(別紙1)

過重労働による健康障害防止のための総合対策

1 目的
  長時間にわたる過重な労働は、疲労の蓄積をもたらす最も重要な要因と考えられ、さらには、脳・心
 臓疾患の発症との関連性が強いという医学的知見が得られている。働くことにより労働者が健康を損な
 うようなことはあってはならないものであり、この医学的知見を踏まえると、労働者が疲労を回復する
 ことができないような長時間にわたる過重労働を排除していくとともに、労働者に疲労の蓄積を生じさ
 せないようにするため、労働者の健康管理に係る措置を適切に実施することが重要である。
  このため、厚生労働省においては、平成14年2月から「過重労働による健康障害防止のための総合対
 策」(以下「旧総合対策」という。)及び旧総合対策の廃止に伴い新たに策定した平成18年3月17日付け
 基発第0317008号「過重労働による健康障害防止のための総合対策について」(以下「総合対策」という。)
 に基づき所要の対策を推進してきたところであるが、働き方の多様化が進む一方で、長時間労働に伴う
 健康障害の増加など労働者の生命や生活にかかわる問題が深刻化しており、これに的確に対処するため、
 平成27年12月から労働者のメンタルヘルス不調の一次予防を目的とした「ストレスチェック制度」が導
 入されている。
  また、社会問題となっている過労死等を防止するため、議員立法として制定された過労死等防止対策
 推進法(平成26年法律第100号)が、平成26年11月1日から施行され、同法に基づく「過労死等の防止のた
 めの対策に関する大綱」(平成30年7月24日閣議決定)においては、労働行政機関等における対策、調査
 研究、啓発、相談体制の整備及び民間団体の活動に対する支援の5つの対策を重点的に実施していくこ
 とが示されている。
  さらに、長時間労働の是正等の働き方改革の推進を目的とした働き方改革を推進するための関係法律
 の整備に関する法律(平成30年法律第71号)により、労働基準法(昭和22年法律第49号)労働安全衛生
 法(昭和47年法律第57号)、労働時間等の設定の改善に関する特別措置法(平成4年法律第90号)等が改正
 され、罰則付きの時間外労働の上限規制の導入や長時間労働者への医師による面接指導の強化、勤務間
 インターバル制度の導入の努力義務化などが行われ、一部の規定を除き平成31年4月1日から施行された
 ところである。
  本総合対策は、上記の労働基準法(以下「労基法」という。)労働安全衛生法(以下「安衛法」とい
 う。)等の改正の趣旨を踏まえ、旧総合対策に基づく措置との整合性及び一貫性を考慮しつつ、事業者
 が講ずべき措置(別添「過重労働による健康障害を防止するため事業者が講ずべき措置」をいう。以下
 同じ。)を定めるとともに、当該措置が適切に講じられるよう国が行う周知徹底、指導等の所要の措置
 をとりまとめたものであり、これらにより過重労働による健康障害を防止することを目的とするもので
 ある。

2 過重労働による健康障害を防止するため事業者が講ずべき措置等の周知徹底
  都道府県労働局及び労働基準監督署は、集団指導、監督指導及び個別指導等のあらゆる機会を通じて、
 リーフレット等を活用した周知を図るとともに、キャンペーン月間の設定等により、事業者が講ずべき
 措置の内容について、事業者に広く周知を図ることとする。
  なお、この周知に当たっては、関係事業者団体等、産業保健総合支援センター及び働き方改革推進支
 援センター等も活用することとする。

3 過重労働による健康障害防止のための窓口指導等
 (1) 36協定における時間外・休日労働に係る適正化指導の徹底
 ア 労基法第36条の規定に基づく協定(以下「36協定」という。)の届出に際しては、労働基準監督署の
  窓口において次のとおり指導を徹底する。
  (ア) 労基法第36条第3項に規定する限度時間(以下「限度時間」という。)を超える36協定については、
   限度時間を遵守するよう指導を行う。特に、限度時間を超えて時間外・休日労働をさせることがで
   きる場合をできる限り具体的に定めなければならず、「業務の都合上必要な場合」、「業務上やむ
   を得ない場合」など恒常的な長時間労働を招くおそれがあるものを定めることは認められないこと
   に留意するようリーフレット等を活用し指導する。
  (イ) 過重労働による健康障害を防止する観点から、36協定について、限度時間を超えて時間外・休日
   労働を行わせることができる時間を定めるに当たり、当該時間を限度時間にできる限り近づけるよ
   う、及び休日労働の日数をできる限り少なくし、かつ休日労働の時間をできる限り短くするように
   リーフレット等を活用し指導する。
  (ウ) 1月当たり45時間を超える時間外労働を行わせることが可能である36協定であっても、実際の時
   間外労働については1月当たり45時間以下とするようリーフレット等を活用し指導する。
  (エ) 休日労働を行うことが可能な36協定であっても、実際の休日労働をできる限り最小限のものとす
   るようリーフレット等を活用し指導する。
 イ 限度時間を超える36協定について、労働者代表からも事情を聴取した結果、労使当事者間の検討が
  十分尽くされていないと認められた場合などには、協定締結当事者である労働者側に対しても必要な
  指導を行う。
 (2) 裁量労働制に係る周知指導
   裁量労働制に係る届出がなされた際には、労働基準監督署の窓口において、リーフレット等を活用
  して、事業者が講ずべき措置の内容を周知指導する。
 (3) 労働時間等の設定の改善に向けた自主的取組の促進に係る措置
   自主点検等から、特に時間外労働が長い等、改善が必要とされる事業場に対しては、働き方・休み
  方改善コンサルタント等を活用し、長時間労働の是正、年次有給休暇の取得促進とともに、勤務間イ
  ンターバル制度の趣旨を説明し導入を促す。

4 過重労働による健康障害防止のための監督指導等
  時間外・休日労働時間(休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合におけるその超え
 た時間をいう。以下同じ。)が1月当たり45時間を超えているおそれがある事業場又は労基法第41条の2
 第1項の規定により労働する労働者(以下「高度プロフェッショナル制度適用者」という。)に対しては、
 次のとおり指導する。
 (1) 産業医、衛生管理者、衛生推進者等の選任及び活動状況並びに衛生委員会等の設置及び活動状況を
  確認し、必要な指導を行う。
 (2) 健康診断、健康診断結果についての医師からの意見聴取、健康診断実施後の措置、保健指導等の実
  施状況について確認し、必要な指導を行う。
 (3) 安衛法第66条の8の3に基づき、裁量労働制の適用者や管理監督者を含む全ての労働者(ただし、高
  度プロフェッショナル制度適用者を除く。)の労働時間の状況の把握(別添の5の(2)のアに掲げる措置
  をいう。)の状況について確認するとともに、時間外・休日労働時間が1月当たり80時間を超えた労働
  者の当該超えた時間に関する情報に係る産業医への提供及び当該労働者本人への通知(別添の5の(2)
  のイに掲げる措置をいう。)の状況についても確認の上、安衛法第66条の8第1項第66条の8の2第1項
  又は第66条の9の規定等に基づく長時間労働者に対する面接指導等(医師による面接指導及び面接指導
  に準ずる措置をいう。以下同じ。)及びその実施後の措置等(別添の5の(2)のウに掲げる措置をいう。)
  を講じるよう指導を行う。
 (4) (3)の面接指導等が円滑に実施されるよう、手続等の整備(別添の5の(2)のエに掲げる措置をいう。)
  の状況について確認し、必要な指導を行う。
 (5) 労基法第41条の2第1項第3号に基づく健康管理時間を把握する措置を確認し、安衛法第66条の8の4
  第1項又は第66条の9の規定等に基づく高度プロフェッショナル制度適用者への面接指導及びその実施
  後の措置等(別添の5の(3)のウに掲げる措置をいう。)が講じられていない場合は必要な指導を行う。
 (6) (5)の面接指導が円滑に実施されるよう、手続等の整備(別添の5の(3)のエに掲げる措置をいう。)
  の状況について確認し、必要な指導を行う。
 (7) 労基法第41条の2第1項第4号に基づく休日確保措置、同項5号に基づく選択的措置及び同項第6号に
  基づく健康・福祉確保措置の状況を確認し、当該措置が講じられていない場合は必要な指導を行う。
 (8) 事業者が(3)又は(5)の面接指導等(別添の5の(2)のウの(ア)のa又はb、(イ)のb又はc並びに5の(3)
  のウの(ア)のbに掲げる措置に限る。)に係る指導に従わない場合には、安衛法第66条第4項に基づき、
  当該面接指導等の対象となる労働者に関する作業環境、労働時間、深夜業の回数及び時間数、過去の
  健康診断及び面接指導の結果等を踏まえた労働衛生指導医の意見を聴き、臨時の健康診断の実施を指
  示するとともに、厳正な指導を行う。
 (9) 事業場が常時50人未満の労働者を使用するものである場合であって、近隣に専門的知識を有する医
  師がいない等の理由により、事業者自ら医師を選任し、面接指導を実施することが困難なときには、
  産業保健総合支援センターの地域窓口(以下「地域産業保健センター」という。)の活用が可能である
  ことを教示する。
 (10) 心理的な負担の程度を把握するための検査、高ストレス者に対する医師による面接指導及び事後
  措置(医師からの意見聴取及び意見を勘案した就業上の措置)(以上をまとめて「ストレスチェック制
  度」という。)を実施していない事情を把握した場合は、実施するよう指導する。その際には、事業
  場の実態やニーズを踏まえて、ストレスチェック制度を含めたメンタルヘルス対策の全般的な取組方
  法について「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(平成27年健康保持増進のための指針公示
  第6号)に基づき、対策の実施を助言・指導すること。
   なお、ストレスチェック制度が努力義務とされている常時50人未満の労働者を使用する事業場に対
  しては、独立行政法人労働者健康安全機構が行うストレスチェック制度に関する助成金や、地域産業
  保健センターの医師による面接指導の活用が可能であることを教示する。
 (11) 上記のほか、長時間労働の抑制を図るため、限度時間を超えて時間外労働が行われているなどの
  場合には、必要な指導を行う。

5 過重労働による業務上の疾病が発生した場合の再発防止対策を徹底するための指導等
 (1) 過重労働による業務上の疾病を発生させた事業場に対する再発防止対策の徹底の指導
   過重労働による業務上の疾病を発生させた事業場については、当該疾病の原因の究明及び再発防止
  の措置を行うよう指導する。
 (2) 司法処分を含めた厳正な対処
   過重労働による業務上の疾病を発生させた事業場であって労働基準関係法令違反が認められるもの
  については、司法処分を含めて厳正に対処する。



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