第13次労働災害防止計画を踏まえた第三次産業における労働災害防止対策の推進について

基安発0330第3号
平成30年3月30日
都道府県労働局長 殿
厚生労働省労働基準局安全衛生部長

第13次労働災害防止計画を踏まえた第三次産業における労働災害防止対策の推進について

 第三次産業のうち特に労働災害発生件数の多い小売業、社会福祉施設及び飲食店については、平成23年
7月14日付け基安発0714第2号「第三次産業における労働災害防止対策の推進について」(以下「第三次通
達」という。)に基づき、労働災害防止のための取組を行ってきたところである。また、第12次労働災害
防止計画(以下「12次防」という。)においても、これらの業種は重点業種として設定され、労働災害防止
対策を推進するため、平成28年12月19日付け基安発1219第1号「第12次労働災害防止計画の最終年度に向
けた第三次産業における労働災害防止対策の推進」に基づく取組を行ってきた。しかしながら、産業・就
業構造等の変化や労働者の働き方等の多様化が進む中、これらの業種における労働災害は増加傾向にある。
 今般、平成30年度を初年度として5年間にわたる目標や重点的に取り組むべき事項を定めた第13次労働
災害防止計画(以下「13次防」という。)が策定されたが、これにおいても、小売業、社会福祉施設及び飲
食店については、労働災害発生率(休業4日以上の死傷年千人率)の5%減少という目標が掲げられ、重点的
な取組が求められているところである。
 このため、これまでの取組をさらに強化するため、13次防を踏まえた第三次産業における労働災害防止
対策を下記のとおり推進するので、その適切な実施に遺憾なきを期されたい。
 なお、本通達をもって第三次通達は廃止する。
第1 基本方針等
 1 第三次産業における労働災害の発生状況
   第三次産業における労働災害は、近年増加の傾向にあり、全産業の休業4日以上の死傷災害のうち4
  割以上(46.0%)が第三次産業におけるものであり、さらにその半数近くが小売業、社会福祉施設及び
  飲食店において発生している。これらの業種においては、労働者数の増加に伴って件数が増加してい
  るばかりではなく、発生率も減少していない。
   なお、これらの業種の労働災害の特徴は以下のとおりである。
  【死傷者数】28年:54,280人(24年:51,850人、対24年比4.7%増)
  【死傷年千人率】(小売業)28年:2.24(24年:2.24)、
          (社会福祉施設)28年:2.11(24年:1.99)、
          (飲食店)28年:1.79(24年:1.76)
  (1) 小売業
    小売業の労働災害(28年:13,444人)について見ると、「転倒」が約3分の1を占め、次いで「動作
   の反動・無理な動作」(腰痛)、「交通事故(道路)」が多く、被災者の過半数は50歳以上である。
  (2) 社会福祉施設
    社会福祉施設の労働災害(28年:8,281人)について見ると、「動作の反動・無理な動作」(腰痛)が
   大幅に増加している。「動作の反動・無理な動作」(腰痛)、「転倒」の二つで約3分の2を占め、次
   いで「交通事故(道路)」が多く、被災者の過半数は50歳以上である。
  (3) 飲食店
    飲食店の労働災害(28年:4,791人)について見ると、「転倒」に加え、調理中の「切れ・こすれ」、
   「高温・低温の物との接触」が多く、被災者のうち、30歳未満及び50歳以上がそれぞれ3分の1を占
   める。

 2 重点業種における安全管理上の課題と対策
   第三次産業のうち、13次防において重点業種とされている小売業、社会福祉施設及び飲食店(以下
  「重点業種」という。)においては、高年齢者を中心とした他産業からの入職者が増加しているため、
  業務に対する経験不足や加齢に伴う身体機能の低下等の影響により、高年齢労働者の被災リスクが高
  まっていると考えられることから、安全衛生教育の徹底や高年齢労働者でも働きやすい職場環境の整
  備等の取組が重要である。加えて、飲食店で働く若年層については、非正規労働者の割合が高まって
  いるが、危険性の高い機械等を使用する機会が少ないこともあって、事業者はもとより、労働者にお
  いても危険に対する認識が十分ではないと思われることから、雇入れ時等の安全衛生教育の徹底が重
  要である。
   平成29年から重点業種における多店舗展開企業及び複数の社会福祉施設を展開する法人(以下「多
  店舗展開企業等」という。)に対して、その本社及び法人本部(以下「本社等」という。)主導による
  自主的安全衛生活動を促進するための取組を実施しているものの、一部の企業等においては、その活
  動が低調で労働災害の減少が見られないことから、更に活動の定着を図っていく必要がある。具体的
  には、平成26年3月28日付け基発第0328第6号「労働安全衛生法施行令第2条第3号に掲げる業種におけ
  る安全推進者の配置等に係るガイドラインの策定について」に基づく安全推進者等の配置、リスクア
  セスメントの実施等を推進しているが、店舗や施設ごとの安全衛生担当者がいない等、事業場ごとの
  安全衛生管理の仕組みが十分でない場合がある。
   このため、平成29年に引き続き、重点業種の多店舗展開企業等に対して、労働災害防止のための運
  動や本社等に対する指導等を実施することにより、本社等主導による自主的安全衛生活動の促進を図
  り、店舗・施設における安全衛生水準の向上を図ることとする。
   また、労働災害防止に向けては、業界団体による自主的な取組が重要であるが、会員企業の安全衛
  生対策を推進するための安全衛生委員会等を設置していないなどの業界団体もあるため、関係業界団
  体への労働災害防止に対する取組を促進するとともに、安全衛生活動の活性化や必要な人材育成等に
  中央労働災害防止協会と連携して取り組むこととする。

第2 重点業種を対象とした具体的な実施事項
 1 多店舗展開企業等に対する取組における重点事項多店舗展開企業等において、本社等主導による自
  主的な安全衛生活動を定着させることを主眼とし、特に、次の事項を重点として取り組むものとする。
  (1) 本社等における労働災害防止・健康確保のための取組の促進
  (2) 店舗・施設における安全衛生担当者(安全管理者、衛生管理者、安全衛生推進者、衛生推進者及
   び安全推進者)の配置の促進
  (3) 店舗・施設における安全衛生活動の活性化・定着

 2 「働く人に安全で安心な店舗・施設づくり推進運動」の実施
   13次防における取組の促進を図るため、平成30年4月より、13次防の計画期間を通じて「働く人に
  安全で安心な店舗・施設づくり推進運動」(以下「安全推進運動」という。)を展開する。
  (1) 安全推進運動の趣旨等について
    安全推進運動は、多店舗展開企業等の本社等の自主的安全衛生活動を促進することにより、企業
   ・法人全体の安全意識を高め、安全衛生水準の向上を図ることを目的とするものであること。
    安全推進運動の実施事項等については、別添1の「働く人に安全で安心な店舗・施設づくり推進
   運動実施要綱」(以下「実施要綱」という。)のとおりであること。
  (2) 多店舗展開企業等への安全推進運動の周知について
   ア 多店舗展開企業等の本社等への周知
     管内の主要な多店舗展開企業等の本社等に対し、集団指導、直接訪問又は文書等により安全推
    進運動の周知を図ること。周知に当たっては、別途送付するリーフレットのほか、実施要綱の6
    の実施者の実施事項について、別添2のチェックリストの活用を図ること。
   イ 店舗及び施設への周知
     重点業種の店舗及び施設には、各種集団指導、個別指導、労働者死傷病報告書の受理時等あら
    ゆる機会を捉え、リーフレットを活用して、安全推進運動の周知を行うこと。
   ウ 関係業界団体等と連携した周知等の実施
     別添3及び別添4により関係業界団体、労働災害防止関係団体等に対し、周知を依頼しているの
    で、都道府県労働局においても地域の業界団体、社会福祉関係協議会等に対して、会員等への周
    知を依頼すること。
     また、都道府県等の社会福祉担当部署、食品衛生担当部署など当該業種を所管する部署に対し、
    引き続き協力を依頼するなど連携した取組を行うこと。
   エ 「働く人に安全で安心な店舗・施設づくり推進運動特設サイト」の周知・活用
     多店舗展開企業等の本社等での具体的な取組事項(チェックリストを含む。)、店舗、施設にお
    ける取組の好事例、利用可能なサービス等の情報を取りまとめた特設サイトを厚生労働省ホーム
    ページの「職場のあんぜんサイト」に開設しているので、関係者に広く周知と活用の働きかけを
    行うこと。
     また、安全推進者養成講習テキスト、小売業及び社会福祉施設向けリスクアセスメント実施マ
    ニュアル及び高年齢労働者に配慮した職場改善マニュアル等の自主的な安全衛生活動に必要なマ
    ニュアルについても掲載するので、併せて周知と活用の働きかけを行うこと。
   オ 重点周知期間
     「STOP!転倒災害プロジェクト」の重点取組期間としている6月及び2月には、当該プロジェク
    トの周知と連動して、安全推進運動の重点的な周知を図ること。

 3 多店舗展開企業等の本社等に対する指導の実施
  (1) 多店舗展開企業等のうち、企業等の全体として労働災害件数が多いものについては、本社等が主
   導し、同種災害の防止対策の取組を店舗、施設で水平展開を図ることが効果的であることから、多
   店舗展開企業等の本社等に対する指導を実施すること。
  (2) (1)の指導に当たっては、多店舗展開企業等の本社等が傘下の店舗、施設の労働災害発生状況、
   安全衛生管理活動の状況を別添2のチェックリストを活用して把握し、改善が必要となる事項につ
   いて、計画的な取組を図るよう指導すること。

 4 多店舗展開企業等以外の重点業種の事業場に対する指導の実施
   多店舗展開企業等以外の重点業種の事業場についても、1及び2に準じた取組の推進を図るとともに、
  事業場の労働災害の発生状況、安全衛生活動の状況を別添2のチェックリストを参考にして把握し、
  改善が必要となる事項について、計画的な取組を図るよう指導を実施すること。

 5 業界単位での労働災害防止対策の推進
   業界団体内に会員企業の安全衛生対策を推進するための安全衛生委員会等を設置されていない場合
  にその設置を促すとともに、安全衛生委員会等を核としつつ、業界として労働災害発生状況や優良事
  例の把握、人材育成のための研修の実施等、労働災害防止のための自主的な取組を強化するよう業界
  団体に効果的に働きかけること。なお、業界団体から安全衛生委員会等の設置等に関して協力依頼が
  あった場合は、安全衛生委員会等の立ち上げ及び運営に対する助言その他適切な支援を行うこと。

 6 中央労働災害防止協会との連携
   安全推進運動を主唱する中央労働災害防止協会においては、①安全推進運動の周知啓発、②事業場
  の安全衛生対策への指導援助、③KY訓練、転倒災害防止、腰痛予防対策に資する研修等の開催、教育
  支援、④教育用テキスト、周知啓発資料等の提供、⑤転倒防止のための防滑靴、切創防止手袋、火傷
  予防手袋等の有効な保護具の普及促進等の対策に取り組むこととしているので、技術的事項の支援を
  求める企業等や業界団体に対して、これらの紹介を行うこと。
   なお、②及び③について、中小規模事業場安全衛生サポート事業が活用できる場合は、具体的な取
  組手法等を求める事業場、又は集団に対して、積極的に、その活用を勧奨すること。

第3 重点業種以外の第三次産業について
  重点業種以外の第三次産業についても、労働災害の発生状況等各都道府県労働局の実情を踏まえ、必
 要に応じて関係業界団体等とも連携しつつ、効果的な取組を実施すること。






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