別紙1-1

陸上貨物運送事業の荷役作業における労働災害を防止するため事業者が講ずべき措置
(平成25年3月25日 基発0325第1号により廃止)

 陸上貨物運送事業(以下「陸運業」という。)における事業者(以下「陸運事業者」という。)は、荷役作
業における労働災害防止を推進する主体として、責任を有するものであるが、大幅な労働災害減少を効果
的に進めるため、荷主、配送先、元請事業者等(以下「荷主等」という。)に対して作業環境の整備に係る
協力を要請するなど荷主等と緊密な連携協力を図りながら、「1.基本的事項」に定める事項について必要
な措置を講じるとともに、それぞれの荷役作業の種類に応じて「2.荷役作業別の労働災害防止上の重点事
項」により具体的な対策を進めることとする。
 
1. 基本的事項
 (1) 安全衛生管理体制の整備等
   労働災害の防止は事業者の責務であり、経営トップが率先して事業場における安全衛生方針を表明
  した上で、効果のある安全衛生管理を行うため、各級管理者の役割、責任、権限を明確にした安全衛
  生管理体制を整備すること。その際、必要な管理者等の選任や安全衛生委員会など労働者の意見聴取
  の場の設定といった労働安全衛生法(以下「安衛法」という。)に規定された事項の履行はもとより、
  陸運業に特有の労働災害防止の観点から、次の事項に留意して行うこと。
  ア 必要な管理者等の選任
    総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者、安全衛生推進者(安衛法第10111212条の2
   関係)、交通労働災害防止担当管理者など安全衛生を管理する者を選任すること。
    現場の作業の指揮等に必要な、はい作業主任者、車両系荷役運搬機械等作業指揮者、積卸し作業
   指揮者等を選任すること(労働安全衛生規則第428151条の4420条関係)。
  イ 安全衛生管理規程の作成、整備
    安全衛生管理体制、各管理者等の職務と権限、労働者の遵守事項等をわかりやすく文書化した「
   安全衛生管理規程」を作成、整備すること。
  ウ リスクアセスメントの実施体制の整備
    荷役作業について、作業現場に応じて危険性又は有害性等の調査(以下「リスクアセスメント」と
   いう。)を実施する担当者を定めるなど実施体制を整備すること(安衛法第28条の2関係)。
  エ 目標の設定及び計画の作成、実施、評価、改善等
    トップが表明する安全衛生方針に基づき、安全衛生目標を設定の上、これを達成するため、リス
   クアセスメント実施結果に基づき、具体的なリスク低減措置等を含む年間安全衛生計画を作成する
   こと。次いで、計画に従って安全衛生対策を実施した上で、その実施状況・効果等について、一定
   期間ごとに評価し、必要な改善を行うこと。
  オ 労働者からの意見聴取
    安全衛生委員会等労働者からの意見聴取の場を設ける(安衛法第19条関係)とともに、荷役作業時
   の労働災害防止及び交通労働災害防止に関する事項を必ず調査審議すること。
 (2) 荷主等との連携協力による安全対策の推進
    陸運事業者は、荷主等自社以外の場所(以下「荷主先等」という。)での労働災害や複数の事業者
  の労働者による混在作業における労働災害を防止するため、次の事項に留意して荷主等と連携協力
  して安全対策を進めること。
    なお、元請事業者においては、下請事業者に対して連絡調整事項を伝達するとともに、下請事業
  者が行う安全衛生教育に対する資料の提供、講師の派遣等必要な支援を行うこと。
  ア 荷主等に対して、運送契約時において、荷役作業の有無、運搬方法、作業の分担等の作業条件及
   び作業場所の環境、作業の留意点等の連絡調整に係る事項について別添1を参考に文書により適切
   な取決めを行い、その内容を作業者全員に伝達すること。
  イ 荷主等に対して、運送の都度、事前に荷役作業の有無、運搬物の重量、荷役作業方法等荷役作業
   の内容を「安全作業連絡書(例)」(別添2)を参考に確認すること。その上で、運転者等に対して、
   荷役作業の内容等を周知するとともに、必要な安全対策を指示すること。
  ウ 荷役作業を行う可能性がある場合には、安全な作業方法の確立について、当該荷主と協議する場
   を設けるよう荷主に対して働きかけること。特に、死傷災害の多くを占める荷役作業における墜落・
     転落災害の防止については、高所での作業をできる限り避ける作業方法とするとともに、作業床、
   手すり、墜落防止柵の設置等の設備面の対策を荷主等に対して協力を要請すること。
  エ 荷主等との連携協力によりリスクアセスメントを実施し、墜落災害防止用の設備面での対策、適
   切な作業計画、作業手順書の作成等適切なリスク低減措置を講じること。

 (3) 適切な作業計画及び作業手順書の作成による安全な荷役作業方法の確立
    安全な荷役作業方法を確立するため、作業計画及び作業手順書を次の点に留意して作成すること。
    なお、墜落等の危険のある作業においては、墜落時保護用の保護帽を必ず着用させること。
  ア 荷役作業を行う場合には、作業場所の状況、フォークリフト等の荷役運搬機械の使用の有無及び
   使用する場合の種類と能力、荷の種類と形状、重量等に適応する作業計画を作成し、作業者に周知・
   徹底すること。なお、荷役運搬機械に係る作業計画を作成するに当たっては下記(4)のリスクアセ
   スメントの結果を踏まえたものとすること。
  イ 作業計画に基づき、荷役作業の安全の確保に十分配慮した作業手順書を作成し、関係作業者等に
   周知すること。
  ウ 荷主先等での荷役作業における作業計画、作業手順書の作成に当たっては、荷主等との協議の場
   等を活用するなどにより荷主等と連携すること。
  エ 労働者に荷役作業を行わせる場合、労働者の疲労に配慮して十分な休憩時間を確保すること。
    なお、事前に予定していない荷役作業を行わせる場合は、必要な休憩時間の確保のため、走行計
   画を変更すること。
  オ 荷役作業による労働者の身体負荷を減少させるため、台車、テールゲートリフター等適切な荷役
   用具・設備の車両への備付け又はフォークリフト等の荷役運搬機械の使用に努めること。
  カ 貨物自動車に荷を積載して走行させる場合は、特に次の事項を徹底すること。
  (ア) 最大積載量を超えないこと。
  (イ) 偏荷重が生じないように積載すること。
  (ウ) 荷崩れ又は荷の落下を防止するため、荷にロープ又はシートをかける等の措置を講ずること。

 (4) 機械設備に係る安全性の確保
  ア 適正な方法による機械の使用及び検査等の適正な実施
    車両系荷役運搬機械をはじめとする機械設備の使用に当たっては、製造者等から提供される使用
   上の情報(危険情報)を活用してリスクアセスメントを行い、その結果に基づき適切な危険防止対策
   を講ずること。また、車両系荷役運搬機械について、法令に定められた適正な方法による作業を行
   うとともに、定期自主検査、作業開始前点検、修理等を適正に実施すること。
  イ 荷役作業の墜落防止等設備に係る安全性の確保
    作業床、手すり、柵、防網等墜落・転落防止等の設備については、荷主等に協力を要請すること
   により、適正な構造要件を確保するとともに適宜点検、整備を励行することによりその安全の確保
   を徹底すること。
  ウ リース業者等の措置への対応
    リース業者が貸与する機械設備については、その点検整備状況について確認すること。

 (5) 安全衛生教育等の推進
  ア 法定の資格等の取得
    次の危険な業務等については、安衛法に基づく資格、技能講習の受講が必要であり、これらの資
   格等を計画的に取得させること。
  (ア) 最大荷重1トン以上のフォークリフトの運転業務
  (イ) 最大荷重1トン以上のショベルローダー運転業務
  (ウ) 最大荷重1トン以上のフォークローダー運転業務
  (エ) 高さ2メートル以上のはいのはい付け、はいくずし等の作業における作業主任者の職務
  (オ) つり上げ荷重が5トン以上の移動式クレーン運転業務
  (カ) つり上げ荷重1トン以上の移動式クレーンの玉掛け業務
  (キ) つり上げ荷重が1トン以上5トン未満の移動式クレーン運転業務
  イ 安全衛生教育
    安全衛生教育の実施に当たっては、安衛法及び同法第19条の2第2項に基づく能力向上教育に関す
   る指針、同法第60条の2第2項に基づく安全衛生教育に関する指針及び「安全衛生教育推進要綱」(平
   成3年1月21日付け基発第39号「安全衛生教育の推進について」により示されているもの。)に基づ
   き、次に掲げる教育をはじめとして、それぞれの労働者の職務の内容に応じ、対象者、実施時期、
   教育内容等を適切に定めるとともに、労働者の職業生活を通じた中長期的な推進計画を整備するこ
   と。特に陸運業における労働災害の8割は貨物自動車運転者が被災していることから、貨物自動車
   運転者に対する雇入れ時等安全衛生教育の充実に留意すること。なお、これら教育を事業者のみで
   行うことが困難な場合は、安全衛生関係団体等が実施する安全衛生教育を計画的に受講させること。
  (ア) 雇入時等の安全衛生教育
  (イ) フォークリフトの運転の特別教育(最大荷重1トン未満)
  (ウ) 小型移動式クレーンの運転の特別教育(つり上げ荷重1トン未満)
  (エ) フォークリフト運転業務従事者教育
  (オ) 車両系荷役運搬機械等作業指揮者教育
  (カ) 積卸し作業指揮者教育
  (キ) 危険予知訓練(交通・荷役)
  (ク) リスクアセスメント教育
  (ケ) 腰痛予防管理者教育
  ウ 荷役作業現場の作業責任者に対する教育
    荷役作業現場において作業指揮をする責任者に対しては、安全な荷役作業方法について、職長教
  育に準ずる安全衛生教育を実施すること。
    
 (6) 腰痛予防対策
   陸運業においては、荷役作業において重量物を取り扱う機会が多いこと、また、長時間の車両運転
  を行うことが多いことから、「職場における腰痛予防対策指針」(平成6年9月6日付け基発第547号)に
  基づき、重量物取扱い作業、長時間の車両運転等の作業の作業態様別の対策を講じるとともに、重量
  物取扱い作業等に常時従事する労働者に対し「腰痛予防のための労働衛生教育」を実施すること。
  
 (7) 派遣労働者の安全衛生の確保
   派遣労働者の安全衛生の確保については、「派遣労働者に係る労働条件及び安全衛生の確保につい
  て」(平成21年3月31日基発第0331010号)に基づき、派遣先事業者として派遣労働者の危険又は健康障
  害を防止するための措置を現場の状況に即して適切に講ずるとともに、それぞれの責任区分に応じた
  安衛法上の措置を講じる必要性から、派遣元事業者との連絡調整を的確に実施すること。

2. 荷役作業別の労働災害防止上の重点事項
 (1) 人力荷役作業の各作業(荷の積卸し作業、荷締め・シート掛け等作業)に共通の事項
   貨物自動車からの荷の積卸し作業などの人力荷役作業においては、墜落・転落災害が最も多いこと
  から、これによる労働者の危険を防止するため、次の事項を実施すること。
  ア 平荷台の上での作業や荷の上の移動は可能な限り避け、地上での作業や移動とすること。
  イ 荷台からの墜落防止のための作業床を設置すること。
    平荷台上での作業を行わせる場合には、荷台の周囲に墜落防止柵、作業床等を設置すること。
  ウ 床面と平荷台、床面と平荷台の周囲に設けた作業床との昇降については、安全に昇降できる設備
   を設置すること。
  エ 箱型荷台上で作業を行わせる場合には、背を荷台外側に向けた姿勢で作業を行わせないこと。ま
   た、その姿勢で後ずさりさせないこと。
  オ 上記イ及びウの措置について、作業が荷主先等で行われる場合には、荷主等に対して協力を要請
   するなど連携協力の上で講じること。
  カ 墜落時保護用の保護帽を着用させること。
  キ 雨天時に荷や荷台上で作業させる場合は、耐滑性のある靴を使用させること。(安全靴の場合、
   JIS適合品には「F」のマークが表示されている。)
   
 (2) 人力荷役作業の各作業(荷の積卸し作業、荷締め・シート掛け等作業)別に特有の事項
  ア 荷の積卸し作業
  (ア) 荷主先等において荷主等の労働者と荷の積卸し作業を共同で実施する場合、あらかじめ、作業
    の役割分担を明確にした上で、作業間の連絡調整を十分に行うこと。
  (イ) フォークリフト等による荷の積卸しの際に荷や荷台の上で作業を行う場合は、当該フォークリ
    フトの作業範囲に立ち入らないとともに、フォークリフト等の運転者から見える立ち位置を確保
    すること。
  (ウ) 荷台のあおりを立てる場合には必ず荷台にロックをかけて固定すること。
  イ 荷締め作業
  (ア) 作業時の貨物自動車の逸走を防止するため、車止め等の措置を講じること。
  (イ) あおりの上に立つ場合には、あおりが荷台に固定されていることを確認すること(ウ)荷締め器
    具の機能について、作業前に点検を行うこと。
  ウ シート掛け・シート外し作業
  (ア) 地上で行うこと。地上で行うことができない場合には荷台の周囲に作業床を設け、作業床上で
    行うこと。
  (イ) シートが荷やあおりなどに引っ掛かった場合に、無理に引っ張らないようにすること。

 (3) 取扱い運搬作業
   荷の取扱い運搬作業においては、「無理な動作」による災害が最も多いことから、「職場における
  腰痛予防対策指針」における「重量物取扱い作業」の対策に基づき、自動化省力化、取扱重量、荷姿
  改善、作業姿勢・動作、取扱時間等に留意する他、特に次の点に着目して、作業負担を軽減すること。
  ア 荷に正しく向き、膝を軽く曲げ、腰を落とし、背筋を伸ばしてしっかり持つこと。
  イ 床上50cm以下又は胸より高い位置で取り扱わないこと。
  ウ 荷物の重量が55kgを超える荷は2人以上又は台車により取り扱うこと。
  
 (4) フォークリフトによる荷役作業
   フォークリフト作業においては、墜落・転落、はさまれ・巻き込まれ、激突、あるいは激突され災
  害と様々な型の労働災害が発生しており、また、運転者のみならず、周囲の荷役作業者にも被害が及
  ぶことから、次に掲げる管理面の対策及びフォークリフトを使用する際の対策を講じること。
  ア 作業を行う前の管理面の対策
  (ア) 作業計画の作成及び周知
     当該作業に係る場所の広さ、地形、荷の種類等に適用する作業計画を定め、その作業計画によ
    り作業を行わせること(労働安全衛生規則第151条の3関係)。
  (イ) 作業指揮者の選任
     フォークリフトを用いて作業を行うときは、「車両系荷役運搬機械等作業指揮者」を定め、作
   業計画に基づき荷役作業の指揮を行わせること。なお、作業指揮者には、平成4年12月11日付け基
   発第150号「車両系荷役運搬機械等作業指揮者に対する教育について」に基づき、安全教育を実施
   すること(労働安全衛生規則第151条の4関係)。
  (ウ) 就業制限等
     フォークリフトの能力に応じて、最大荷重1トン以上であれば、運転技能講習を修了した者でな
    ければ運転はできないこと(1トン未満であっても、事業者は特別教育を運転者に実施しなければ
    ならない。)(労働安全衛生規則第41条及び第36条関係)。
  (エ) 点検・定期自主検査の実施
     作業開始前点検、定期自主検査(月次、年次)、特定自主検査(年次)を実施すること(労働安全衛
    生規則第151条の21〜24関係)。
  イ 実際の作業を行う上で不安全状態及び不安全行動を防止する対策
  (ア) 接触の防止
     フォークリフトや荷と接触する危険のある箇所への立入禁止を徹底するため、運行経路と歩道
    の分離、立入禁止区域の設定、標識の設置などの措置を講ずること(労働安全衛生規則第151条の
    7〜9関係)。
  (イ) 用途外使用の禁止
     フォークリフト等の車両系荷役運搬機械を荷のつり上げ、労働者の昇降等主たる用途以外の用
    途に使用してはならないこと(労働安全衛生規則第151条の14関係)。
  (ウ) 作業者の服装等
     フォークリフトの運転の際には、作業衣の袖等がレバーに引っかかり不意の動作による労働災
    害の発生を防止するため、袖口の締まった服を着用するとともに、運転席から身を乗り出す等の
    行動をしないこと。

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