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別添1

東京電力福島第一原子力発電所における安全衛生管理対策のためのガイドライン

第1 趣旨
 1 東京電力及び元方事業者が一体となった安全衛生管理体制の強化
   東京電力福島第一原子力発電所(以下「発電所」という。)における廃炉作業等を着実に進めるに当
  たっては、作業に従事する労働者の安全と健康を確保するため、計画−実施−評価−改善のサイクル
  による安全衛生管理に基づく安全管理、被ばく管理、健康管理等を徹底することが必要である。また、
  適切な安全衛生管理体制の確立のためには、東京電力のみならず、東京電力から直接工事等を請け負
  う事業者(以下「元方事業者」という。)による安全衛生管理も必要不可欠であるほか、被ばく管理等
  の実施については、発電所構内における放射線業務及び各種工事の実施主体である発電所、発電所の
  支援業務等を実施している東京電力本社、福島第一廃炉推進カンパニー(以下「本社等」という。)が
  それぞれの役割を果たす必要がある。このため、東京電力の第一義的な責任のもとに、本社等、発電
  所及び元方事業者の実施事項を明確にした安全衛生管理体制を構築する必要がある。
 2 東京電力、元方事業者及び関係請負人によるリスクアセスメントの実施、安全衛生教育の充実等に
  よる労働安全衛生水準の向上
   廃炉作業等は、工事、作業の内容や周囲の状況が様々であることから、危険性や有害性を特定し、
  リスクを見積り、優先度を設定した上で、リスク低減措置を決定するというリスクアセスメントを、
  東京電力の第一義的な責任のもとに、発電所、元方事業者及び請負人(発電所又は元方事業者の仕事が
  数次の請負契約によって行われるときは、当該請負人の請負契約の後次全ての請負契約の当事者であ
  る請負人を含む。以下「関係請負人」という。)がともに実施し、その結果を踏まえた労働災害防止対
  策を計画的に実施する必要がある。
   さらに、毎月500人規模の労働者が新規に発電所に入構している一方、それと比較して労働者総数
  の伸びは少ないことから、毎月、新規入場者とほぼ同等の人数が発電所の作業から離れているとみら
  れる。このため、新規入場者等に対する安全衛生教育を充実するとともに、元方事業者の作業計画作
  成者や関係請負人の作業指揮者に対する被ばく低減措置等に関する教育を強化する必要がある。
 3 一元的な被ばく線量管理の実施、発注段階からの効果的な被ばく低減対策の検討及び実施放射線に
  よる被ばく線量管理については、発電所構内の労働者全員について、被ばく線量情報を一元的に管理
  し、細心の注意を払って放射線管理を実施する必要がある。
   また、発電所内の発注単位ごとに作業に伴う被ばく線量を低減するため、東京電力の発注部門は、
  工事の発注段階から、工法、設備、施設、施工機械等についての工学的対策に関する基本的考え方を
  検討し、それを被ばく低減仕様書として工事仕様書に盛り込むことが必要である。また、発電所及び
  元方事業者においては、被ばく低減仕様書に基づく対策を放射線管理計画として施工計画に盛り込む
  ことが必要である。さらに、作業の実施段階において、放射線管理計画に定める事項を適切に実施す
  るほか、作業内容に応じ、作業時間短縮、遮へい用防護衣着用などの作業管理上の対策を適切に実施
  する必要がある。
 4 適切な健康管理の実施、緊急医療体制の確保及び作業環境の改善
   労働者の健康管理のため、法定の健康診断及びそれに基づく事後措置の適切な実施を図るとともに、
  日常的な健康管理、熱中症対策を適切に進める必要がある。併せて、「東京電力福島第一原子力発電
  所における緊急作業従事者等の健康の保持増進のための指針」(平成23年10月11日公示第5号。平成28
  年4月1日より「原子力施設における緊急作業従事者等の健康の保持増進のための指針」に改正予定。
  以下「大臣指針」という。)に基づき、発電所において緊急作業に従事した者に対する長期的健康管
  理を適切に実施する必要がある。
   また、労働災害の発生に備え、発電所構内の緊急医療体制を構築するとともに、被災労働者を適切
  な医療機関に迅速に搬送するための体制を強化する必要がある。
   さらに、廃炉作業等における作業環境の改善を図るため、休憩所や給食施設の充実、汚染された線
  源の除去や隔離、保護具の最適化を進める必要がある。

第2 対象
   本ガイドラインは、発電所構内において実施する放射線業務及び各種工事を対象とする。

第3 安全衛生管理体制の確立
 1 東京電力の実施すべき事項
   発電所構内における放射線業務及び各種工事に係る安全衛生管理については、労働安全衛生法及び
  電離放射線障害防止規則(以下「電離則」という。)に基づき各事業者に実施義務があるが、東京電力
  が自ら行う放射線業務及び各種工事について、数次の請負契約のもとに複数の事業者の労働者が同一
  の場所で作業を行う場合、発電所の長(以下「発電所長」という。)は、関係請負人が事業者として実
  施する措置が的確に行われるよう関係請負人を指導又は援助するとともに、放射線業務及び各種工事
  全体に係る安全衛生管理が適切に行われるよう、以下の事項を実施すること。
  (1) 発電所における安全衛生統括者の選任等
    発電所長は、発電所構内における放射線業務及び各種工事全体の安全衛生管理が適切に行われる
   よう、安全衛生統括者を選任し、その者に以下の(3)から(7)までに掲げる事項を実施させること。
    なお、東京電力が、自ら仕事を行わず、発注業務及び設計管理のみを行う放射線業務又は各種工
   事を元方事業者に発注した場合、発電所長は、放射線業務及び各種工事の特殊性にかんがみ、1の
   (4)、(6)及び(7)の事項については、元方事業者と緊密な連携の上、安全衛生統括者に実施させる
   こと。この場合、1の(4)の安全衛生協議組織については、全ての元方事業者を対象としたものとす
   ること。
    また、東京電力が、同一の場所において、自ら行わない仕事を複数の元方事業者に発注する場合、
   複数の仕事について2に掲げる事項を統括して実施する者を当該元方事業者のうちから指名すること。
  (2) 工事安全施工管理者の選任
    発電所長は、発電所構内における各種工事の安全を担当する工事安全施工管理者を選任し、その
   者に安全衛生統括者を補佐し、以下の(3)から(5)までに掲げる事項のうち技術的事項を管理させる
   こと。また、発電所における各種工事の担当者を統括させ、特に危険な作業を実施する場合には、
   工事担当者による工事監理の際等に、工事監理及び被ばく管理に加え、現場における安全確保措置
   についても必要な指導を実施させること。
    なお、工事監理には、放射線管理部門、災害復旧担当部門だけでなく安全衛生管理部門の担当者
   を積極的に関与させること。
  (3) 関係請負人における安全衛生管理の職務を行う者の選任等
    関係請負人に対し、安全衛生管理の職務を行う者を選任させ、その者に次に掲げる事項を行わせ
   るよう求めること。
   ア 安全衛生統括者との連絡
   イ 以下の(4)から(6)までに掲げる事項のうち、当該関係請負人に係るものが円滑に行われるよう
    にするための安全衛生統括者との調整
   ウ 当該関係請負人がその仕事の一部を他の請負人に請け負わせている場合における全ての関係請
    負人に対する作業間の連絡及び調整
  (4) 放射線業務及び各種工事を行う全ての関係請負人を含めた安全衛生協議組織の開催等
   ア 発電所長は、全ての関係請負人を含めた安全衛生協議組織を設置し、1月以内ごとに1回、定期
    に開催し、安全衛生統括者、工事安全施工管理者及び関係請負人における安全衛生管理の職務を
    行う者に参加を求めること。
   イ 安全衛生協議組織において協議すべき事項は、次のとおりとすること。
    ・ 本社等及び発電所と関係請負人相互間における連絡及び調整に関すること
    ・ 外部放射線量及び空気中の放射性物質の濃度に係る作業環境測定の実施及びその結果に基づ
     く作業上の注意事項に関すること
    ・ 個々の請負関係を超えての近接工事実施の際の情報共有及び協力の推進、労働災害の原因分
     析及び再発防止対策の推進等、各種工事における安全確保措置の充実に関すること
    ・ 特別教育等、放射線業務に関する事項を含む安全衛生教育の実施に関すること
    ・ 作業計画(労働者の被ばく管理及び労働者の受ける線量の低減化の方策に関することを含む。
     以下同じ。)の作成又は改善に関すること
    ・ 放射線業務及び各種工事中における合図、警報等の統一に関すること
    ・ 事故が発生した場合の避難、その他の措置に関すること
  (5) 作業計画の作成等に対する指導又は援助
   ア 関係請負人が作成する作業計画について、その内容が適切なものとなるよう適切な資料・情報
    を提供するほか、必要に応じて関係請負人を指導し、又は援助すること。
   イ 関係請負人が行う作業のうち、1日につき実効線量が1ミリシーベルトを超えるおそれがあるも
    のに係る作業計画については、あらかじめ内容の確認を行うこと。
   ウ イの確認に当たっては東京電力の放射線管理部門が被ばく管理方法について重点的に確認を行
    い、必要な場合には作業計画の改善等について指導又は援助を行うこと。
   エ 関係請負人が関係労働者に作業計画の周知を図るよう指導すること。
  (6) 被ばく状況の把握等
    第5の1に掲げる事項を実施すること。
  (7) 放射線業務又は各種工事に係る危険性又は有害性等の調査(リスクアセスメント)及びその結果に
   基づく措置の実施、安全衛生教育の実施
    第4に掲げる事項を実施すること。
 2 元方事業者が実施すべき事項
   発電所構内における放射線業務及び各種工事に係る安全衛生管理については、労働安全衛生法及び
  電離則に基づき各事業者に実施義務があるが、発電所構内における放射線業務及び各種工事の実施に
  おいて、東京電力から元方事業者が注文を受け、同一の場所で、元方事業者が行う仕事を関係請負人
  に請け負わせている場合、元方事業者は、関係請負人の実施する事業者としての措置が的確に行われ
  るよう、関係請負人を指導又は援助するとともに、放射線業務及び各種工事に係る安全衛生管理が適
  切に行われるよう、以下の事項を実施すること。
  (1) 元方事業者における安全衛生統括者の選任等
    放射線業務及び各種工事に係る安全衛生管理が適切に行われるよう、元方事業者は、作業を統括
   管理する者のうちから安全衛生統括者(一定規模の建設業に属する事業にあっては、労働安全衛生法
   第15条で定める統括安全衛生責任者とする。以下同じ。)を選任し、1(1)及び(2)の東京電力が選任
   している安全衛生統括者及び工事安全施工管理者と連携を図りつつ、以下の(2)から(6)までに掲げ
   る事項を実施させること。
  (2) 関係請負人における安全衛生管理の職務を行う者の選任等
    関係請負人に対し、安全衛生管理の職務を行う者(一定規模の建設業に属する事業の場合にあっ
   ては、労働安全衛生法第16条で定める安全衛生責任者とする。以下同じ。)を選任させ、次に掲げ
   る事項を行わせるよう求めること。
   ア 元方事業者の安全衛生統括者との連絡
   イ 以下の(3)から(5)までに掲げる事項のうち、当該関係請負人に係るものが円滑に行われるよう
    にするための元方事業者の安全衛生統括者との調整
   ウ 当該関係請負人がその仕事の一部を他の請負人に請け負わせている場合における関係請負人に
    対する作業間の連絡及び調整
  (3) 全ての関係請負人を含めた安全衛生協議組織の開催等
   ア 1(4)の東京電力が開催する安全衛生協議組織と連携しつつ、全ての関係請負人を含めた安全衛
    生協議組織を設置し、1月以内ごとに1回、定期に開催すること。
   イ 安全衛生協議組織において協議すべき事項は、次のとおりとすること。
    ・ 被ばく管理に関すること
    ・ 個々の請負関係を超えての近接工事実施の際の情報共有及び協力の推進、労働災害の原因分
     析及び再発防止対策の推進等、各種工事における安全確保措置の充実に関すること
    ・ 特別教育等、放射線業務に関する事項を含む安全衛生教育の実施に関すること
    ・ 作業計画の作成又は改善に関すること
    ・ 放射線業務及び各種工事における合図、警報等の統一に関すること
    ・ 事故が発生した場合の避難、その他の措置に関すること
  (4) 作業計画の作成等に対する指導又は援助
   ア 関係請負人が作成する作業計画について、その内容が適切なものとなるよう必要に応じて関係
    請負人を指導し、又は援助すること。
   イ 関係請負人が行う作業のうち、実効線量が1日につき1ミリシーベルトを超えるおそれがあるも
    のに係る作業計画について、あらかじめ内容の確認を行うとともに、第8の4に基づき、富岡労働
    基準監督署長に放射線作業の報告を行うこと。
   ウ 関係請負人に自らの労働者に対して、作業計画の周知を図るよう指導すること。
  (5) 被ばく状況の把握等
    第5の2に掲げる事項を実施すること。
  (6) 放射線業務又は各種工事に係るリスクアセスメント及びその結果に基づく措置の実施、安全衛生
   教育の実施
    第4に掲げる事項を実施すること。

第4 リスクアセスメント及びその結果に基づく措置の実施、安全衛生教育の実施等
 1 リスクアセスメント及びその結果に基づく措置の実施
   東京電力及び元方事業者は、自らが行う仕事及びその仕事の一部を請け負っている関係請負人が行
  う作業について、2の留意事項に従って、放射線業務又は各種工事に係るリスクアセスメントを行い、
  その結果に基づく措置を実施すること。
   なお、東京電力は、自ら行わない仕事を発注する場合には、元方事業者及び関係請負人が実施する
  リスクアセスメント及びその結果に基づく措置の実施について、工事施工担当者を参画させる等によ
  り、その適切な実施を支援すること。
 2 リスクアセスメントの実施に当たっての留意事項
  (1) 東京電力及び元方事業者は、建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等による、又は作業行
   動その他業務に起因する危険性又は有害性等を調査し、その結果に基づいて、法令に規定された措
   置を実施するほか、労働者の危険又は健康障害を防止するために必要な措置を講ずること。
  (2) リスクアセスメントは、第6の2(1)の施工計画を策定する場合は、同計画の策定段階で必ず実施
   するとともに、次に掲げる時期に実施すること。なお、現に行っている作業でリスクアセスメント
   を行っていないものについては、可能な限り、リスクアセスメントを実施すること。
   ア 建設物を設置し、移転し、変更し、又は解体するとき
   イ 設備、原材料等を新規に採用し、又は変更するとき
   ウ 作業方法又は作業手順を新規に採用し、又は変更するとき
   エ その他、次に掲げる場合など、建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等による、又は作
     業行動その他業務に起因する危険性又は有害性等について変化が生じ、又は生ずるおそれがあ
     るとき
     ① 労働災害が発生した場合であって、過去の調査等の内容に問題がある場合
     ② 前回の調査等から一定の期間が経過し、機械設備等の経年による劣化、労働者の入れ替わ
       り等に伴う労働者の安全衛生に係る知識経験の変化、新たな安全衛生に係る知見の集積等
       があった場合。
  (3) リスクアセスメントの実施に当たっては、以下の事項に留意すること
   ア 放射線の被ばく低減措置(防護マスクの着用、作業時間の制限等)は、放射線以外の危険性又は
    有害性の低減対策の実施に当たっての障害となる場合がある。(例:防護マスク着用による視野の
    狭窄や熱中症の発生リスク、遮へい用防護衣着用の身体負荷による移動時間の増大や熱中症の発
    生リスク、作業時間の短縮によって作業場所の整理整頓の時間が十分確保できないなど。)この
    ため、放射線被ばく低減対策とその他の危険又は健康障害防止対策が両立するよう、最適な方策
    を検討する必要があること。
   イ その他、リスクアセスメント及びその結果に基づく措置については、「危険性又は有害性等の
    調査等に関する指針」(平成18年3月10日指針公示第1号)の規定に従って実施すること。
 3 安全衛生教育の実施等
   発電所長及び元方事業者は、自らの労働者に対して、(1)から(3)までに定める教育を実施するとと
  もに、関係請負人が同教育を適切に実施できるよう、必要な指導又は援助を行うこと。特に、発電所
  長は、講師の派遣及び教材や教育施設の提供等の援助を行うこと。
  (1) 新規入場者教育の実施
    新たに発電所内の作業に従事する者に対して、電離則第52条の7で定める特別教育の内容に加え、
   以下の発電所構内での作業の特殊性を踏まえた新規入場者教育を実施すること。
   ア 保護マスク等の保護具の性能及びその取扱方法(呼吸用保護具に関するフィットテスターを使
    用する等による適切な装着指導、眼鏡着用者へのシールピース等による漏洩対策を含む。)
   イ 警報付き電子式個人線量計(以下「APD」という。)の取扱方法、被ばく線量記録の見方等の被
    ばく線量管理の方法
   ウ 身体、装備、装具、物品等の汚染防止措置や除染の方法
   エ 保護マスクの着用による視野の狭さ、防護手袋を装着した手での機器の操作などの保護具、保
    護衣や遮へい用防護衣を装着した上での作業の危険性
   オ 保護具、保護衣や遮へい用防護衣の着用や休憩所の限定等による熱中症の危険性とその予防措
    置
   カ 高線量箇所の把握と離隔距離の確保、遮へい物の効果的な活用方法、遮へい用防護衣の着用、
    作業時間短縮等の被ばく低減措置
   キ 傷病者に対する応急手当の方法や緊急連絡方法
  (2) 関係請負人の作業指揮者に対する教育の強化
    関係請負人の作業を現場で指揮する者(作業班長、職長など。以下「作業指揮者」という。)に対
   して、(1)の新規入場者教育に加え、以下の事項の教育を実施すること。
   ア 発電所内の高線量箇所、遮へい設備の場所
   イ 休憩所、非常時の避難経路等
   ウ 作業時間の短縮、遮へい用防護衣の着用等、作業管理による被ばく低減措置の決定及びその監
    視の方法
   エ 作業中の被ばく線量の把握、作業時間の管理の方法
   オ 計画線量及び警報設定値の決定の方法及びその遵守の方法
  (3) 元方事業者の施工計画作成者に対する教育の強化
    元方事業者の施工計画作成者に対し、(1)の新規入場者教育に加え、以下の教育を実施すること。
   ア 無人化工法や遠隔操作による工法に関する知識
   イ 作業開始前の高線量箇所の除染等(線源の除去)に関する知識
   ウ 高線量箇所(線源)から作業場所の離隔距離の確保の方法
   エ 高線量箇所(線源)に対する遮へい工事に関する知識
   オ 休憩所等から作業場所への移動動線の設定に関する知識
   カ 休憩所等の設定に関する知識
   キ 労働者の集団線量及び個人線量に係る計画線量の設定に関する知識

第5 被ばく線量管理
 1 東京電力が実施すべき事項
  (1) 被ばく情報管理の一元化
    発電所構内において放射線業務及び各種工事に従事する全ての労働者について、労働者の基本情
   報及び被ばく線量情報を管理するためには、これらの情報を一元的に管理することが必要である。
   このため、発電所長は、本社等と連携し、被ばく線量関連情報を一元的に管理する組織(以下「一
   元管理組織」という。)を設置し、別紙1に留意の上、線量情報の一元管理を確実に行わせること。
  (2) 放射線業務及び各種工事従事者の発電所構内への入退所管理機能の強化
    発電所長は、発電所に立ち入る全ての労働者を漏れなく把握し、アからウまでに係る事項を確実
   に実施すること。
   ア 労働者の基本情報の入手
   イ 特別教育(実技教育を除く。)の実施記録の確認
   ウ 個人ID番号、顔写真の入った作業員証の発行及び入退所管理
  (3) 確実な被ばく線量情報の記録、統合及び通知
    発電所長は、収集された労働者基本情報と被ばく情報に対応させて記録し、累積線量を管理する
   とともに、その結果を定期的に自らの社員及び元方事業者に通知すること。
  (4) 関係請負人に対する援助等
    発電所長は、被ばく線量の通知に関して、次に掲げる措置を適切に実施すること。
   ア 遅滞なく線量の通知を行えるよう、元方事業者に対して必要な援助を行うこと。
   イ 被ばく線量を労働者に確実に通知するため、関係請負人が労働者に被ばく線量を通知する際に
    は、書面により行うよう必要な指導又は援助を行うこと。
 2 元方事業者が実施すべき事項
  (1) 被ばく線量管理
    元方事業者は、別紙1に留意の上、放射線業務及び各種工事に従事する元方事業者及び関係請負
   人の労働者の被ばく管理を適切に実施するため、放射線管理責任者を選任し、第3の2(1)の安全衛
   生統括者の指揮のもと、以下の事項を含む、元方事業者及び関係請負人の全ての労働者の被ばく状
   況を確実に把握し、管理する体制を構築すること。
   ア 東京電力と連携し、元方事業者及び関係請負人の労働者の被ばく管理を行うこと。
   イ 関係請負人の労働者の被ばく管理が適切に行われるよう、関係請負人の放射線管理担当者を指
    導すること。
   ウ 発電所長の発行する作業員証を記名者本人以外に使用されることのないよう適切な管理を行う
    こと。
   エ 第3の1(4)の東京電力が開催する安全衛生協議組織に参加し、放射線管理に関する事項を協議
    すること。
   オ その他放射線管理のために必要な事項を実施すること。
  (2) 被ばく線量等の通知等の適切な実施
   ア 元方事業者は、発電所内の作業に従事する自らの労働者に関して、東京電力と連携し、以下の
    事項を実施すること。
    (ア) 日々の外部被ばく線量については、APD返却時に交付される書面(線量レシート)等により、
      労働者本人に通知すること。
    (イ) 外部被ばく線量及び内部被ばく線量を合算した実効線量及びその累計については、1月ごと
      に1回、書面により、労働者本人に通知すること。
   イ 元方事業者は、関係請負人の放射線管理担当者が、当該関係請負人の労働者に関して、適切に
    アの事項を実施できるよう、必要な指導又は援助を行うこと。
   ウ 元方事業者は、被ばく線量の通知に関し、次に掲げる措置を適切に実施すること。
    (ア) 自らの労働者に遅滞なく被ばく線量の通知を行える体制を構築すること。
    (イ) 関係請負人の労働者に被ばく線量を確実に通知するため、関係請負人が労働者に被ばく線
      量を通知する際には書面又は事業場内の電子システム(本人が線量を閲覧したことを把握する
      ことが可能であり、閲覧しない場合に電子メール等により注意喚起できるものに限る。)によ
      り行うよう指導又は援助を行うこと。

第6 工事の発注段階からの効果的な被ばく低減対策の検討及び実施
 1 発注段階での実施事項
  (1) 被ばく低減対策を含めた発注仕様書の作成
    被ばく線量を効果的に低減するためには、工事の発注段階から、工法、設備、施設、施工機械等
   に関わる被ばく低減対策を検討するとともに、それら対策を施工計画に盛り込む必要がある。この
   ため、東京電力は、自ら行う仕事を計画する場合又は自ら行わない仕事を元方事業者に発注する場
   合には、あらかじめ、工事発注部門と放射線管理部門が連携し、作業全体の計画線量(労働者全員
   の計画線量の総計。単位人・シーベルト。以下「総計画線量」という。)が1人・シーベルトを超え
   るおそれのある放射線業務については、元方事業者からの提案を聴取した上で、発注の仕様書等に
   以下の事項に関する基本的考え方を示した「被ばく低減仕様書」を策定すること。
   ア 無人化工法や遠隔操作による工法の促進
   イ 作業開始前の高線量箇所の除染等(線源の除去)の実施
   ウ 高線量箇所(線源)から作業場所の離隔距離の確保
   エ 高線量箇所(線源)に対する遮へい工事
   オ 休憩所等の整備
   カ 休憩所等から作業場所への移動動線の最短化
  (2) 同一建屋等における小規模工事を包含する総合的な被ばく低減対策
    同一の建屋等において、複数の小規模な工事が発注される場合、建屋等の単位をとらえた総合的
   な被ばく低減対策を実施することが効果的である。このため、このような場合、東京電力は、複数
   の小規模工事を包含する総合的な被ばく低減対策のために、(1)のアからカに定める事項に関する
   基本的考え方を示した被ばく低減仕様書を作成し、それを当該発注仕様書に盛り込むこと。
  (3) 作業別固有番号の細分化による計画線量の事後的な検証
    被ばく低減対策を有効に実施するためには、計画線量を適切に定めた上で、事後に計画線量と実
   際の被ばく線量の比較を行い、計画線量の妥当性を検証することが必要である。このため、東京電
   力は、計画線量と実際の被ばく線量が比較可能となる作業件名単位で作業別固有番号を付与するこ
   と。
  (4) 元方事業者に対する指導又は援助
    発電所長は、元方事業者が2(1)の放射線管理計画を作成するに当たり、必要な指導又は援助を行
   うこと。
 2 施工計画段階での実施事項
  (1) 放射線管理計画の作成
    発電所長は、自ら行う放射線業務について、元方事業者は、東京電力から発注されたものについ
   て、総計画線量が1人・シーベルトを超えるおそれのある放射線業務に係る施工計画を作成するに
   当たっては、発注された仕様書等に記載されている被ばく低減対策に基づき、以下の事項を記載し
   た放射線管理計画書を作成し、施工計画に盛り込むこと。
   ア 1(1)アからカまでに掲げる事項に係る具体的実施内容
   イ 作業時間短縮、遮へい用防護衣着用等、作業内容に応じた最適な作業管理による被ばく低減対
    策
  (2) 被ばく線量低減効果の試算及び計画線量設定の基本的考え方
    被ばく低減対策の効果を評価するためには、対策を実施しない場合に想定される総計画線量と、
   対策を実施した場合の総計画線量を比較することが有効である。このため、東京電力及び元方事業
   者は、(1)の放射線管理計画の策定に当たり、以下の検討を行い、その結果を同計画書に盛り込む
   こと。
   ア 対策を実施しない場合に想定される総計画線量
   イ 対策を実施した場合に想定される総計画線量
   ウ 対策を踏まえた労働者ごとの計画線量設定(1日当たりの平均個人線量、作業工程、作業期間ご
    との平均・最大の個人線量)の基本的な考え方
  (3) 作業工程ごとの被ばく低減対策の作成
   ア 放射線管理計画に記載されている事項が作業現場で実施されるよう、東京電力及び元方事業者
    は、被ばく低減対策を作業工程ごとに作成すること。
   イ 被ばく線量低減のためには、作業工程ごとに詳細な計画被ばく線量の設定が必要である。この
    ため、元方事業者は、作業工程ごとでの計画被ばく線量(最大個人線量、平均個人線量、総計画
    線量)を設定すること。
  (4) 作業工程ごとの計画線量の事後的な検証
    被ばく低減対策を継続的に改善していくためには、計画線量と実際の被ばく線量(実績線量)を比
   較することが必要である。このため、東京電力及び元方事業者は、作業工程ごとに、計画線量と実
   績線量を比較し、実績線量が計画線量を上回った場合は、その原因を究明し、必要に応じ、当該作
   業工程より後の放射線管理計画(作業工程ごとの被ばく低減対策を含む。)を見直すこと。

第7 健康管理対策等
 1 健康診断等の実施
  (1) 労働者の健康管理
   ア 健康診断の実施
     発電所長及び元方事業者は、自らの労働者に対して労働安全衛生法令に基づく定期健康診断、
    電離則に基づく健康診断を着実に実施するとともに、当該健康診断の結果について医師の意見を
    聴取した結果、就業上の措置が必要とされた者に対し、医師の意見を勘案して適切な措置を講じ
    ること。
   イ 日常的な健康管理
     発電所長及び元方事業者は、自らの労働者に対して、作業開始前に、発熱や下痢等、個々の労
    働者の体調の確認を行い、体調不良の場合には、医師の受診を促す等の措置を講じること。
     また、健康診断の結果により健康の保持に努める必要があると認める労働者に加え、長期に渡
    り(概ね3月以上を目安)発電所において作業に従事している者に対しては、健康診断実施時等の
    機会を捉え、医師又は保健師による保健指導を実施すること。
     特に、過去の健康診断の結果や、調査票を用いた既往歴の調査、自覚症状、他覚症状の有無の
    検査等から心疾患、脳血管疾患等の基礎疾患が判明した者に対しては、日常的な体調の確認を徹
    底するとともに、保健指導の実施等により、健康の確保に万全を期すこと。
   ウ 関係請負人に対する指導及び援助
     発電所長及び元方事業者は、関係請負人がア及びイに関する事項を適切に実施できるよう、必
    要な指導及び援助を実施すること。
  (2) 電離放射線健康診断の実施に当たっての留意事項
    電離放射線健康診断の実施に当たっては、次に掲げる事項に留意すること。
   ア 電離則第56条第1項に基づく電離放射線健康診断については、同条第3項及び第4項において項
    目の省略が認められているが、1年間に受ける実効線量が5ミリシーベルトを超えるおそれのある
    労働者については、同条第3項による項目の省略を行わないことが望ましいこと。
   イ 平成23年12月16日以降に、平成23年3月11日から平成24年3月31日までの累積線量が50ミリシー
    ベルトを超えた者については、放射線業務に従事している間、白内障に関する眼の検査を省略せ
    ず確実に実施するとともに、当該検査に当たっては、おおむね1年に1回、細隙灯顕微鏡による検
    査を行うこと。なお、当該労働者が受診を希望しない場合にはこの限りではない。
 2 緊急医療体制の確保
   発電所長は、本社等と連携し、搬送時間の短縮を図るため、救急搬送体制の強化、ドクターヘリの
  積極的活用を図るとともに、重症の傷病者に対する救急処置が直ちに実施できるよう、必要な保健・
  医療体制を検討し、診療室等に必要な医療関連職種を配置するとともに、救急処置のための医療資材
  ・設備を確保しておくこと。
   本社等及び発電所長は、発電所における医療スタッフの安定的な確保、被災した労働者の適切な搬
  送体制の維持・改善のため、国の関係機関、関係医療機関、近隣の消防部局等により組織された連絡
  協議組織に参加すること。
 3 熱中症対策
   発電所長及び元方事業者は、別紙2に定めるところにより、熱中症対策を適切に実施すること。
 4 長期健康管理対策について
   発電所長及び元方事業者は、大臣指針に定めるところにより、発電所において緊急作業に従事した
  者に対する長期健康管理を適切に実施すること。
 5 作業環境の改善
   東京電力は、発電所における作業環境の改善を図るため、汚染物の除去・隔離による空間線量率の
  低減、粉じん等による内部被ばく防止のための土壌の舗装等を計画的に進めること。さらに、労働者
  の疲労の蓄積の防止及び回復を図るため、適切な休憩所や給食施設の充実を図ること。

第8 厚生労働省への報告
 1 事故等の報告
   発電所長は、放射線業務及び各種工事において労働災害等(外部医療機関において治療が必要な傷
  病に限る。)が発生したとき、火災又は爆発の事故、放射性物質若しくは放射性物質に汚染されたも
  のの漏出又は異常被ばくが発生したとき、発電所構内に空間線量率が非常に高い場所を新たに発見し
  たときなどは、速やかにその旨を富岡労働基準監督署長に報告(任意様式)すること。
 2 安全衛生統括者の選任の報告
   第3の1(1)の安全衛生統括者を選任した場合、発電所長は、その旨を富岡労働基準監督署長に報告
  (任意様式)すること。また、変更した場合も同様に報告すること。
 3 放射線管理計画及びリスクアセスメント結果の報告
  ア 発電所長又は元方事業者は、自ら行う放射線業務及び各種工事のうち、総計画線量が1人・シー
   ベルトを超えるおそれのあるものについて、放射線業務及び各種工事(資材搬入等の準備作業を除
   く。)を開始する日の14日前までに、第6の2(1)から(3)で定めるところにより作成した放射線管理
   計画について、様式第1号を添付して、富岡労働基準監督署長に提出すること。放射線管理計画を
   変更する場合は、変更に係る作業を開始する前に、変更された放射線管理計画を富岡労働基準監督
   署に提出すること。
  イ 発電所長又は元方事業者は、第6の2(4)に定めるところにより実施した作業工程ごとの実績線量
   と計画線量の比較の結果を速やかに富岡労働基準監督署長に提出すること(任意様式)。
  ウ 東京電力又は元方事業者は、総計画線量が1人・シーベルトを超えるおそれのある放射線業務及
   び各種工事について、第4の2(2)で定めるところにより施工計画段階で実施されたリスクアセスメ
   ントの結果の概要について、別紙3に定めるところにより、放射線管理計画に添付して富岡労働基
   準監督署長へ提出すること。
    なお、施工計画の変更に伴い、リスクアセスメントの結果を変更する場合も同様とすること。
  エ 3のア及びウに定める放射線管理計画及びリスクアセスメントの対象となる放射線業務及び各種
   工事は、平成27年11月1日以降に発注されたものとすること。
 4 放射線作業の報告
  ア 発電所長又は元方事業者は、自らが行う仕事について、発電所構内で行われる放射線業務及び各
   種工事のうち、労働者の被ばくする実効線量が1日につき1ミリシーベルトを超えるおそれのある作
   業を行う場合には、あらかじめ(突発事態に対する対応等、状況を把握してから24時間以内に対応
   する必要がある作業については、作業終了後に速やかに)、様式第2号により、作業件名ごと(作業
   別固有番号ごと)に、「東京電力福島第一原子力発電所における放射線作業届」を、富岡労働基準
   監督署長に提出すること。
    また、当該作業終了後、従事した労働者の平均実効線量、最高実効線量及び総実効線量の実績値
   について、速やかに富岡労働基準監督署長に報告(任意様式)すること。
    ただし、第6の2(1)の放射線管理計画書を提出した作業に係る届出については、様式第3号に、第
   6の2(3)に定める作業工程ごとの被ばく低減対策を踏まえて作成した被ばく低減チェックリスト(様
   式第4号)を添付して提出すること。
  イ 発電所長又は元方事業者は、自らが行う仕事に係る作業について、特定高線量作業に該当すると
   判断するものについて、様式第5号の「特定高線量作業として届け出る場合の作業届付票」に当該
   作業に従事する労働者の名簿を添付して富岡労働基準監督署長に提出すること。
 5 労働者の被ばく線量の報告
   本社の管理者は、発電所構内で放射線業務又は特定高線量作業に従事した全ての労働者の被ばく線
  量の累計を、毎月末日に、厚生労働省労働基準局安全衛生部労働衛生課に報告すること。なお、報告
  の際は、全ての労働者と特定高線量作業従事者とを区分して報告すること。
 6 安全衛生管理状況の報告
   発電所長は、第3の1及び第5の1の措置の実施状況について、様式第6号により四半期ごとに1回、富
  岡労働基準監督署長に提出すること。
 7 指定緊急作業従事者等に係る記録等の提出について
   東京電力及び元方事業者は、次に掲げる指定緊急作業従事者等に係る記録等について、別紙4に定
  めるところにより、厚生労働省労働基準局安全衛生部労働衛生課に報告すること。
  (1) 電離則第59条の2第1項の規定による健康診断の結果の記録の写し
  (2) 電離則第59条の2第2項の規定による線量等管理実施状況報告
  (3) 大臣指針の第2の2に定めるがん検診等の検査結果






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