安全衛生情報センター
1 目的 長時間にわたる過重な労働は、疲労の蓄積をもたらす最も重要な要因と考えられ、さらには、脳・心 臓疾患の発症との関連性が強いという医学的知見が得られている。働くことにより労働者が健康を損な うようなことはあってはならないものであり、この医学的知見を踏まえると、労働者が疲労を回復する ことができないような長時間にわたる過重労働を排除していくとともに、労働者に疲労の蓄積を生じさ せないようにするため、労働者の健康管理に係る措置を適切に実施することが重要である。 このため、厚生労働省においては、平成14年2月から「過重労働による健康障害防止のための総合対 策」(以下「旧総合対策」という。)に基づき所要の対策を推進してきたところであるが、働き方の多様 化が進む中で、長時間労働に伴う健康障害の増加など労働者の生命や生活にかかわる問題が深刻化して おり、これに的確に対処するため、必要な施策を整備充実する労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)等 の改正が行われ、平成18年4月から施行されているところである。 加えて、労働者のメンタルヘルス不調の一次予防を目的として、平成26年6月の労働安全衛生法の改 正により「ストレスチェック制度」が導入され、平成27年12月から施行されているところである。 さらに、社会問題となっている過労死等を防止するため、同じく平成26年6月に過労死等防止対策推 進法(平成26年法律第100号)が議員立法として制定され、同年11月1日から施行されており、同法に基づ き平成27年7月には「過労死等の防止のための対策に関する大綱」が定められ、調査研究、啓発、相談 体制の整備、民間団体の活動に対する支援の四つの対策を重点的に実施していくことが示されたところ である。 本総合対策は、上記の労働安全衛生法等の改正及び過労死等防止対策推進法の制定の趣旨を踏まえ、 旧総合対策に基づく措置との整合性、一貫性を考慮しつつ、事業者が講ずべき措置(別添「過重労働に よる健康障害を防止するため事業者が講ずべき措置」をいう。以下同じ。)を定めるとともに、当該措 置が適切に講じられるよう国が行う周知徹底、指導等の所要の措置をとりまとめたものであり、これら により過重労働による健康障害を防止することを目的とするものである。 2 過重労働による健康障害を防止するため事業者が講ずべき措置等の周知徹底 都道府県労働局及び労働基準監督署は、集団指導、監督指導、個別指導等のあらゆる機会を通じて、 リーフレット等を活用した周知を図るとともに、キャンペーン月間の設定等により、事業者が講ずべき 措置の内容について、事業者に広く周知を図ることとする。 なお、この周知に当たっては、関係事業者団体等並びに産業保健総合支援センター等も活用すること とする。 3 過重労働による健康障害防止のための窓口指導等 (1) 36協定における時間外労働の限度時間に係る指導の徹底 ア 労働基準法(昭和22年法律第49号)第36条に基づく協定(以下「36協定」という。)の届出に際して は、労働基準監督署の窓口において次のとおり指導を徹底する。 (ア) 「労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準」(平成10年労 働省告示第154号。以下「限度基準」という。)に規定する限度時間を超える36協定については、 限度時間を遵守するよう指導を行う。特に、限度基準第3条ただし書又は第4条に定める「特別の 事情」を定めた36協定については、この「特別の事情」が臨時的なものに限られるものとするよ う指導する。また、過重労働による健康障害を防止する観点から、限度時間を超える一定の時間 まで延長する労働時間をできる限り最小限のものとするようにリーフレット等を活用し指導する。 (イ) 限度基準に適合し、月45時間を超える時間外労働を行わせることが可能である36協定であって も、実際の時間外労働については月45時間以下とするようリーフレット等を活用し指導する。 (ウ) 休日労働を行うことが可能な36協定であっても、実際の休日労働をできる限り最小限のものと するようリーフレット等を活用して指導する。 イ 限度基準に規定する限度時間を超える36協定について、労働者代表からも事情を聴取した結果、 労使当事者間の検討が十分尽くされていないと認められた場合などには、協定締結当事者である労 働者側に対しても必要な指導を行う。 (2) 裁量労働制に係る周知指導裁量労働制に係る届出に際しては、労働基準監督署の窓口において、リ ーフレット等を活用して、事業者が講ずべき措置の内容を周知指導する。 (3) 労働時間等の設定の改善に向けた自主的取組の促進に係る措置限度基準に規定する限度時間を超え る時間外労働を行わせることが可能な36協定を締結している事業場であって、労働時間等の設定の改 善に向けた労使による自主的取組の促進を図ろうとするものに対し、都道府県労働局に配置されてい る働き方・休み方改善コンサルタントの活用が図られるよう措置する。 4 過重労働による健康障害防止のための監督指導等 時間外・休日労働時間(休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合におけるその超え た時間をいう。以下同じ。)が月45時間を超えているおそれがある事業場に対しては、次のとおり指導 する。 (1) 産業医、衛生管理者、衛生推進者等の選任及び活動状況並びに衛生委員会等の設置及び活動状況を 確認し、必要な指導を行う。 (2) 健康診断、健康診断結果についての医師からの意見聴取、健康診断実施後の措置、保健指導等の実 施状況について確認し、必要な指導を行う。 (3) 労働者の時間外・休日労働時間の状況を確認し、労働安全衛生法第66条の8及び第66条の9の規定等 に基づく長時間労働者に対する面接指導等(医師による面接指導及び面接指導に準ずる措置をいう。 以下同じ。)及びその実施後の措置等(別添の5の(2)のアに掲げる措置をいう。)を実施するよう指導 を行う。 (4) (3)の面接指導等が円滑に実施されるよう、手続等の整備(別添の5の(2)のイに掲げる措置をいう。) の状況について確認し、必要な指導を行う。 (5) 事業者が(3)の面接指導等(別添5の(2)のアの(ア)の[1]から[3]までに掲げる措置に限る。)に係る 指導に従わない場合には、労働安全衛生法第66条第4項に基づき、当該面接指導等の対象となる労働 者に関する作業環境、労働時間、深夜業の回数及び時間数、過去の健康診断及び面接指導の結果等を 踏まえた労働衛生指導医の意見を聴き、臨時の健康診断の実施を指示するとともに、厳正な指導を行 う。 (6) 事業場が常時50人未満の労働者を使用するものである場合であって、近隣に専門的知識を有する医 師がいない等の理由により、事業者自ら医師を選任し、面接指導を実施することが困難なときには、 産業保健総合支援センターの地域窓口(以下「地域産業保健センター」という。)の活用が可能である ことを教示する。 (7) 心理的な負担の程度を把握するための検査(以下「ストレスチェック」という。)、高ストレス者に 対する医師による面接指導及び事後措置(医師からの意見聴取及び意見を勘案した就業上の措置)(以 上をまとめて「ストレスチェック制度」という。)を実施するよう指導する。 また、ストレスチェック制度が当分の間努力義務とされている常時50人未満の労働者を使用する事 業場に対しては、独立行政法人労働者健康安全機構が行うストレスチェック制度に関する助成金や、 地域産業保健センターの医師による面接指導の活用が可能であることを教示する。 (8) 上記のほか、長時間労働の抑制を図るため、36協定により定められた延長することができる時間を 超えて時間外労働が行われている場合や限度基準に適合していない場合などのほか、中小事業主以外 の事業主に係る労働基準法第37条第1項ただし書に規定する割増賃金が支払われていないなどの場合 には、必要な指導を行う。 5 過重労働による業務上の疾病が発生した場合の再発防止対策を徹底するための指導等 (1) 過重労働による業務上の疾病を発生させた事業場に対する再発防止対策の徹底の指導過重労働によ る業務上の疾病を発生させた事業場については、当該疾病の原因の究明及び再発防止の措置を行うよ う指導する。 (2) 司法処分を含めた厳正な対処過重労働による業務上の疾病を発生させた事業場であって労働基準関 係法令違反が認められるものについては、司法処分を含めて厳正に対処する。