本産業衛生学会又は米国産業衛生専門家会議(ACGIH)において許容濃度
     等が勧告された物質から選定を行ったものであること。
      なお、今回、10物質が追加されるが、「ほう酸」は令別表第9第544号の「ほう酸ナトリウム」
     と統合され「ほう酸及びそのナトリウム塩」と規定されるため、改正後の対象物質の数は672
     物質となること。
    (イ) ACGIHにおいて非晶質シリカの許容濃度等が取り下げられていることから、シリカのうち非
     晶質のものを対象物質から除外するため、令別表第9第312号の「シリカ」を削除し、第165号
     の2に「結晶質シリカ」を追加したこと。
   イ 事業者が実施すべき事項についての基本的な考え方
     追加対象物質及び結晶質シリカについて事業者が実施すべき事項に係る基本的な考え方は、本
    通達によるほか、「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律の施行について
    (平成12年3月24日付け基発第162号)」及び「労働安全衛生法施行令及び厚生労働省組織令の一
    部を改正する政令等の施行について(化学物質等の表示及び危険性又は有害性等の調査に係る規
    定等関係)(平成27年8月3日付け基発0803第2号)」等によるべきものであること。
   ウ 留意事項等
     追加対象物質は、職業性疾病(慢性)に関して安全に使用するための基準が示されている物質で
    あり、令別表第9以外の物質には危険有 害性が不明なものがあるため、事業者に対して、対象物
    質以外であっても危険有害性が不明な物質への代替を推奨するものではないことに留意すること。
  (2) 細部事項
   ア アスファルト
     建設業者が舗装・防水工事後、施主に引き渡す際には、当該アスファルト単体又はアスファル
    トを含有する製剤その他の物は「主として一般消費者の生活のように供するためのもの」に該当
    するので、第1の1の(1)から(3)までの措置の対象にならないものとして取り扱って差し支えない
    こと。
   イ ポルトランドセメント
     アのアスファルト単体又はアスファルトを含有する製剤その他の物と同様、施工後の譲渡・提
    供の際には第1の1の(1)から(3)までの措置の対象にならないものとして取り扱って差し支えない
    こと。
   ウ 非晶質シリカの対象物質からの除外について
    (ア) 結晶質シリカ単体又は結晶質シリカを含有する製剤その他の物について、結晶質と非晶質を
     峻別せず、引き続き「シリカ」として名 称の表示・通知することとして差し支えないこと。
     ただし、有害性に関わる情報を的確に伝達するという観点から、「結晶質シリカ」と明示する
     ことが望ましいこと。
    (イ) 非晶質シリカについては、対象物質から除外されることとなるが、 既に「シリカ」として
     表示・通知されているものについてラベル・ SDS の内容の修正は不要であり、労働安全衛生
     規則(昭和47年労働省令第32号)第24条の14及び第24条の15により、危険又は健康障害を生ず
     るおそれのある物について名称等の表示・通知の努力義務があることから、引き続き名称等の
     表示・通知を行うよう努めなければならないこと。なお、非晶質シリカについては、結晶質シ
     リカよりも相当有害性が低いとされているが、不活性の粉状物質の吸入自体には注意が必要で
     あり、引き続き、粉じん障害防止規則(昭和54年労働省令第18号)に定める措置等を講じること
     等により、 高濃度ばく露を避けることが求められること。

 3 改正省令関係
   追加対象物質及び結晶質シリカの裾切値とCAS番号は別紙のとおりであること。




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