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(別紙)

手すり先行工法等に関するガイドライン

第1 目的
 本ガイドラインは、労働安全衛生関係法令と相まって、足場の設置を必要とする建設工事において、手
すり先行工法による足場の組立て、解体又は変更の作業(以下「足場の組立て等の作業」という。)を行う
とともに、働きやすい安心感のある足場を使用することにより、労働者の足場からの墜落等を防止し、併
せて快適な職場環境の形成に資することを目的とする。

第2 適用対象
 本ガイドラインは、足場の設置を必要とする建設工事に適用する。 

第3 定義
 1 手すり先行工法
  本ガイドラインで示す「手すり先行工法」とは、建設工事において、足場の組立て等の作業を行うに
 当たり、労働者が足場の作業床に乗る前に、別紙1に示す「手すり先行工法による足場の組立て等の作
 業に関する基準」に基づいて、当該作業床の端となる箇所に適切な手すりを先行して設置し、かつ、最
 上層の作業床を取り外すときは、当該作業床の端の手すりを残置して行う工法をいう。

 2 働きやすい安心感のある足場
  本ガイドラインで示す「働きやすい安心感のある足場」とは、手すり先行工法により組み立てられた
 足場であって、関連する労働安全衛生法令のすべての規定を満たした上で、第6の「留意すべき事項」
 及び別紙2の「働きやすい安心感のある足場に関する基準」に基づき、より安全な作業を行えるように
 必要な措置を講じた足場をいう。

第4 事業者及び労働者の責務
 事業者は、労働安全衛生関係法令を遵守するとともに、本ガイドラインに基づき、足場の組立て等の作
業を行い、かつ、働きやすい安心感のある足場を使用することにより、建設工事における墜落等による労
働災害の一層の防止に努めるものとする。
 労働者は、労働安全衛生関係法令に定める労働者が守るべき事項を遵守するとともに、事業者が本ガイ
ドラインに基づいて行う措置に協力することにより、建設工事における墜落等による労働災害の防止に努
めるものとする。

第5 講ずべき措置
 1 足場に係る施工計画の策定
  事業者は、次により、足場の設置を行う作業箇所等に係る事前調査を行うとともに、足場に係る施工
 計画として、足場計画、機材管理計画、作業計画、機械計画、仮設備計画、安全衛生管理計画及び工程
 表を策定し、関係労働者に周知すること。
  (1) 事前調査
   足場を設置する前に次のア及びイの調査を実施し、当該調査結果に基づき、(2)から(8)までの計
  画を作成すること。また、労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号。以下「安衛則」という。)
  第561条の2に基づき、足場を設置する箇所の幅が1メートル以上あるときは、原則として本足場を使
  用しなければならないことに留意すること。
  ア 敷地内調査
    建設工事を行う敷地内について、現地踏査等の方法により次の事項に関して調査を行い、その状
   況を把握すること。
   (ア) 敷地内の建築物等の有無及びその状況
   (イ) 敷地の広さ、形状、傾斜、土質等の状況
   (ウ) 敷地使用上の制約、障害物の存在等
   (エ) その他足場の設置に関して必要な事項
  イ 周囲の調査
    建設工事を行う敷地周辺について、現地踏査等の方法により次の事項に関して調査を行い、そ
   の状況を把握すること。
   (ア) 敷地に隣接する建築物等の有無及びその状況
   (イ) 架空電線の有無及びその状況
   (ウ) 崖、溝、水路、樹木等の有無及びその状況
   (エ) 道路、交通量、交通規制等の状況
   (オ) 工事施工上の制約等
   (カ) その他足場の設置に関して必要な事項

  (2) 足場計画
    (1)の事前調査の結果に基づき、次の事項を明らかにした足場計画を作成すること。
  ア 足場の種類等
    別紙1及び2のうちから、足場の種類及び手すり先行工法による足場の組立て等の作業方法を定
   めること。
  イ 構造
    足場は、丈夫で、墜落の危険の少ない安心感のある構造とすること。
  ウ 設計荷重
    足場の自重、積載荷重、風荷重、水平荷重等を適切に設定すること。
  エ 最大積載荷重
    足場の構造及び材料に応じて、作業床の最大積載荷重を定めること。
  オ 機材
    足場の構造に応じた機材の種類及び量を確認するとともに、必要となる時期までに確保できるよ
   うにすること。
  カ 組立図
    足場の各部材の配置、寸法、材質並びに取付けの時期及び順序が明記された組立図を作成するこ
   と。
  キ 点検
    第6の3に基づき、足場の点検及び補修並びにこれらの結果の記録の保存の方法、期間等を定める
   こと。

  (3) 機材管理計画
    (2)のオの機材については、次の事項を明らかにした機材管理計画を作成すること。
  ア 機材の点検
    足場の組立て及び変更の作業を行う前に、機材の欠陥・損傷の有無等について点検し、不良品を
   取り除くこと。
  イ 規格への適合の確認
    わく組足場等の鋼管足場用の部材及び附属金具については、鋼管足場用の部材及び附属金具の規
   格(昭和56年労働省告示第103号)に適合していることを確認すること。
  ウ 経年管理の確認
    機材については、「経年仮設機材の管理について」(平成8年4月4日付け基発第223号の2)に基づ
   いて適切に経年管理が行われていることを確認すること。

  (4) 作業計画
    (1)の事前調査の結果及び(2)により決定した足場の種類に応じて、次の事項を明らかにした作
   業計画を作成すること。
  ア 足場の組立ての作業の準備
   (ア) 足場の組立ての作業に支障となる障害物等の除去方法
   (イ) 架空電線の防護方法
   (ウ) 足場の基礎地盤の整備方法
   (エ) 周辺道路、隣接家屋等への機材の飛来等の防止方法
   (オ) 機材等の搬入及び仮置き方法
   (カ) その他足場の組立ての作業の準備に必要な事項
  イ 足場の組立ての作業
   (ア) 足場を構成する部材の取付けの方法及び手順
   (イ) 防護棚、荷上げ構台、巻上機等足場の部材に取り付ける設備の取付けの方法及び手順
   (ウ) 階段及び踊り場の設置方法並びに設置手順
   (エ) 出入口等の補強方法及び補強手順
   (オ) (5)のイの(ア)に応じた作業手順
   (カ) その他足場の組立ての作業に必要な事項
  ウ 足場の解体の作業
   (ア) イの(ア)から(エ)までの作業により取り付けたすべての部材等の取り外し順序及びそれぞれ
    の部材等の取り外し手順
   (イ) (5)のイの(ア)に応じた作業手順
   (ウ) その他足場の解体の作業に必要な事項
  エ 足場の変更の作業
    足場の変更の作業においては、部材等の取り外しの作業はウ、部材等の取付けの作業はイによる
   とともに、次の事項を明らかにすること。
   (ア) 足場の変更に関する承認方法
   (イ) 一時的変更の場合における復元の時期及び確認方法
   (ウ) 足場を変更する時期、範囲及び内容を関係労働者に周知する方法
   (エ) その他足場の変更の作業に必要な事項

  (5) 機械計画
   足場の組立て等の作業にクレーン、移動式クレーン、車両系建設機械等の機械(以下「機械」とい
  う。)を使用する必要があるときは、次の事項を明らかにした機械計画を作成すること。
  ア 機械の設置
   (ア) 使用する機械の種類、能力及び必要台数
   (イ) 使用する機械の設置場所、設置方法及び設置期間
   (ウ) 使用する機械の搬出入の方法
   (エ) その他機械の設置に必要な事項
  イ 機械の使用
   (ア) 機械の作業範囲及び作業方法
   (イ) 機械の運行経路
   (ウ) 機械の運転中に立入りを禁止する方法又は誘導者を配置する方法
   (エ) その他機械の使用に必要な事項

  (6) 仮設備計画
   次の足場に関連する仮設備を設置するときは、当該仮設備の種類、数量、設置場所、設置方法、設
  置期間及び使用方法を明らかにした仮設備計画を作成すること。
  ア 安全に昇降するための仮設備
  イ 飛来落下を防止するための仮設備
  ウ 照明を確保するための仮設備
  エ 電源を確保するための仮設備
  オ その他必要な仮設備

  (7) 安全衛生管理計画
   次の事項を明らかにした安全衛生管理計画を作成すること。
  ア 安全衛生管理体制
  イ 安全衛生教育
  ウ 安全衛生活動

  (8) 工程表
   足場を使用する作業(足場の組立て等の作業を除く。以下同じ。)及び足場の組立て等の作業にお
  いて、次の事項を明らかにした工程表を作成すること。
  ア 各作業に関する工程
  イ 安全衛生管理に関する工程
  ウ 各作業間及び各作業と安全衛生管理の関連

 2 足場に係る施工計画の実施及び変更時の措置
  事業者は、1で策定した足場に係る施工計画及び別紙1に基づき、手すり先行工法による一連の作業を
 適切に行うこと。
  また、当該施工計画を変更する必要が生じた場合は、事前に関係者と十分に検討を行うものとし、変
 更した施工計画は関係労働者に周知すること。

第6 留意すべき事項
 事業者は、第5の1で策定した足場に係る施工計画及び別紙1に基づき、手すり先行工法による一連の作
業を行うとともに、次の事項に留意すること。
 1 足場の構造上の留意事項
  足場の組立てに当たっては、安衛則第570条第571条等の労働安全衛生関係法令を遵守し、第5の1
 の(2)のカ及び(4)のイに基づいて組み立てるとともに、次に基づき実施すること。
  (1) 脚部
  ア 足場の脚部の沈下を防止するため、地盤を十分に突き固め、敷板等を敷き並べること。
  イ わく組足場にあっては、建わくの脚柱の下端にジャッキ型ベース金具を配置し、建わくの高さを
   揃えること。
  ウ くさび緊結式足場にあっては、くさび緊結式足場の支柱の下端にねじ管式ジャッキベース型金具
   を配置し、支柱の高さを揃えること。

  (2) 布
  ア わく組足場にあっては、足場のはり間方向の脚柱の間隔と床材の幅の寸法を原則として同じもの
   とし、両者の寸法が異なるときは、床材を複数枚設置する等により、床材と脚柱との隙間が、原則
   として12センチメートル未満になるように設置すること。
  イ 床付き布わくのつかみ金具は、外れ止めを確実にロックすること。
  ウ くさび緊結式足場にあっては、足場のはり間方向の支柱の間隔と床材の幅の寸法を原則として同
   じものとし、両者の寸法が異なるときは、床材を複数枚設置する等により、床材と支柱との隙間が、
   原則として12センチメートル未満になるように設置すること。

  (3) 筋かい
  ア わく組足場にあっては、交さ筋かいを原則として外側及び躯体側の両構面に取り付けること。
  イ 建わくの交さ筋かいピンは、確実にロックすること。
  ウ くさび緊結式足場にあっては、くさび緊結式足場用先行手すり又はくさび式足場用斜材を取り付
   けること。

  (4) 壁つなぎ
  ア わく組足場にあっては、壁つなぎの間隔を垂直方向9メートル以下、水平方向8メートル以下で
   取り付けるとともに、最上層に壁つなぎ又は控えを取り付けること。
  イ 単管足場にあっては、壁つなぎの間隔を垂直方向5メートル以下、水平方向5.5メートル以下で
   取り付けるとともに、最上層に壁つなぎ又は控えを取り付けること。
    なお、くさび緊結式足場にあっては、「くさび緊結式足場に係る労働安全衛生規則第570条第2
   項の適用に関する疑義について(回答)」(令和4年12月26日付け基安安発第1226第2号)に留意する
   こと。
  ウ 壁つなぎは、可能な限り壁面に直角に取り付けること。
  エ 壁つなぎ用のアンカーは、専用のものを用いること。なお、後付けアンカーの場合、必要な引抜
   強度を確保すること。
  オ 壁つなぎとして鋼管を躯体のH形鋼等に鉄骨用クランプを用いて設置する場合にあっては、鋼管1
   本につきH形鋼等のフランジ部2箇所で取り付けること。

 2 足場の組立て等の作業における留意事項
  足場の組立て等の作業に当たっては、第5の1の(4)の作業計画に基づいて作業を行うとともに、次に
 定めるところによること。
  (1) 作業時期等の周知
   足場の組立て等の作業に係る時期、範囲及び順序を関係労働者に周知すること。

  (2) 立入禁止
   足場の組立て等の作業を行う区域内には、関係労働者以外の立入りを禁止すること。

  (3) 手すり先行の徹底
   手すりが先行して設置されていない作業床及び手すりが取り外された作業床には乗ってはならない
  ことを関係労働者に周知徹底すること。

  (4) 要求性能墜落制止用器具の使用
   足場の組立て等の作業の必要上、手すり等を先行して設置できない又は取り外す箇所においては、
  労働者に要求性能墜落制止用器具を装着させるとともに、要求性能墜落制止用器具を安全に取り付け
  るための設備(以下「要求性能墜落制止用器具取付設備」という。)に、当該要求性能墜落制止用器具
  を確実に取り付けさせること。また、使用に当たっては、「要求性能墜落制止用器具の二丁掛」を基
  本とすること。
   なお、要求性能墜落制止用器具の選定、使用方法等については、「墜落制止用器具の安全な使用に
  関するガイドライン」(平成30年6月22日付け基発0622第2号)に基づいて対応すること。

  (5) 要求性能墜落制止用器具を取り付ける水平親綱の設置等
   足場の組立て等の作業の必要上、手すり等を先行して設置できない又は取り外す場合は、水平親綱
  を張り、要求性能墜落制止用器具を使用させること。また、要求性能墜落制止用器具を取り付ける水
  平親綱を設置するときは、別紙1の4の(1)に基づいた性能を有する機材を同(2)に基づいて設置し、
  使用すること。

  (6) 悪天候時の作業の中止
   強風時等の悪天候が予想されるときは、足場の組立て等の作業を中止すること。

  (7) つり網等の使用
   機材等を上げ下ろしするときは、つり網、つり袋、荷揚げ用のウインチ、荷揚げ用のリフト等を労
  働者に使用させること。

  (8) 作業主任者の選任
   足場の組立て等の作業を行うときは、足場の組立て等作業主任者を選任し、その者に安衛則第566
  条の職務を行わせるとともに、関係労働者が不安全行動を行わないよう監視させること。

  (9) 特別教育の実施
   足場の組立て等の作業に係る業務に就く労働者に対しては、安衛則第36条第39号に基づく特別教育
  を実施すること。また、足場を使用する作業に就く労働者に対しては、安衛則第36条第41号に基づく
  特別教育を実施するよう努めること。

  (10) 足場の変更
   足場を変更する場合は、第5の1の(4)のエで定めた変更の方法等に基づき、変更の作業を行うとと
  もに、一時的に変更した部材等は必ず復元すること。

 3 足場の点検等に関する留意事項
  (1) 点検等の実施
  ア 足場の組立て等の作業の監視
    足場の組立て等の作業を行うときは、足場の組立て等作業主任者に安衛則第566条に規定する作
   業の進行状況等の監視を行わせるとともに、別紙1の3及び4に示す各機材等の使用状況についても
   監視させること。
  イ 足場の組立て等の作業後の点検
    足場の組立て等の作業を行った後においては、(2)のアにより指名された点検者によって、(2)
   のイにより作成した点検表を用いて安衛則第567条第2項に規定する点検を実施するとともに、別
   紙2の3の安全ネット等の設置状況についても点検を行い、異常を認めたときは直ちに補修すること。
  ウ 作業開始前点検
    足場を使用する作業を開始する前に、職長等当該足場を使用する労働者の責任者から点検者を指
   名し、安衛則第567条第1項の点検を実施すること。

  (2) 点検等の実施体制
  ア 点検者の指名
    (1)のイの点検の実施者については、①足場の組立て等作業主任者であって、足場の組立て等作
   業主任者能力向上教育を受講している者、②労働安全コンサルタント(試験の区分が土木又は建築
   であるものに限る。)等の労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第88条第1項に基づく足場の設置
   等の届出に係る「計画作成参画者」に必要な資格を有する者、③全国仮設安全事業協同組合が行う
   「仮設安全監理者資格取得講習」を受けた者、④建設業労働災害防止協会が行う「施工管理者等の
   ための足場点検実務者研修」を受けた者等十分な知識、経験を有する者を指名すること。
  イ 点検表の作成
    (1)のイの点検については、足場の種類・機材に応じた点検等を行う項目を定めた点検表を作成
   すること。点検表の作成に当たっては、「足場からの墜落・転落災害防止総合対策推進要綱の改正
   について」(令和5年3月14日付け基安発0314第2号)別紙資料に示す「足場等の種類別点検チェック
   リスト」を活用すること。
  ウ 点検・補修結果等の記録及び保存
    点検者の氏名、点検等の結果及び当該点検の結果に基づいた補修等の内容については、安衛則第
   567条第3項に基づきイの点検表に記録し、必要な期間保存すること。

 4 足場を使用する作業等における留意事項
  (1) 足場を使用する作業等の開始
   足場を使用する作業等は、3の(1)のウの点検を行った後でなければ開始してはならないこと。

  (2) 手すり等の確認の徹底
   作業床の端に手すり等が設置されていない場合は、足場を使用する作業等を行ってはならないこと
  を関係労働者に周知徹底すること。

  (3) 最大積載荷重の遵守
   作業床には、第5の1の(2)のエで定めた最大積載荷重を超えて積載してはならないこと。

  (4) 悪天候時の作業の中止
   強風時等の悪天候が予想されるときは、足場を使用する作業等を中止すること。

  (5) 不安全行動の排除
   わく組足場の建わくを昇降する行為やくさび緊結式足場の支柱を昇降する行為等の足場上での不安
  全行動を行わないことを雇入れ時教育や第5の1の(7)のイの安全衛生教育等により、関係労働者に徹
  底すること。